
「5%の人に向けた店」が全国チェーンを維持し続けることは難しいという話
2023年10月31日 企業研究 5
「風変りで尖ったモノ」を欲しがる人というのは、洋服に限らずどの分野でも多数派ではない。
丁度2006年とか07年とか頃から「付加価値を上げよう」というような販促?マーケティング?セミナーが大々的に注目され始めた。
当方も何度かその手の講演会を聞きに行った。その手の講演会で当時盛んに例示されたのが「ヴィレッジヴァンガード」という本と雑貨の融合したような形態だった。
いわゆる大手の大型書店のような画一化された店作り・品揃えではないことに対する面白さがあり、そこが画一化に飽きた消費者から支持されているという論調だった。
恐らくは企業としてはこのころが絶頂期だったと考えられる。
しかし、現在、決算は苦戦続きである。
最新の2024年5月期第1四半期連結を見てみよう。
売上高 58億7100万円(対前期比2・8%減)
営業損失 1億9500万円
経常損失 1億8100万円
当期損失 2億2000万円
となっており、減収赤字という惨憺たる結果である。
この傾向は24年5月期だけではなく、ずっと続いており、2020年度以降ならコロナ禍による外出自粛の影響だと切って捨てられるが、コロナ禍など微塵も騒がれておらず、インバウンド客もピークを極めていた2019年5月期連結ですら、
売上高 262億6700万円 (対前年比13・6%減)
営業損失 2億8600万円
経常損失 3億800万円
当期損失 6億1800万円
と大幅減収赤字に陥っているので、ヴィレッジヴァンガードの不振はコロナ禍自粛が原因ではなかったことがはっきりと示されている。
ヴィレッジバンガードの創業から現在直前までの状況が手短にまとめられている動画がこちらである。
視聴いただければわかるのだが、文字で手短にまとめてみる。
個性的な店を個人のセンスで作る
⇓
一部のファンからそれが支持される
⇓
多店舗化する
⇓
株式公開(上場する)する
⇓
停滞し始める
⇓
減収減益が始まる
というのがざっとした流れである。
当方はこれについて、洋服の高感度セレクトショップの流れに似ていると感じた。
店主のセンスを基に個店ないし数店舗くらいの規模感でやっているときは、ヴィレヴァンもセレクトショップも順調である。飲食店も同様だろう。
しかし、大規模チェーン化し株式公開をすると、停滞したり苦戦に転じたりしてしまう。
理由は社長や創業者の個人のセンスをそんなに大規模に浸透させることは不可能だからである。これは大手セレクトショップ各社にも言えることではないだろうか。
大手セレクトショップは他の洋服店との競争になるわけだが、ヴィレヴァンは他の雑貨店、他の大型書店との競争にさらされる。
ごちゃごちゃした陳列という点においては、ヴィレヴァンはドン・キホーテと類似している。しかし、ドンキの方が日用必需品や食料品を扱っているばかりでなく、それが安価であることから多くの人に選ばれやすい。ヴィレヴァンは「趣味の商品」「嗜好品」に特化している分、興味の無い人には見向きもされない。しかも決して高くはないが安くもない。となると、興味の無い人が入店する理由すらない。
また、書店ということで比較すると、たしかにマニアックな一部の書籍は扱っているだろうが、当方のような人間からすると大型のジュンク堂や紀伊國屋書店の方がずっと使いやすいし欲しい本がある。わざわざヴィレヴァンで買う必要がない。ジュンク堂や紀伊國屋書店に無い本はAmazonで取り寄せればいい。ちなみに嫌いだから絶対に蔦屋書店は使わない。
となると、一部の熱烈なファンしか利用しなくなる。というより元からそういう店だったということでしかない。
しかし、全国チェーン店化し株式公開をしてしまうと、大規模な永続的な成長が求められることとなる。そのためにはある程度はマス層を取り込むほかないが、ヴィレヴァンはドンキ的な低価格日常消耗品・低価格食料品があるわけでもなく、ジュンク堂書店ほどの品ぞろえと冊数の豊富さがあるわけでもない。従ってマス層が利用する理由がない。
また単なる日常雑貨、日用品ならダイソー、セリア、キャンドゥの3つの100円ショップで十分だし、もう少し洗練された品揃えを期待するならスリーコインズで十分になる。
マス層に利用されるような画一的なモノやコトに面白味を感じないという少数層に支持されていた店が、ある程度のマス層の取り込みを図るわけだから、自己矛盾も甚だしい。結果的に減収赤字転落ということになる。
本来の客層の人口では現在の規模のヴィレヴァンを支えられないという結果になってしまう。
まだヴィレヴァンが好調だった2015年7月に書かれた記事である。
95%の人に嫌われる「ヴィレッジヴァンガード」戦略:5%の人が満足(1/3 ページ) – ITmedia ビジネスオンライン
ヴィレヴァンへの入店率5%。95%は素通りという事実だった」とある。その数字を受けて、同氏は店舗スタッフとミーティングを開き、今後の方向性を見出したという。即ち、「5%の方に思い切り満足してもらえるような店を目指そう。それによって95%の方に満足されなくても構わない」というものだった。
とのことで、この割り切り方は正しいといえる。ただし、5%の人間に全国チェーン化した現在のヴィレヴァンを支えるほどの売上高は見込めないということでしかない。
ヴィレヴァンは5%の人で支えられる規模のままで高利益率を目指すべきだったのではないかと思う。
そして同じことが現在の衣料品市場にも当てはまると思う。
マス層はユニクロ、ジーユ―、しまむら、ワークマン、ハニーズ、無印良品、ストライプインターナショナルあたりがあれば基本的に十分だし、そこにアクセント的に差し込むブランドとしてはアダストリアの各ブランド、ZARA、H&M、グリーンレーベルリラクシング、センスオブプレイスあたりがあれば十分だろう。
より個性的で尖った先鋭的な服が欲しいという人はヴィレヴァンの言う「5%」程度ではないかと体感的に感じる。
ただ、衣料品の場合はこの「5%」の客層に向けたブランドがそれこそ無数に存在するというところがヴィレヴァン以上に難しいと感じる。要はそこに向けたブランド数が多すぎる。少ないパイを細々分け合ってそれなりに運営できればそれで良いと思うのだが、たまにこの「5%向け」ブランドなのにマスに売れたがる、マスに売れないのはおかしいと叫ぶ人が少なからずいるからめんどくさくなる。
5%向けブランドが、今更マス層を取り込むことは不可能だろうから、ブランド規模を拡大したいのなら他の5%向けブランドを駆逐しその客を奪うのが最も効率的で効果的だろうと考えられるので、ぜひそちらに取り組んでもらいたい。
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ずんだもん派ゆっくり派 より: 2023/10/31(火) 12:53 PM
最近はゆっくりよりずんだもんの解説系を良く見る事多くて、この動画は見ました
ヴィレバンとかの面白雑貨屋に行った時にいつも気になるのは、売れ残った物をどう処分するのかという事です。
衣服ならまだ叩き売る事も可能と思いますが、雑貨のいらない物はとことんいらないです。
これはスリコとかのオシャレ雑貨でも同様で、売れ残った在庫処分大変じゃないのかと思います。
赤ちゃん産まれないのに、売れ残った赤ちゃんオシャレ雑貨とか。 -
南ミツヒロ的合理主義者 より: 2023/10/31(火) 1:53 PM
この手の「とがった人向けに・不要な物を売る・多店舗展開チェーン店」
の発祥は、かの東急ハンズだったと思いますけど、ハンズってどうなりましたっけ?
セシルマクビーやサマンサのように
今の20代はハンズもヴィレッジヴァンガードも
名前すら聞いた事がないと思います最終的には首都圏7店舗関西5店舗程度に落ち着くんじゃないのかな?
我々の世代では、DCブランドの丸井でしたが
その下では、オモシロ小物の丸井だったのに
その丸井が店舗小売りから撤退したのも
時代の流れでしょうか・・・ -
とおりすがりのオッサン より: 2023/10/31(火) 2:32 PM
ハンズは「どこに売ってるかわからないけど、専門家は普通に使うもの」を探すには最適なお店でしたが、今はアマゾンで検索したら何でもすぐに見つかるから、全然ハンズには行かなくなっちゃいました。
5~6年前?に、6角レンチが必要になって今は亡き池袋店に行ったら、6角レンチといえばPBというくらい有名なスイスのPB社の6角レンチが一切なくなってて取り扱いやめたとか聞いて、「ハンズも落ちぶれたな」と思ったのが懐かしいです・・・ -
元メンズアパレル業界の端くれ より: 2023/11/01(水) 11:17 AM
ヴィレッジヴァンガードがまだ出始めのころは店内にアダルトグッズまで置いていたりとほんと変わったものが多く、ポップもにぎやかで入るだけでも楽しい店でしたが、イオンモールに出店され始めたころから尖った商品が少なくなってあまり行かなくなってしまいました。
モール内であれば雑貨屋や本屋は他にもありますし。
最近、乱造されてる「ずんだもん」の解説動画をよく見てて、これも見ました。直近で面白かったのは、プーチンを解説するずんだもんですねw
しかし小売店とか飲食店とかって、新店舗を出店すればその時だけは売上高は確実に増えるから、出店し続けていると一見儲かってるように思えちゃうのが落とし穴みたいっすね。いきなりステーキなんかも、調子こいてどんどん出店していったら終わっちゃったしw
これから20~30年は人口減り続けて、若者は少なくなり老人は増えていき、その増える老人も今の老人よりもお金持っていないわけで、BtoCの商売は拡大路線を取るのは間違いなんでしょうねぇ・・・