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南充浩 オフィシャルブログ

30年間「こだわり」を発信し続けてきた国産ジーンズ業界はまだそれを続けるの?

2023年10月24日 ジーンズ 4

一時期に比べると2~3年前からジーンズを穿いている若い男女が増えたと感じる。

とはいえ、当方が大学生だった当時ほどの着用率ではない。あくまでもトレンドの1つに浮上したから穿いている人が増えた、そのように感じる。

【記者の目】国産ジーンズの今 若者とインバウンドが注目 人手不足、高齢化で生産量に課題 | 繊研新聞 (senken.co.jp)

ジーンズ離れと言われて約10年。21年ごろからデニムがトレンドに再浮上し、再びジーンズが注目され始めた。

とある。

今後、ジーンズというアイテムはどうなるのかというと、個人的には、トレンドとして再浮上したものの、昔ほどには万人が着用するようにはならず、数あるカジュアルボトムスの1つとして永らえるのではないかと思っている。

これが結論である。

 

当方は89年に大学に入学したが、この当時、男子大学生はほとんどがジーンズを穿いていた。ディスコに行くとき(当方は行ったことがないが)にはジーンズ禁止というドレスコードがあったようで、そのときにはスラックスやスーツを着用していたそうだが、大学の学内にいるときやアルバイト時はほとんどの男子大学生はまるで制服のようにジーンズを穿いていた。女子学生も結構な比率でジーンズを着用していた。

チノパンやカーゴパンツなどは存在していたが、着用している大学生はかなり珍しかった。記憶ではほとんど見かけたことがない。

 

95年になるとビンテージジーンズブームが起きた。当時ビンテージチノを穿いている人もいたが、まあ、男性のカジュアル時のほとんどはビンテージ風ジーンズだった。まさしくカジュアル時のユニフォームだった。

そこから美脚ブーツカット、高額インポートジーンズ、スキニージーンズと、ブームのトレンドが変わり続けるのだが、ジーンズがカジュアルパンツの最有力アイテムの座を死守し続けてきた。

ただ、2010年代になるとカジュアルボトムスの選択肢が増えた。これはスキニージーンズ全盛によってストレッチ混素材が普及したことも大きいだろう。

ストレッチ混素材の様々カジュアルボトムスが生まれた。

 

そして2015年でスキニー一辺倒が終わり、2016年以降ワイドパンツが復活し、いよいよカジュアルボトムスは多様化を迎える。

 

こだわりを発信(小見出し)

近年、ジーンズ業界は苦境に立たされてきた。00年代後半ごろのロープライスジーンズブームで価格競争が激化し、老舗のジーンズNBは大打撃を受けた。10年代中ごろからはアスレジャーなどの流行でテック系アイテムが市場に浸透。消費者の選択肢が広がり、ジーンズ離れは加速した。

 

とあるのはまさにこの流れをまとめたものである。

記事中の並びは前後するが、前部分には

 

高品質な国産ジーンズの〝語れる〟要素がSNSやユーチューブで発信されたことで、高価格帯ジーンズに引かれる若者も増えている。インバウンド(訪日外国人)の国産ジーンズ需要も高まっており、海外への拡販も期待できる。重要になってくるのは、新たな顧客を飽きさせない企画と、疲弊した産地を守る仕組みだ。

 

とあり、結論を文頭に持ってくる新聞記事の性格上、この一節がこの記事の結論だと考えられる。

 

で、この記事を読んだ当方の受け止め方を言うと、

 

「こだわり」や「本物」を語って(騙ってではない。そういう産地業者も存在するが)発信し、ジーンズをかつての制服化とまでは言わないが、またカジュアルボトムスの王者に押し上げることで、国内デニム産地が守れるようにすべきである。

 

というふうに読めてしまう。

当方の解釈が100%正しいとは言わないし、同じ日本語を読んでも全く違う理解をしたり、さっぱり意味を読み取れない人も少なからずいる。

ここでは当方の解釈を基に話を進める。そうではない人はご自分でブログなり動画投稿なりで勝手に発信されればよい。

 

まず、感じたことは

 

「95年のビンテージジーンズブームのころと、言っていることが何一つ変わっていない。30年間『こだわり』『本物』を言い続けているのかよ」

 

ということでる。

30年間主張し続けてきて状況は変わったのだろうか?たしかにブーム以降の10年間くらいはその「こだわり」路線がマス消費者にも受け入れられたが、人間は飽きる動物だから「こだわり」のビンテージっぽいジーンズにも飽きてしまう。その結果、高額インポートジーンズブームやスキニーブームと言った具合にトレンドが変化して、ビンテージっぽいジーンズはマストレンドではなくなった。まあ、極めて当たり前の変化である。

次に感じたことは

 

「現在の若者に注目されているのは、『本物』に目覚めたというよりは、生まれたときからジョガーパンツなどのテック系高機能パンツに親しんできたから、綿100%の厚手デニム生地パンツが目新しく見えただけではないか」

 

ということである。当方の感覚からすると「本物」「こだわり」に目覚めたというよりは「新しい先端トレンドの1つとして注目した」というふうに感じられる。

そして、この盛り上がり?は恐らくは5年間くらいで沈静化し、一部の人は新規のコアなジーンズファンとして根付くものの、浮遊層は離れて別のトレンドアイテムを着用するようになるだろう。

実際に95年からのビンテージジーンズブームの洗礼を受けた人(当方も含めて)の中で、熱烈なこだわりジーンズファンとして残っている人がどれほどいるのか。恐らく残っているのは極少数だろう。そうでなければ各ビンテージ系ブランドの売上高がこれほど小さいはずがない。

今回のビンテージブームのリバイバルは当時よりも規模が小さく終わるだろうから、残る人もさらに少ないだろう。

 

もうジーンズはかつての若者の制服ではなくなってカジュアルボトムスの1つになって久しい。ここからまた「制服」の座に復権するのは不可能だろう。そして30年間唱え続けてきた「こだわり」を強調したところで効果は限定的に終わるだろう。何より、30年以上も「こだわり」を強調し続けてジーンズ業界は今の状態になっているのだから、今からそれをさらに強調したところで、結果は目に見えている。

 

それよりもカジュアルボトムスの1つとして、売上規模や本数の多さを確保したいのなら、各ブランドの商品計画と密接に連携して企画製造をする必要があるだろう。いわゆる「こだわりジーンズ」を追求したいのであれば、それにふさわしい規模感、製造本数に落ち着くことを考慮すべきだろう。「高額なこだわりジーンズ」をやりながらかつてのナショナルブランド全盛期のような制服化した売れ行きを求めるのは虫が良すぎるというものである。そんな美味しい話はこの世に存在しない。

 

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 comment
  • とおりすがりのオッサン より: 2023/10/24(火) 11:09 AM

    95年には私は20代前半で都心の自衛隊駐屯地で暮らしてましたが、同期の隊員でジーンズ好きのやつが何万円とかのを買ってて、オサレに興味なかった私は「そんな高いのあるの!?ジーパンなんて5~6千円で売ってんじゃん」びっくらこきましたw
    そいつはよく渋谷とかにも買い物に行ってて、「渋谷とか吉祥寺とか行かないと売ってねぇんだよ」と言ってたのが印象に残ってます。
    私は当時はアウトドア系の服を着てて、ブルージーンズは92年頃から今まで履いてない(黒とかグレーは履いてた)ですが、90年頃までの若者はブルージーンズが9割くらいの印象がありますね。まぁ、ジーンズ以外あんま選択肢が無かったんだと思いますが。

  • kた より: 2023/10/24(火) 12:35 PM

    現代の古着ブームに起因していると感じます。
    若者がメインで視聴するyoutubeではネタになりやすい、
    〇00万円vintageジーンズなんてのが結構多い。
    芸人が手を出し始めている点でも流行のピークが来ている感じで、
    その後若者に移りピークアウトするところでしょうか。
    売る側もロゴやらグラフィックだと版権あるし刺される。
    でも、vintage風は赤いタブとかやらない限りは誤魔化しが利く。
    金が無い。でもそれっぽいのが欲しいって層には売りやすいんじゃないでしょうか。

  • キム ゴンウ より: 2023/10/25(水) 10:59 AM

    過去のベストジーニストを見ると
    ある時期から
    旧ジャニーズとの何らかの何らかがあったとしか思えない
    受賞者リストですね
    南さんの書かれたように
    人々にジーンズが愛用されていた時代は
    ベストジーニストも気になる賞でしたが
    いまや はぁ~それが何か?って感じでですよね

  • 南ミツヒロ的合理主義者 より: 2023/10/25(水) 1:21 PM

    〉95年~のビンテージジーンズブームの洗礼を受けた人の中で、
    〉熱烈なコダワリジーンズファンとして残留組はどれだけいるのか?

    全国に1000人いないと思います

    95年に大学生20歳の人は2023年現在、50歳ちかい超おっさん

    50代で15OZのGパン履いてるおっさん、見たことあります?

    ・ガテン系でそこそこ成功して金もってる系のオイリ~おやじ
    ・横浜銀蠅やThe Modsの永遠のファン
    ・服買うのがめんどくさくなって15年ほど経ったおっさん

    ぐらいしかいません

    私が30年近く前に購入して5,6年はしっかり履いた
    503BXXの初回ロット品やラングラーの復刻物は
    タンスの奥底・思いでケースの中にひっそり保管中です

    で、ふだん履いてるのは、AEONオリジナルの裾上げ不要
    7分丈パンツ780円也www

    高品質それはすなわちファッションと同義に過ぎなかったのですよ

    80年代の品質サイアクといわれた米国製501でも耐久性は同じです
    ついでにいえば、乾きづらく汗吸うと臭いのも一緒

    で、高品質という売り文句にもう2万3万払うのが常態化したけど
    効能がないアリガタ話にいつまでも金払うバカはいません

    獣毛なら高品質すなわち高価格の物のほうがより暖かく軽いけど
    綿の場合、「風合いが良いだけ」
    逆をいえば、機能面では安い物も高い物も同じですからねぇ・・・

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