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南充浩 オフィシャルブログ

今後の百貨店は衣料品の構成比率を下げざるを得ないという話

2023年10月23日 決算 1

先日、京都高島屋SCの専門店ゾーン「T8」の内見会に参加したことは以前にも書いた。

1フロア450坪程度の売り場面積なのでさほど広くはない。地下1階は完全に食と飲食店フロアであり、4階は「まんだらけ」、5階・6階は蔦屋書店、7階はニンテンドーなので、通常の物販フロアは地上1階~3階しかない。

そして、地上1階~3階に入店するテナントにもカフェはあるし、ジュエリーや雑貨、コスメのテナントもあるから「純然たる衣料品テナント」は数えるほどしかない。

これが現在の専門店ビルのテナント構成である。

百貨店の補完として地続きで専門店ゾーンを増床しているわけなのだが、その補完勢力として衣料品テナントがあまり選ばれていないところが、現在の小売流通業界、消費者ニーズを示していると考えられるのではないだろうか。

 

百貨店はまだまだ必要不可欠という論調がある。むろん当方も全て無くなって良いとは思っていない。しかし、必要不可欠ではないと思っているし、従来型の品揃えのままでは百貨店が復活するのは難しいだろうと思っている。

理由は、従来型百貨店の品揃えの衣料品比率が高すぎるからである。「随一のファッション衣料品の買い場」として広く認知されている伊勢丹新宿、阪急うめだ本店のような突出した百貨店店舗はさておき、衣料品ブランドの集積では百貨店は集客できなくなっている。

一方、百貨店に商品を供給する側はどうかというと、高度経済成長期から百貨店との蜜月関係で売上高を拡大し続けてきた大手総合アパレル各社が百貨店売上高比率を低下し続けている。

直近の話題でいえばこれだ。

オンワードの販路構成が様変わり ECが急増、百貨店は3分の1に

2023年3〜8月期(上期)の決算説明会で示されたグループ国内9社の販路別売上高構成の円グラフは、百貨店32%、SC(ショッピングセンター)他38%、EC(ネット通販)30%に3分割されていた。

最も変化したのが、中核会社のオンワード樫山である。業界では長年「百貨店アパレル」と言われてきた同社だが、上期は百貨店39%、SC他33%、EC28%となった。

とある。

オンワードはグループで見ると、百貨店、SC(ファッションビルも含んでいるだろう)、ECで売上高が3等分されている。またオンワード樫山単体でも百貨店売上比率は4割を下回る39%まで低下している。

オンワードに限らず、ワールドもTSIも大手総合アパレル各社は2010年代半ば以降、競うようにして百貨店の売上比率を下げてきた。三陽商会だけはまだそこまで百貨店比率は低くないように感じる。

百貨店の割合は自社EC「オンワードクローゼット」を始める前の08年度で75%、コロナ前の18年度で66%だったことを踏まえれば、確かに「偏り」はなくなった。

とあるから、オンワード樫山単体で見ても、15年前の08年度と比較すると百貨店売上高比率はほぼ半減という状態になっている。

コロナ禍にECの利用が増えたのは他社と同じだが、オンワードグループの場合は19年から20年にかけて国内外で約1700店舗を減らす大規模な事業構造改革を断行し、OMO(オフラインとオンラインの融合)に舵を切ったことが大きい。

と記事中にあるが、減らされた1700店舗のうち、大部分が百貨店だったと考えられる。

何が言いたいのかというと、オンワードにこれだけ百貨店売上高比率を減らされると、従来型の衣料品売り場が維持できない百貨店が相当数出て来てもおかしくないということである。

オンワードだけでなく、ワールド、TSIともに百貨店売上比率を下げ続けているから百貨店側も相当に厳しいだろう。

現に、島根の一畑百貨店は報道にもあるように

「テナントが集められないから閉店する」

と声明を発表している。

圧倒的な衣料品売上高を誇る伊勢丹新宿、阪急うめだ本店はそのようなことはなく、今後も衣料品ブランドを集積できるだろうが、地方・郊外の小型店・中型店舗は衣料品ブランド集積は至難の業だろう。

また大都市都心店でも大丸梅田店のように売上高があまり伸びていない店舗は今後、衣料品ブランドを集めることは相当苦労するだろう。ただし、大丸松坂屋と取引するスケールメリットはあるだろうから、同社他店舗との取引を抱き合わせにすることで、梅田店もある程度は集められるだろうが、単独店や店舗数の少ない百貨店は24年以降さらに厳しい状況になるのではないだろうか。

供給側の事情はこうだが、消費者ニーズや実際の売れ行きも百貨店全体では衣料品は決して高くなくなっている。

百貨店で存在感を増す「身の回り品」とは何か

 百貨店の売り上げ構成比が変化している。日本百貨店協会の2022年の統計によると、百貨店の売り上げ構成の1位は「食料品」の29.0%、2位が「衣料品」の26.6%、3位が「雑貨」の19.7%、4位が「身の回り品」の15.3%となる。百貨店では売り場面積が大きい「衣料品」が2000年頃まで40%以上のシェアを誇ってダントツの存在だった

 

とのことで、コロナ自粛を完全に終了させた23年度以降の統計はまた変化する可能性もあるが、当方は衣料品が売上比率を大きく伸ばして1位を奪還するとは到底思えない。23年以降も売上高1位は食品だろう。

供給側の事情、実際の売上高、売上高から類推できる消費者ニーズ、この3ついずれもが衣料品の低下を物語っている。そうなると、衣料品の構成比率が高いままの従来型百貨店が今以上に業績を伸ばすことは難しいと考えた方が論理的だろう。

ファッション売り場として突出した評価を受ける店舗以外は、今後の百貨店は衣料品構成比率を下げ続けて新たな品揃えのスタイルを模索せざるを得ないのではないかと思う。

 

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 comment
  • とおりすがりのオッサン より: 2023/10/23(月) 12:55 PM

    オンワードの保元道宣社長、スーツの上襟が完全に抜けちゃってる(クビから浮いちゃってる)(ノ∀`)
    3年前の私なら一切気にならなかったと思うけど、なんか色々知識ついちゃうと、スーツの着こなしのダメ出しもできるようになってきちゃった(でも、舞台とかで役者さんがジャケットのボタンを下まで全部しめてたりすると気になって困るw)。
    オンワードの社長さんも服なんか仕事で扱うモノってだけで、たいしてスーツなんかに興味ないんだろうなぁ、きっとw

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