Z世代が考える「高い服」とは1万円前後なのではないかという話
2023年10月20日 売り場探訪 1
まあ、日本に限らず、諸外国でも〇〇世代という区分けがある。
〇〇世代はだいたい何百万人かいるわけだから、当然そういう傾向の人もいるし外れる傾向の人もいる。何百万人もいる人間が全員寸分たがわぬ性癖を持っているはずがない。
ただ、世代を貫く最大公約数的な傾向があることは否定できない。
例えば、日本の団塊世代でいうと、皆さんが想像するような傾向の人が多い。もちろんそうでない人は存在するが、その世代のマジョリティではない。
個人的には、最近メディアで報道されたり、企業やブランドのエライ人が語るZ世代論に大いに違和感があった。非常に美化されすぎていると感じるのである。だが、そんな聖人君子のような人間が多数派を占めるような世代があるとは思えない。心の汚れた当方からすると企業やブランドが将来の客層に対して過剰に媚びて持ち上げているようにしか見えない。
よく、若い世代の消費行動を分析する際
1、所得や貯蓄が少ないから高価格品が売れない
2、Z世代は環境意識が高いから(ほんまか?)少しくらい高くても良い物を買って長く使う
という2つの傾向が示されることが多い。
しかし、よく考えてみるとこの2つは矛盾しており、両立することは不可能だろうと思う。
まあ、もちろん何百万人もいる世代の中で1という人が多数派でも2という人も少数派として存在はしているだろう。だが完全に両立させることは不可能である。
当方は個人的に1と見ているので、2という若い世代は相当少数派ではないかと考えている。
今回こんなアンケート記事が掲載された。
「ハイブランドは誰もが憧れるものではない」、Z世代のブランドに関する意識調査発表 (fashionsnap.com)
SHIBUYA109エンタテイメントが運営する若者マーケティング機関「シブヤイチマルキュウラボ(SHIBUYA109 lab.)が、「Z世代のハイブランドに関する意識調査」を行い、その結果を発表した。
同調査は、学生と社会人を含む20〜26歳までのZ世代423人を対象に、ウェブ調査とインタビューを行った。
とのことである。
シブヤ109エンタテイメントの運営する機関によるアンケート調査なので、相当若い世代のリアルな意見を集約できているのではないかと考えられる。
調査内容は、Z世代が「『良いものを買おう』と思った時に購入するファッションアイテムの平均金額」、「ハイブランドのファッションアイテムを初めて着用・利用し始めた時期」、「ハイブランドのイメージや関心」、「ハイブランドを持つ自分の周りからの見え方」の主に5つ。
との調査内容である。
このうち、特に興味深かったのが、平均金額である。
ファッションアイテムの平均価格は、大学生が8787円、社会人が1万2393円で、Z世代全体としては平均約1万円という結果となった。
とのことである。
もちろん、しまむら、ジーユーほどの安値ではないが、大学生で約8800円、社会人で1万2500円程度ということになるから繊維衣料品業過人が期待するほどの「高くて良い物」ではないということがわかるだろう。
ユニクロの防寒アウターならほぼ定価程度の価格といえるので、中価格帯の中でも低価格に近いと言えるだろう。
今のZ世代もいずれは30代になり40代になり50代になり老人になるが、今よりも所得や貯蓄が増えたとしてもこの平均価格帯が大きく上昇することはないだろうか。
特に、スマホやパソコン、動画や音楽のサブスク、スポーツや他の娯楽など支出先は多いわけだから、洋服に特化して支出するなんてことは相当にマニアで洋服オタクという人に限られるだろう。そしてマニアやオタクはどの分野であっても少数派である。
現在、漫画やアニメのオタクが市民権を得たと言っても、ファンが増えただけでディープなオタクが増えたわけではないだろう。
「ファーストガンダムの41話『光る宇宙』でキシリア閣下に対してシャアが仮面を外して会話するところに深みを感じた。富野由悠季の演出と絵コンテすげえ」
なんてことを嬉々として語るようなオタクは今でもそう多くないだろう。
数多ある支出先の中から洋服にある程度特価して優先的に支出するような洋服マニア・洋服オタクはマジョリティではないだろう。
このアンケート結果から個人的に類推したのだが、もしかすると、若い世代・Z世代の頭の中では1と2は両立しているのではないだろうか。
どういうことかというと、彼らは、8800~13000円弱の衣料品を「高くて良い衣料品」と考えているのではないかということである。
だから、今回以外のアンケートでは「少しくらい高くても良い物を長く使う」という返答がそこそこ集まるのではないだろうか。
そうなると、現在各企業や各ブランドがZ世代に過剰に期待している購買行動は実現する可能性が極めて低くなってくる。
また当方がジーユーを定期的に来店してもZ世代と思しき若い客層は常に多くいるから、低価格品が全否定されているわけでもない。
そして
ハイブランドファッション対して「関心がある」と回答したのは52.7%、「憧れがある」のは全体の内53.9%と、ハイブランドファッションは誰もが憧れるものではなくなっており、考え方が多様になっていると結論づけた。
とあり、ハイブランドに関心や憧れがあるのは約半数なので、その上の世代よりはハイブランド信仰も低くなっている。ある意味で当方は健全な嗜好だと感じる。
恐らく、Z世代が社会の中堅層になっても、今の企業経営陣が期待しているような高価格衣料品やハイブランド衣料品の購買増は起きないのではないだろうか。
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このアンケートの具体的な質問内容は分からないけど、Z世代の認識する「ハイブランド」が10,000円くらいの衣服って可能性まであったりしてw