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南充浩 オフィシャルブログ

サマンサタバサの不調の根本的原因はハンドバッグという商品の不人気にある

2023年10月12日 決算 4

物の良し悪しとか品質の高低とかそんなことには関係なく、売れなくなる物がある。

要するに「物自体」への需要が減ることが原因である。物自体への需要が減るのは、その物よりももっとメリットのある代替品が登場したことによる場合が多いだろう。

さて、先日こんな記事を拝読した。

8期連続赤字がほぼ確実になった「サマンサタバサ」不調の根本原因は? | セブツーは、世界各地のファッション&ビューティ情報を多言語で毎日配信するインターナショナル・メディアです。 (seventietwo.com)

ハンドバッグ大手企業のサマンサタバサジャパンリミテッド(Samantha Thavasa Japan Limited、以下サマンサ)が9月26日に2024年2月期第2四半期(2023年3月1日〜2023年8月31日)の業績の下方修正を発表した。

主要数字は以下の通り(修正前は4月14日の決算発表時の数字)
 ・売上高:135億700万円 →114億6000万円
 ・営業利益:−8300万円→−5億7700万円
 ・経常利益:−1億2100万円 →−7億1800万円
 ・親会社株主に帰属する四半期純利益:−2億2600万円 →−6億2000万円

とのことである。減収赤字幅拡大の下方修正で惨憺たる有様というのはこういう状況を指すのだろう。

続けて

修正の理由として、サマンサは①今夏の記録的な猛暑の影響、②複数回に及ぶ台風の直撃、③郊外ロードサイド店舗を中心に来店客数がコロナ感染症前まで戻らなかったことを挙げている。

 

とあるが、①~③まで3つともサマンサタバサに限らず、全てのブランドに共通する外的要因である。全ブランド等しくこの環境下で商売を行っているわけだが、それでも売上高を伸ばしたり、営業利益を増やしたりしているブランドはある。サマンサタバサは何を寝ぼけたことを言っているのだろうか。

もちろん、記事中でも突っ込まれている。まともな知能のある人なら誰でも突っ込まずにはいられないほど酷い言い草である。(笑)

続けて記事ではサマンサタバサが打ち出している「イベント」について言及している。通常「イベント」が行われると売上高は伸びる場合が多い。イベントを打ち出しているにもかかわらず売上高が伸びないというサマンサタバサはよほど厳しい状況にあり、消費者から見捨てられていると言っても過言ではないだろう。

 

しかも「サマンサ」の場合、ディズニー創立100周年の記念コラボを7月8日から10月15日までの100日間実施中で、この売り上げがほぼ2カ月分上乗せするはずだが、どうもコラボ効果は今ひとつのようだ。加えて、サマンサの創業者でサマンサからは引退している寺田和正氏が2020年に設立した新会社サマンサグローバルブランディングアンドリサーチインスティチュート(Samantha Global Branding & Research Institute)へ譲渡した海外事業やスイーツ事業が「サマンサ」のブランドを強くアピールし、今年8月31日には美容分野への参入を発表し、11月1日から「サマンサ ビューティ プロジェクト(Samantha Beauty Project)」をスタートするなどサマンサ本体を後押しする話題には事欠かない。しかし、肝心のハンドバッグの売り上げは伸びないのだ。

 

イベントは以上のように企画されていたわけである。営業利益は別として通常のブランドならこれほど大型のイベントが続けば売上高くらいは増える。増えないまでも前年トントンにはなっていてもおかしくはない。

こういう大型イベントを連発しても売上高も下がってしまうのだから、話にならない。

 

で、この記事の見出しにある「サマンサタバサ不調の根本原因」は何か?

いろいろな原因は考えられるだろうが、当方が最も重大だと思う原因は「ハンドバッグそのものの需要が激減している」ことである。

これは以前から書いているが、今、冠婚葬祭以外でハンドバッグをぶら下げている若い女性はほとんど見かけない。スーツを着込んだOLさんでも手提げカバンではなくリュックやショルダーバッグを使っている人も相当数いる。ましてやカジュアルスタイルや仕事以外のお出かけスタイルでわざわざハンドバッグをぶら下げいるような女性は皆無に等しいといえる。

となると、ハンドバッグが看板商品であるサマンサタバサというブランドが顧みられなくなるのは極めて当然の結果でしかない。

別にサマンサタバサのハンドバッグの品質が悪いわけではないし、物性が劣っているわけではない。逆にいくら品質が高かろうが、物性が優れていようが、すでに「ハンドバッグという商品そのものの需要が激減している」のである。

カジュアルスタイルではトートバッグを持っている女性は少なからずいるが、それとて、持ち手が長めで肩にかけられるようになっているタイプが多い。手でぶら下げるだけのバッグは本当に使われなくなった。

 

こうなると、ハンドバッグが看板商品でありブランドアイコンであるサマンサタバサの業績は悪化せざるを得ない。いくら豪勢なイベントを連発しても効果はない。なぜならハンドバッグという商品が求められていないからである。

記事では

「復活はあるのだろうか?」

と結んでいるが、ハンドバッグを看板商品として掲げているうちは復活することはありえないだろう。

ラグジュアリーブランドほどのステイタス性があれば、冠婚葬祭などでも優先的にそのブランドのハンドバッグが買われるだろうが、サマンサタバサにそこまでのステイタス性は無い。日常的なお出かけやちょっとした合コンなどの用途が多いと思われるが、そういうデイリーな用途ならトートバッグやリュック、ショルダーが選ばれる。日常生活においてはハンドバッグというアイテムそのものが最早「選ばれないアイテム」に成り下がっているという事実を直視すべきだ。

それこそブランドイメージをガラリと変えて、リュックかショルダーバッグ、持ち手長めのトートバッグのいずれかを主力商品にすれば復活の可能性は生まれるかもしれない。が、ブランドイメージをガラリと変えることは既存客が離れ新規客もつかめないという最悪の事態も起こり得るから相当に危険な行為ではある。

ただ、今のままのブランドの立ち位置ではいくらビッグイベントを仕込んでもサマンサタバサの業績は上向かないし、規模拡大するなんてことは夢のまた夢に過ぎない。

 

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 comment
  • とおりすがりのオッサン より: 2023/10/12(木) 11:54 AM

    サマンサタバサ、コナカの子会社でコナカの業績の足引っ張ってるということですねw
    でもググったら未だに売上高は250億円とかあるようなんで、バッグ・ジュエリー部門で200店舗もあってブランドも10個もあるのを整理したら、普通に利益だせるんじゃなんすかね?
    都内83店、中部36店、関西43店、九州15店とか多すぎでしょう。とはいえ、店舗少なくすると売上高も減っちゃうだろうから難しんですかね?
    コロナ禍以降で営業赤字の累積は92億円くらいいってるようなので大変そうですが・・・

  • TANAKA より: 2023/10/12(木) 6:56 PM

    サマンサタバサに批判的な記事を書いているが偏見である。
    サマンサタバサの長期の赤字の原因はコナカの子会社で業績不振に陥ったフィットハウスを合併させたことにある。
    サマンサタバサと社風や経営体質の異なるフィットハウスとの合併で社内の混乱、組織改革に手間取り構造改革が遅れて赤字が長期化したのである。
    ハンドバッグそのものの需要の減少はサマンサタバサも理解しているので、ハンドバッグ単体の比率は2割程度に下げている。その他の財布、トートバッグ、リュック、ショルダー、ジュエリー、アパレル、雑貨が売上を大きく占める。
    今期からスポーツバッグ、トラベルバッグの拡大を図っている。
    米田社長が就任してからサマンサタバサの構造改革「リボーン計画」が計画通りに進行している。物流センターを9月に新設するのを機に基幹システムを確立、生産から販売まで一元管理できる仕組みになる。不採算の小型店舗は閉店。ブランド結合店舗を30店舗に増やし機能的で効率的な店舗網に改善し、24年には収益力を備えた企業基盤を確立する考えである。
    サマンサタバサを貶めるような記事は慎むべきである。

  • キム ゴンウ より: 2023/10/13(金) 1:00 PM

    鏡に映った姿が
    醜いからといって
    鏡に文句を言うのはおかしい
    そういうことだ

  • 匿名 より: 2023/10/13(金) 9:01 PM

    バッグ業界ではサックスバーホールディングスが圧倒的に強いせいで他のチェーンはサマンサに限らず苦戦していると思う。
    むしろなぜサックスバーがあれほどまでに一強なのか分析して頂ければサマンサのためにもなるのではないでしょうか。

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