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南充浩 オフィシャルブログ

全国展開のジーンズ専門店チェーンの苦戦は中途半端な立ち位置によるものではないか?

2023年10月11日 決算 0

ライトオンの23年8月期決算を見るにつけても、全国チェーンのジーンズ専門店の難しさを改めて痛感する。

ユニクロブームが起きる90年代後半までは、安いけどダサいダイエーなど量販店の服と、カッコイイけど高いDCブランドの服の中間の立ち位置を占めていたのがジーンズ専門店チェーンだったと記憶している。

しかし、ユニクロブーム以降はその需要をユニクロが奪い、その後、ポイント(現アダストリア)やクロスカンパニー(現ストライプインターナショナル)、ハニーズ、ジーユーなどが追随してさらに需要を削ったと言えるのではないかと思う。

 

ダイエーやジャスコのトレーナーは2900円、DCブランドのトレーナーは1万円という両極があり、ジーンズ専門店のトレーナーは2900~5900円という感じで丁度その中間価格帯にあった。

そして、デザインはダイエーやジャスコの服ほどダサくはない。

そんな立ち位置がライトオン、マックハウス、ジーンズメイト、三信衣料、ジョイントなどのジーンズ専門店チェーンだったと当方は感じている。

 

ライトオンの23年8月期決算は

売上高469億2600万円(対前年比2・7%減)

営業損失9億2200万円

経常損失10億4800万円

当期損失25億4500万円

の減収赤字決算に終わった。

このご時世なので売上高の減少は仕方が無いとしても営業赤字は深刻である。本業が儲かっていないということだからだ。

決算短信には営業赤字について

利益面につきましては、売上高の減少および値引き販売の大幅な増加によって、売上総利益は減少いたしました。売上高、売上総利益ともに減少した中、デジタル広告宣伝の強化による販売促進費の増額等が影響し、販売費及び一般管理費は前期と同水準となり、この結果、営業損失922百万円(前期は営業利益239百万円)

と説明している。

要するに売れなくて値引きしたのと、デジタル広告の強化で販促費が増額したので営業赤字になってしまったというわけなのだが、ここを見てももう「デジタルはコストが安い」とは言えない状況になっていることがわかるだろう。

「デジタルはコストが安い」というのはもう一昔前の過去の遺物でしかない。価格は需給バランスによって決まるからデジタルの需要が高まればその分価格は上がるというわけである。デジタルに取り組むなら十分な資金を投入するつもりでないと最早成り立たないということを繊維アパレル業界の経営層、特に老経営陣は強く認識すべきである。

それはさておき。

ライトオンの競合はどこか、どんな客層かについて考えてみよう。

ライトオンの場合、ロードサイド路面店はだいぶ少なくなっていて、地方・郊外の大型ショッピングセンターや都心の低価格ショッピングモール(ヨドバシカメラやキューズモールなど)がほとんどではないかと思う。

で、扱っている「ジーンズカジュアル」という分野、2020年以前の価格帯などを考えると競合は明らかにユニクロ、ジーユ―だろう。これは郊外型路面店が多いマックハウスも同様だろう。

となると、メイン客層についてもユニクロ、ジーユ―に来るような客ということになる。

ただ、その客層でも「ユニクロ、ジーユ―ばかりでは物足りない」と感じる人もいるが、そういう人にとってはリーバイスやエドウイン、チャンピオン、フィラ、リーなどを仕入れているライトオン、マックハウス、その他のジーンズ専門店というのは買い場の1つになる。

ただ、ユニクロ、ジーユ―の価格と同等に見られやすいのが、同じ施設内にあるライトオンだといえるのではないだろうか。

2020年に新社長がライトオンに就任してから、ライトオンの店頭から「特価セール品990円」が消えて特価セール品が1900円か2000円になった。2020年夏か2020年秋の記憶である。特価で2000円ということは、定価はもっと高いということになり、最低でも4000円はするということになる。

もちろん、価格を上げること自体は悪いことではないが、既存固定客にその価格政策がハマるかどうかである。個人的にはその高価格政策はハマらないと思っていた。

案の定、ライトオンの店頭の客入りは当方が定期的に見ている数店舗に限って言えば減少した。客離れが起きたわけである。当方もこの3年間ライトオンで物を買わなくなった。

今年梅雨明けに久しぶりにライトオンに行くと、店頭の特価セール品990円が復活していた。これは業績悪化と在庫増加によるテコ入れだろう。

ここで、決算短信にあるように「売り上げ不振による値引きの増加」が起きたわけである。

 

もちろん、高価格政策が悪いわけではない。既存客数を切って新規客層を掴むという覚悟があればそれでいい。しかし、既存客も掴みつつ新しい高価格客も掴もうというのはなかなか難しい。知っている範囲のライトオンの経営陣や本部スタッフを鑑みてもそれができる人材はいない。(当方の知らない優秀な人材がおられるかもしれないが)

 

90年代のユニクロブーム以降、様々なジーンズ専門店チェーンが経営破綻した。そのあおりを食らってかジーンズナショナルブランドもいくつも経営破綻した。

しかし、生き残っていてそこそこ好調なジーンズ専門店チェーンもある。それには2通りの種類があると当方は見ている。

 

1、オリジナルブランドを立ち上げて完全にSPAブランド化する(例 アダストリア)

2、地域内数店舗規模のままで高価格高感性ブランドを集積する(例 ジーンズファクトリーなど)

 

ではないだろうか。

1に切り替える際、旧ポイントは相当に客が離れてしまった。しかしSPA化をやり切って現在アダストリアになっているわけである。切り替える際には相当の出血と痛みがある。

2については、結果論的に成功しただけかもしれないが、ジーンズファクトリーやビッグアメリカン、ビンゴヤ、ボーンフリーなど地方地域内に5店~10店規模のままで、扱う商品を高価格高感度ブランドに絞り、よりグレードアップさせるというやり方である。

こちらは確実に成功するとは言い難い。中途半端にやってみた結果、経営破綻したジーンズ専門店チェーンも珍しくない。

また成功したと言っても、全国チェーン店化できるわけでもないし、売上高300億円とか500億円を目指せるような業態でもない。現在の5~10店舗が限界の業態である。

全国チェーンとして残っているライトオン、それからマックハウスの2社にとっては、どちらを選ぶにしても苦渋の決断になる。(ジーンズメイトは店舗数が激減しており最早全国チェーンとは呼べない)

ただ、今のままで競合相手がユニクロ、ジーユ―でメイン客層も被っている状態のままでは両社ともにさらにジリ貧が続き、限りなく規模縮小を続けてゆくことになるだろう。

ユニクロよりも少し高い価格というカジュアル市場については最早、SPA化したアダストリアやストライプあたりが全国チェーン化してしまっている。かと言って、高価格高感度ブランドを集積するという手法はよほどの人材がそろっていないとせいぜい10店舗くらいが限界である。

ライトオン、マックハウスの両社が今のままの立ち位置・品揃えで業績の再拡大や復活を目指すのは当方はほぼ不可能ではないかと思って眺めている。

 

 

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