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南充浩 オフィシャルブログ

「値上げが支持されている」という報道を鵜呑みにするのは危険という話

2023年10月10日 トレンド 1

原材料費・電気代・燃料代などの高騰で値上げが続いている。これは間違いない。

しかし、「値上がりで一般大衆は物を買えなくなった」という煽りも「値上げが支持されている」という煽りもどちらも有害だと思っている。

低価格ブランド、低価格食品スーパーなどはたしかに値上がりしたが買えなくなるほどの値上がりはしていない。また、売れ残り品は値下げされて投げ売られている。

一方、値上げが支持されているというのもおかしい。その値段でないと買えないからという理由なので、支持されているというよりは「消極的支持」と言った方が正しいだろう。

これまで何度も値上げが叫ばれてきたが、如実にコントロール不可能となったのが22年2月のロシアによるウクライナ侵略だが、ただ、当方は値下げ品や値引きクーポンをフル活用した結果、22年以前とほとんど変わらない支出で済んでいるので、要は買う側の工夫次第ではないかと思う。

 

各ブランドにとって価格決定は最重要事項の1つだといえる。特に22年以降は値上げせざるを得ない状況にあるため、どれくらい値上げするのかは売れ行きを大きく左右するため、重要度がさらに増した。

ただ、値上げするにしても「値上げが支持されている」という報道を鵜呑みにして全商品を一律値上げしたのでは、ブランド既存店からの大幅な客離れが起きる可能性が高まる。

そういう状況下においては、この記事の考え方は参考になる部分が多いのではないだろうか。

平均単価が上がることと値上げが支持されていることとは全く別の話: ファッション流通ブログde業界関心事 (cocolog-nifty.com)

 

しまむらが

「客単価を上げへ もう一格上のPB発売」

という見出しで鈴木社長のインタビュー記事が掲載されていました。

従来のプライスポイント(最多価格帯)よりも1000円高いPBクロッシープレミアムが良く売れているという話。

同社は上半期、客数ほぼ変わらず、平均単価が上がり、セット率は下がったものの、客単価アップ で既存店の売上伸ばすことに成功し更に単価の高いPB 商品開発の実験に意欲的という話です。

原価高騰の折 各社、上がる仕入れ原価に対し、いかに販売単価を上げるかに頭を悩ませるとことですが、売上が増えているからと言って

「値上げが支持されてる」

というような報道を最近、目にすることが多く、その都度、違和感を覚えています。

ユニクロについても「値上げ」が上手くいっているというような報道がありますがそれは一部の商品、値上げをしないと許さない?株主対策であって確かに定価を上げている商品もあるようですが

店頭に行けば

秋までは1990円 冬は2990円

というのプライスポイント(同社最多価格帯)を期間限定価格含めてその価格を作ってしっかりアピールして

来店客には値上げした、高くなったようには感じられないように工夫しているのが実情です。

 

とある。

たしかにユニクロ、ジーユ―ともに定価を1000円値上げした商品は多い。特に23年春夏物、23年秋冬物の定価は確実に値上がりしている。

例えば、ユニクロのメンズの「中綿入りMA-1ブルゾン」は23年秋物の定価が6990円と、22年秋物と比べて1000円値上がりしている。たしか19年は4990円だったはずだ。

一般消費者がユニクロの中綿入りMA-1ブルゾンに何円までなら支出するかということになるが、当方の感覚だとユニクロMA-1に6990円は高いと思う。物の良し悪しではなく、ユニクロというブランドが発売することに対して高いと思う。5990円でギリギリセーフという感じである。

恐らく同様の考えの消費者が多かったのだろう。投入後2週間前後で、定価は新価格5990円に変更された。昨年秋物と同等に引き下げられたというわけだ。このブルゾンの中綿は結構厚めだから実際に着用する時期は12月に入ってからだと思われる。(異様に寒がりな人はその限りではないが)

なので、実需期に突入する遥か手前で値下げしたということになるが、恐らくは相当に不評だったのではないかと思う。

 

またジーユーも定価は確実に500~1000円値上がりしている物が多いが、当方は定価で絶対に買わない。期間限定値引きか、定価が引き下げられてから買うが、ジーユーは不振品番は容赦なく半額以下に見切るので、店頭には990円、790円に値下げされた商品が結構ある(すでに今秋物にもそういう投げ売り品がある)ので、実は「高さ」をあまり感じない。

しまむらも同様で店頭では圧倒的に1900円未満つまり1790、1490の商品が目立ち、そして990、790など1000円未満の商品も多数あり、高くなった感を感じさせない売場です。

つまり買い上げ客数をある程度維持するための従来のプライスポイントの商品はしっかり揃え来店客には高くなった感を覚えさせず

とある。これはしまむらについて書いているが、ジーユーも同様である。

 

平均単価が高くなったところを見て

「値上げが支持されている」

と思ってしまってはとても危険な話です。今に限らず、過去にも同じようなことが何度かありましたからね。

 

とあるが、過去にも同じようなことが何度もあったのはその通りで、だいたいのブランドは毎度失敗を繰り返している。

 

最近のユニクロは不振品番をどうしても1290~1990円の値下げで食い止めたい様子だが、それでも効き目が無いとなると990円、790円に値下げする。特に夏物の半袖Tシャツ・半袖ポロシャツ類はこの価格帯まで値下げする。

こうなると、やはりユニクロでも「さほど高さを感じない」というふうに感じる人が増えると考えられる。

 

結局のところ、一律全商品値上げというのは「原則論」としては正しいのかもしれないが、大幅な既存店客離れを起こしかねない。そのためには、値上げする商品としない商品、そして、不振商品は損切りとして超投げ売りするというその線引きが必要不可欠となるだろう。特に不振商品の投げ売りは営業利益面ではマイナスだが、売り場に「割安イメージ」を付与するという点においては、宣伝広告費や割引クーポンの配布などと近しい必要経費と考える方が適切ではないかと思う。

 

 

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 comment
  • とおりすがりのオッサン より: 2023/10/10(火) 11:46 AM

    【売り場に「割安イメージ」を付与する】

    投げ売りとか、損害を少なくするために仕方なしにやる損切りだと思ってましたが、安い単価のお店だと割安イメージを作れるってこともあるんですね。こういう視点は無かったなぁ。ま、私は経営者でも小売り業でも無いからあんま直接に活かせはしませんがw

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