既存店客数の減少が深刻化しているワークマン
2023年10月5日 月次速報 6
禍福は糾える縄の如し、とは何事にも通じる理である。
好調を呼び寄せる要因となった部分が、ある時点で反転して不調を呼び寄せる原因になってしまうことは世の中に珍しくない。
ワークマンに急成長をもたらした「一般向けカジュアル化」は、職人客の忌避と既存店客数の減少というデメリットが顕在化しつつある。
この傾向はすでに数年前から職人客に近い筋からは声として挙げられていた。当方のような者にまで意見として流れてくることがあったほどである。
もちろん、世の中に不満ゼロの事物は存在しないが、対処せずに放置しておけば、ワークマンというチェーン店の根幹を揺るがす事態に発展することは容易に想像できた。
だが「一般向けカジュアル化」に大きく舵を切ってしまったワークマンにとってはこちらの職人客の要望に対応することも難しい。なぜなら、一般向けカジュアル化によって急成長しており、こちらはこちらでおざなりな対応をするわけにもいかない。
結局、現在のところ「二兎を追う者は一兎をも得ず」というどっちつかずの状態になる危険性が非常に高まりつつあるといえる。
ワークマン「職人」から「皆さま」へ転換後の誤算 作業着への”原点回帰”で停滞期を脱せるか | 専門店・ブランド・消費財 | 東洋経済オンライン (toyokeizai.net)
快進撃を続けてきた作業服チェーンのワークマンが、踊り場を迎えている。新規出店や店舗の改装によって全体の売上高は成長しているものの、1年以上継続して営業している「既存店」が振るわないのだ。
10月2日に発表された9月度の既存店売上高は、前年同期比で6%減少。第2四半期累計(4~9月)では同0.7%増と前年並みだが、破竹の勢いで2桁増が続いた頃の姿は見られない。
とある。
東洋経済のこの視点はさすがだといえる。しかし、当方は既存店売上高の前年割れもさることながら、それ以上に既存店客数の減少に危惧する。
売上高が減るということは単に「物だけ」が評価されていないことが原因かもしれない。また購買単価が下がっていることが原因かもしれない。
この場合、前者なら「物」を改善すればまた売れ行きは回復する。後者なら商品単価を上げるか、買い上げ数量を増やすかで回復することができる。
マサ佐藤氏も自身のブログでたびたび言及しているが、客数(買い上げ客数)減というのは、店自体、ブランド自体の支持が薄れているから起きる可能性が高い。買い上げ客数が減少するということはそれと同等かそれ以上に来店客数が減少しているからである。来店客全員に必ず物を買ってもらうということは普通は不可能なので、来店客数よりも買い上げ客数が減るのは当たり前であり、その買い上げ客数が減っているということは来店客数自体も減っているということになる。
ここでワークマンの2023年4月~9月末まで(上半期)の既存店売上高・既存店客数・既存店客単価を見てみよう。
4月 既存店売上高0・3%減 既存店客数2・9%減 既存店客単価2・6%増
5月 既存店売上高2・3%減 既存店客数6・3%減 既存店客単価4・2%増
6月 既存店売上高2・2%減 既存店客数5・0%減 既存店客単価3・0%増
7月 既存店売上高8・2%増 既存店客数1・4%増 既存店客単価6・7%増
8月 既存店売上高3・9%増 既存店客数2・1%減 既存店客単価6・2%増
9月 既存店売上高6・0%減 既存店客数6・6%減 既存店客単価0・7%増
上半期合計 既存店売上高0・7%増 既存店客数4・3%減 既存店客単価4・1%増
となっている。
既存店売上高が前年増となったのは7月と8月のみ、既存店客数が前年増となったのは7月のみ、そして既存店客単価はすべて増加となっている。
上半期合計で既存店売上高が前年増となった要因は客単価の増加によるものだということがハッキリとわかる。
7月に既存店客数が増えたのは、梅雨明けから猛暑が始まったのでそれの需要が増えたためだろう。9月に大苦戦しているのは猛暑が月末までおさまらなかったことによる秋物不振だろう。
このように見ると、いかにワークマン既存店から客足が遠のいているのかがわかるだろう。既存店客数が5%以上減る(5月、6月、9月)というのはかなりの重症である。
一般客向けの開拓が軌道に乗る一方、本業であるプロ向けの取り組みは疎かになっていた。ワークマンの土屋哲雄専務は「作業客で、もう一回やっていけるようにしないといけない」と危機感をあらわにする。
2023年秋冬商戦で掲げるのが「ワーク強靭化計画」だ。ワークマンにとって原点回帰であり、職人向けの商品開発に力を入れている。
とあるが、よほどに慎重に綿密に緻密に取り組まないとどっちつかずの悲惨な結果を招いてしまうだろう。
ワーキング作業服というのは、基本的に需要総量がほぼ決まっていて増減は誤差の範囲程度しかない。現場作業員が急激に増えることはありえない。衣料品企業として急拡大を目指すのであればトレンドカジュアルファッションを取り込むほかない。恐らくはこの判断のもとにワークマンはカジュアルを急拡大させたのだろうと推測される。
結果的にこの方針は正解で一気に1000億円規模を突破した。その一方で、ワークマンのガチ作業服需要を支える職人客からはこの東洋経済の記事中にもあるように「一般客が増えすぎて駐車場が満車で入りづらい」という苦情がチラホラとその裏では増えつつあった。また一般客が買ってしまうために職人客から「品薄・品切れが多すぎる」という苦情もあった。
ただ、その苦情が顕在化する状況にはなかったが、ワークマンの規模拡大も一服感が出た今、顕在化しつつあるといえる。
「職人客離れ」を防ぐために、店舗近隣に作業服を売らない「ワークマン女子」を出店することで女性客を吸収する算段だったが追いついていないのが現状だ。今後はワークマン女子の店舗を増やして顧客の分離を進めながら、ワーク向け商品を強化することで挽回を期す。
とあるが、これも容易ではない。ご存知の通り、ワークマンの店舗は90数%がフランチャイズ経営である。駅向こうの道路沿いのワークマンに行ってみたことがあるが、本当に「田舎の老夫婦」が経営する店だった。この手のフランチャイズ経営者は需要が決まっていて販売期間の長いガチ作業服のフランチャイズ店を経営することはできても、需要が世の中のムードで急増急減し、商品の販売期間が短いトレンドカジュアルファッションに対応することはほぼ不可能に近い。
となると、ワークマン女子、ワークマンプラス、ワークマンカラーズを増やそうと思っても、力量を備えたフランチャイズ経営者は現れにくい。どのファッションブランドも優秀な店長、販売員はなかなか獲得できないでいるのが現状だから、ワークマンもその例外ではない。
となると、ワークマン女子、ワークマンプラス、ワークマンカラーズの店舗数もそう簡単には増やすことは難しい。そう簡単に人材が確保できるなら、他のファッションブランドももっと簡単に店舗数を増やせている。
当方の行きつけの街である大阪市・天王寺のファッションビル「天王寺MIO」6階に今年3月「ワークマン女子」がオープンした。月に1度くらいは見に行って気に入った安い商品を買っているが、およそ職人とは無関係な客で平日昼間でも賑わっている。若い女性客が多いが、安い服狙いの40~60代のオジサン・オバサン客も少なからずいる。
しかし、もし何か「ムード」が変わるようなことがあれば、この手のカジュアル客は基本的に「浮遊客」なのであっという間に離れてしまう。特に若い女性は浮き沈みがひどい。
先日、久しぶりにワーキングアメリカンカジュアルブランド「ユニバーサルオーバーオール」の展示会にお邪魔したが、若い女性からの人気で伸びたものの、最近は若い女性客が離れてメンズの売上比率が過半数以上に高まったという。また20代後半~40代の「(比較的)若い母親世代」への売れ行きは堅調で、若い女性からの売上高が15%強減った状態の一方メンズ需要と若い母親需要は堅調だのことだった。
このように、トレンド客、とりわけその中でも若い女性客の需要というのは長続きしにくいものであり、その動向は予想しにくく不安定な要素でしかない。
ファッション需要というのはその不安定需要を当てにしている部分が大きいので、必然的に売れ行きも不安定にならざるを得ない。そしてワークマンはその世界に足を踏み入れてしまったということになる。ファッション専業で長年やってきた数多のブランドでさえ浮遊客のつなぎ止めには悪戦苦闘しているのが実状なので、そこに足を踏み入れてしまったワークマンの今後の舵取りも相当に難しいものにならざるを得ないことは容易に想像できる。
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キムゴンウ より: 2023/10/06(金) 11:27 AM
28才の娘と大阪・天王寺をぶらつきファッションビルMIOに
ワークマンができたので見てみたいと連れて行かれました
相変わらず雑然としていました 欲しくなるような商品はなかったようです
特に裏地がシルバーのアウターはないわ~とほざいておりました
ワークマンならせびられても安心と思っていましたが
敵もさるものでございましたコロナ禍で密集できず ネット動画でもソロキャンプが面白くとりあげられていた頃なら
お金をかけずに1度試してみたいという人に
ワークマンは魅力的な価格であったと思います
が
沈静化なのか 飽きられたのか ソロキャンプうんぬんって
以前ほど耳にすることが無くなったような気がします
(私がアクセスしていないだけかもしれませんが)
そのようなニーズの低下も同社に影響を与えているように思いますが
※あくまでも藤四郎のざれごとでございます -
南ミツヒロ的合理主義者 より: 2023/10/11(水) 12:56 PM
kim氏>お金かけずに試せるなら層
今のワークマンはとてもマズイ状況です
「お金をかけずに試せるのに試す気にすらなれない」
という状態だからです
しかも、オヤのお財布でOKでも
試す気にすらならないつまるところ「タダでもいらない商品」
しか売っていないという恐ろしい分析になりますもちろん振り屋だのみでしょう
コンセプトからオール丸投げで
最大手の振り屋に任せたほうがいいんじゃね?ウニクロGUがここまで普及したのは
1.試してハズレでOKな価格
2.でも試すとさほど悪くない
3.リピートして勝率もそこそこだからであって、上記3条件を数年に渡って
満たし続けられる会社を私はほかに知りませんワークマンは1すら満たしていない事になります
にしてもサイアクだよな・・・
若者から「タダでもいらない」と見なされる服って・・・ -
ワークマンの無い地域住民 より: 2023/10/11(水) 3:37 PM
ワークマンがそんなにダメな状況だったのですか!?
近くのワークマンに行くのに車で2時間もかかるので、住んでいる地域に出店して欲しかったんですが・・・
頑張って欲しいです。
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キム ゴンウ より: 2023/10/16(月) 12:40 PM
南ミツヒロ的合理主義者様
藤四郎のコメントを取り上げていただき光栄です
我が娘 以前にもコメントしましたが
亡き母のわずかばかりの遺産で ヴィトンかバーバリーかでバッグを買ってあげるといったのに
2ndストリートでオーラカイリーのショルダーを買うような子で
最近もそろそろいい服買いなさいと 一緒に買い物に行ったにもかかわらず
入店したのは ハニーズでございました 松岡なんとかさんがファッションリーダーで
彼女がキャラクターになっているのもあるようですが(体格が違う うちの子のほうがかわいい)
しかし そのような ケチで良い物知らずの子でも ないわ~という商品っていったい?と思いました
結局 猫ちゃんのかわいい軍手は買ってあげました 数百円の出費で済みました ホッ おとうさんは助かりましたけど
そう考えると 「交換して~な」といいながら服を脱ぎ始めるおばはんのCMから
よくもここまでイメージ良くしたものですね う~ん ユニクロご立派です!!^^ -
南ミツヒロ的合理主義者 より: 2023/10/17(火) 12:30 PM
kim氏>高額モノはいらない若者女子
ある程度の階層・所得層の子ほどそうですよ
したがってHonyesウニクロGUのお客さんは、
1.一定より上の階層・所得層
2.すべてにあまり関心がない層
3.いつかはHonyesから脱したい層
(つまりHonyesウニクロしか買えない層)に分かれます。つまり女子全員が対象
売上が取れるに決まっていますそして上記3ネームに共通するのは、
実用着~ややおしゃれ着のポータルサイト化
している点Honyesにいたってはバッグや靴はもちろん
ブラショーツまで売ってますからねそしてなかには、元トリンプだ三洋だ
古くは元VANの人が結構いますやや実用着からカジュアルよりのトラッドに
関わっていた労働者を全て寄せ集めたのも
上記3ネームの特徴ですワークマンのような新参者ほど
この「既存寄せあつめのポータル型商品構築」を
嫌いますが、ゼロから売れ筋なんざ
新参者が創れるワケがありませんできるのは露出とネタ提供だけ
でも、服は趣向品であると同時に
実用品ですからねぇ・・・
ガチワーク衣料勢として、ワークマンで数年に一回は作業服を買ってましたが、なんか細身のズボンとかが増えてオッサンには履きにくいから、最近はホームセンターで買うようになっちゃいましたわ。
カーゴパンツとかでもパツパツな細身にしてて、「こんなんじゃポケットにモノ入らんじゃん、アホなの?」ってデザインのもあったりしますし。ま、これはホームセンターの作業服でも同じようなのがあるんですが。
作業服でカッコつけないんで、機能性と安さだけ追求して欲しいっす。