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南充浩 オフィシャルブログ

需給バランスの変化によって急激に値崩れを起こすことの恐ろしさ

2023年10月2日 トレンド 0

物の価格というのは需給バランスによって決まるというのはほどんど誰もが知っている事柄である。

最近の、原材料費高騰・燃料費高騰などのコスト増による値上がりは仕方がないが、如実に需給バランスの崩れによって値上がり・値下がりするのは、消費者にとっては好ましい状況ではない。

8月下旬以降に家電量販店のガンプラ売り場を眺めてそう思った。今回はガンプラのお話である。なので興味の無い方は飛ばしていただきたい。

 

20年春にコロナ禍による長期間に渡る外出自粛の影響で様々な商材の需給バランスが変わり価格が変動した。ガンプラはコロナ特需を受けた物の1つといえる。

ガンプラというのはバンダイナムコが企画生産するガンダムのプラモデルの略称である。

79年に放送開始以降、40年以上にも渡るロングランの商品群で80年のガンプラブームを除いてはそこそこ需要はあるものの、一部の限定品を除いては品薄・品切れという状態にはなっておらず、家電量販店では2割引き販売が当たり前、Amazonでは3割引きから4割引き、イベントによっては5割引きも珍しくない商材だった。

元々、年に何個か買ってパチパチと組み立てていたが、2013年に離婚して以降、家族のなんやかんやに対応する必要が無くなり、隙間時間が空いたので本格的に買うようになった。この頃は家電量販店の2割引きは高く感じられ、Amazonで3割引き~5割引きの商品を買うことがほとんどになっていた。同じ商品なら安い方で買うのは当たり前である。

様相が変わり始めたのが20年春。Amazonの価格が高騰し始め、定価どころか定価の2倍・3倍の値段が当たり前になった。地元のジョーシンはこの頃はまだ品薄になっていなかったし、2割引きのままだったので、この頃からジョーシンで買うようになった。あと、たまにヨドバシカメラ、ビックカメラでも買うようになった。

21年、22年と今度は家電量販店も品薄状態が進み、ガンプラコーナーはスカスカの状態になった。この頃から、新商品の発売時には開店前に店頭に並ばないと買えないという状態になってしまった。

21年、22年は新商品の入荷数自体が少なくて、並んでも買えないという場合もあった。

 

22年秋ごろから、バンダイナムコも大増産体制を採ったので、入荷数自体は多くなり、並んでいたらほぼ買えるようになった。しかし、店内在庫が薄い状態は相変わらずだった。

月に1度か2度の土曜日の早朝から開店前の地元のジョーシンに10人~50人くらい並ぶことが当たり前だったのは23年3月までのことだった。

4月に入ると開店前に並ぶ人数が徐々に減っていった。10人以下になったのである。このころから、転売ヤーたちの相当数がガンプラ市場から離れ始めているという情報が散見されるようになった。相変わらず転売ヤーのエジキになっているのはポケモンカード(ポケカ)なのだが。

そして8月に1回、9月に1回とガンプラ新製品発売日に並びに行ったのだが、暑さも手伝ってなのか、8月には7人しか並んでおらず、9月30日にはたったの4人しか並んでいなかった。それでいて入荷数量は15~16個なのだから、開店後に来ても余裕で買える状態になっている。

 

Amazonの価格も品番によっては定価以下に値下がりし始めるようになったが、昨年秋から家電量販店ではガンプラ購入数の規制が始まり、今年6月からはガンプラ割引率が引き下げられジョーシンでは1割に、エディオンは割引無しになってしまった。

そんな中、8月、9月と開店前に並ぶ人数が激減し始めたわけである。

すると、購入数規制あり割引率の低下ありという状況にもかかわらず、ジョーシンとエディオンで品番によっては期間限定の投げ売りも同時に起きるようになった。

ガンダムの最新シリーズ「水星の魔女」商品がその期間限定投げ売りの対象なのだが、対象外の商品もあるが対象商品はだいたい35%~40%くらいの割引率で11月中旬まで販売され始めているのである。

(エディオンで買った41%オフのティックバランと定価販売だったが430ポイント引きして買ったべギルベウ。さらにクーポンで200円引きして2個合計で1980円に出費を抑えた)

 

購入数制限と原則1割引き・割引無しでありながら、期間限定の大幅値引き品番が家電量販店の店頭では並立しておりなかなかカオスな状況にあるといえる。

 

で、今回の期間限定の投げ売りの要因だが

1、3年に渡る品薄状態でガンプラから離れた人が少なからずいる

2、転売ヤーが大量に撤退した

3、バンダイナムコの増産体制による供給量の増加

あたりが原因だと考えられる。

1と2は需要量の減少、3は供給量の増加である。たったの4ヶ月ほどでここまで開店前に並ぶ人が減り、期間限定とはいえ30%オフを大きく越える割引率での投げ売り品番が出現したのは驚くほかない。

需給バランスによる値段の変化は、こんなに短期間に激しいものなのである。

特に、訳の分からない転売ヤーどもによる値段の引き上げと、急速な撤退による値崩れというのは恐ろしく、転売ヤーの存在が、メーカーにも小売店にもいかに害悪かがわかる。

 

スニーカーブームが急速に崩壊した件についてのブログに「元々、アメリカでも限定品や復刻品だけが高値で取引されていて、通常のインラインは値ごろだった。日本市場はそれと同じである」というようなコメントをいただいたが、ガンプラ市場も今後は同様に、限定品やレア商品は高値で転売され、通常商品は定価かそれ以下で大量に販売されるという状況に落ち着くだろう。

元来、売上高9900億円のバンダイナムコという巨大企業のマス向け普及品を個人の転売ヤーが寄ってたかって買い占めて値段を吊り上げるなんていうことは、資本力の差から考えても到底不可能なことである。それがわからないから転売ヤーなんてやっているのだろう。

 

スニーカーやガンプラに限らず、他の商材も同様で、大量生産の工業品たる洋服だってレア商品や限定品くらいしか高値を付けることは難しいというのが今の国内外の状況だろう。

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