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南充浩 オフィシャルブログ

国内大手アパレルが地方スーパーの自社服ブランドの開発支援を行うケースはさらに増えるだろう

2023年9月29日 企業研究 1

ワールドがスーパーのベイシアの自社婦人服ブランドの開発支援を発表した。

ワールドが大手スーパー・ベイシアのブランド開発支援 10月4日から50店で販売 | 繊研新聞 (senken.co.jp)

ワールドは、大手スーパーのベイシア(前橋市)の自社婦人服ブランド「YORIMO」(ヨリモ)の開発を支援した。ベイシアは、10月4日から50店(12日開店の阿見店含む)で販売する。ワールドは商品開発にとどまらず、店舗やEC運営もサポートする。

とある。

ベイシアはスーパーだが、ホームセンターのカインズや、今話題のワークマンを傘下に抱えていることは多くの方がご存知だろう。

スーパーが自社独自の洋服ブランドを持つことは昔からよくある話だが、あまり成功した例が少ない。イトーヨーカドーは下着や靴下などの実需衣料以外の自社アパレル製品はすべて廃止することを決定したし、イオンの「トップバリュ」も衣料品に関しては全く話題にならない。

西友しかりユニーしかりである。

となると、ベイシアがオリジナル衣料品ブランドを開始するにあたっては、自社内のみで完結させても成功する可能性が低いと考えることは当然だろう。

じゃあ、傘下にあるワークマンと組めばいろいろと利便性が高くてやりやすいのではないかと考える人もいるだろう。

 

しかし、今回、発表された商品画像を見ると、いわゆる「普通のレディース衣料品」である。一方、ワークマンが得意とするのはいわゆる作業服、アウトドアウェア、スポーツウェアの類であり、その延長線上にあるカジュアルである。今回発表された画像のような「普通のレディース衣料品」は不得手だといえる。

もちろん、ワークマンにも近年「アクティブワークスーツ」のようなドレッシーっぽいテイストの商品もあるが、一部にあるのと、それを得意とするというのは全く異なる。

企画・製造・MD、すべてが異なっており、ワークマンにはその機能が無い、もしくはあっても一部に限られると考えられる。

10年後、20年後にワークマンがもっと「普通のレディース衣料品」のシェアを伸ばすようになっていれば話は変わってくるのだろうが、現時点ではこのジャンルに関していえばワークマンを頼りにすることは難しいし無謀といえるだろう。

 

必然的に「普通のレディース衣料品」を得意とする「普通のアパレル企業」との協業という選択肢しか残らない。

今回はその中からワールドが選ばれたということになる。

ワールドにとっても好都合だっただろうと考えられる。なぜならワールドはすでにショッピングセンター向けの低価格ブランドをすべて廃止してしまっているからである。

ファッションビル向けの割安ブランドはいくつか残ってはいるが、ガチのショッピングセンター向け、スーパー向けの自社ブランドはすでに存在していない。

となると、今回のベイシアとの協業は自社に欠けている販路に再進出することになるので、自社ブランドとの競合も起こしにくいから好都合だったといえる。

まさにベイシアとワールドはwinwinの成立である。

 

さて、今回の発表報道で当方が思い出したのは、スーパーのイズミ(イズミヤじゃないよ)がアダストリアと自社ブランドを協業開発したことである。

繊研新聞も同様だったようで

スーパーの衣料品テコ入れ策にはアダストリアも参画している。イズミ(広島市)と共同でブランドを開発し、順調に滑り出している。

とある。

 

スーパーの最大手であるイオンは恐らくはアパレルとの協業ブランドは今後も開発しないのではないかと見ている。イトーヨーカドーは実用衣料以外すべて廃止してしまった。ユニーはドン・キホーテとの協業はあるかもしれないが、大手アパレルとの協業はちょっと考えにくい。

個人的には、先行例のイズミ、ベイシアのような地方大手スーパーは今後、アパレルとの協業ブランドが増えるのではないかと見ている。

大阪のイズミヤ、滋賀の平和堂、四国のフジ、大阪のライフ、和歌山のオークワなどである。

そういえば、協業とは異なるが、無印良品も地方のスーパーへの出店を発表したが、関係者によると現在はオークワへの働きかけが猛烈だという噂もある。

 

イオンやイトーヨーカドーほどの規模と資本力があれば独自に自社ブランドを開発・生産することも可能だろうが、地方の大手スーパーはそこまでの力はない。(イトーヨーカドーは撤退してしまったが)

その一方で、食料品はよほどの場合を除いては、地場の競合他社と価格競争を繰り広げるしかない。原材料費や電気代の高騰で食品価格も上がっているが、それはコストを上乗せしただけで利益が増えているわけではない。中には全く値上がりしていない食品もあるし、賞味期限切れ間近の食品は値上げ前よりも安く値下げ販売されている。

となると、新たな収益の柱として衣料品に注目することも当然だろう。しかし、従来のスーパーの衣料品では、ユニクロ、しまむら、ジーユー、ワークマン、ストライプ、ハニーズなどの低価格ブランドに太刀打ちできない。

「物」は良くてもイメージが良くないから、アダストリアやワールドというアパレル企業のブランドイメージを借りることは当然の結果ではないかと思う。

一方の国内アパレル企業も主戦場とみなしていた百貨店やファッションビルでイケイケドンドンの時代ではなくなってきているから、地域スーパーとの協業は「新たな飯のタネ」として前向きに取り組むと考えられ、今後はアダストリア、ワールドの2社以外の国内アパレルも地域スーパーとの協業ブランドの開発に続々と乗り出すのではないかと思う。もちろん、全部が成功するわけもなく、そこに優勝劣敗が生じるのは言わずもがなのことである。

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 comment
  • ハマオ より: 2023/09/30(土) 10:00 PM

    これはワールドの毎度の政策で取引先によって屋号を替えるパターンですね
    ここ何年かは地方のスーパーにはFcでシューラルーで出店してましたね
    天満屋とかイズミの中四国とか東北の地場スーパーが10店舗位
    ずつ出店してましたが
    ベイシアのこの展開店舗数なら専用屋号作りますよという感じですね
    社長が代わってからファションテック企業としてプラットフォームを外販する事に力入れてますね。
    ベイシアの客層にこのプライスが通用するとは
    思いませんが
    しまむらよりかなり高いプライスなので厳しいと思いますが
    3年後には無くなっていると思いますが

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