多くの人は「快適」で「便利」な方を選ぶという話
2023年9月19日 トレンド 1
先日、数歳年上の業界の先輩とお会いした。コロナ自粛が明けてからなんだかんだと2カ月に1回くらいお会いするようになった。
その先輩は当方とは異なり元々スリム体型で今もあまり変わっておられなくて、スキニーパンツとかスリムストレートパンツなどの細身パンツを常に着用されていた。
スキニーやスリムストレートが意外に今でも生存している理由は「便利だから」という理由が多いのあると思っている。
2017年ぐらいからマス層にビッグシルエットトレンドが復活したが、上下ともにビッグシルエットを着用してかっこよく見せるというのは、よほどに容姿端麗かつ長身でなければ難しい。
普通の体型の人間がバランス良く見せようとするなら、トップスかボトムスのどちらか一方を細身にするのが最も手っ取り早い。ビッグトップスには細身のパンツ、ワイドパンツには細身もしくはジャストサイズのトップスである。
ビッグトップスに合わせやすいのがスキニーパンツ、スリムストレートパンツである。
そんなわけで、2010年代後半以降もスキニーパンツは「定番品の1つ」としてユニクロ、ジーユ―でも毎シーズン企画販売されている。
物がロングランで売れ続けるには合理的な理由が常にあるといえる。
さて、そんな先輩だが、8月にお会いした際には珍しくワイドパンツ、もしくはバギーパンツを穿いておられた。知り合ってから何だかんだと10年以上になるが恐らくはワイドパンツ、バギーパンツを穿いているのを初めて見た。
どうしたのですか?と尋ねると
「今までの細身パンツでは梅雨明け以降の猛暑に暑くて耐え切れなくなって、たまたま試着したバギーパンツがすごく涼しいことに気が付いたので、それからは猛暑がおさまるまでずっとバギーパンツを穿いている」
とのことだった。
たしかにスキニーパンツ、スリムストレートパンツは真夏には暑く感じる。当方はとっくの昔に真夏にスキニー、スリムパンツを穿かなくなっている。我慢してまで穿く理由がない。
そしてワイドパンツ類は、2010年代後半以降は夏場にも穿くことがある。まあ、半ズボンで出席するのははばかられるような場にはワイドパンツを穿いて出席している。理由は細身パンツよりも涼しいからだ。
シルエットにゆとりがある分、空気層ができるので、暑さが軽減される。また薄手生地の物を選べば、通気性もあるので風が吹くと中の空気が動いて涼しさを感じることができる。
一方、冬は寒い。特に薄手生地のワイドパンツは真冬に穿くと極寒を感じられる。もちろん細身パンツは冬に穿くと暖かいと感じるので、当方は冬は細身パンツを穿いていることが多い。特に生地の薄いワイドパンツを冬場に穿くことは絶対にない。
また冬場はダウンジャケット、セーター、ウールコートなど、かさばる服を着るのでトップスが大きくなりやすいからそれを緩和するためにも細身パンツの方が見映えがマシという利点もある。
昔は「オシャレは我慢だ」と言われたが、今そんな人はゼロではないがかなり比率的には少なくなっているだろう。
真冬に肌を過剰に露出させている女性とか、真夏に長袖シャツにネクタイを締めてベストまで着ている男性とか、そんな人もいるが人口の比率ではかなり少なくなっていると感じる。
それよりも「快適さ」「利便性」を求める人の方が増えているのではないかと感じる。当方なんてその典型である。極力快適で動きやすい服を着たいと思って生活している。よほどの事情(冠婚葬祭やエライ人との商談など)がない限りはカッコヨク見られるために不快で窮屈な服を着たいとは思わない。
細身パンツ一辺倒だった先輩が暑さのあまりバギーパンツを穿くようになるのも理解できる。
しかし、他の衣料品でも近年マス層にヒットしているのは、いずれも「快適」で「便利」な物ばかりである。もしくは少なくとも快適か便利かのどちらかは確保した物ばかりである。
ダウンジャケットしかり、ストレッチ素材服しかり、発熱保温肌着しかり、吸水速乾Tシャツしかり、である。
(ユナイテッドアスレの吸水速乾Tシャツ)
過去を振り返ってみても「形態安定ワイシャツ」とかフリースなんていうのは「利便性」が高く評価されたからで、形態安定加工はシャツの標準装備化したし、フリースはユニクロブームが去って以降は存在感は低下しているが、今も各ブランドで冬の定番アイテムの1つとなっている。
結局、スポーツウェアブランドやアウトドアウェアブランドの息の長いブームも快適性と利便性が支持されているからではないだろうか。
つらつらとそう見てくると、マス層に響くロングランヒットの衣料品を企画構想するという点においては、従来の衣料品ブランドは
「カッコヨサ(デザインやらシルエットやら色柄やら)から始まってそこに機能性やら利便性を付加する」
という作業順序が多かったのではないかと当方は感じているが、実は
「機能性、利便性、快適性から始まってそこにカッコヨサ(デザインやらシルエットやら色柄やら)を付加する」
という作業順序の方が確率が高まるのではないかと最近思い始めている。
これが2000年代半ば以降、百貨店向けブランドや一部を除くデザイナーズブランドが昔ほどには大衆に支持されにくくなった原因の1つではないだろうか。
一般人には高いものを買うだけの購買力もなくなったのではないかと思います。他に買うものというか、固定的に支出する項目も増えました。
そして、高いものと一般的な量販店のものとのぱっとみの違いが素人にはわかりにくいのだと思われます。
その違いが価格差を納得させるだけのものもないと思われます。
これらは、今まで、このBLOGで指摘されてきていることでもありますが。
さらに、20-30代はコスパ重視だそうですので、数年で着れなくなるようなエッジの効いた服は売れにくいでしょう。