百貨店が「食」を強化するのは極めて当たり前だという話
2023年9月13日 百貨店 1
先日、平日昼間に阪神百貨店梅田本店へ商談というか打ち合わせに出かけた。
まあ、当方のような何もしていない人間でも年に1度か2度は百貨店本体の人と打ち合わせをすることもある。別に大したビジネスを当方が行っているわけではないことは、このブログの読者はよくご存知のことだろう。
阪神百貨店梅田本店は改装工事が全て終了しグランドオープンした。とりわけ地下1階、地下2階が周辺区域も含めて大幅にリニューアルされており、綺麗にはなったが、旧阪神周辺の地下街に慣れてしまっている人間からすると、景色と導線が変わりすぎていつも迷いそうになる。
平日昼間と書いたが、具体的には1時半から3時半くらいまで、移動も含めて阪神周辺にいた。
平日昼間だというのに地下鉄とつながっている地下街はすごい人流である。これでもまだ不景気だというのだから、好景気の際にはどれほどの混雑ぶりだったのかと恐ろしくなる。
2時間丸々商談をしていたわけではないから、終わってから少し阪神百貨店の売り場を見て回った。
地下1階は食料品売り場、地下2階は飲食街となっている。地下1階の食料品売り場は改装前から阪神百貨店の看板だったのでなるほどすごい賑わいである。
地下2階の飲食街も昼食時は終わっていたにもかかわらずそこそこの賑わいで、客が入っていない店舗は無かった。
そして地上9階も食堂街となっていて、こちらは従来型の百貨店食堂街という感じだが、ここも昼食時ではないにもかかわらずそこそこの賑わいだった。
それ以外の衣料品や雑貨のフロアはまあ、他の百貨店と同様に低層階は移動客も含めて入店客はまずまずいるが、中層階~高層階の入店客は少ない。
こう書くと、「平日昼間なんだから当たり前ではないか」と言う人もいるだろうし、当方もそう思っていたが、5階レディースフロアにある「モロゾフカフェ」を見た時、当たり前ではないということがわかった。
5階レディースフロア全体の客入りはまばらだったが、モロゾフカフェだけは満員でしかも何十人も行列を作って入店待ちしているのである。
阪神百貨店の担当部長に伺うと「モロゾフカフェは毎日、朝から晩までずっと並んでいる」とのことで、人は意欲があれば平日昼間でも百貨店中層階にわざわざ足を運ぶのだということがわかる。
阪神百貨店は今回の大幅改装で、「食」関係を拡充強化しており、売り場比率を高めている。
まず地上1階は完全に食のフロアになっている。これで食と食料品のフロアは地下2階・地下1階・地上1階・地上9階となり、9フロア中4フロアまでが食関係ということになり、半分弱が食料品・飲食のフロアということになる。
そして、地上2階のコスメ売り場以外のすべてのフロアのかならず1店舗はカフェを設けている。5階はモロゾフカフェだということになる。
地下鉄、阪神電鉄から直結し、JR大阪駅とも陸橋でつながっているメリットもあって、阪神百貨店の食フロアと周辺区域の人流は平日昼間でも活発だと感じられる。
その一方で、衣料品売り場は決して閑散としているわけではないが、食関連フロアの入店客と比べると大きく見劣りしてしまう。
もちろん、阪神百貨店が食関連で評価の高い百貨店だったという背景・歴史はあろうが、それを差し引いても人々の食への関心の高さは伺い知れる。
余談だが、2016年に何度か平日昼間に新宿伊勢丹に商談で訪れたことがあるが、毎回各フロアの雰囲気を見てから帰阪したわけだが、平日昼間でも地下1階の食料品売り場は、地上階のファッションフロアよりも入店客が多く活況だった。
その他の百貨店もほぼ共通しているのが、食料品・飲食フロアの活況である。
そごう心斎橋店から大丸心斎橋店北館になり、そしてパルコに変わったパルコ心斎橋店も一番賑わっているのが地下2階の飲食店街・居酒屋街である。パルコは百貨店ではなくファッションビルだが、最も賑わうのがやはり飲食街だということになる。
さて、繊研新聞にこんなまとめ記事が掲載された。
全国百貨店改装・増床調査 秋冬は41店が実施 衣料品は特選などへ絞り込む | 繊研新聞 (senken.co.jp)
繊研新聞社が実施した全国百貨店改装・増床調査によると、今秋冬は41店が改装する(実施済み含む)。不振が続く衣料品のボリュームゾーンを縮小し、成長領域の特選衣料雑貨、食料品に重点投資する。
(中略)
今秋冬の改装は基幹店に重点配分し、選択と集中を強める。婦人服や紳士服に偏っていたフロア構成を見直し、商品領域を横断した新たな編集ゾーンを構築する。
とある。
百貨店全店の売上高構成比率でも食が衣料品を抜き去ったという報道が過去にもWWDで掲載された。
阪神百貨店やその他百貨店の2010年代以降の売り場の雰囲気を見ていると、大衆の興味がファッションや衣料品から飲食・食料品へ大きくシフトしていると感じる。
もちろん、衣料品に強い興味のある人はゼロではないが、そういう人の数は2000年代半ばまでに比べると大きく減ったと考えられる。
今回の繊研新聞で報道された各百貨店の改装プランが食に大きく偏っているというのは、当然の結果だといえる。
男女ともに関心があるのは、食。そして女性なら衣料品よりも化粧品というところで、百貨店の集客装置としては食と化粧品ということになるだろう。今秋以降の百貨店の改装で衣料品比率が下げられるのは当たり前である。
当方自身は40歳ごろまでに比べると40代半ば以降の衣料品への興味というか執着はかなり薄れてしまっている。今でも買ってはいるが、なけなしの小遣いをやりくりしてまで買っていた若い頃ほどの服への欲求というのは皆無である。もちろん、加齢による弱体化ということはあるだろうし、諦念も強い。しかし、自分の20代の息子たち、娘を見ていてもそこまで服にはこだわっていない。繰り返すがファッション衣料品に興味のある人はゼロにはなっていない。しかし、2000年代半ばまでほどにはそういう人の数がいないということも事実であり、百貨店でさえ売上高構成比率は食が衣料品を上回っている。
今後は百貨店、ファッションビルともに売り場の衣料品比率は低下するのが標準仕様になるだろう。
阪神名物イカ焼きをどうぞ~
服よりも自らのボディに投資した方がいいという価値観ではなかなか服が売れなくなりそうですね、、
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https://togetter.com/li/2222196