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南充浩 オフィシャルブログ

リサイクル素材の使用量増加が衣料品の値上げ&ステルス値上げの一因になっている可能性

2023年9月8日 商品比較 1

今夏物のTシャツ類に関しては、例年に比べるとユニクロ、ジーユ―での買い物が例年に比べて著しく減った。(自分比)

理由は「生地が昨年よりも薄くなったと感じた」からである。

当方は汗っかきである。最高気温24度で15分くらい歩くと汗ばむ。30度を越えると汗が止まらない。湿度が80%を越えていれば最高気温20~23度でも15分も歩くともう汗が止まらない。

なので、春・秋・冬に着るTシャツは少々生地が薄かろうと問題ないのだが、梅雨から挽夏まで着用するTシャツは合繊の吸水速乾Tシャツか、綿素材なら厚手に限るわけである。2005年当時みたいなアメリカ西海岸風云々のペラペラTシャツなんてクソの役にも立たない。

例えば、ユニクロUの綿100%クルーネックTシャツ。定価は1500円で、期間限定や期末には990円に値下がりする。デビュー当初から一昨年くらいまでのこのTシャツはかなり生地が分厚かった。ザックリ触った感じだと6オンスはあったのではないかと思う。

しかし、今夏のこの商品は如実に生地が薄くなっている。どうだろう5オンス前後ではないかと感じる。

このほか、通常ラインの今夏の綿100%Tシャツは一様に生地が薄い。恐らくは4オンス台ではないかという触感である。

これではとてもじゃないが梅雨以降は着用できない。

 

考えられる理由は、店頭販売価格を例年通りに維持するために、綿花の使用量を減らして生産コストを調整しているということである。

これはユニクロに限らず、綿花が高騰した際には時々使われれるテクニックである。余談だが、2011年に綿花価格が史上最高に高騰した際、翌年からのユニクロも含めた各ブランドの綿生地は如実に薄くなった。もしくはポリエステルを30%くらい混ぜるようになった。綿花価格が落ち着くとまた元に戻って今に至る。

 

2020年のコロナ禍によるサプライチェーンの混乱、2022年のロシアの侵略によって燃料価格の一段の高騰、輸送費の高騰、それ以前から指摘されていた人件費の高騰、そして円安基調など様々な要因で、すべての価格が上昇している。これは日本だけでなく欧米各国は同様で日本以上の物価上昇率が続いている。ちなみに中国はデフレ傾向が続いている。

 

巷ではユニクロUのエアリズムコットンオーバーサイズTシャツが「涼しい」とか「速乾性が高い」とか評価を受けているが、当方が着用した感想はそこまで高くない。速乾性はそんなに高くない。汗染みが消えるまでの時間は長い。着用すると何とも言えない「微妙な暑さ」を感じる。綿100%のペラペラTシャツよりは随分とマシだが「夏はこれでOK」とはとても思えない。吸水速乾性の高さとサラっと感ならユナイテッドアスレのポリエステル100%のドライTシャツの方が一億倍マシである。実は先日、4歳年長の汗かきの先輩と雑談する機会があったのだが、当方と同様に「暑い」と感じておられたので、当方だけの錯覚ということでもなさそうである。

 

で、この商品よりも優れていると感じたのが、ジーユーのドライポンチクルーネックTシャツである。これはジーユー版のエアリズムコットンオーバーサイズTだといえるが、昨年の夏物を2枚買ったが、ユニクロUよりはるかに涼しく、速乾性が高い。もっと買いこんでおけばよかったと後悔したので、今夏物の同商品を店頭に見に行った。期間限定で時々1290円になっている。もちろん定価で買う気はさらさらない。

(昨年、990円に値下がりして買ったジーユーのドライポンチクルーネックTシャツ)

 

 

 

しかし、今夏の同商品は昨年夏物と比べて生地が薄くなっている。触感的には半分くらいの薄さになっているのではないかと思う。

愛用している昨年夏物の生地組成はポリエステル52%・綿48%となっている。

今夏物の生地組成は公式サイトによると色によって2~3%ずつ異なっているのだが、基本的には昨年夏物とほぼ同じである。最も異なる点は48%前後使用されているポリエステルのうちの46%がリサイクルポリエステルという点である。

 

ジーユーのドライポンチも綿花使用料を減らすために生地を薄くしたのではないかと考えられるが、もう一つの要因も考えられる。それはリサイクルポリエステルの使用量が多いことである。

基本的にほとんどのリサイクルポリエステルはバージンポリエステルよりも価格が高くなる。それを一定比率で使用するとなると当然生地値は上がらざるを得ない。しかし、店頭販売価格を抑えようとするなら、使用量を減らして生地を薄くするほかない。

ポリエステル比率がほぼ半分のジーユーのドライポンチの生地が薄くなったのはリサイクルポリエステルの使用にも原因があるのではないかと考えられる。

リサイクルポリエステルの使用率を高くすればするほど生地値は原則的に上がる。それを店頭販売価格に反映させるのか、させずに生地を薄くしたり組成を変えたりするか、のどちらかしか対応策は無い。

 

先ほども挙げたような要因、為替の変動、燃料費高騰、原料費高騰、人件費高騰、輸送費高騰などの外的要因による商品価格の値上がりは仕方が無いと言え、当方のようなケチンボでも諦めがつく。

いずれ、大衆の全体的な所得アップにもつながるだろう。

しかし、リサイクル素材・再生素材の使用の増加による値上がり、もしくはステルス値上げについては個人的には疑問を感じてしまう。

 

先日、某大手企業の展示会を拝見させてもらった。その中で取り組みの1つとして綿生地の裁断クズを提供し、そのクズを混ぜた紙を一部の資料や名刺に使用しているとのことだったのだが、担当者が言うには「綿クズを混ぜた紙の価格が高すぎて、経営陣しかその紙を使った名刺を持てない。一般社員全員に配布するにはコストが高くなりすぎる」とのことで、なんとも本末転倒な印象を受けてしまった。

 

リサイクルポリエステル同様に、綿裁断クズを再利用する取り組みも高コスト化しているといえる。

抗えない外的要因による値上げ、値上げを阻止するための内容物を減らすステルス値上げ。この辺りは理解できるし受け入れざるを得ないと思うが、リサイクル素材の使用量増加に伴う値上げやステルス値上げというのは心情的に納得しづらい。もちろん、環境への取り組みは重要ではあるが、その辺りが、実は値上げ・ステルス値上げの要因の一つになっているということは消費者にも広く周知されるべきではないかと思う。

 

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 comment
  • とおりすがりのオッサン より: 2023/09/08(金) 11:53 AM

    高コスト名刺が経営陣だけって笑いますねw
    ちなみに低所得庶民の最後の味方のスズキ(自動車)の従業員の名刺は、触って分かるくらいの薄い紙を使ってコスト削減してるそうです。どんだけケチなんだとw
    ま、でもカッコつけでリサイクル綿入り名刺使うより、名刺のコスト削減して製品価格を低くするスズキのほうが正解でしょうね。
    SDGsの17の目標の最初が「貧困をなくそう」なのを知りそうもない意識高い系は、居なくなっていただきたいものです。

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