南充浩の繊維産業ブログ

ファッションブログ・・・・と言いたいところだけれどもそこまでファッションに特化していないし、能力的にもできない。そこで繊維製造業、産地、アパレルメーカー、小売店など幅広く繊維産業全般についてぼちぼちと書きます。たまにマスコミ、経済問題についても書く予定。よろしくお付き合いください。 お仕事の依頼は minami_mitsuhiro@yahoo.co.jp まで。

繊維業界新聞の記者としてジーンズ業界を、紡績、産地、アパレルメーカー、小売店と川上から川下まで担当。 同時にレディースアパレル、子供服、生地商も兼務した。退職後、量販店アパレル広報、雑誌編集を経験し、雑貨総合展示会の運営に携わる。その後、ファッション専門学校広報を経て独立。 現在、記者・ライターのほか、広報代行業、広報アドバイザーを請け負う。

ナインオクロック

ナインオクロックがクラウドファンディングで達成率144・7%になった理由とは?

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 ウェブが普及してから誰でも自己発信が簡単にできるようになった。
ブログ、フィエスブック、ツイッター、インスタグラムなどなど。

自己発信をすれば必ず一定の反発を受ける。
どんなに話し合っても分かり合えない人間も少なくはないからだ。

それを過度に恐れて、企業やブランドが発信しないということは非常にもったいないと思う。
発信が少なすぎれば、誰にも知られないし、知られていなければどんなに素晴らしい商品やサービスを提供しても誰にも買ってもらえない。販促的見地から言えば、知られていないのは存在していないのと同じである。

ブランド立ち上げの際にお手伝いした久慈市産のTシャツブランド「ナインオクロック」が9月30日から10月31日までクラウドファンディングに挑戦した。

1枚当たりの販売価格が3000円なので、目標金額100万円は厳しいのではないかと見ていた。
案の定、10月の4週目まで40万円前後にとどまっていた。

筆者の持っている常識でいえば50万円の目標設定が妥当だと思うし、今でもそう思っている。

が、最後にすこしばかりお手伝いしようと思って、10月27日のこのブログで紹介したところ、効果があったのか少し支援者が増えて60万円とか70万円台になった。

そのあと、10月28日に

http://shiromatakumi.hatenablog.com/entry/2016/10/29/104746

このブログでも紹介され、それがスマートニュースに転載された。
その結果、昨日までで144万7000円の協力が集まり、見事目標額の100万円をクリアした。
達成率は144・7%である。

ナイオクロックを展開する香取正博さんには素直におめでとうと祝福したいし、ある意味で「持っている」人だと改めて感じた。まあ、褒めても筆者には何の得にもならないのだが。

一連の経過は香取さんのブログに書かれてある。

http://www.katorimasahiro.jp/entry/2016/10/31/105202

一連の経過を読まれた方の中には、「たまたまビッグブロガー(筆者ではなく)に紹介されただけじゃないか」と思われる方もおられるだろう。
筆者もかなり幸運な事態だと思う。

しかし、ビッグブロガーさん自体が、以前から香取さんのブログのファンでずっと読まれていたからこういう「奇跡」が起きた。

謎のフレーズ「乗るしかない、このビッグウェーブに」はビッグマウスっぽいがなんとなく記憶に残る。
ビッグウェーブも何もさざ波すら起きていない時点から言い続けているのだからなんだかおかしみもある。

超ビッグネームになったオッサンが「乗るしかない、このビッグウェーブに」なんて言い続けていたら単なる嫌味にしか思えないが、何も持たない若者が言っているのは面白おかしく受け取ることができる。

今回の奇跡は、香取さんがナインオクロックを始める以前からブログを含めたSNSで発信し続けたからこそ、招き寄せられることができたといえる。
ブログを書いていなかったらビッグブロガーさんが読者になることもなかったからだ。

努力したからといって必ず成功するわけではないが、成功した者は必ず努力している。
そういうことではないだろうか。

これでもまだ発信することが「効果がない」とか「意味がない」と思われるだろうか?
反発を過度に恐れて、教科書に載っているような優等生的発言に終始した発信で良いと思われるだろうか?

香取さんのブログは決して優等生的ではない。
たまにアレッ?と思うこともあるし、昨年11月末から「商品があがってこなくて暇だから」という理由で、東南アジアにバックパック旅行に行ってしまったときは、正直どうかとも思った。
そんな旅行をしている場合かと。(笑)

それでも彼は発信し続けたから今回の奇跡が生まれた。
彼が発信していなかったらせいぜい、このブログで紹介してクラウドファンディングで70万円くらいを集めたところで終了しただろう。

ブログやSNSで発信したからすぐにでも効果が出るわけではない。
とくに筆者や香取さんのような無名の存在では、それは難しい。
しかし発信を続けることが積み重ねとなって思わぬファンを生む。

今回のクラウドファンディングはゴールではないので、引き続きがんばってもらいたいと思う。

一番気に入っているナインオクロックのディスプレイの画像を掲載しておく。

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香取さんおめでとう。
伊勢丹新宿本店でポップアップショップを開く際にはぜひこのディスプレイを使ってほしい。

こちらからは以上です。









ロゴTシャツブームで売上高が伸びたブランド

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 閑話休題的な意味も込めて、たまには景気の良い話でも。

今夏は往年の懐かしいブランドのロゴTシャツが売れた。
まあ、いわゆるちょっとしたブームだったといえる。

中でも目に付いたのがチャンピオンとリーだ。
チャンピオンのブランドロゴ入りTシャツなんて、中学・高校の部活の練習着のイメージしかない。
リーのロゴ入りTシャツなんてその昔は珍しい物でもなんでもなく、普通にフロムUSAやら三信やらイズミヤの平場に並んでいて、地元の中高生のユニフォームのようなカジュアルウェアだった。

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(リーの来春夏企画)


だからチャンピオンにしろ、リーにしろロゴ入りTシャツを見かけるたびに地元のちょっとダサめ中学生・高校生と重なって仕方がない。
若い人が着るから「新鮮」に見えるのであって、オッサンが着たなら、まちがいなく「30年前の部活の練習着を保管していたのか?物持ちが良いですね」といわれるだろう。

このブログでも触れたことがあるように、今夏はファッションビル内を歩くとショップはチャンピオンとリーだらけだった。

リーを展開するリー・ジャパンはエドウインの傘下企業である。
で、エドウインの営業マンに質問したところ、リーのロゴTシャツの今夏売上高は驚異的な増え方を見せたという。
ブランドロゴTシャツブームの影響もあり、エドウインロゴ入りTシャツ、アルファインダストリーロゴ入りTシャツも驚異的な増え方だったそうで、その3ブランドのロゴ入りTシャツの売上高は、前年比で何倍増という伸び率だったとのことである。(もちろん、これらのブランドはそれまでトップス売上比率が低かったからという要因もある)

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(エドウイン、アルファインダストリーの来春夏企画)


完全にブームに乗れたといえる。

しかし、このブームが終わると反動は必ずあるだろう。
ブームが続いているうちにそれぞれのブランドのトップスを強化しなくてはならない。
そうでないとブームの終了とともに売上高は激減するからだ。

それでも暗い話がほとんどの衣料品業界においては、ロゴTシャツブームというのは数少ない明るい話といえるだろう。

それにしても、中高生の部活の練習着が一躍人気ブランドになるというのは、オッサン世代からするとなんだか釈然としない。

エドウインの営業マンによると、エドウインブランドやアルファインダストリーのロゴTシャツが伸びたのは、ロゴブームに加えて2000円前後という比較的買いやすい販売価格のおかげもあったとのことで、たしかに半袖Tシャツが1枚5000円もするなら、ちょっと買う気がなくなる。

よほどのセレブか服マニアかだろう。

一般人が奮発して買える半袖Tシャツの値段というと2000~3000円台で、5000円を越えるとちょっと厳しい。
7000円以上はよほどのマニアかセレブかしか買わない、と筆者は思っている。

エドウインやアルファインダストリーの売れ方がそれを証明しているのではないか。

ちなみに筆者の半袖Tシャツはだいたいが値引きセールで500~1000円になったもので、ユニクロ、無印良品、ライトオンの3ブランドで8割以上を占める。
値引き後1500円以上の半袖Tシャツはもう何年間も買っていない。

となると、以前に筆者がブランドスタート時になんだかんだと手伝った国産Tシャツブランド「ナインオクロック」の価格設定はまあ妥当なところだといえる。

ただ、今夏のロゴTシャツブームに反して、このブランドは無地Tシャツでスタートしたので、そのブームの恩恵は被っていない。

そのナインオクロックが今月クラウドファンディングに挑戦している。
目標100万円ということだが、正直なところ目標設定は50万円にしたほうが良かったのではないかと思った。

http://ishiwari.iwate.jp/pj/IswS2701440

1枚3000円のTシャツなので、コースがいろいろとあるとはいえ、客単価は3000円だと考えたほうが良い。
100万円を達成するには300人以上の支持がなくてはならないので、無名の新規ブランドとしてはちょっとハードルが高い。
逆に無名の新規ブランドでも100万円を達成したブランドはいくつもあるが、それらは商品単価が高かった。
最低でも7000~8000円、平均は1万円を越えていた。
となると、100人の支持で達成できる。

まあ、今から言っても始まらないので、残り日数で達成してもらいたいと思う。

とはいえ、現在54万円以上が集まっている。
ラスト、といってもあと5日ほどしかないが46万円弱を集めてもらいたい。
興味のある方は冷やかしも含めて協力してあげてはどうだろうか。

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(筆者の一番好きなナイクロのディスプレイ)

筆者は草葉の陰から見守りたい。












2か月間で400枚弱売れたナイクロのTシャツをどう評価する?

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 山の日にこんな報告があった。

脇汗MAX!?9oclockが開始2ヶ月で400枚届かず…
http://katorimasahiro.hatenablog.jp/entry/2016/08/11/152352


6月6日からオンライン通販のみでスタートした国産Tシャツブランド「ナインオクロック」が2か月間で400枚弱売れたという報告である。

定価は税抜きで3500円。

実際のところは360~390枚くらいの販売量だったのではないかと思うが、この結果についてはどう思われるだろうか?

事業主の香取正博さんは、ビッグウェーブに乗ろうとしておられるようなのでこの販売量は予想を下回るとしていささか意気消沈している様子だが、個人的にはよく売れたほうではないかという評価を下している。

業界の人々はどんな評価だろうか?

東京に出張した際にも何人かに評価を尋ねてみたが、ほぼ全員が「無名のブランドが2か月で400枚弱売れるというのはなかなかの快挙ですよ」とおっしゃっていたが、筆者もそう思う。

しかし、この程度で満足していてはビッグウェーブになど乗ることは不可能なので、今後も引き続き頑張ってもらいたいと思う。

初月度はだいたい190枚くらい売れたと報告を受けており、次月度もほぼ同じペースで売れたと推測できる。
次月度も勢いが衰えなかったのは、一部の近隣(岩手県内)の専門店への卸売りが始まったからではないだろうか。
店頭販売価格は同じ3500円(税抜き)なので、香取さんに入る利益は極めて薄いと思われるが、生産ロットを増やせるというメリットはある。デメリットだけではない。
利益が薄いなら多売するという手もあるが、その専門店ではこのTシャツが10日間で50枚売れたという報告もある。

ブランド価値とは何だろう?タグ無しのTシャツが実店舗で10日で50枚以上売れた
http://katorimasahiro.hatenablog.jp/entry/2016/07/26/164109


これだけでも50枚の販売量は確保できているわけであり、総売り上げ枚数を押し上げていることは容易に想像できる。

話は横道にそれるが、無名の3500円もする無地のTシャツを10日間で50枚も売るというのはすごいことではないだろうか。1日平均5枚売っている。
それこそ販売員の力ではないか。
大手のチェーン店や有名店では在庫処分のために押し売りをすると聞くこともあるが、地域専門店の場合、そんな阿漕な商売をしたなら、すぐさま閉店せざるを得ない。

実質的に丁寧に接客をした結果ではないかとと考えられる。

個人的にはアホな販売員よりは自動販売機やペッパーくんの方がよほど販売力があると思っているが、プロとしての販売員となるとやっぱり売る力がすごい。
販売員をチョロっとかじった程度の筆者ならこのTシャツを10日間で50枚も売る自信はない。
しかも東京とか大阪の都心ではなく、岩手県の久慈市という田舎で。

店を訪ねたことも販売員にお会いしたこともないが、販売力がすさまじいと感じる。

こういう販売員が増えれば洋服は今よりは売れるようになるのではないかと思うが、養成するのはなかなか難しい。
だからこそTopseller.Style( http://topseller.style/ ) へ、などと書けば、どこかの感動系セミナーの勧誘とか、どこかの有料ファッションメルマガの勧誘みたいになってしまうのであえて言わない。(笑)

それはさておき

販売量が予想より下回った要因は欠品だという。
初回にけっこうな数量を作りこんだはずだが、売れ行きが予想できないことから、おそらくどの色もメリハリをあまりつけずにほぼフラットな枚数を発注していたのだと勝手に推測する。

その結果、人気の集中した色が欠品したということだろう。

黒のVネックの人気が高く欠品したのだというが、筆者からすると黒のVネックTシャツなんてもっとも売れるから初回にもっと作っておいてもよかったのではないかと思うが、事業主は黒のVネックを着ないため、そこまで発注しなかったようだ。
事業主はお会いしても画像でもだいたい白Tシャツをユニフォームのように着ているから、おそらくそういう発想になったのだろう。

自分の好みと売れ筋は異なるのである。
業界人ならこれは常識だろう。

昔、それこそユニフォームのようにグレーの長袖Tシャツと、腿にゆとりがあって足先がピタッとしていたジョッパーズパンツのようなパンツばかり着用していたアパレル社長がおられたが、彼はレディース向けにトレンドアイテムを的確に発売していた。間違ってもジョッパーズパンツなんていうのは一度も発売していない。

それが業界人としての正しい姿勢だろうと思う。

そんなナインオクロックの補充生産分がようやく出来上がったそうだ。
それでもまだショート気味だという。

なかなか補充生産分が出来上がらなかった理由を事業主はこう説明している。

小ロット生産なので、工場の大ロット生産の隙間で少しずつ作ってもらったから。

とのことだが、洋服の製造というのはこれが現実なのである。

大ロット生産が安定的に流れていて、その隙間に小ロット生産を押し込む。
だから、大ロット生産がなくなれば多くの縫製工場は倒産してしまう。
大ロット生産があるからこそ小ロット生産を受け入れてもらえるのであり、それが不満ならサンプル縫製工場のような小ロット専門の工場を探し当てるしかない。

縫製工場の仕組みを知らないイシキタカイ系の小ロットブランドは「どうしてうちを後回しにするのか?」と不満をぶちまけることがあるが、それは彼らの生産数量が少ないからで、後回しにされたくなければ大ロットの数量を発注すれば良いのである。一枚当たりの製造コストも下がるので、店頭販売価格も引き下げられるだろう。
店頭販売価格を引き下げない場合は利益率が高まるだろう。

良いことづくめなので資金調達して大ロット生産の仕組みづくりをやってみてはどうか。
銀行は金を貸したくてウズウズしているはずだ。

ただし、大ロットで生産した場合、それを売り切るだけの販売力が求められる。
そうでなければ山のような在庫を抱えて破産せざるを得ない。

相手を変えることは不可能なので、自分が変わるほかない。
資金調達して大ロットブランドにするか、極小ロットで生産している工場を探しあてるかのどちらかしかない。









名ばかりブランドは今後ますます存続できなくなる

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 2週間前に活動が始まったブランド「ナインオクロック」だが、これの立ち上げに際して、生地問屋を紹介したり、ディスカッションに応じたりと様々なサポートを行ってきた。
そうそう、プレスリリースも作成した。

http://9oclock.co.jp/

完成した製品サンプルも送ってもらった。

好き嫌いはあるだろうが、Tシャツ単品として見た場合、完成度はそれなりに高い。
ブランド主が掲げていた「細身でスタイリッシュなシルエット」もパッと見た感じでは実現できている。
もちろん、過不足を言い出せばきりがないが、大枠では平均点以上は獲得できているのではないかと思う。

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今回は「ナインオクロック」を論評したいのではなく、アパレル勤務経験がゼロのオニイチャンが企画しても一定水準以上の商品を製造できる、アパレル業界の製造インフラのすごさを改めて感じているのである。

香取正博さん本人はデザイン画が描けるわけでもないし、パターン(型紙)を作れるわけでもない。
こんな商品が作りたいというイメージしか持っていなかったわけである。

生地の手当ては、生地問屋とか生地工場に交渉すれば何とかなる。
縫製も縫製工場と交渉すれば何とかなる。

いくら生地が良くて、縫製も良くてもデザインやシルエットがダサければそんな衣料品は売れない。
産地企業が自社製品を企画製造した際に失敗するのはこの点を理解していないからである。
頭では理解しているのかもしれないが、いざ自分が企画製造してみるとその視点を見失うのが人間である。

敵を知り、己を知れば百戦危うからずといわれるが、真に難しいのは敵を知るよりも己を知ることである。
人並みの知能があって論理的思考ができれば、敵を知ることはさほど難しくない。
しかし、自分の置かれている立場、自分自身の癖などを明確に認識するのはかなり難しい。

それはさておき。

デザイン、パターンについても簡単に外注が可能な状況だということである。
これは今に始まったことではなく、もう10~15年前くらいからそういう外注機能はあったが、近年はさらにそれが手軽に依頼できるようになっている。
そういう外注業者が増えたからだ。
フリーランスのデザイナーやパタンナーも一定数存在する。

ちゃんと代金さえ支払えば、ブランド物とそん色のないTシャツがズブの素人が企画しても作れてしまう。

これは何もTシャツに限ったことではなく、衣料品の全アイテムで可能なのである。

2年ほど前、筆者に「ジーンズを作りたい」という相談があった。
それも一個人みたいな人だった。
早速、友人のジーンズOEM業者に見積もりを取ってみた。

筆者の依頼ということで幾分か割り引いてくれたのだが、

国内生地・国内縫製、ワンウォッシュでロットは100本(サイズ込)で、1本あたり3000円

だった。
縫製工賃や洗い加工賃は変動するので、今依頼して同じ見積もりが出てくるかどうかはわからない。
が、当時はその見積もりが出てきた。

結局この話は流れて製造には至らなかったのだが、30万円(3000円×100本)を支払えば、ド素人でもオリジナルの国産ジーンズが製造できるということである。
デザインやパターンならこの業者自身が幾通りも自社内にストックがある。
素人発注者がその中から選べば、デザインやシルエットに関してもいわゆるブランド物とそん色ないジーンズを企画製造することが可能になる。

こういう状況下で、逆にこれまでのブランドが漫然とブランドを名乗り続けるということは、かなり難しくなってきたのではないかと感じる。

もちろん、ブランドは単品ではない。
月ごと・年間の商品計画が必要である。
「Tシャツだけ、ジーンズだけ、しかもデザインは1型しかありません」なんていうのは到底まともな衣料品ブランドとは呼べない。

今年だけの期間限定販売ならそれでも良いかもしれないが、これから何年間も一定の売上高を稼いでいこうと考えるなら、単品ブランドでも型数や色柄のバリエーションはある程度は必要になる。

それが商品計画というものである。

それでもド素人がそれなりの品質、見た目の商品を単品とはいえ、簡単に作れて、独自のブランド名を付けることができる現在の環境下で、これまでのブランドはさらにその独自性とか立ち位置が問われるのではないかと感じる。

品質においても、デザインや見た目のシルエットに関してもド素人の思い付き商品と変わらない。

価格はもちろん、現在のブランド品のほうが高い。
商品自体はあまり変わらないのに値段が高いのはなぜか?
理由は当然さまざまあるだろう。販促・広告費が含まれているとか、アフターサービスが良いとか、著名なデザイナーと契約しているとか。

そういうことが明確に説明できないブランドは、今後ますます、ポッと出のリーズナブルなブランドに負けてしまうだろう。

ナインオクロックは3500円であるし、流れたジーンズは個人で販売するなら6000円くらい(卸売りビジネスなら店頭販売価格はもっと高くなる)での販売が可能だっただろう。

同じような国産生地・国内縫製で1万円とか2万円する商品はどう違うのだろう?
消費者の多くがそう考えだしても不思議ではない。

そこに説得力がないブランドはこれからますます淘汰されてしまうのではないか。
アパレル特有のノリとか雰囲気とかムードとかで「ブランド」を名乗って高価格商品を打ち出すというやり方は今後ますます厳しくなるのではないか。








国産Tシャツブランド「ナインオクロック」は「お!値段以上」を実現できるか?

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 さて、今日は気分を変えて。

昨日、午後9時に国産Tシャツブランド「ナインオクロック」が正式スタートとなり、同時に直営通販サイトも稼働開始した。

http://9oclock.co.jp/

価格は3500円(税抜き)で、これが高いか妥当かは意見の分かれるところだろう。
オープンに先立って、サンプル品が送られてきた。
60番手のスムース素材だが、光沢があり、ちょっとしっとりとした触感がある。
おそらくシルケット加工か何かを施しているのではないかと思う。
縫製は岩手県久慈市のアクティブという工場が担当している。

形はややタイトで、46歳のオッサンはLサイズでピタっとした感じになる。

これを開始したのは香取正博さんという若い衆なのだが、彼はアパレル勤務経験がない。
もちろん繊維素材メーカー勤務の経験もない。

元オーナー美容師で、都内で2店舗を経営していたが売却して、Tシャツを作って売りたいと思い立ったそうだ。
繊維業界に対して明るい展望をまるで持てない筆者からすると「その選択はどうなん?」と首をかしげざるを得ない。
その香取さんと出会ったのはちょうど1年前である。
昨年5月の東京テキスタイル・マルシェ会場にひょっこり現れた。

「Tシャツ作りたいけどどうすればいいんですかね?」というすさまじくバックリとした質問を投げかけてきた。
一応、縫製工場はこの時点で岩手県の久慈市に目星をつけているようだったが、生地の仕入れ先をまるで知らなかった。

東京マルシェの会期が終わって、丸編み(Tシャツの生地は基本的に丸編みという編み方)生地に強い生地問屋を何社か紹介した。

最初は丸編み生地工場を紹介しようかと思ったが、工場はあくまでも工場でさまざま種類の生地を備蓄しているわけではない。むしろ、「こんな生地がほしい」というのが明確でないときは、さまざまな生地を備蓄している問屋のほうが選びやすい。
工場と直接やる場合は「〇番の糸を使ってこんな風に編んでほしい」というのが明確にあるときだけである。

どうも筆者のところに来るまでに何社かにはバックリとした質問を投げかけて断られた様子だったが、当然といえば当然だろう。

生地問屋各社で何種類もの生地を見せてもらったがなかなか決まらない。
というか香取さんが決められないのである。

筆者は基本的に薄い生地のTシャツは嫌いで分厚い生地のTシャツが好きである。
理由は汗かきなので夏だと薄地のTシャツはすぐボトボトになる。
だから夏に着るのは分厚い生地のTシャツにしている。薄地のTシャツは汗をかかない季節にシャツやニットの下に着ている。

しかし彼は割合に薄地のTシャツを好む。
ただ、ベルシュカあたりで販売されているあまりにも薄すぎる生地はいやだそうで、そのあたりのこだわりは本人の語彙力の乏しさもあって周りの人間にはなかなか伝わらなかった。

でそんな感じでグダグダしたまま11月になった。

正直なところ、この企画は流れるのかなあ?と思っていたが、11月に訪ねたところで「とりあえず気になる生地をいくつか選んでそれをサンプルに仕上げてみましょう。生地だけ見ててもわからないですよ」といわれ、なるほどそうだということで、サンプル縫製に入ってやっと動き始めた。

その後、彼はわざわざ縫製工場のある岩手県久慈市に引っ越してしまったので、今年に入ってからは会っていない。昨年の11月のサンプル縫製からそのあとどのようにして今の生地を選定したのかは詳細を聞けていない。

で、ネット通販用のサイトだがこれも当初の予定から遅れに遅れてしまって、傍から見ていてどうなることかと心配したが何とかオープンにこぎつけた。

サンプルが入っていた箱はこんな箱である。

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白と黒のVネックを1枚ずつ送ってもらった。

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白だけを洗濯して天日干ししてみたが、縦はほとんど縮まないが横幅はだいたい3センチほど縮む。
どんなTシャツでも洗濯して乾燥させれば、縮むのでこれは当たり前である。
ただ、縮み方にもさまざまあり、縦横ともに縮むTシャツもあるが、この「ナインオクロック」は縦にはあまり縮まないようだ。

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そうそう、ブランド名の「ナインオクロック」だがその由来は、久慈産=クジ=9時=9'oclockというわけである。

そんな感じでようやく始まったブランドだがこれからどうなるのか予断を許さない。

彼の取り組みを一連サポートしてみて、いわばど素人ですらお金さえ払えばオリジナル商品が作れるという業界インフラの整備され具合に改めて驚いた。
ブランドを展開するには、シーズンごと・年間通じての商品計画が必要である。
これをマーチャンダイジングと呼ぶがこれがまともでないと「ブランド」として商品は売れにくい。
もちろん筆者も彼もマーチャンダイジング担当者(マーチャンダイザー)として仕事をしたことがないから、シーズンごと・通年でのマーチャンダイジングは組めない。

しかし、単品だけでよければ、業界の製造インフラは極度に整備されているため、ど素人でも製造することが可能なのである。

これは今に始まったことではなく、すでに2000年ごろには今とほぼ変わらない業界インフラが整備されていた。
2003年の時点ですでに、ある倒産したカジュアルメーカーのベテラン社長は「業界には製造インフラが極度に整備されているから誰でもすぐに物が作れる。この参入障壁の低さがこの業界の特徴だ」と話しておられたくらいである。

業界の製造インフラが整った理由は、政府や行政が整えたわけでもなく、大手の有志が理想を掲げて整備したわけでもない。
倒産やリストラ、独立が繰り返され、そういった人々が自衛のためにOEM/ODM企業を立ち上げた結果である。
いわば自然発生的に業界に製造インフラが整った。

単品を作るだけで良ければ、ど素人にだって簡単にできてしまう。
しかも品質は通常のメーカー品と変わらない。

じゃあ仮にも「ブランド」を名乗っていたら、それと同じレベルだと消費者から支持されないのは明白だろう。
ど素人の単品作りでは到底追いつけないブランドの強みとは何か?
そこを忘れて製造インフラに丸投げ依存しているから、現在のブランドの凋落があるのではないか。
製造インフラに丸投げ依存して原価率を下げることしか考えていない「ブランド」が凋落するのは何の不思議もない。














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