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南充浩 オフィシャルブログ

アパレルの「デジタル化」は販売方法だけにとどまっている現状

2018年7月11日 ネット通販 0

プリンス氏の企画で有料トークショーを開催することになった。

【告知】8月24日にあのマサ佐藤(佐藤正臣)氏と有料トークショーを開催します。
ぜひともご参加を。詳細は以下のURLで。
https://eventon.jp/13683/

 
 
インターネット通販の成長ぶりにアパレル業界は色めき立ち、「IT化推進」とか「デジタル化推進」なんて掛け声ばかりが聞こえてくるが、販売方法・受注方法だけが「デジタル化」「IT化」しているだけに過ぎない。
販売方法・受注方法だけが「デジタル化」したところで、製造や加工、原料工程はほとんどが旧態依然とした受発注システムを使っており、何が変わるのかと言ったところで、単に消費者(買う人)が便利になったよねという程度にしか過ぎない。
製造・加工は何も変わらないし、そこに製造・加工を依頼するブランド側の商品供給体制も何も変わらない。
ブランド側が商品を取りそろえるシステム、速さ、タイミングはウェブが普及する前と何も変わっていないから、当方のように製造・加工側から衣料品を見る機会のある人間からすると「デジタル化」の効果は極めて限定的にしか見えない。
製造・加工、メーカー側からするとデジタル化で何が変わったのかわからない。
せいぜいが納入先の社名が変わったくらいである。
今まで百貨店アパレルに納入していたが、今はインターネット通販会社に納入するという程度の変化でしかない。
最近、洋服の供給量が多すぎるということが指摘されることがあるが、一部の「識者と呼ばれる人たちww」からは「オーダー生産を強化することで減らせることができる」という声が聞こえてくる。
インフルエンサーとか著名人と呼ばれる人たちは、フルオーダーとパターンオーダーの区別ができていない人たちばかりだから、ここでいう「オーダー」はすべてがごっちゃになった状態であることは言うまでもない。
ZOZOのオーダースーツが話題となっているが、じゃあ、ポッと出のスタートトゥデイなんていう会社がどうしていきなりプライベートブランド(自社企画製品)を発売できるのかというと、それは生地、付属(ボタンやファスナー)、副資材(芯地など)が大量生産されて、メーカーや問屋に大量に備蓄されているからである。
タレントがいきなり洋服ブランドを開始することができるのも、それらが大量生産されていて、大量に備蓄されているからである。
だから、思い付きで「ジーンズを作りたい」「スーツを作りたい」と言っても、すぐに生産することができる。
結局のところ、服が仮に大量生産されなくなったとしても(大量生産されないなら縫製工場はほとんど死滅するから考えにくい未来だが)、生地・副資材・付属は大量生産され続けているから、それが大量廃棄されるだけになる。
インターネットと使ったオーダー受注なんてほんの小手先の誤魔化しに過ぎない。
アパレルが真にデジタル化するには、そういう製造・加工段階までデジタルにつながる必要がある。
とはいえ、そのあたりの人々は高齢化が進んでいてEメールすらろくに使えない人も多い上に、国内の工場は零細が多く、デジタルへの設備投資をする資金力がない。
この製造段階をデジタルで統合することで効率化できるというのは当方のオリジナルではない。
コンサルタントの河合拓さんが最近、何度も提案しておられることである。
例えば。
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/56225

生産プロセスを最初から最後まで牛耳る「SPA型」プラットフォーマー(垂直型プラットフォーマー)が生まれるのも時間の問題です。

とあり、

日本のアパレル産業は万単位の中小企業群でなりたっており、日本のアパレル産業の将来を考えるなら、こうした中小企業がどうしていくか、に目を向ける必要があります。
大多数の中小企業は、見てきたような最先端技術に対して投資余力がなく、このままいけば大手の勝ち組と中小企業の差は広がる一方です。
しかし、別の角度から見れば事情は違ってきます。中堅企業の取りまとめ役を伝統的に行ってきたのはアパレル専門の「商社」。
彼らは企画機能、調達機能、生産管理、物流、ファイナンスなど一連の機能を有しており、その気になればデジタルSPAを導入することも可能です。
デジタルSPAを大手商社が導入し、投資余力がない中堅企業にソフトウエア・サービスとして提供し新しい産業エコ・システムを作り上げることも考えられます。商社は、グループ内にIT企業もシンクタンクももっており、優秀な経営者も次々と輩出しています。

とある。
正直なところ、今のウェブ、インターネット技術の要求水準は高まっており、零細企業のオヤジが20万~30万円くらい出したところでまったく効果がないのが実態である。
河合さんは、商社育ちなので商社の良い点と悪い点をよく理解しておられる。
たしかに資金力のある大手商社や専門商社(いわゆる大手問屋)なら本格的なデジタル化への設備投資も可能になる。
業界には商社を嫌う人も多いが、実際のところは商社なしではあの大手アパレルもあの大手アパレルも商品生産が立ち行かなくなることは業界内では公然の事実である。
店頭での販売と、顧客からの受注のみのデジタル化では生産体系はまったく変わらないし、供給体制自体を変えたいと思うのなら、デジタル化を製造・加工段階まで進める必要がある。
問題はその設備投資を誰が行うのかという点であり、河合さんは商社なら可能だと言っておられる。
たしかに商社ならその資金力から考えて可能だろう。
しかし、利にガメつい商社がそこまで業界全体のための設備投資をするのかどうか、当方はイマイチ信用しきれない。
とはいえ、個別の零細工場ではとてもじゃないがそんな大々的な設備投資ができないことは、火を見るより明らかであるという点は当方も深く賛同する。
店頭や通販段階だけのデジタル化・IT化で製造・加工の問題が何も取沙汰されていないのは、その界隈の識者wwやインフルエンサーがその方面の知識を何も持ち合わせていないからで、彼らこそ、単なる思い付きを次々と商品化できているのは、その製造・加工段階の恩恵を被っているからにすぎない。
販売方法のデジタル化なんて小手先では、業界構造は何も変わらない。

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トウキョウベースの香港店は活況なのか?売上高から入店客数を類推してみた
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/n78d0021044a2
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