月別: 5月 2017 (1ページ / 2ページ)

洋服が売れないのは店頭よりも本社側に問題がある

 自分は、販売員経験が3年ほどある。
といっても、その3年はイズミヤの子会社での量販店内テナントの販売員&店長だった。
いわゆる、著名なブランド店でも大手セレクトショップでもない。

低価格~中価格に属するブランドを取り扱っていた店なので、著名ブランド店や大手セレクトショップのような厳しいノルマは店にも人にも課せられなかった。もちろん、店の売り上げ予算はあったが、達成しないと厳しいペナルティが課せられるわけでもない。そういう意味では良心的な企業だったといえる。

その後は、バッタ屋での助っ人販売が3年位前から断続的に続いているくらいである。

しかし、実際に店頭に立ってみると、商品が売れない要因は、店や販売員だけではどうしようもないことがある。
ことがあると書いたが、販売員側からすると商品が売れない要因の大半以上は、本部・本社にあると感じる。

1、商品が店の顧客層にマッチしていない。デザイン、価格ともに
2、本社の販促・告知・広報がお粗末で来店客が増えない
3、商品の補充追加が不十分、まるでダメ

この3点は店頭ではどうしようもないが、売れる売れないはこの3点に大きく左右される。

ゴミ屑みたいなデザイン・品質で価格が割高で、しかも無名ブランドの商品なんて普通に並べていても売れるはずもない。
本社スタッフは「それを売るのがプロ」とか「できる営業マンは石ころでも売る」とかそういうアホな精神論をぶち上げることがあるが、そんなもんで売れるのなら、今頃日本の景気は20年間も低迷せずにとっくに回復している。

経費の使い過ぎで破綻したワイキューブの安田佳生・元社長もその著書の中で、「石ころを私だと思って買ってください」と売りつけるような営業マンはダメだと書いている。
そんな売り方で通用する営業マン・販売員なんてほとんどいない。

大半の普通の健全な消費者は、いくら販売員の口が上手かろうと、販売員がイケメン&美女であろうと、自分にとってメリットのない「石ころ」は買わない。

店頭からすると、もっと売れる商品を仕入れるor作れよ、と言いたくなるし、もっと売りやすい値段にしろよとも思う。

またいくら販売員が有能でも店に客が来ないとどうしようもない。
店に客を誘導するのは本社の広報・告知・販促であり、それができないなら、その本社は無能集団である。

そして、補充追加の問題も店ではどうしようもない。

オーナーが経営する個店なら話は別だが、チェーン店の多くは本社が補充追加を管理している。
いくら売れ筋でもサイズ切れ・色柄切れを起こせば売れなくなる。
その補充追加をそつなくこなすのは本社の仕事であり、それができない本社は無能集団である。

ひいては無能集団を作り上げた経営者にすべての責任がある。
人材採用、人材教育すべての面においてだ。

さらに補足すると、チェーン店の場合、価格の上げ下げも本部指示でなされる。
これが的を外している場合が多い。

下げなくても売れる商品を下げる指示が来たり、下げなくては売れない商品なのに下げる指示が来ないとか、そんなことは日常茶飯事だ。

何故これを書いているかというと、アーバンリサーチが発表した「接客不要ショッパー」について、販売員側から痛烈な反論が出ているからだ。
そのショッパーを持っていると、接客されない。
だから接客されるのが苦手な人も店に来てください。ということである。

企業やブランドのお偉いさん。そろそろ何でも「販売員」に原因なすりつけるのやめませんか?
http://topseller.style/archives/3480

アーバンリサーチがとった「接客しないで袋」が根本的な解決策にならない理由わかりますか?
http://ryoheiyotsumoto.com/urshopper/

あと、単に「見に来ただけ」の客がわざわざショッパーを持つというのは、客側にも抵抗があるのではないかとも思う。だって買う気がないのだから。
買う気もないのにわざわざ接客を避けるためだけにショッパーを持ちたいか?という疑問もある。

今回の一件は、販売員側からすると腹の立つ言いぐさといえる。
販売員だってやりたくてしつこく声掛けをするわけではない。

著名ブランド、大手セレクトショップの多くは強烈なノルマを販売員と店に課している。
それを実現するためには過剰な声掛けをせざるを得ない。

現に、どう見ても買う気がなくて調べるためだけに店に来たお客にも「どうして声をかけないのか」と指導するブランドは数多い。

アーバンリサーチの本社がそういう指導をしていたのかどうかはしらないが、そういう指導をしていたブランドがアーバンリサーチに追随するようなことがあれば、それこそ「本社はアホの集まりか」である。

売れない時代の打開策として接客不要を持ち出すのであれば、今後、どの店もユニクロ方式で客に呼び止められるまで接客をしないようにすればよい。
いっそのこと、店頭に端末を置いて、そこから購入してもらうようにすればよいのではないか。

ちなみに、個人的にはユニクロ方式が好きだ。
ユニクロ、無印良品、ジーユー、ジーンズメイトなどはこちらから話しかけるまで放置してくれている。
話しかけるということはかなりの高確率で買う気持ちができているから、販売員側としても効率的である。

本社スタッフ&経営者が売れない原因のほとんどを販売員側に押し付ける傾向が強い。
それは販売員を経験した業界人なら誰しもが感じていることだろう。

それほどに責任を押し付けられながら、本社スタッフに比べて給料は安く休日は少ない。おまけに立ち仕事で体にもキツい。
だから販売員になりたいという人が減っているのであり、最早アルバイトやパートですら集まりにくくなっている。
もっと時給が高くて美味しい仕事はほかにいくらでも転がり始めているから、アルバイトやパートは全部そちらに吸い取られている。
本当に業界の自業自得としか言いようがない。

旧態依然としたアパレル、セレクトショップ、ブランドは今後ますます淘汰されて市場から退場させられることは間違いない。

インスタグラム始めました~♪
https://www.instagram.com/minamimitsuhiro/

誰がアパレルを殺すのか
杉原 淳一
日経BP社
2017-05-25



大衆は洋服のことなんてそんな詳しく知らないし興味もない

 今日はお気楽に。

断続的にバッタ屋の店頭に立っていると、業界の人が想像する以上に、洋服の根本的なことを理解していない消費者は数多くいることに気付かされる。

そういう意味では、消費者教育が必要なのではないかと思う。

バッタ店頭で出会った仰天する質問をいくつか挙げてみる。

1、「Mサイズってどれくらいのサイズ?」という質問

おおー、最早なんと答えて良いのかわからない。
中間くらい・・・?としか言いようがない。

これと類似の質問で、

「9号サイズって何?」というのもある。

この質問はいずれも推定40~50代女性から発せられるもので、この人たちは少なくとも40年間くらいは何を目安に洋服を買ってきたのだろうと不思議でならないが、こういう人は本当に多い。

2、自分が何サイズの服を着ているのか知らない人

これも多い。
今自分が着用している服のサイズを「知らない」と言い切る大阪のオバハン多数。
え?どうやってその服を買ったの?どうやってその服を選んだの?

3、〇〇%引きの計算ができない人

これは以前にもこのブログで書いたが、本当に業界人が想像するよりはるかに多い。
30%オフとか70%オフとか表示するのは、店側・販売員側からすれば、最大限分かりやすく表示しているつもりだが、実際の店頭では、「これ何円になりますか?」と尋ねる人はかなり多い。
体感だと5割近いのではないかと思う。

最初のころは、「暗算するのがめんどくさいのだな」と思っていたが、どうやら本当に計算のやり方自体が分かっていないようだ。

言うまでもないが、〇〇%という表記は百分率に基づいており、百分率の計算は小学校で習う。
〇〇割引きは割合でこれも小学校で習う。

そのどちらも計算できない、理解していないという人は本当に多い。
この人たちはスーパーなどの食料品の割引表示をどう理解して購入しているのだろうか?

それでも社会生活は可能ということだ。やれやろだぜ。

4、洋服の名称がまるで理解されていない。

業界内で通じる共通の名称がある。
そんな大げさなことではないが、デニムパンツやジーンズといえば、業界内の人なら共通のイメージができる。

しかし、そういう基本的な名称すら知らない人は数多い。
ましてや、業界が「売らんがために」改称した名称なんて「誰も知らんがな」状態である。

盛り袖とかなんとか名称を新しく作るのは結構だが、そんなものは大多数にはほとんど浸透していないということを肝に銘じるべきである。

例えば、長袖・半袖・袖無しがある。
これをカタカナにすればロングスリーブ・ショートスリーブ(ハーフスリーブ)・ノースリーブとなる。

カタカナ語はまず理解していない。
長袖・半袖・袖無しですら、理解していない人も珍しくない。

つい先日、こんな人がいた。(推定50代女性)

「ランニングシャツみたいなワンピース」を連呼していた。
お気付きだろうか、これはノースリーブワンピースのことである。

ノースリーブという名称がわからないのは納得の範囲内だ。
しかし、「袖無し」という言葉すら出てこないのはちょっと衝撃的だった。

「かわいい」雰囲気を醸し出す「ノースリーブワンピース」という名称だが、「ランニングシャツみたいなワンピース」といわれると途端に、裸の大将が着ていたランニングシャツの丈が長くなったような画像が頭に浮かぶ。
かわいいも雰囲気もへったくれもない。
おにぎりでも持たせてやりたい。

5、女性物と男性物の区別ができない男性(推定40代以上)

Tシャツだとかジーンズだとか、そういうユニセックスデザインの商品はあって、それの男女の区別ができないのは理解できる。
それらはXLあたりを選べば男性でも着用できるからだ。

しかし、ワンピースやスカートが所狭しと並べられている店に入ってきて、何十分か物色してようやく、「この店は女性物の店ですか?」と気が付く中高年男性は本当に多い。

え?外から見てもすぐにわかると思うのだが?

男性は業界人が想像している以上に洋服に触れていないし、興味がない人が多い。
だからダメなんだと、某伊藤忠商事の社長のようなことは言わないし、言う気もない。
あの人が他人にダメ出しできるほどオシャレとも全然思わない。

就職した男性の中には結構な割合で、職場の制服(スーツも含む)かパジャマ類(Tシャツセットアップやスエット上下を含む)しか持っていないという人がいる。
平日は朝から制服を着こんで出勤し、それで勤務し、制服で帰宅する。帰宅後は入浴してパジャマ類を着て寝る。
土日は終日、スエット上下で過ごす。もしくは休日用の服が3枚くらいある。

そういう生活を過ごしてそれに不自由を感じていない男性は少なくない。
それを20年くらい繰り返すと、メンズ店とレディース店の区別ができなくなるのだろう。

しかし、そういう生活をする人の気持ちもわかる。
土日の週2回しか着用しない物にそんなにお金をかける必要もないし、毎年買い替える必要もない。
3枚か4枚を着まわせば済むという考え方は合理的で賛成できる。

自分がもし普通の会社に入っていたなら、そういう生活を送っていたと思う。

思いつくままに挙げてみたが、こういう人は本当に多い。
そしてこういう人々こそがサイレントマジョリティーである。

マスに売りたければ、こういうサイレントマジョリティーを如何にして教育し、惹きつけるかが課題になるが、それができているブランドは数少ない。
だから不振ブランドが多いのである。

インスタグラム始めました~♪
https://www.instagram.com/minamimitsuhiro/

誰がアパレルを殺すのか
杉原 淳一
日経BP社
2017-05-25


先進国で繊維の製造加工業が減るのは当然

 日本の繊維製造加工業を守れという声があるが、結論からいうと、今ある事業者数すべてが残ることは不可能である。ただ、ゼロにはなることもないと思う。
事業主が「生き残りたい」「今の事業を続けたい」と強く思わない製造加工業は消えることになるだろう。

繊維の製造加工業が大規模に残れるかどうかというのは、日本だけの問題ではなく世界的な問題ではないかと最近思うようになった。

例えば、ジーンズやTシャツで重宝がられていたアメリカ製衣料やアメリカ製生地だが、近年はほとんど見かけなくなった。アメリカの繊維製造加工業はゼロにはなっていないが、かつてほどの規模では残っていない。

中国も経済発展を遂げたため、ほかに実入りの良い仕事が増え、縫製工場や織布工場、染色加工場などには工員が集まりにくくなってきている。

代わって東南アジア諸国やインドに工場が増えている。
これらの国は現在、経済発展段階にあり、経済発展の第1段階として繊維などの軽工業に注力するのは常道である。
その次に重化学工業で発展し、最後はサービス業へと移行する。

イタリアには例外的に繊維の製造加工業が多く残っているといわれているが、以前にもこのブログで紹介したように、工場の経営自体を中国企業に売り渡しているケースが増えているし、そういう工場は工員のほとんどが不法滞在者も合わせた中国人になっている。

となると、ある程度の経済発展を遂げると、その国の国民は就職先として繊維の製造加工業を選ばなくなるということがいえるのではないかと思う。

どうして選ばなくなるかというと、給料が高くない、作業がキツイなどの理由があるのではないか。

「日本製3%」で沈むアパレル工場が生き残る道
3Kの印象変えよ!ルンバ導入の次世代工場も
http://toyokeizai.net/articles/-/173418

ファクトリエのポジショントークが半分くらい入ったいつもの記事だが、これをベースに考えてみたい。

日本製衣料は3%といわれるが、それは数量ベースの比率であり、金額ベースだと26%前後で残っている。

http://www.meti.go.jp/committee/kenkyukai/seizou/apparel_supply/pdf/001_03_00.pdf#search=%27%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%A3%BD%E8%A1%A3%E6%96%99%E5%93%81%E6%A7%8B%E6%88%90%E6%AF%94%E9%87%91%E9%A1%8D%E3%83%99%E3%83%BC%E3%82%B9%27

この経済産業省の報告書の3ページ目に示されている。
2012年時点で27%が日本製比率である。

たしかに環境整備は必要だし、それなりに有効だといえる。
しかし、自分が見学した工場はかなり綺麗に整備されているところが多い。
それにもかかわらず、人が集まらないというのは環境が美化されていることだけでは足りないからではないか。
ルンバなんて買ったって焼け石に水であろう。

人が集まりにくい最大の理由は、給料が安いからである。
工賃が安いから給料が安くなる。そういう構図であり、工員が年金生活者ばかりだから、プラスアルファの格安の給料で何とかやりくりしている工場はめずらしくない。

ここが改善されないことには若い人が集まることはない。

じゃあ、どうすれば改善できるのかというと、これがなかなか難しい。
筆者ごときでは解決できない。

工賃を上げて、上げても売れるような製品やサービスを作るしかない。

これが大前提だが、全業者が一斉に同じことはできないし、やったところで脱落してしまう業者も数多く出現するだろう。
結局、個々の工場が目標に向かって試行錯誤を繰り返しながら地道に取り組むほかない。

救世主みたいな人が現れて一挙に全工場を救ってくれることなどありえない。
神風が吹いて急に工場が儲かるようになることもない。

そんなもんを期待するのはおバカさんだけである。

個人的には

1、凄腕工場になって確実に受注先を増やす
2、自社製品開発を成功させる
3、直営店まで構築してSPA化する
4、強いブランドと密接に取り組む

くらいのことしか考え付かない。

その中でも4になってしまうと危険性も高まる。

ある強力なブランドのみと取り組むと、そのブランドの売れ行きが陰ればもちろん打撃を受けるし、そのブランドが何年か後に取引先を変えてしまえばこれも打撃を受ける。
かつて、ユニクロの仕事のみ注力した(させられた)国内工場が、何年か後に製造先を変えられて多数倒産したことはそれを証明している。

1、2、3ともに言うのはたやすいが実現は困難を極める。

困難を極めるからこそ、事業主が「それでも残りたい」と強く思わなくては実現は絶対不可能である。

ファクトリエや自称クリエイターたちがいうような「美しい物語」では決して国内の繊維製造加工業の置かれている状況は好転しない。

筆者がファクトリエに対して疑問を持っているのは、提示する「美しい物語」もさることながら、現在、ファクトリエが進めているやり方は、各工場をファクトリエというブランドの下請け・専属にしているようにしか見えない点である。
もちろん、それで救われる工場もあるが、結局のところ工場の自立化にはつながらず、従属先をかつてのアパレル企業からファクトリエに変えることになるだけではないだろうか。

自称クリエイターの中には製造加工業を国が保護せよと口走る人もいるが、自由主義経済でそれはありえないし、これまで役に立ったかどうかは別にして何十年間も補助金・助成金が支払われており、これ以上の厚遇は製造加工業を特権化させるだけではないかとも思う。

国が経済発展したのちも、給料その他条件で「魅力的」と思われるような製造加工業のモデルケースを提示しないことには減少は止められないだろう。
しかし、そういうモデルケースは史上実現していない。それを史上初めて実現できたとき、先進国での繊維製造加工業への就職者数が増えることになる。

あまりに困難な課題すぎて、筆者程度の人間には到底、実現する方法も完成形も思い描くことができない。

インスタグラム始めました~♪
https://www.instagram.com/minamimitsuhiro/

誰がアパレルを殺すのか
杉原 淳一
日経BP社
2017-05-25


しまむらの転換路線に黄信号?

 このニュースを読んだときに、「ああ、やっぱりな」と感じた。

しまむらの株価が急落 既存店売上高が4カ月連続減
https://www.wwdjapan.com/419687

一昨年、昨年と各メディアに「勝ち組」と持ち上げられたしまむらの失速である。
しまむらの好調は、以前にこのブログでも紹介したように、冬用の保温ズボンを百万枚単位で売り上げたことによるものである。

定価は3900円で、通常のカジュアルパンツと同じくらいスマートでスリムなシルエットなのに防風性が高いというズボンで、各社とも冬用商品では人気が高い。
ユニクロもライトオンも同様の商品を販売している。

しまむらは、この「裏地あったかパンツ」の大ヒットにより久しぶりの増収増益に転じた。

それによって各メディアはしまむらを「勝ち組」と持ち上げたのだが、業界内部からはその時点で、疑問の声が上がった。

というのは、しまむらの基本的なやり方は、メーカー各社の在庫を安く仕入れてそれを安く販売する。
ただし、在庫だから売り切れ御免で、同じ物は二度と入荷されない。
というものである。

一方、裏地あったかパンツは100万枚を売り上げたわけだから、従来のやり方と異なる方法で商品調達がなされたと見るべきである。
いくら在庫がダブついている衣料品業界とはいえ、同じ商品ばかり100万枚も積み残しているメーカーなんてそうそうにあるわけがない。

100万枚の商品を調達し、販売したというやり方はユニクロ方式に近いものがあったのではないかと考えられるし、販売の思想はユニクロと同じだといえる。

少量(とは言っても、1万枚や2万枚程度は調達している)の売り切り御免方式から、100万枚単位でのユニクロ方式への転換。業界から疑問の声が上がったのはこの部分に対してである。

売り上げ規模の小さい企業なら方向転換は容易だが、5000億円を超えるような大企業になった場合、根底からやり方を変えることはなかなか難しく、莫大な労力と資金が必要になる。

そこまでのものを費やしてユニクロ方式に転換することが果たして、しまむらにとって良いことなのか?というのが業界からの疑問の声だった。

そして、今回のしまむらの失速傾向は、方法の転換にやはり無理があり、歪みが生じているのではないかと考えられる。

しかし、失速傾向とはいえ、まだ5月であり春夏物が不調だっただけで秋冬シーズンは好調に転じるかもしれない。
今後の推移を見守らないことには、失速だと決めつけることは難しい。

それにしても、やはりというべきか、衣料品という商品において、春夏物はヒット商品を作ることが難しいということが図らずもまた証明されたのではないかとも思う。

ユニクロの秋冬偏重は以前から指摘されてきたが、秋冬偏重はユニクロに限ったことではなく、衣料品ブランドは一部を除いてほとんどが秋冬偏重である。

なぜなら、秋冬商品は春夏商品に比べて、コートやジャケット類は単価が高く、売上高を増やしやすい。
さらに、気温的にも重ね着ができることから消費者の購買枚数も春夏に比べて増えやすい。

春夏、特に夏場は高気温であるため、重ね着がしにくい。
男性ならTシャツ1枚、ポロシャツ1枚に軽量ズボンというような服装が主流で極めて着用枚数が少なくなる。
女性でも似たような傾向である。

となると、まとめ買いやコーディネイト購買は少なくなり、売上高は稼ぎにくくなる。

また秋冬、とくに冬物は機能性が実感されやすいが、春夏物はどんなに機能性を高めても、暑さは軽減できない。筆者などは「どっちにしろ暑くて汗は止まらないから、夏物は機能性商品を着る必要はない」とまで思い始めている。

そうなると、吸水速乾だろうが、防臭だろうが、大々的にヒットを飛ばすことは難しい。

以前にジーユーがガウチョパンツを100万枚売ったように、春夏商品こそ、トレンド性がなければヒットしにくいともいえる。
ジーユーでガウチョが売れた理由は機能性ではなく、トレンド性と低価格である。

しまむらの「大量調達・大量販売」というユニクロ方式へのビジネスモデルの転換が正解だったかどうかがわかるのはこれからといえる。

インスタグラム始めました~♪
https://www.instagram.com/minamimitsuhiro/

ユニクロ vs しまむら(日経ビジネス人文庫)
月泉 博
日本経済新聞出版社
2009-11-03





ジーンズ専業メーカーが苦境に陥った4つの理由

 先日、久しぶりに西の方にある某ジーンズ専業メーカーの社員さんにお会いした。

御多分に漏れず、このメーカーの業績も悪く、売上高もピーク時の6割程度にまで落ち込んでおり、大規模なリストラも何度か行われている。

そういう状況なので、さぞかし社内にも危機感がみなぎっているのかと思ったら、年配層・上層部はまるで危機感がなく、そのうちにまた売れるようになると考えているとのことで、その暢気さに驚かされた。

その根拠ない自信はどこから湧いて出るのだろうか。
それくらい楽天的なら人生も楽しいだろうなあ。

ジーンズ専業メーカーが苦戦に陥った理由はさまざまある。

1、主要卸先だったジーンズ専門店チェーンの激減
2、そのジーンズ専門店チェーンのSPA化
3、他のメーカーもジーンズやカジュアルパンツも企画製造するように(できるように)なった
4、低価格商品の見た目が向上した

おもにはこの4点だと考えている。

まず、1だが、三信衣料の倒産から始まり、フロムUSA、ロードランナーの倒産、マルフルの解散、デンバーの廃業などジーンズチェーン店の倒産や廃業が相次いだ。

また生き残った大手のライトオン、マックハウス、ジーンズメイトの苦戦も挙げられる。

要するに卸売り先が減っているのである。

次に2だが、OEM/ODM業者の増加によって、ジーンズ専門店チェーンも自主企画製品が作れるようになった。
有名なところだとライトオンのバックナンバーなんていうのはその典型だが、生き残った地方専門店も自主企画製品を企画製造販売し始めている。
仕入れ100%という店が少なくなった。

3はジーンズ専門店チェーンに限らず、OEM/ODM業者の増加で、様々なブランドが自主企画のジーンズやカジュアルパンツを企画製造できるようになった。

タケオキクチやポールスミスでもオリジナルジーンズが販売されているご時世だし、ビームスやユナイテッドアローズもオリジナルジーンズを企画製造販売している。

ジーンズ専業メーカーとしての優位性はほとんどなくなっている。

4はユニクロやアダストリア、ジーユー、無印良品などの低価格ブランドが企画製造しているジーンズやカジュアルパンツの見た目が良くなり、ジーンズ専業メーカーの商品との区別が一見したくらいではつけられなくなった。

OEM/ODM業者の増加に加えて、これまでジーンズ専業メーカーとガッチリ組んでいた縫製工場や洗い加工場がそういう低価格ブランドや百貨店ブランド、セレクトショップのオリジナルジーンズの製造に携わるようになったことも大きい。

かつてナショナルブランドを手掛けていた洗い加工場が今ではアダストリアのジーンズのOEM生産を手掛けているなんてことは別に珍しいことではなくなっている。

製造・加工する工場が同じなのだから、ジーンズ専業メーカーとその他ブランドとの商品の見た目にそん色がなくなるのは当然である。

こういう状況なのだから、何らかの変革・努力なしにはジーンズ専業メーカーの業績が回復することはありえない。従来通りのままなら縮小を続けていくしかない。

苦境が続いている業種だから少しは危機感を持っているのかと思ったら、まだそんな暢気でいるのだから驚くほかない。

他の不振アパレルメーカーや小売店も年配層・上層部にはこれほど暢気坊主がそろっているのだろうか?
もしそうなら座して死を待つばかりである。

この手のジーンズメーカーのベテラン社員は以前は

「低価格ブランドや百貨店向けブランドのジーンズとワシらのジーンズは物が違う」

と言っていた。空元気なのか本当にそう思い込んでいるのかはわからなかったが。

しかし、今では製造・加工している工場も同じだし、使用しているデニム生地も同じ先から仕入れているわけで、ユニクロだってカイハラのデニム生地を使用している。
そうするとおのずと見た目はほとんど変わらなくなる。
おまけに低価格ブランドの商品価格は専業ブランドの半分程度である。

似たような物なら安い方を買う人は増えるのが当然である。

こういう状況になると、専業メーカーはえてして「わしらのジーンズはこの部分の縫製仕様が(少しだけ)異なる」なんてことを言い募るのだが、そのミクロの違いに満足する人は数少ない。
おとなしくその少数派に向けた小規模ブランドに転身すればまだしも、なぜだか昔の栄光が忘れられずに、ミクロの違いを持ってマスに売ろうとし続けている。

売上高3億円とか5億円くらいならそういうミクロの違いが大好きなマニアを集めることは可能だろうが、50億円とか100億円規模の売上高を作ることは不可能である。
ミクロの違いを支持する人はそんなにたくさん存在しない。

それにしてもここまで苦境に追い込まれながら、まったく認識が変わらないメーカーがあることには驚かされるばかりである。
このジーンズ専業メーカーはそうやって今後さらに縮小し続けていくのだろう。

インスタグラム始めました~♪
https://www.instagram.com/minamimitsuhiro/




「無くなっても誰も困らない」百貨店という業態は生き残れるか?

 大西洋・前社長が電撃解任され三越伊勢丹HDの新体制が発足したわけだが、一連の動きについては賛否両論さまざまな意見がある。

お家騒動によってイメージ低下を懸念する声も多いが、杉江新社長に期待するという声もあるし、大西・前社長の不備を指摘する声もある。

大西時代には催事が160~200もあったという報道もあり、それが事実だとすると、現場が疲弊するのも理解できる。催事で目先を変えて売り場の鮮度を保ちたかったのだろうが、ネタはそんなに落ちているわけではないから、ネタ作りだけでも現場は疲弊する。

そんな中で一連の動きに対する報道で個人的に賛成できる部分が多いのが、ダイヤモンドオンラインのこの記事である。

三越伊勢丹HD「1億かけて1銭の利益も出ない催事」が象徴する苦境
http://diamond.jp/articles/-/127814

仕入れ構造改革について「利益貢献額は目標値を上回ったが、改革に要したコストを含めればマイナスの可能性がある」と負の側面を挙げ、中小型店の展開については「ビジネスモデルを確立する前に店舗数を拡大してしまった」として見直す方針を強調。特にエムアイプラザについては、新規出店の原則凍結を打ち出すなど、大胆に見直す考えだ。

とあり、それはその通りだ。
とくにエムアイプラザやイセタンサローネ、イセタンハウスなどの中小型店は不振だといわれており、拡大路線を転換することは当然だろう。

業界内部から聞こえてくるのは、東京ミッドタウンに出店した「イセタンサローネ」と大名古屋ビルヂングに出店した「イセタンハウス」の不振の噂だ。

ただでさえ店舗面積の狭い伊勢丹新宿本店のさらにその中小型版は果たして必要なのだろうかと思ってしまう。ジェイアール大阪三越伊勢丹からリニューアルしたルクアイーレ内の伊勢丹コーナーもわずか1年ほどで縮小されてしまった。縮小されたということは業績不振だったと考えるべきである。業績が好調なら拡大もしくは維持されていたはずだからだ。

しかし、この記事では

 ただ、今回、未達に終わった中期経営計画は、杉江社長が当時、経営戦略本部長として大西前社長とともに策定したもの。社長就任時の記者会見でも「計画の立案には私も携わった」と明言している。

 杉江社長は、不採算事業の見直しを後回しにして成長事業を優先していた大西前社長に対し、「自分はコストカットに最優先に取り組むべきだと訴えていたと」主張するが、「なぜ計画策定時ではなく、今になって全否定するのか疑問は残る」と指摘する百貨店関係者は少なくない。

とも指摘しており、これもその通りである。

杉江新社長は大西時代の中期経営計画の策定にもかかわっており、それを今更まったくの他人事のように批評するのはどうかと思う。

もちろん、反対意見を述べたもののトップの意向で却下された可能性もあるが、経営戦略本部長という要職にあったのだから責任は免れない。
現場の平社員や外部の評論家とは立場が異なる。

人件費の削減は大西・前社長も取り組むべき課題だとしていた。

三越と伊勢丹が合併して、本部スタッフをほとんど減らさないままに10年が経過してしまっている。
合併したら本部スタッフは1・2倍くらいに抑えねばならないのに、これを純増ないし微減で10年過ごしてしまったとかつて大西・前社長も反省の弁を述べたことがある。

今回、大西・前社長の根回し不足という要因はあるものの、地方店リストラに現場が反発して電撃解任に至ったと公表されており、杉江新社長のリストラ構想も容易く実行できないのではないかと見られてもおかしくはない。

この記事は

もっとも中計の達成度や業績を見れば、大西路線の成果には確かに疑問符が付く。杉江体制に入り、その問題点の洗い出しがようやく始まったわけだが、かといって明確な成長戦略があるわけでもない。立て直しに残された時間は、決して多くはない。

と結ばれており、これもその通りである。
そもそも従来型百貨店を維持しながらの成長戦略なんていうものは考えられない。

それが可能ならジェイフロントリテイリングは「脱百貨店」を打ち出さなかっただろう。

これは大西・前社長も明言されたことがあるのだが、今の時代、百貨店はなくなっても誰も困らない。
百貨店従業員とその家族、納入業者とその家族は困るだろうがそれくらいである。
今の百貨店はライフラインでもなければ圧倒的なステイタスシンボルでもない。

そういう「なくても困らない物」をどのようにブランド化して、大衆から利用され続ける店にするのか。
百貨店各社にはそういう難問の解決が求められており、何らかの答えを導き出さなければ市場から退場させられてしまう。

インスタグラム始めました~♪
https://www.instagram.com/minamimitsuhiro/



産業間での人材獲得競争に敗れ続けたアパレル業界

 2年ほど前のことになるが、筆者にインポート業界の基本を教えてくださった方が引退された。
最終的には某ブランドの社長にまで上り詰められたが、親御さんの介護に専念するということで退職された。

退職のお知らせをメールでいただいたきり、その後は音信がない。

その方がまだ現場で部長をなさっていた2006年ごろのことである。
そのとき、「インポート業界には最近、20代の新入社員があまり入ってこなくなった」と自嘲気味におっしゃっていた。
理由を尋ねると

1、バブル崩壊後のファッション市場の冷え込み
2、インポートも含めたファッション業界の待遇の悪さ
3、ITなどの成長企業への注目(当時)

などを挙げられていた。

インポートブランドは景気の良し悪しは別にして高級で華やかなイメージがあるから派手好き・ミーハーな若い人がそれなりに入ってくるのではないかと思っていたが、意外に若い人たちは賢明で堅実だった。(笑)

そうこうしているうちに10年以上が経過した。

国内アパレル企業も新入社員が確保できずに人手不足が顕著になり始めたし、昔だと手軽なアルバイトと見なされてそれなりに人手が集めやすかった販売員も求人難に陥り始めた。

理由は10年前の挙げられていたインポート業界と同じだろう。

さらに2015年ごろから大卒の求人倍率は好転し始めており、少子化の影響もあり、今後はさらに大卒の就職は有利になると考えられる。
そういえば高卒の就職率もかなり高くなってきた。
2006年ごろよりも今の方がはるかに就職にとっては有利となっている。

大卒求人倍率1.78倍、学生の「売り手市場」続く リクルート
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ26H98_W7A420C1000000/

こうなると、国内アパレル企業やインポートアパレル企業にはますます人は入らなくなる。
今の状況なら好待遇の大手企業にも入社できる可能性が高まっているのである。

筆者がもし就活生の親なら、間違いなくアパレル業界ではない大手企業への入社を勧める。

以前に大先輩が、「アパレル業界は、業界間競争に負けて人材獲得が困難になった業界である」とおっしゃっていてまさしくその通りだと感じる。

アパレルが業界間競争に負けたのは何も今に始まったことではなく、バブル期から負け続けてきた。

終戦から我が国の経済を立て直す際、最初の輸出品となったのは繊維製品だった。
1ドルシャツが米国に輸出され、貿易摩擦を引き起こした。

「990円ジーンズなんてありえない!」と目を三角にしている自称クリエイターたちはこういう歴史を知らないだけであり、重化学工業が発達していない国は、低価格繊維製品を製造輸出して外貨を稼ぐのである。それが常道である。
我が国だってそれをやって経済復興の礎を築いた。
それを今、他の発展途上国がやっているだけのことである。

その後、我が国は重化学工業へと舵を切り、その後は、金融やITなどの産業に力を入れた。

繊維は国としての重点産業ではなくなり、このころから産業間競争に負けていたというのが大先輩のおっしゃる趣旨である。

アメリカ合衆国だって繊維製造業は脇役となり、金融やIT、機械製品でGDPを拡大し続けている。

昨今注目されているIT系アパレルの成長企業の多くは、業界外から来た若い経営者が動かしている。
産業間の人材獲得競争で勝った業界から来た人なので、アパレル業界たたき上げの人間よりは随分と優秀である場合が多い。

今後、アパレル産業がある程度回復することがあるとするなら、異業種出身者が業界を完全にけん引するようになったときではないかと思う。

70年代~90年代前半の繊維業界黄金期に内部で若い時代を過ごした今の年配層では、成長プランを描くことは決してできないだろう。

インスタグラム始めました~♪
https://www.instagram.com/minamimitsuhiro/

誰がアパレルを殺すのか
杉原 淳一
日経BP社
2017-05-25


ミーハーでトレンドに流されやすいアパレル経営者

 日経BP社から、5月29日に発売される「誰がアパレルを殺すのか」を贈呈され読み終えた。

これは昨年秋に日経ビジネス誌で特集された「買いたい服がない」を下敷きにして、詳細にまとめ直した本である。

国内アパレルの不振(米国でもアパレルは不振だが)の原因を過去から遡って追っているのは納得である。
その他の検証や新ビジネスモデルの例示で微妙に疑問を感じるところはあるが、全体的に見れば、100点満点で90点くらいの内容といえる。

IMG_2919

一読して損はない。

今後、何度かにわけて散発的に感想を書きたいと思う。

第1章ではアパレル業界の不振ぶりとその様々な病巣が語られており、業界をよく知る人は「あるある」と肯きながら読んでしまうだろう。

その1章のなかで、「経営もトレンドに流されやすい」とまとめられている。
これはまったくその通りで、アパレル企業各社の経営者は本当にミーハーで「トレンド」に流されやすい。
ひとくくりに年代で分けるのはどうかと思うが、若手経営者よりも古株の経営者の方が流される傾向が強いように感じる。

90年代半ばならSPA(製造小売り)化
90年代後半から2000年にかけては低価格競争
2000年代半ばはラグジュアリー化
2000年代後半ならライフスタイルブランド競争
2015年ごろからはネット通販、ウェブ通販

というのがざっとした業界の「トレンド」である。

ああ、そうそう、なんだかよく分からない「日本製ブーム」なんていうのもあった。

アパレル企業の古株経営者は本当にそのときどきのトレンドに流されやすい。
猫と杓子しかいないのではないかと思う。いっそのこと猫経営者にでもしたほうが人気が出て物販も好調になるのではないかとすら思う。

本文中でも業界関係者の言葉として

「なにかがヒットしていると聞けば、それに飛びつかずにはいられない。洋服だけでなく、経営もトレンドに流されやすい」

が挙げられており、本当にその通りである。

これは恐らく、かつての70年代・80年代・90年代前半のアパレル活況期のビジネスモデルが「ヒット商品の後追い」「先行企業のキャッチアップ」「海外ブランドからのグッドチョイス・グッドコピー」だったからで、70年代・80年代・90年代前半に現場を担当していた人が今、経営者に昇っている。
このため若いころに染みついた体質を変えられないのだと思う。

そもそも彼らは若いころからファッションが好きで、彼らの若いころのファッション好きというと「単なるミーハー」であまり理論的でないというタイプの人が多かった。
三つ子の魂百までという言葉があるように若いころからの性格というのはそう簡単には変わらない。
昨今の逆切れ暴走老人に見られるように、若いころと比べて老化による劣化も起こりうる。

「三つ子の魂百まで」タイプと「老化劣化した」タイプが多く、ミーハーで深く考えないことに拍車がかかっているといえる。

本書ではこの部分の例として昨年末に発表された三陽商会の新経営計画を引き合いに出している。

新社長の岩田功氏が発表した内容で、本書が指摘するまでもなく、新機軸のまったくない方針計画だったといえる。

「ネット通販の強化」
「ショッピングセンターや駅ビルにも販路を広げる」

など、漠然とした方針にとどまっており、方針だけを見ると陳腐すぎて劇的なV字回復はまず見込めない。

もちろん岩田新社長にも三陽商会にもいろいろなしがらみやら事情があったのだと推察するが、出てきた方針だけを見ると、「ふーん」という感じしかない。

三陽商会に限らず、苦戦に陥った旧大手アパレル各社はそろいもそろって「ネット通販の強化」を打ち出しているが、本当に「三つ子の魂百まで」だなと失笑を禁じ得ない。

以前にもこのブログで紹介したように、ネット通販市場は15兆円にまで拡大しており、それだけを見ると売上高の拡大が期待できそうな気がする。
しかし、実態はあくまでも「気がする」だけなのである。

永江一石さんが指摘するように、ネット通販の売り場の数は10年間で数十倍から数百倍にまで拡大している。

例えば、不振といわれる楽天市場でさえ4万店の出店がある。
Yahoo!ショッピングは40万店、ファッションではナンバーワンのZOZOTOWNも1000店以上の出店がある。
そしてAmazonも出店数が増えている。

良く知られた総合通販サイトでさえ、これだけの出店数がある。
さらには今では零細業者ですら、自社のウェブサイトに通販ページを併設している。
これを含めるとネットでの売り場の数は数百倍に増えたことになる。

普通に通販サイトを開設したところで埋没してしまうことは間違いない。

現在の主流だと、ブログやインスタグラム、ツイッター、フェイスブックなどのSNSから通販サイトに誘導するが、三陽商会も含めて旧大手アパレル各社はSNSに極端に弱い。若年層に企業名・ブランド名がほとんど知られていないのはそのためでもある。

SPAブームはファイブフォックスの「コムサ・デ・モード」の躍進がきっかけだった。
ワールドの寺井秀蔵・前社長は嬉々として毎年の決算発表で「SPA比率を今期これだけ高めました」と報告していたことが今では懐かしい。(笑)

低価格ブームはユニクロがきっかけ。
生産数量や生産システムの違いなどまったく気にもしないで、表示価格の低さだけをむやみに競って、その結果、各社とも大爆死した。本当に「考える」ということが苦手な人たちである。

ラグジュアリーブームは2005年ごろの景気回復がきっかけで、2008年のリーマンショックで簡単に死滅した。

洋服が売れなくなったので、雑貨が売れるライフスタイル提案型に注目したが、「単に雑貨を置いただけの店」をライフスタイル提案型ショップだと勘違いしたブランドが続出した。

これの派生形になるが、ロンハーマンのヒットを見て、西海岸型ショップも増えた。
早い話、ロンハーマンの低価格パクリ版である。

その結果、とりあえずサーフボードが飾ってあって看板を外したら区別ができない店が増えた。

そして今が競合の多さも考えずに市場規模の拡大だけで「ネット通販強化」である。

おそらく大半以上の企業が結果を出せずに終わるだろう。

経営陣から変えないと旧型アパレル企業の回復はありえないだろう。

インスタグラム始めました~♪
https://www.instagram.com/minamimitsuhiro/

誰がアパレルを殺すのか
杉原 淳一
日経BP社
2017-05-25


「日本製衣料品」の陳腐化

 これまで何度か採り上げた国産Tシャツブランド「ナインオクロック」がニューヨークで販売することが決まったらしい。

ナインオクロックがニューヨークで販売を開始!
http://www.katorimasahiro.jp/entry/2017/05/18/101621

ナインオクロックすごいね!というのが今日の趣旨ではない。

その記事の中に、今回、1年間の長きに渡って販売される日本ブランドがアイコンとともに列挙されているが、その数の多いこと。
純然たるファッションブランドばかりではないが、これほどたくさんのブランドが存在しており、それは国内ブランド全体の中ではほんの一部に過ぎない。

それこそ、日本国内にはそういうブランドが無数に存在する。

こうなると、最早「国産です」「日本製です」「職人が作ってます」みたいなだけでは消費者は驚かなくなるし、希少性はあまり感じなくなる。

早い話、「国産です」という売り方だけでは売れなくなる。

だってこんなに無数の「国産」とか「こだわり商品」があるのだから、消費者からするとどれがどう違うのかさっぱりわからない。

おまけに良いか悪いかは別として、大手企業までが「国産」を全面に打ち出した商品を販売し始めている。それも低価格で。

以前にもこのブログで書いたが、ワールドのTKまでもが5500円で「新潟ニット」とか「長崎シャツ」なんていう商品を発売している。
もう、こうなると国産衣料なんて5500円くらいで買える商品だと消費者は考えるようになる。

そろそろ国産品は次の売り方、見せ方を考えなくてはならない時期に差し掛かっているのではないかと思う。

つい先日、セメントプロデュースデザインの金谷勉社長が「国産品です、産地の商品です、というだけの売り方では注目を集められなくなる」とおっしゃっていたが、まあその通りだと思う。

じゃあ次の潮流は何なのかというとそれはだれも見えていない。

一時期、ロハスという言葉が流行ったが、今時「ロハス」なんて言ってる人はほとんどいない。
「ラグジュアリー」が注目されたこともあったが、それもほとんど死語である。

そのうちに新しい潮流がどこかから生まれたり、だれかが仕掛けたりするのではないかと思う。

翻って、これからも多くの国内繊維産地企業が自社ブランドを開始するだろう。
しかし、もう「国産」「産地」というだけの売り方では埋没してしまう時代になりつつある。

「国産」「産地」にプラスアルファして新しい基軸が求められる。

その基軸が何なのかを考えるのはなかなか厳しい作業になるがそれがないと話にならない。

「国産品なら売れる」「産地商品ならイケル」みたいな安直なやり方を勧めてくるコンサルタントやプランナーは信用すべきではない。

そのあたりを踏まえて、今後誕生するであろう「国産ブランド」には頑張ってもらいたいと思う。

インスタグラム始めました~♪
https://www.instagram.com/minamimitsuhiro/

誰がアパレルを殺すのか
杉原 淳一
日経BP社
2017-05-25


「服」以外への金の使い道が増えたから売れなくなっただけのこと

 ダイヤモンドオンラインのこの記事はなかなか的確な指摘ではないかと思う。

「百貨店とスーパー」の数字で語られる消費統計と報道の歪み
http://diamond.jp/articles/-/128461

マスコミ各社はだいたいが百貨店の売上高とスーパーの売上高で景気や消費動向を報道するが、それは実態に合っていないのではないかという指摘の記事である。

百貨店の売上高は30年前の水準である5兆円台にまで落ち込んでしまった。
理由は様々あるだろうが、店舗数の減少もその一因であるといえ、地方百貨店の閉店や倒産が響いている。

それ以前に消費市場全体に占める百貨店の割合も縮小している今、景気指標の一つとして統計採用の意味が希薄化しているのである。

もう一つの重要指標であるスーパー。こちらも16年度(15年4月から16年3月まで)の売上高は前年比1.6%減の13兆426万円だった。こちらも97年の16兆8635億円をピークにすでに3兆円以上、減り続ける市場である。

世間では百貨店売上高の減少ばかりに注目が集まっているが、スーパーの売上高も順調に減っているのであり、今後も順調に減り続けるのではないかと思う。逆にスーパーの売上高が増える要因を思いつかない。

にも拘わらず、

しかし、毎月、日本百貨店協会によって発表される百貨店の売上高をマスコミも重宝しているのが現状である。キチンと統計数字をレク付きで発表してくれるのは日本百貨店協会とスーパーの業界団体である日本チェーンストア協会しかなく、マスコミ各社もこの数字で消費動向の報道をするしかないのが現状である。

という状態であり、これはかつて業界紙に属したわが身を振り返ってもまったくその通りだとしか言いようがない。

で、この記事は、例えば15兆円以上にまで成長したネット通販や6兆円を越えるようになったドラッグストア、さらに7兆円規模の家電量販店が反映されていないと指摘しており、これもまったくその通りだといえる。

しかしながら、ようやく最近はコンビニエンスストアの売り上げも集計するようになっているが、依然として各地の経済産業局の管内の経済動向や、各地区の財務局による経済情勢分析でも地元の百貨店やスーパーの動向しか見ていない。

ここで改めて、衣料品不振や百貨店不振の原因が可視化されたように感じる。

要するに個人の金の使い道が増えたのである。

2000年代まではネット通販もなかったし、酒、車、服くらいしか金の使い道がなかった。
そのときに比べると個人の趣味のバリエーションは格段に増えている。

ジョギングをする人もいるだろうし、ロードバイクをする人もいる。
釣りもいるだろうし、携帯電話やパソコンに金をかける人もいる。
ガンプラを買う人もいるし、ゲームに金を使う人もいる。
何が面白いのかわからないがソシャゲに課金する人もいる。
女性ではないからあまり詳しくないが、コスメや化粧品だってバリエーションが増えている。
あからさまに化粧をする男性は少ないが、美容液などを常用する人は以前よりは増えている。

となると、洋服に使える金額は減らざるを得ない。

そこにバブル崩壊からのデフレが始まり衣料品の平均価格も低下した。

日本のアパレル小売り市場は10兆円を割り込んでおり、91年は15兆円以上あったのだから実に4割減となっている。
洋服自体の売れる枚数が減った部分もあるだろうが、平均価格が大きく下落したことも響いている。

一方で、20億点だった衣料品の国内流通点数は39億点にまで増えている。
これも低価格ブランドの大量生産・大量販売によるものである。

市場規模は4割減になったが、流通する商品量は倍増しているということになり、減少したパイを各ブランドで分け合っているというのが正しい現状といえる。
また、それを分け合うブランド数もこの20年間の間に増えているのではないかと思う。

ブランド数についての統計は存在しないが、零細規模のブランドを含めるとそれこそ無数にある。
OEM/ODM業者の急増によって、金さえ払えばだれでも洋服ブランドが立ち上げられるようになっている。(長続きできるかどうかは別として)

結局、洋服も含めた全ジャンルがそろって需要が増加することはなく、何かが増えればその分、ほかの何かへの支出が削られるのであり、洋服は削られる側であるといえる。

さらに洋服分野だけでも同じことがいえる。どこかのブランドの売上高が増えるということは、他のブランドの売上高が減るということである。とくに20年間、所得が増えていない状況が続いているからその傾向は顕著にならざるを得ない。全ブランドがそろって売上高を伸ばすということはありえない。

考えてみてもらいたいが、毎月5万円の可処分所得があったとして、何もなければ5万円分の洋服を買っているところに、今月20,000円でパーフェクトグレードユニコーンガンダムのプラモを買ったとすると、3万円分しか洋服は買わなくなる。手取りは急には増えないからどこかの支出を減らさざるを得ない。

また、有名ブランドで5万円の服を買ってしまったとしたら、次の給料日までは他のブランドで服は一切買わずに乗り切る。

国内市場規模というのはそういう個人の集合体だから、個人の消費の動向とある部分では似るのが当然といえる。

となると、服が売れないのは日本の市場規模が小さいからでもなく、日本の消費者がアホだからでもなく、日本の消費者がファッションに興味を持たなくなったからでもない。まあ、ジジイ世代の考える「ファッション」には興味は持たなくなっているが。

洋服が売れるようになるには、全体の所得を増やすしかないし、各ブランドは売れたければ39億点に埋没しないような売り方・見せ方・伝え方をするほかない。

その事実が直視できないなら、売れないままに市場から退場するほかない。

インスタグラム始めました~♪
https://www.instagram.com/minamimitsuhiro/





1 / 2ページ

©Style Picks Co., Ltd.