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今年買った物の中から選ぶ「ワシのコスパオブザイヤー2016」

 早いものでもうすぐ2016年も終わる。
まさに光陰矢の如しで、死ぬまであっという間に過ぎるだろう。
生きていることは苦しいことの方が多いから、とっとと人生が終わる方が苦痛も少なくて良いのだろうとも思う。

長生きしたいとか永遠に生きたいとか言ってる奴らはよほどにリア充なのだろう。

今年の更新はこれが最後なので、今日はお気楽に、2016年に買った物の中から選んだ「コスパオブザイヤー商品」を紹介してみたい。

【ガンプラ編】
あんまり趣味がないし、休みの時に暇な時間があるので、月に1つか2つ、ガンダムのプラモデルを作るようになた。作るといっても、最近のは、色分けがほぼ完璧だから、パチパチとはめるだけである。

子供のころに並んでまで買ったガンプラとは全然違う。格段にかっこよくなっている。

真のマニアなら「値段にいとめはつけない」というところだろうが、こちらは似非マニアだから、できるだけ安く買う方がうれしい。
少なくとも定価では買いたくない。家電量販店なら2割引き、Amazonや価格コムで掘り出し物を探せば40%以上オフがある。
しかし、洋服とは異なり、半額以下とか7割引きとか「8割引きからレジにてさらに2割引き」なんていう投げ売りはない。

一般的に安く買うなら「ネット通販」と思われているが、実店舗でも特定の品番に絞って破格値の値引きをすることがある。

近所のジョーシンで見つけた破格値は、この100分の1「シュヴァルベグレイズ(マクギリス用)」である。
定価3000円(税抜き)が980円(同)にまで値引きされていた。
ここまでの値引きはガンプラでは珍しい。

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右のフレームを組み立ててからその上から装甲を貼り付けると左のようになる。
昔のガンプラと異なり、可動域も実に広くて劇中のポーズがほぼ再現できる。
良い時代になったものだ。

【ファッション編】

洋服に関しては様々ある。
なんだかんだと毎月3枚くらいは買っているから年間で30枚以上は買っていることになる。
どれも値引き品だが。

まず、今年の2月に買ったユニクロの耳当てである。
定価1500円が190円にまで値引きされていた。
買ってからまだ一度も使ったことがないが、本格的な寒波が来たら自転車に乗るときに着用したい。

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それからジーユーでの初買い物となった迷彩柄のキャンバス素材スリッポンシューズである。
これは790円に値下がりしたのを買った。
ジーユーの靴は1000円未満まで下がるので非常にお買い得である。

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昨年はほとんど買わなかったライトオンの値下げ品も今年は久しぶりに買った。
中でもこの防水M65タイプのウィンドブレーカーは良かった。
定価7900円が1900円にまで値下がりしていた。
帝人フロンティアの「ウォーターバリア」という防水素材で作られているが、通気性はない。
来年は、ブロックテックなどの「透湿防水素材」を試してその感想を報告したいと思う。
もちろん定価では買わない。

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それから西友で買った4枚1000円のレナウンのボクサーブリーフ。
とりあえず1枚だけを着用して洗濯を繰り返しているが、なかなか丈夫でへたりにくい。
耐久性・堅牢度ともに抜群であり、かなりコストパフォーマンスに優れいている。

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12月に買ったビッグジョン×ブルースタンダードのウール混ツイードパンツ。
これは6000円が990円に値下がりしていた。
形はノータックの細身ストレートで、Mサイズを選んだ。ストレッチ性がないが、綿100%の厚手ジーンズに比べるとまだ動きやすい。

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それから年末ギリギリで買ってしまったユニクロUのミラノリブVネックセーター。
今秋から始まったユニクロ×ルメールの新しいライン「ユニクロU」だが、その投げ売り度合がすさまじい。
綿100%のジーンズやパンツはすでに990円に値下がりしているし、セーター各種・アウター各種も値引きされている。

その中でたまたま見つけたミラノリブVネックセーターだが、定価4990円が1290円にまで値下がりしており、店舗によってはまだ在庫がある。色とサイズに偏りが出始めているが、欲しい人は買って損はしない。
筆者はネイビーのMサイズを買った。
ウール88%のミラノリブで1290円という値段はすごい。この値引きに勝てるブランドはないと思う。
でも定価なら買っていなかった。

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【食品編】
スーパー万代と西友での値引き品を主に食べて暮らしているが、今回は自販機で見つけたジュースを挙げたい。
これ、ドヤ街ではなく、心斎橋界隈で見つけたものである。
大阪市の中心地でこんな自販機を見つけるとは。
大阪市は各所に100円自販機が多く設置され、自販機で定価でジュースを買う必要がない土地だが、最近は100円以下自販機というのもけっこう設置されるようになり、ますます定価で買う必要がなくなっている。

ドデカミンという栄養系?ドリンクがあるが、これはあまり見かけないバージョンで在庫がダブついていたのだろう。それにしても500ミリリットルで30円というのはすごい。
思わず買って飲んでしまったが、効いたかどうかはよく分からない。格別に体調がよくなったわけでもない。

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【iPhoneアクセサリー編】

iPhoneはプロテクターやら画面保護シートやら充電ケーブルやらモバイルバッテリーやら、付属品が多くて困る。筆者はAppleファンでもジョブズファンでもiPhoneファンでもないから、思い入れは全くない。
できればこういう付属品に金は使いたくない。
しかし、ライトニングケーブルはクソだから定期的に傷むので買い替える必要がある。
保護シートも定期的に買い替える必要がある。
だからできればタダでほしいがそういうわけにはいかないから、できるだけ安い物を選ぶ。

ただ、家電量販店へ行っても劇的に安い商品はあまりない。
充電ケーブルなんて1000円越えがザラだし、画面保護シートも700円とか800円もする。

しかし、ネットで探せば見つかるものである。
巻き取り式の充電ケーブルがヨドバシカメラドットコムで850円(税込み)で売られていた。
しかも送料無料である。
色とか形なんてどうでもいい。充電できればそれで良かろうなのだ!(カーズ風に)

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(ウィルコム WILLCOM ナビックス
NB-USBLN85-BK [巻取式充電通信ケーブル Lightningコネクタ 85cm ブラック] )

また保護シートもYahoo!ショッピングで127円(税込み)で売られているのを見つけた。しかも1ポイント分値引きで126円となった。
これも送料無料だ。

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まあ、ざっと選ぶとこんなところになる。

さて、2017年はどんな投げ売り品に出会うことができるだろうか。
2017年もコスパの良い商品に巡り合えることを願って、今年最後のブログ更新としたい。

皆さま、良いお年を~




ナンガのダウンジャケットが売れた理由を考えてみた

 こんな記事を見つけたので賛否を書いてみたい。

低価格国産ダウン「ナンガ」が売れまくる理由
3分の1の価格で「水沢ダウン」と真っ向勝負
http://toyokeizai.net/articles/-/151232

ナンガとはナンダ?ってなダジャレを言ってみたくなるが、ナンガとは何か?
業界の人ならほとんどがご存知だと思うが、そうではない人も読んでおられるので、ちょっとだけ解説をすると、ナンガとは滋賀のダウンジャケット工場である。

この記事を評価する点は、ナンガを大々的に取り上げたことである。
業界内では5年以上前から話題になっていたが、大手経済誌がようやく取り上げた。

ナンガが売れた理由は、記事中にもあるが、国産でありながら3万円前後のダウンジャケットを製造している点である。
正確にいうと価格もいくつかのグレードがあり、2万円台後半~5万円くらいまでの商品を展開している。

大手セレクトショップだけでなく、地域チェーン店や卸売り型ブランドなども数多く、このナンガに注文を入れている。
身の回りの感想にすぎないが、中間価格帯の国産ダウンジャケットを製造してくれるところというとこのナンガが真っ先に思い浮かぶ。

この7~8年間でそれほどに業界内では知名度を高めた。

この記事の評価できない点はあたかもデサントの水沢ダウンとの競合であるかのような見出しを付けたこと。
デサントの最高級国産ダウンジャケットブランド「水沢ダウン」は10万円前後の価格で、高スペックな商品をファッション化したものであり、ナンガとは顧客層やターゲット、価格帯が全く違う。

ナンガが名をあげ始めたのは8年ほど前で、その当時、水沢ダウンもメジャーな存在ではなかった。
そもそも競合するターゲットとしてナンガが捕捉する必要性がない。
おそらく東洋経済は同じ「国産ダウン」という切り口のみで対比させたかったのだろうが、スポーツメーカーとして高機能・高スペックを重視するスポーツウェアメーカーのデサントと、羽根布団メーカーから転身したナンガではブランドの成り立ち、開発思想、顧客ターゲット、価格帯がすべて異なる。

極端に言えば、同じメルトンのダッフルコートだからといって、グローバーオールとユニクロの商品を比較して「真っ向勝負」と煽るようなものである。

また水沢ダウンとナンガでは生産数量も異なる。記事ではナンガは年間生産数5万枚とあるが、水沢ダウンは関係者によると、フル操業しても1万枚未満の生産数量しか実現できないという。

こういう煽り方はわかりやすい反面、ミスリードも引き起こす。

記事では2015年秋冬(昨年秋から今年初めにかけてのシーズン)を「売れに売れた」と表現しているが、実際は確実に納品するために受注を絞った。
なぜなら、受注が殺到した一昨年秋冬(2014年秋冬)には生産キャパを越えてしまって納品遅れを多数起こしたため、その反省に立ったからだ。

以前からナンガに生産を依頼していたあるカジュアルブランドの企画担当者は、「うちは以前からの付き合いがあったから注文を受けてもらえたが、キャパオーバーの反省から発注を断られたブランドもけっこうあったと耳にしている」とその当時話していた。

ナンガがセレクトショップや卸売り型ブランドに重宝された理由はなんだろうか。
個人的に思うところを挙げてみる。

1、別注企画やダブルネームに柔軟に対応できる
2、国産なのに値ごろ感がある(激安ではないが、手の届かない範囲でもない)
3、国産ブームの波に乗れた
4、業界人特有の横並び思想が働いた

この4点ではないかと見ている。

その中でも個人的に重要だと思うのが、やっぱり2ではないか。
今でも国内産地ブランドやモノづくり脳の人々は「国産だから最高価格で」みたいな主張をするが、10万円のダウンジャケットなんてなかなか気軽に買えるものではない。

だいたい1着の洋服に10万円をつぎ込める人はよほどの高収入か、極度の服マニアのどちらかで、どちらもその人口は少ない。
そんなニッチな市場に向けて「国産ガー」とか「伝統の技法ガー」とか「本物の良さガー」と叫んでみても、大量に売れるわけもない。
おまけにその価格帯はラグジュアリーブランドとの競合になる。
世界的にステイタスのあるラグジュアリーブランドと、ほとんど知名度のない産地ブランドが競争をして勝てるはずがない。

国内生産で激安品を作ることはできないから、じゃあ、現実的な選択肢としては3万円中心のダウンジャケットということになる。
ユニクロのシームレスダウンジャケットだって1万3000円くらいはするのだから、3万円前後というのはそう高い価格設定ではない。(消費者視点では)

国内ブランドは個人的にはこのナンガの価格戦略を見習うべきだと思っている。

あと、4も重要で、業界人には独特の「横並び思想」がある。
まあ、個人的にはそれは弊害にしか感じられないのだが。(笑)

洋服不況だから余計にその「横並び思想」が強まっており、ますます店頭を画一的にしており、それがさらに洋服不況を強めるという悪循環スパイラルに陥っているが、それを断ち切る勇気と分析力を持ち合わせている業界人はほとんどいない。

「〇〇店で××という商品が売れた」と耳にすると、自店の顧客層やターゲットも無視して、××を仕入れる。
しかし、顧客層やターゲット、価格帯が違うから必ずしも売れるわけではないが、そんなことすら考えずに、とりあえず自店に並べて安心してしまう。

また「大手の〇〇、有名店の〇〇が仕入れた」と聞くと、考えなしに追随して自店も仕入れる。
大手や有名店と競争してもあらゆる点で勝ち目がないにもかかわらず。

究極は他社の売れ筋商品の完全コピーを製造販売することである。

この業界独特の「横並び思想」が発揮されると、特定のブランドは急速に広まることになる。
それはナンガに限ったことではない。デザイナーズブランドでもアウトドアブランドでもスポーツブランドでも同じだ。
一時期、ネコも杓子もニューバランスのスニーカーを店頭に並べていたのはその一例といえる。

しかし、ナンガはうまく業態転換を図り、知名度を向上することに成功した。
どの企業でもできることではないが、個人的にはナンガに続くような国内製造企業が登場してもらいたいと思ってしまう。それは筆者の甘さなのかもしれないが。




サンプル縫製工場レオパールの社長インタビューは一読の価値あり

 久しぶりに面白く読めて、内容にも激しく賛同できる記事を拝読した。

「この1着が1億円になる!」サンプル縫製一筋30年、クチュールデザイナーから転身
https://www.wwdjapan.com/363297

サンプル専門の縫製工場、レオパールの社長インタビューである。

実は昨年5月に開催した東京テキスタイル・マルシェにレオパールの社員の方が来てくださり、社長は相当に面白い方だと教えてくださったので、どんな方かと興味を持っていたのだが、この記事からは期待以上に面白い方のように感じられた。

サンプル縫製のみで、年商が億に達し、自社ビルまで建てられたのだから大したものである。

このインタビューで印象的だったのが、社長は一度も「物作りガー」とか「本物の良さガー」とか「最近の消費者の感性は劣化している」と語っておられないところである。
これらのキーワードが出てきた時点で、「単なる物作り脳」と判断して、適度に流し読みするのだが、そういう「単なる物作り脳」という人ではなかったようで、相当に説得力がある。

その中で非常に共感したのが、

森田:ファッションは生地や縫製ではなく、紡ぎ出すストーリーにこそ意味がある。ストーリーがないんだから売れないのは当たり前。あと、これは持論だけど、あまりにも服がカジュアルになりすぎている。若年層でハロウィンが盛り上がったり、制服のアイドルに人気が出るのは、その反動じゃないかな。フォーマルな服装の本質って、コスプレだからさ。

という一節である。

生地や縫製というスペックは重要であることは言うまでもないが、筆者も含めて業界の人間はそこに過度にとらわれすぎる傾向がある。
しかし、生地と縫製仕様を過度に重要視し過ぎると、じゃあ、低価格ブランドが同じ生地を使えばそちらの方がお得じゃないかということになる。
消費者もそちらで買う。

ユニクロが超大ロットを生かして、カイハラのデニム生地やカシミヤを使用して、それを低価格で売れば、それがお買い得ということになる。
もちろん、カイハラのデニム生地もカシミヤもピンキリだから高額品とまるっきり同じということにはならないが、少なくとも世間的には同等と見なされやすい。

生地と縫製仕様というスペックを最大限重視して組み立てるとユニクロというブランドになる。

百貨店ブランド・ファッションビルブランドが苦戦している原因はさまざまあり、一言でまとめることは難しいが、社長がインタビューで答えておられるように「ストーリーがないから」ということも一つの原因だといえる。

「ストーリーがない」ということは、生地とか縫製仕様というスペック、もしくは洋服の色柄・形といった「見た目」での勝負ということになる。
だったら、スペックがそこそこ高くて、見た目がそこそこにかっこよくて、値段がそこそこ安い商品というものが一番お買い得ということになる。

だからユニクロや低価格SPA、ファストファッションに負ける。

かといって、嘘のストーリーや何倍にも膨らませたような過剰なストーリーも気味が悪い。
自分でデザインしたわけでもなく、製造したわけでもないのに、滔々と「物作り」について語る自称デザイナーとかパクリエイターはこの業界には掃いて捨てるほどいるが、そういう詐欺師まがいの「ストーリー作り」も逆に業界から消費者を遠ざける結果にしかなっていない。

一方で、国内の職人の弊害についても語っておられ、この部分も共感できる。

森田:日本だと縫製の代金って、本当は何の根拠もないのに、小売価格から逆算して決められているから。本来は手間や時間、技術に応じて決めるべきなんだよ。でも一方で、僕はお金儲けは絶対に必要だと思っているけど、縫製工場や技術者だって請求書一つ自分で送ったことのない人も多い。

僕が1985年に子どもが小学校に入って、お父さんが今で言うフリーターみたいだとかっこ悪いから、個人事業から法人化して株式会社にしたときも、同業者からは職人がなぜ株式会社なんて作るんだって言われたよ。正直言って個人事業のほうがずっと儲かってたけど、いま考えれば法人化して良かった。商社や大手メーカーが口座を作りやすいし、その後、時代に対応できなかった小さな会社は淘汰された。かなり細かく工程分析をした上で工程管理をIT化していたからこそ、今でも生き残っていられる。

請求書一つ自分で送ったことがないなら、それは完全なる下請け業者でしかなく、完全なる下請け業者は常に下請けとしてしか扱われない。
技術者が重視されないのは、自業自得という側面もあるというわけである。

またIT化していないことも製造加工業者、原料業者の自殺行為ともいえる。

某原料関係の会社で、50歳前後の営業マンがおられるそうだが、その若さにも拘わらずEメールも使えないし、WEB検索のやり方すら知らないといわれている。
今時、60代くらいの専業主婦でもインターネットでレストランの予約ができるのに何を言っているのかと思う。

ウェブサイトすら持っていない製造加工場も珍しくない。
何かを調べるときにはまずウェブ検索する時代だから、ウェブサイトを持っていなければ、その検索には永遠に引っかからず、人に知られることもない。

知られていないのは存在しないのも同然なのである。
だから仕事の依頼が来ない。至極当然の結果である。

そんなわけで、レオパールは残るべくして残っていると改めて感じた。



執拗に告知を繰り返しても消費者にはやっと覚えてもらえる程度

 経営不振の引責で、三陽商会の社長交代が先日発表となった。

ここに至るまで様々なメディアに三陽商会苦戦の原因を報道したが、やたらと厳しすぎるなあと感じられる記事もあったし、マッキントッシュロンドンの不振のみにクローズアップされた記事が多かったと感じている。

オチマーケティングオフィスの生地雅之さんがまとめられている不振の原因が最も的確ではないかと思うので、ここに引用してご紹介したい。

http://www.apalog.com/ochi/archive/385

原因は、唯一ブランド戦略ミス(マーケットの読み違い)です。

1、バーバリーがグローバル戦略を取り、ライセンス契約の喪失が見えていたのにも関わらず、自社ブランドを準備出来ていなかったこと。

2.マッキントッシュフィロソフィーが百貨店のボリュームゾーンで広がっていたにも関わらず、格上のブランド「マッキントッシュロンドン」を仕掛けた事。(下から上では逆)

3.クレストブリッジブルーレーベルやブラックレーベルは、バーバリーのブルーレベルとブラックレーベルの企画力と同じだから、ある程度(80%程度)売れると判断した事。
(バーバリーと無名のクレストブリッジ(のブランド認知度・信頼度の差)

4.前社長の力で、百貨店の80%以上の売場を残せたにも関わらず、ブランド力のない商品で
  売上を確保できなかった事。

単品企画力があっても全体のマーチャンダイジング力不足で、良いものでも売れないのです。作り手・売り手の良いものであり、買い手・使い手の良いものではないからなのです。

とのことである。

この中で個人的にも感じているのが、3である。
これは広報宣伝、告知のミスともいえるのだが、発売元と消費者の認識のズレというのは常に起きる。
発売元とすると、その商品を毎日触っており、ブランド開始まで毎日のように準備しているから、そのブランドについては何から何まで熟知している。(当たり前のことだが)

当然、三陽商会のスタッフも「クレストブリッジ」のことは熟知しており、それがバーバリー社との新しいライセンス契約によるものは、社員にとっては「当たり前」のことになっていただろう。

しかし、世間の一般消費者には「クレストブリッジ=バーバリーとの新契約ブランド」という情報はほとんど認識されていなかった。
報道されなかったわけではない。報道もされていたがその程度では一般消費者の記憶に残るほどではなかったということなのである。

実際に、筆者が講義するファッション専門学校で「クレストブリッジがバーバリーとの契約ブランドだと知っている人」と尋ねると、9割の学生は知らなった。
答えてくれた学生の数を合計すると40人弱くらいになるだろう。

「最近の学生は勉強不足」なんて老害みたいな脊髄反射をするなかれ。
そんな老害レスポンスにはまったく価値がない。

ここで注目しなくてはならないのは、世間一般よりもファッションに比較的に興味のある専門学校生のほとんどが知らなかったという事実である。
専門学校生でのこの程度なら、世間一般の消費者の認知度はもっと低いということになる。

これは明らかに三陽商会の広報宣伝、告知のミスである。

おそらく、スタッフは自分たちにとって「当たり前」のことだから、執拗にしつこく広報宣伝、告知をしなかったのだろうと思う。
筆者が目にした範囲でもそれほど「クレストブリッジ=バーバリーの新契約ブランド」ということは強調されていなかった。

これは、発売元では「当たり前」のことでも、消費者には何一つ伝わっていないという好例である。

これは三陽商会に限らず、筆者も含めてすべての企業やブランドにいえることで、当事者にとっては「当たり前」のことでも、執拗に何度も広報宣伝をしないと消費者には認知されないということである。

そしてそういう事態が、衣料品業界では頻繁に起きている。
だから衣料品不振にもつながっている側面がある。

例えば、全国の生地産地の人たちと話していると、産地の人たちは「自分たちの産地のことは業界全体で知られている」と感じていることがわかる。
しかし、製造加工に携わっていない業界関係者に尋ねると、その産地については「ほとんど知らない」という答えが返ってくることは珍しくない。

もちろん、この場合は業界関係者に対して「不勉強だ」と指摘することは当然だとしても、逆に産地関係者はもっと執拗にしつこく、広報・告知をするべきなのである。
むしろそれくらいでやっと覚えてもらえるくらいなのである。

三陽商会にとっては「クレストブリッジ=バーバリー」の認識だったが、一般消費者にとっては「クレストブリッジ=謎の新ブランド」であり、バーバリーに結び付けて考える余地は皆無だった。
そのため、バーバリーブルーレーベル、ブラックレーベルよりも大きく売れ行きが劣ることになった。

知名度は皆無なのに、価格はバーバリーブルーレーベル、ブラックレーベルと同格なのである。
無名のくせに高いブランドなんて売れるはずもない。

そしてそのブランドの背景やストーリーが語られることも不足していた。
正体不明で価格が高い無名ブランドなんて買いたいと思う消費者なんて存在するはずがない。

クレストブリッジに関しては、三陽商会だけの問題ではなく、発売元と消費者の認知のギャップと、広報告知の在り方を考えるうえでの格好の好材料といえるのではないか。


(ブルーレーベルクレストブリッジ)ニット セーター38
BLUE LABEL CRESTBRIDGE (ブルーレーベルクレストブリッジ)



洋服のデフレはさらに進んでいる?

 少し前に、繊研プラスにこんな記事が掲載された。

衣料品消費市場 価格上昇で5年連続増加
http://www.senken.co.jp/news/management/clothing-consumption-market-161123/

 繊研新聞社が推定した15年の日本の衣料消費市場の規模は前年比2・6%増加した。各種統計から算出した市場への商品供給量は5・6%減少した。円安の進行などで服の平均価格も上昇した。

とのことだが、多くの方々に価格が上昇した実感はないだろうと思う。
これは2015年の統計なので、2016年の統計が発表されれば、価格は下がることになるのではないだろうかと見ている。

とはいえ、昨年も洋服の価格が上がった実感は乏しかったと思うが、例えばユニクロや無印良品は値上げを敢行した。理由は利益額を増やすためというよりも原材料費の高騰や円安基調によるところが大きいと考えられる。

しかし、一時期の原材料費高騰が落ち着いたため、ユニクロは2016年は再び値下げに転じている。
無印良品は来春からさらに値下げを行うと発表している。

そういうことを考慮すると2016年の平均価格は下落すると考えられるが、実際に店頭を見て歩くと、洋服の価格は極限まで下がっていると感じられる。

ユニクロとクリストフ・ルメールとのコラボライン「ユニクロU」の値下げは凄まじい。
メンズのズボンは990円に値下がりしているし、セーター類は1290円~3990円に値下がりしている。
ウール混のテイラードジャケットは3990円だし、ダウンジャケットは4990円である。

下手をすると通常ラインよりも安いくらいに値下がりしており、ルメールの商品がここまで値下げされていて良いのだろうかと思いながら、もう一段の値下げになったら買おうと狙っている(笑)。

それはさておき。

ジーユーの低価格攻勢も凄まじい。
以前は安かろう悪かろう一辺倒だったジーユーだが、最近は、安かろうときどき良かろうになっている。
選択眼さえ確かなら恐ろしいほどの安値でそこそこに良い物が買えてしまう。

以前に、アクリル56%・綿44%のニット帽を390円で買ったことをこのブログで書いたが、そのニット帽が今は190円まで下がっている。
さすがの筆者も190円にまで値下がりすることは読めなかった。

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ついでにいうと、ウール混のハットも190円に値下がりしている。
ウール混のハットをこの値段で販売しているブランドはジーユー以外に存在しない。
はっきり言ってバッタ屋よりも安い。

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凄まじい安さである。

久しぶりにジーンズメイトに立ち寄ってみた。
ジーンズメイトもまた激安の宝庫である。

日本市場から撤退したインポートジーンズ「シマロン」の在庫品が990円に値下げされている。
元値は10000円だから9割引き強ということになる。
これはバッタ屋並みの値引きである。

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筆者は、以前にジーンズメイトのプライベートブランド「ブルースタンダード」で、1900円に値下げされていたウール混のスラックスを買おうと思っていた。これはおそらく今季物ではなく昨年物だろう。
といっても、筆者はカネなしだから、12月下旬まで残っていたら買おうと思っていたのだが、今回、まだ残っているかどうかを確かめてみた。

元にあった場所になくなっており、「やっぱり売れたか」とちょっとがっかりしていたら、置き場所が移動していた。
ラックにかけられていたのである。

値札を見ると、おおー、990円に値下がりしている。

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元値が6000円だから実に84・5%引きである。
これは即決で買った。

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しかもこのウールスラックスはビッグジョンとのコラボだからそこはそれなりに通常のラインよりも魅力的である。
以前ほどの勢いがなくなったビッグジョンだが、やっぱりまだ筆者にとってはネームバリューがそれなりに残っている。

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ビッグジョンとのコラボスラックスが84・5%引きで990円になっているのはめちゃくちゃにお買い得だと思う。

組成はウール55%・ポリエステル35%・アクリル5%・その他5%の四者混素材である。
ストレッチ機能がないのは残念だが、この値段で文句は言えない。
これもはっきり言ってバッタ屋並みの値下がりである。

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昨日も書いたように、昨年物といえどもライトオンでは丸八布団とのコラボダウンジャケットが7900円(税抜き)にまで値下がりしているし、無印良品も今秋冬商品の3分の1くらいの型数が30~50%オフにすでに値下がりしている。

今まで、9割引きとか190円なんていう販売価格はバッタ屋くらいでしか見ることができなかったが、それが通常の常設店舗で見られるようになっているというのは、かなり衝撃的だといえる。
洋服の価格は本当に極限まで値下がりしていると感じる。

洋服のデフレ傾向はさらに進んでいると考えたほうが実情に適っているだろう。
そんなわけで、年末年始にかけて投げ売り品を買い漁りたいと思っている。





正月バーゲンへの期待って、昔ほどは高くないのでは?

 ルミネが冬バーゲンを1月3日スタートにすることでバーゲン後倒し論争には終止符が打たれた。
後倒し組は三越伊勢丹を除くとHEPファイブやラフォーレ原宿などの一部のファッションビルだけになった。

以前も書いたように夏のバーゲンというのは、消費者もそれほど待ち望んでいないから6月末からやろうが、7月1日からやろうが、7月10日からやろうがあまり大勢に影響ない。

夏服はスーツ類以外は軽衣料が多いから、個人的には消耗品にしか見えない。
メンズだとTシャツ、ポロシャツ、半袖シャツの3種類しかない。
Tシャツなんて消耗品の最たる例だし、ポロシャツだって似たようなものだ。
だから、それこそ無印良品あたりの投げ売り品を買えばそれで良いのではないかと思っている。

夏服は重ね着できない分、コーディネイト云々より、体格と体型と顔立ちの良し悪しがすべてを決める。

体格と体型と顔立ちが良い奴は無地のポロシャツだけでもさまになるし、体格と体型と顔立ちが残念な人は高級ブランドのTシャツを着ても残念な見た目にしかならない。

それが夏服だ。

冬服は重ね着のコーディネイトが楽しめる分、体格と体型と顔立ちの悪さをカバーできる。
重ね着ができるし、暑いのが苦手なので筆者も冬は大好きで、毎年冬のバーゲンを楽しみにしていたのだが、なんだか最近は正月のバーゲンで買う商品が減っていると気が付いた。

もちろん、筆者が加齢によって服装への興味が薄れていることは否定しない。
50歳手前になると服装に限らずあらゆる物事への興味が薄れる。

しかし、それでも5年位前(40歳前後)までは「金がない」とか言いながら、正月のバーゲンでは3万円くらいはまとめ買いをしていた。

それが昨年だと正月のバーゲンで買ったのは数千円程度になっているし、来年年明けの正月バーゲンで買いたい物は今のところ5000円くらいしかない。
正月バーゲンが一段落した投げ売り価格でならもう少し買うが、正月から15日くらいまでにどうしても買いたい商品はほんの2,3点あるかないかである。

その理由は、正月バーゲンを待たずとも年中安売りされているからである。

ユニクロやその他の大手SPAブランドは商品の入荷後一定期間が経過すると値引きされ始める。
言ってみれば年がら年中値引きされた商品が店内にあるということになる。

超トレンド品を除けば、今の洋服、ファッション嗜好なんて1年くらいではそう大きく変わらないから、安売りされている商品を着ても誰もおかしいとは思わない。

例えば、繊研新聞によると今年のメンズアウターの売れ筋1位はMA-1タイプだが、記事に書かれているようにこれももう3年くらい続いている売れ筋である。逆に言えば3年くらい前に買った商品を着ていてもまったく問題ないということになる。

逆にレディースアパレルでは去年の秋冬に売れたコーディガンが今年の秋冬は壊滅的に悪いそうだが、じゃあコーディガンを着ている女性が皆無かというとそんなことはない。
結構な割合で去年買ったと思われるコーディガンを着ている女性を見かける。
コーディガンの場合は、欲しい人は去年に買ってるし、同じ商品を色柄を変えて今年も買おうと思う人が少なかったというだけで、着用自体はおかしいと思われてはいない。

それほど大きく消費者の服装はこの数年は変わっていないと感じられる。

現に5年前に買ったダウンベストを今でも着ているし、それがひどくおかしいということもない。

そういう風潮だから毎年、バーゲンで買い足す・買い替えねばならないアイテムが年々減少している気がする。

また、セールの早期化で11月・12月にかなりの値引きが店頭・ネットでされているケースも増えた。

ナノユニバースなんかはネットですでに30~40%オフになっているアイテムが多いし、ライトオンもしかりだ。
ライトオンの昨年秋冬に投入したマルハチダウンは、売れ残りを一旦格納して、12月に入ってから7900円に値下げして販売している。

ストライプインターナショナルは前にも書いた通り、常に安売りされている。

自分自身の買い方も5年位前までのように1月に集中する度合いが年々緩和されていて、それこそ毎月まんべんなく投げ売り品・お買い得品を買っている傾向にある。

冬のバーゲンは正月という環境もあって、いまだに一大イベントであることは間違いないが、かつてドル箱だったクリスマス以降の年末商戦が見る影もなく衰退したことを考えると、正月バーゲンの突出も今後は徐々に鈍化していくと考えられる。

皆さんの買い方に変化はあるだろうか?

今では年末商戦なんて若い人にはあまり実感がないだろうが、何十年か先には、若い人が「昔は正月バーゲンが恐ろしく盛り上がっていたらしい」なんて話すような伝説になっているかもしれない。





キャラクター衣装という活路もある

 先日、終了した阪急百貨店うめだ本店でのテキスタイル・マルシェにファッション専門学校生がいつもより多めに来てくれたが、その中に「卒業後は衣装製作の仕事をやりたい」という女学生がいた。

出展者に尋ねられてそんな話になり、そこからは就職相談みたいになっていたのだが、学校の先生の就職指導はちょっと現在の業界の実情に沿っていないとしか思えなかった。

衣装という仕事に関してもなんだか先生の方がきちんとした認識をしていないようだった。
舞台衣装という仕事はあるが、どれもこれも狭き門である。
宝塚や劇団四季などの有名劇団なんて数えるほどだし、それらが採用する人数も知れている。
小劇団は数多くあるがどれもこれも貧乏で、専用の衣装担当者を置くことは無理だし、そもそも衣装すら満足に作れるほどの資金がない。

テレビ番組でも、通常のドラマはアパレルやブランドからの衣装提供で賄っており、オリジナルの衣装を作ることはほぼない。バラエティ番組でも衣装提供かタレントの自前の洋服を着用している。

映画も同じだ。

テレビ・映画でも時代劇やSF、ファンタジー系なら衣装を製作するが、そんな作品は年に何本も作られていない。衣装製作担当者が毎年、コンスタントに収入を得ることは難しい。

比較的、コンスタントに収入を得るには、アニメ・漫画・特撮・ゲームのコスプレ用の衣装や、それらをモチーフとした洋服を企画製造販売することだろう。

実際に、筆者の知り合いで、もともとはそれなりのファッションブランドを企画製造販売していたデザイナーがいるが、現在ではゲーム用の衣装やそれをモチーフとしたカジュアルウェアの企画製造販売に移行している。
理由は、いわゆる「ファッションブランド」では安定的収入を得ることが難しかったため、ゲーム用の洋服に変わったという。

現在ではプロレス関係の洋服も手掛けているようで、本人いわく「こちらの方がずっとビジネスになりやすい。製造工賃や原材料費を叩かれることもない」とのことである。

その理由の一つとして、アニメ・特撮・ゲーム関係やプロレス関係の洋服がほしいというファンは常に一定数量いる。大きく増えることはないが激減することもない。
さらに、まともなクオリティの商品を提供できる供給側が少ない。
そのため、供給過多になりにくく値崩れしにくい。

一方、ファン側もそういう趣味の商品は値切ることが少なく、発売側の定価で買うことがほとんどである。
ファッションブランドの顧客のように「来週からバーゲンが始まるからそれまで待つ」なんていうことはあまりない。

そう考えると、衣装製造がしたいのなら、アニメ・特撮・ゲーム・漫画などのコスプレ用衣装やそれに関連した服を手掛ける方が、舞台や映画よりもずっとビジネスになりやすい。
この専門学生はそういう方面を目指すべきではないかと思うし、学校側でもそういう就職指導をするべきだろう。

そんなことがあったばかりだが、昨日、こんな発表があった。

世界観を忠実に再現したゲームキャラクター衣装を制作・販売する「coscrea(コスクレア)」ティザー公開
http://state-of-mind.co.jp/press-20161219/

日本初の1点から縫製職人にファッションアイテムを依頼できるマッチングプラットフォーム「nutte(ヌッテ)」( https://nutte.jp/ )を運営する株式会社ステイト・オブ・マインド(本社:東京都渋谷区、代表取締役:伊藤悠平)は、アクセルマーク株式会社(本社:東京都中野区 代表者:尾下順治 証券コード:3624)と共同で、公式ライセンスを取得したゲームキャラクターの衣装を製作・販売するコスプレ事業を開始します。
それにともない、版権元から監修・許諾を受けたゲームキャラクター衣装を製作・受注販売する「coscrea(コスクレア)」( http://teaser.coscrea.shop/ )のティーザを12月19日(月)より公開しました。

とのことである。

コスプレ衣装の場合、版権の問題が生じるがここで扱うのはいずれも版権元から許諾を受けた衣装だそうなのでその懸念は払しょくされる。

nutteの次の事業としてコスプレ用衣装というのは、ビジネス的にはなかなかの着眼点ではないかと思う。
実際のところ、普通の洋服の小ロット生産を手掛けるヌッテでは、事業規模の拡大には限界がある。
1枚~10枚程度の洋服を作りたいというアパレルやショップなんてそんなにたくさんあるわけでもないし、それが毎月・毎年コンスタントに受注があるわけでもない。

となると、事業規模は一定のところで頭打ちになる可能性が高い。
もちろん、むやみに事業規模を拡大しないという選択肢もあるが、安定的に運営をするなら、小ロット向けのみではなかなか難しい部分がある。

コスプレ用衣装というのは、先にも書いたように、通常のファッションブランドよりもずっとビジネスになりやすいから、これを手掛けるのはビジネスとしては正解だろう。

また、ファンも値切らないことから、工賃や原材料費を過剰に叩く必要もない。
ここが通常のファッションブランドと一番異なる点である。
通常のファッションブランドは原材料費と工賃の叩き合いで、どれだけ叩いて安くするかの競争でしかない。

それにコスプレ用衣装というのは独特の形状だから、パターン(型紙)作りや縫製にも一定水準以上の技能が要求されるから、作り手としては平凡なファッションブランドを手掛けるよりやりがいがあるのではないか。

レッドオーシャンで死力を尽くすのも一つの美学だが、違う方面へ進むのも一つのやり方である。
ファッションブランドというレッドオーシャンで苦しむよりも、違う畑に移ったほうが賢いのではないかと思えてならない。




エバーレーンの記事を読んだ感想は「原材料費高ッ 人件費安ッ」だった

 少し前の日経ビジネスのアパレル不振特集でも取り上げられた米国の注目ブランド、エバーレーンだが、原価を明示し、販路はオンラインサイトに限るという手法が目新しく、支持を集めやすい。

このことに異論はない。
実店舗を試着専用にしていることも画期的で、これも注目すべき手法だと感じる。

そのエバーレーンについてこんな記事が掲載された。

「生産コストが丸裸」。やりすぎなほど透明性を意識したアパレルブランド「EVERLANE(エバーレーン)」
http://beinspiredglobal.com/radical-transpearency-everlane

論調がいささかサヨク的に感じられ、好きな書き方ではない。
ただ、具体的な原価が紹介されているところには注目したい。

黒の無地のタートルネックセーターについてだが、

上記のタートルネックの場合、材料費が$8.91、機械設備費$0.72、人件費$1.32、輸送費$0.80。よって実際にかかっているコストは$12。しかし、他のブランドが$60(参考価格)と原価の5倍もの値段で販売しているのに対し、Everlaneの販売価格は$30(約3454円)と、お手頃かつ、生産者に敬意を払われた価格設定になっているのだ。

と紹介しており、このような原価構造になっているらしい。

この記事では、1ドル=112円くらいの為替レートで計算している。

製造枚数、販売枚数が提示されていないのでこの原価構造が適切なのかどうかはわからない。
多くのファッション好きが考慮しないことが多いのだが、生地値も縫製工賃も染色加工賃もすべて生産数量によって左右される。

5枚、10枚程度しか作らないなら、すべてにアップチャージが課されて割高になる。
1000枚、1万枚、10万枚、と数量が多くなればなるほど生地値も縫製工賃も染色加工賃も安くなる。

理由は洋服も生地も工業製品にすぎず、大量生産に適した生産システムが構築されているからである。
機械や自動車、家電と同じ理屈だ。

エバーレーンのこの黒の無地タートルネックセーターに関していえば、1枚あたりの材料費が8・91ドルだからだいたい1000円くらい、人件費が1・32ドルだからだいたい150円くらいである。

生産数量が明示されていないからそのクオリティが高いのか低いのかはわからないが、率直な感想として

「原材料費高ッ、人件費安ッ」である。

人件費150円がそれほど褒めちぎられるやり方だろうか?

店頭販売価格が3450円で、原材料費1000円というのは、かなり大量に生産数量があるのではないかと個人的に推測する。
ウールと綿、ニットと布帛ではコスト構造が異なるので一概に比べることはできないが、例えば、「ジャパンデニム」とあがめられている国産デニム生地だって定番生地なら1メートルあたりの価格は770円くらいで取引されている。

このタートルの生地値よりも安いくらいだ。

だからこのタートルは相当に良い生地を使っていると考えられるが、販売価格を3450円に抑えるなら相当に大量に生産されていると考えなくてはつじつまが合わない。
人件費だってこんな程度で50枚くらい作られたところで、収入が少なすぎて工員は干上がってしまう。工員にまともな所得を渡しているなら、少なくとも1000枚以上は作っていないと話にならない。

この記事に関して「ファーストリテイリングがもっとも嫌うやり方」と快哉を叫ぶ業界人が多いが、果たしてそうだろうか?ユニクロの原価構造はアイテムによって異なるが平均するとおそらくこの黒のタートルネックとほぼ同等くらいではないかと推測されるからだ。

それよりもこのやり方が大々的になって都合が悪いのは、大手百貨店アパレル各社であり、疑似SPA化した大手セレクトショップ各社であり、109系アパレルであり、ストライプインターナショナルだろう。
彼らの商品の大半以上で、原価率がユニクロに遠く及ばないほど低いことは業界では公然の秘密である。

生産数量が不明なため何とも言えない部分も多いが、この150円という人件費の設定はとてもではないが「生産者に敬意を払われた価格設定」とは言えないのではないか。

そんなわけで個人的にはエバーレーンのコスト構造についてはまったく賛成も共感もできない。しかし、繰り返しになるが、こういう売り方やシステム構築は消費者にはわかりやすいから、なるほどと感心させられる。

不振にあえぎながらも十年一日のごとく「本物をわかってもらえば~」とか「上質な洋服の良さを~」なんて言ったまま、売り方を何一つ変えようとしない旧弊アパレルに比べるとよほど創意と工夫があると思える。


どのようにして品質を上げて価格を下げるつもりなのか?

 今秋は、一部の例外を除いて全般的に洋服の売れ行きが鈍く、各ブランドともに値引きセールが10月から始まっている。

それでも10月、11月に大々的に値引きセールを開催していたブランドショップは少なく、「店内一部セール」とか「期間限定セール」というブランドショップがほとんどだった。

11月にヨドバシカメラ梅田店を訪れた際、各店ともまあ、そんな感じで「店内一部セール」を開催していたいが、ただ一つだけ、グリーンパークストピックという店だけが「店内全品30~60%オフ」を開催しており、「投げ売り度合がすさまじい」と感心したのだが、このブランドをどこが運営しているのかと調べてみると、ストライプインターナショナルだった。

ああ、なるほど。

ストライプインターナショナルの値引きセールは凄まじい。
各ブランドそろって凄まじい値引きをする。
平日昼間・夕方でもタイムセールは珍しくないし、他店に先駆けてグリーンパークストピックのように全品大幅値下げを開催する。

バーゲン末期には、「全品80%オフでさらにレジにて20%オフ」セールを開催し、投げ売り度合も他社に抜きんでている。

そういう状況が常態化しており、部外者としては正直「またか」という感じしかない。

で、そんな中、こんな記事が掲載された。

ストライプインター「値引きよりコスパ」
http://www.senken.co.jp/news/management/stripe-int-161215/

2017年春から値引きを減らして、原価率を上げたコストパフォーマンスの良い商品を増やすのだという。
うーん、これほど全ブランドで値引きという販売手法に頼り切っていながら、急に3か月後から販売方法を変えることが可能なのだろうかと正直疑問を感じる。

本部は指示するだけだから良いとして、日々の売上高を作る各店舗はすんなりと今までのやり方を捨てて、同じだけの売上高が稼げるのだろうか。

言うは易し行うは難しではないかと思えてならない。

引きで客を引き付ける販売手法は、「ブランド価値が傷んだり、顧客が離反する」リスクがあるため、原価が高くてもプロパーで売り切る戦略に変える。

という一文が記事中にあるが、もうすでに値引き手法は浸透しており、ブランド価値は傷んでいるのではないかと見えるのだが、内部にいると異なる景色が見えるのだろうか。

具体的な商材に関しては、

アースの来春物では、デニムウェアやMA‐1タイプのブルゾン、ボーダーカットソーを企画。Gジャンやジーンズは、「コットンUSA」素材を使ったソフトな着心地で、2990円。インドネシア製。今年は違う素材で3990円だったが、品質を上げて価格は下げる。

とあるが、品質を上げて価格は下げるとなると、さらに工賃が安くなるとしか考えられない。
もしくは高額な生地を買い叩くのか、その両方を実施するのかである。

あと、生産数量を増やして1枚当たりのコストを下げるという手法も考えられるが、今度は売れ残って在庫が増えるというリスクが高まる。値引きをせず、生産数量を増やしながら売れ残りを減らすということは至難の技といえる。

これが簡単にできるようなら業界はこれほど苦しんでいない。

さらにいうなら、Gジャンやジーンズは価格を1000円引き下げているわけだから、コスパを高めたというよりもウォルマート・西友と同様のエブリデーロープライスと言ったほうが適切ではないかと感じる。

いっそのこと「KY(カカクヤス)」というキャッチコピーでも使ったほうが分かりやすいのではないかとも思う。

トップの発する時宜に適った素晴らしい発言と、これまでの店頭での大幅値引きがどうにも合致しない。
また来春からの工賃・生地値の引き下げとも合致しない。

そんなわけでストライプインターナショナルは、個人的にはこれまでよりも一層共感できない企業になったと感じる。





バーゲン後倒し論争は意味が無かった

 少し前にこんな報道があった。

ルミネ冬セールは3日スタート 初売り翌日から開催
https://www.wwdjapan.com/359322

手短にまとめると、来年1月のルミネのバーゲンの日程は1月3日開始だということである。
三越伊勢丹やHEPファイブを除く多くの百貨店、ファッションビルとほぼ同じ時期のバーゲンスタートとなる。

ここ3年ほど前からのバーゲン後倒し論争は一体何だったのかということになる。

そもそも、ルミネがバーゲン後倒しに掲げた大義名分の「産地保護」自体がおかしく、失笑を禁じ得なかった。
縫製ベースでいえば、現在、国産衣料品比率は3%前後しかない。
97%強がアジアを中心とする海外製品となっている。

ルミネが保護したかったのは中国やその他のアジアの工場だったのだろうか?という疑問しか感じない。

また取引形態から言っても、たかだかルミネが10日ほどセール開始時期を後倒ししても製造加工業にとっては意味がない。

そもそも製造加工業に対する工賃は、商品が店頭に並ぶ何カ月も前に決められている。
そして製造加工業者への支払いは、シーズンごとの商品が完売してからではない。

バーゲンを後倒ししようが前倒ししようが、製造加工業者への支払額は変わらないし、支払うタイミングはバーゲン終了時ではなく、そのはるか手前である。

仮に9月に1枚1500円の工賃で、シャツの製造を発注した場合、納品が10月だったとすると、支払いサイクルは各社によって異なるが、11月末とか12月末あたりに支払われる。
1月のセール開始時期を10日ほど後倒ししても製造加工業者に支払われる工賃には一切反映されない。

11月納品でも12月納品でも結果は同じで、バーゲンの後倒しが工賃支払いに反映されることはない。

なぜなら、事前に決めた工賃通りに支払われるからで、「1月のバーゲンを後倒ししたら利益が増えたから工賃を500円プラスオンして支払うよ~」なんていうアパレルは存在しない。
1月のバーゲンを後倒しして、仮に利益額が増えたとしても、事前に決めた工賃にプラスオンして支払うことはありえない。

一体、ルミネは何を言っていたのだろうか。

ルミネが今回、バーゲン開始時期をほぼ元に戻す理由は以下の通りだ。

前倒しの大きな理由に、テナント側から強い要望があったという販売員の労働時間と負担の軽減をあげる。販売員不足で十分なシフトを組めないテナントもある中、年末の繁忙期から年始の初売り・セールまでの長期集中的な労働体制が問題とされてきた。年始セールの前倒しにより、2日の初売り後すぐにセールを開始し、集中して商戦に臨む。なお、夏のセールは従来通りの開催を予定している。

とのことで、こうなることは最初から分かっていたのではないかと思う。

洋服店の販売員の人手不足は深刻化しており、求人を出しても応募が集まりにくくなっている。

理由はさまざまある。

営業時間の長時間化、給料の低さ、休日の少なさ、今後のキャリア構築の難しさ、などなどである。

ルミネは架空の産地を保護する前に、目の前で働いている販売員たちを保護すべきだろう。

販売員という仕事がつまらない仕事だとは決して思わないが、現在のアパレル業界の販売員に対する待遇のままなら、人手が集まらないのは当然で、今後も販売員不足は続く。

ルミネの夏のバーゲンは従来通りの後倒しだそうだが、夏のバーゲンはそもそも盛り上がらないから、あってもなくても消費者にとっては同じようなものだ。お好きにどうぞだ。

夏服は定価そのものが安い。
だから定価で買っても知れているし、それが値引きされたからといって消費者が飛びつくようなこともあまり起きない。

そして、冬のバーゲンのように「正月」というイベントが組み合わされているわけではないし、各ブランドが五月雨式にバーゲンを開始するから、本当に盛り上がらない。
6月末とか7月1日とか7月5日とかの開始が多いが、正月も盆も夏休みも関係ない平日だから、消費者に「買い物をしよう」という意欲は高くない。

買い物客としての立場で個人的にいえば、6月末から開始されようが、7月1日から開始されようが、7月5日から開始されようが、あまり関係ない。
それほどに夏のバーゲンには興味がない。

おそらくそれに近い消費者は数多いのではないかと思う。

改めてルミネのバーゲン後倒しは無意味だったと感じる。


はじめてでも安心 コスプレ入門
たかそう
オーム社
2013-07-22



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