月別: 8月 2016 (1ページ / 3ページ)

アニメ・漫画がメインカルチャーでファッションはサブカル

 早い物で今日で8月が終わる。
今年も残り4か月となり、早くも3分の2が終わった。
本当に歳月人を待たずである。
こんな感じであっという間に人は死に至るのだと思う。

長生きをしたいと思うほどリア充ではないから、適当なところでさっさと死ねれば楽になる。
痛そうだし苦しそうだから自殺しようとは思わないけど。

繊研新聞プラスに以前、「ファッションはサブカルか?」というコラムが掲載され、それの続きが先日掲載された。

http://www.senken.co.jp/column/eye/subcul0830/

で、まじめに答えると、すでにファッションはサブカルになっていると思っている。
サブカルとは何かというとサブカルチャーのことであり、サブだからメインのカルチャーではない。
ちょっとマニアックなジャンルの文化なんかを指して「サブカル」と呼ぶのが通常の使い方である。

20年位前まではアニメや漫画がサブカルと呼ばれていた。
いわゆる正規の文化ではなく、まともな大人が話題にするのもはばかられるという社会の風潮だった。
みんなそこそこ愛用しているのに、わけのわからないアングラ感があった。
それ以前の風当たりはもっと強かった。

さほど仲良くもない人に「好きな漫画は何ですか?」なんて尋ねることは「は?馬鹿じゃね?」というぐらいの対応をされるのが普通だった。

ところが今はどうか?
ファッション業界に属している人でもアニメや漫画についてはそこそこ詳しい人が多い。
筆者より上の世代でも多いし、筆者より下の世代ならそんな人が山ほどいる。

ワンピースやナルト、ドラゴンボール、ガンダム、ルパン3世、北斗の拳、ジブリあたりの話題が通じない人のほうが珍しいだろう。たいていの人はどれかにはひっかかる。
ファッション業界以外の人ならなおさらである。
結構共通の話題として座が盛り上がる。

逆にファッションの話題はどうか?

業界の人ならまだしも業界外の人と共有化できて盛り上がることなんてほとんどない。
せいぜい「バブル期は肩パット入ったスーツ着てましたよね」とか「ヘインズの3枚セットのTシャツってすぐに首回りが伸びましたよね」程度である。

「マルタン・マルジェラいいですよね」なんて話題は業界の人か同好の士くらいしか理解されない。
業界で話題となっているブランドなんて同好の士以外ではほとんど知名度がない。
一般大衆はファッションにそれほど興味を持っていないから話題にも上らないし、知識も蓄えない。

ファッションに詳しいということは恥ずかしいことではないが、称賛に価するものでもない。
言ってみれば「特殊な趣味」という程度だろうか。

茶器などの工芸品は高尚な趣味だとされているが、多くの人は別に興味を持っていない。
「まあ、高尚だし集めたければ集めれば?ぼくは興味ないけど」、だいたいそういう感じではないかと思う。
筆者が実際そうである。その価値はわかるが別に興味もないし深く心も揺さぶられない。
スーパー万代で特売のバナナを買い損ねるほうがよほど動揺する。

個人的には、多くの人はファッションに対しても同じように見ていると感じる。

こうなると20年前までのアニメ・漫画とファッションの立場は完全に入れ替わったといえる。
アニメ・漫画の話題のほうが多くの人とコミュニケーションが取れるし、場も盛り上がる。
ファッションは限られた業界人や趣味人としか話すことができない。

どちらがメインでどちらがサブかは一目瞭然である。

今はアニメ・漫画がメインカルチャーでファッションは完全なるサブカルチャーである。

相手を選ばずに話題にできるブランドはそれこそユニクロくらいではないか。
ヒートテックが暖かいとかそれほど暖かくないとか、今年のTシャツが細目シルエットになって窮屈だ(知らんがな、ダイエットしろよオッサン)とか、そんな感じでは多くの人と共通の話題にできる。

しかし、それ以外のブランドやトレンドの話は業界人か趣味人との間だけにとどめておいたほうが賢明だ。
経験上、こちらの言いたいことの3割も伝わらないから。
今季のトレンドなんて誰も気にしていないし、来シーズンのトレンド予測なんてもっと誰も興味を持っていない。

筆者は大学を卒業するまでオカンがイズミヤかジャスコで買ってきた1900円のトレーナーで過ごしていたから、そのころのファッションに関する社会の風潮はあまり知らないが、それでも多くの人は新しくオープンしたファッションビルや商業施設の話題をしていたように記憶している。
今、そんな話題があるだろうか?

商業施設自体は話題になるだろうが、その中でも飲食店だったり食料品だったりアミューズメント施設だったりそういうことが話題になることがほとんどではないか?

おっさんたる筆者が世間話をしたときに出てくる話題はだいたいそういう内容で、「あの商業施設には〇〇ブランドが入りましたよね、前から注目してたんですよ」なんていう話題は業界人からしか出てこない。
業界外の人の間は飲食店や食料品、アミューズメント施設についての話題がもっぱらである。

ファッションの話題は同好の士、趣味人、業界人としか共有できない。

つまりはファッションはサブカル中のサブカル、サブカルの王道を歩いているといっても過言ではないだろう。

じゃあ、ファッションが、今後、昔のようにメインカルチャーとして復活するか可能性があるかと尋ねられたら、筆者の答えはNOである。
その可能性はほとんどないだろう。
極限まで細分化されているファッションはすでに一般人にとって「相当にわかりにくいもの」になり果てており、今後、そういう細分化がさらに進むことはあってもその逆の状況になることは考えられないからだ。

メインカルチャーへの復活なんて無駄な努力はとっととやめて、開き直ってファッションはサブカルの立場を極めたらどうか。
業界人はサブカル従事者だと自負すればどうか。

まあ、そんなわけでサブカルとして驀進すればいいと思う。

「ない仕事」の作り方
みうら じゅん
文藝春秋
2015-11-24


アスレジャートレンドなのにスポーツ用品店が売れないのは当たり前

 米国では、スポーツウェアをファッションに取り入れた「アスレジャー」に注目が集まっている。
わが国にもそのトレンドは流入しつつあり、ジョガーパンツやジョグジーンズのような商品がそれなりに動いている。
ユニクロが昨年からずっとジョガーパンツを継続していることからもわかるようにすでにマス層にも一定需要がある。

しかし、アメリカで言われるほどの大トレンドかというとそうでもないように感じる。
それこそ「アネロ」の口金リュックの方がよほどビッグトレンドではないか。

また、通常のスポーツカジュアルとアスレジャーの区別をすることも非常にむつかしい。
例えば綿100%のスエットパーカはもともとはスポーツアイテムとして区分される。しかし、もう何十年もの間、ベーシックなカジュアルウエアとして認識されてきた。
ベーシックなアメリカンカジュアルスタイルを挙げろということになるとかならずスエットパーカは挙げられる。

そしてこれを供給するのはスポーツメーカーだけではない。
通常のカジュアルブランドが市場に供給している。
むしろ、本格的なスポーツメーカーは綿100%のスエットパーカなんてほとんど作っていないし、作ったところでスポーツ色が強すぎて「ダサい」という評価を下される。

スニーカーにしてもそうで、スポーツアイテムだが、昔からベーシックなカジュアルアイテムの一つとして認識されている。今の世の中でスニーカーを「スポーツ専用アイテム」ととらえている人のほうが少ないだろう。

この辺りを指して、ことさら「アスレジャーだ」と指摘するのはどうも違うのではないかという気がする。

アメリカで言われる「アスレジャー」はもう少し本格的なスポーツウェアを日常着として取り入れているような気がする。もっと競技用に近い合繊100%で原色バリバリの、Tシャツだとかレギンスだとかナイロンパーカとかそういうものではないかというイメージがある。

しかし、これとても体育教師が常に着用しているようなジャージパンツを四六時中愛用するオッサンとかジイさん・バアさんというのは何十年も前から存在したわけで、彼らをアスレジャーだと指摘する人はいない。
むしろ今も昔も「ダサい人」として認識されている。

スポーツ用品の「ヒマラヤ」が赤字転落している。
これはすでに多くの媒体で報じられている。
東洋経済オンラインにも詳細に報じられている。

ヒマラヤ、過去最多13店舗を「閉鎖」する事情
スキー人気低下、ファッション性でも出遅れ
http://toyokeizai.net/articles/-/133438

2015年秋冬が暖冬でスキー・スノボ用品を得意とするヒマラヤは苦戦を強いられた。
これはその通りだろう。
ちなみにじゃあ、スキー・スノボ用品の市場規模はどうなっているのかというと、

「レジャー白書2013」によると、98年にスキー・スノボ人口は1800万人に達してピークを記録したが、2013年には770万人にまで低下しているという。
しかし、2012年・2013年は横ばい推移だともしている。

また「スポーツ産業年鑑」(株式会社日本能率協会総合研究所)によるとスキー・スノボ用品の市場規模は91年の4300億円がピークで、2012年には1100億円にまで低下しているともある。

91年のピークはバブル期とスキー人気の重なりで、スキー人気はバブル崩壊とともに崩れた。
じゃあ人口が98年にピークになった理由はなぜかというと、これはスキーに代わってスノボが若者に人気となったからだろう。ちょうど90年代半ばからスノボが注目され始める。
だが、その後、スノボ人気も低下して今に至る。

直近の動向はどうなっているのかというと、矢野経済研究所によると、2015年のスノー・スノボ用品の市場規模は前年比95.5%の496億7,000万円だとある。先にあげた1100億円とは大きく数字が異なるが、おそらく統計に含める品目などに差があるために、合計金額にも大きな差が生じたのではないかと推測されるが、ここで重要なのは2015年度の市場規模は減少しているという点である。

こういう背景を踏まえるとスキー・スノボを得意とするヒマラヤの業績が低迷することは何の不思議もない。
むしろ低迷しないほうが不思議である。

最近の東洋経済オンラインの企業分析記事は的確なものが多いが、ヒマラヤの苦戦について「アスレジャーのトレンドに乗れなかった」と指摘している点は少し疑問である。

その理由を3つ挙げる。

1、アスレジャーはトレンドの要素ではあるが、どこまでをアスレジャーに含めるかその境界線が難しい
2、ヒマラヤに限らずスポーツ用品店は、ファッショントレンド品の買い場として消費者に認識されていない
3、アスレジャーというファッション自体が曖昧で明確な境界線がない

この3つであり、ヒマラヤを筆頭とするスポーツ用品店がファッショントレンド客を取り込めるはずがない。
ヒマラヤもムラサキスポーツもアルペンもゼビオも消費者はファッション用品を買う店とは認識していない。
本格的なスポーツ用品を買う店としてしか認識していない。

アスレジャーがトレンドだからスポーツ用品店が売れるなら、地方の駅前にあるような個人経営のスポーツ用品店だって売れなければおかしい。
ところが、オッサン・オバハンが一人でやってるような5坪・10坪の個人経営のスポーツ用品店は衰退の一途をたどっている。ファッション用品店としては論外だし、スポーツ用品店としてもゼビオやアルペンやヒマラヤの足元にも及ばない。

そしてそのゼビオやアルペンやヒマラヤも一般消費者はファッション用品店としてはまったく認識していない。

だからいくらアスレジャーがトレンドに浮上してもスポーツ用品店はその恩恵を被ることはない。

そしてスポーツ用品店にはファッショントレンド品を売るノウハウ・見せるノウハウはまったくない。
いくらトレンドにスポーツテイストが浮上しようと既存の経営陣とスタッフではそれに対応することは不可能なのである。

しかもその「アスレジャー」というトレンドそのものが意外にボンヤリとしていてカテゴリーが明確ではない。
曖昧模糊としたイメージにはなおさらスポーツ用品店は対応できない。

だからヒマラヤがアスレジャートレンドに乗れないのは当然だといえる。

メディアの指摘にはときどき疑問を感じるのだが、例えば「ファッショントレンドにジーンズが浮上しているのに、ジーンズチェーン店の業績が伸びないのはなぜか」というような指摘があるが、それはジーンズチェーン店がトレンドを買う店だと認識されていないからである。
同じジーンズを扱っていても、ジーンズチェーン店の多くは「ファッション」として認識されていない。
「ファッショントレンドとしてのジーンズ」を買う店は別なのである。

ヒマラヤとアスレジャーの関係もこれと同じである。

ここを理解しないとせっかくの的確な分析も画竜点睛を欠くということになってしまう。

もし、スーツがファッショントレンドに浮上しても「洋服の青山」や「紳士服のはるやま」「AOKI」で買う人はそれほどいない。
ファッショントレンドとしてのスーツを買う店は別なのである。

とはいえ、自称ファッション店wwwが「うちはトレンドだから」とか「うちは高感度だから」という一々気取っているのも癪に障るのだが。(笑)




高額インポートブランドの売り上げが大幅に伸びることは今後もない

 矢野経済研究所の統計をもとに、こんな記事が掲載された。
市場動向の分析としては的確で冷静だといえる。

2015年の国内インポートブランド市場規模は2兆3000億円超
https://www.wwdjapan.com/business/2016/08/26/00021366.html

矢野経済研究所が発表した2015年の国内インポートブランド市場の調査によると、同市場の規模は前年比107.6%の2兆3664億円(小売金額ベース)だった。

とある。
5年連続のプラス成長だそうで、その要因はインバウンド需要だとする。
しかし、

一方、衣料品・服飾雑貨品に限ると、前年よりも大きな伸長が予想されていたにも関わらず、同102.6%の1兆2866億円にとどまり、価格の値上げによる中間層の消費減退の深刻さを印象付けた。

とのことであり、これについては半分は正しくて半分は正しくないように感じる。
たしかに中間層の収入が減少し、下層化しつつあるのは事実だと思う。
しかし、それ以上にインポートブランドへの欲求が多くの人々から減っているのではないかと思う。

インポートブランドのほとんどは高額ゾーンから上に位置する。
高額ブランドやラグジュアリーブランドと呼ばれるのがほとんどである。
そういうものへのニーズが可処分所得の高低にかかわらず薄れているのではないかと思う。
とくに40代以下はそうではないか。

現代の20代、30代、40代で「収入が増えたら高額インポートブランドの服を買いたい」と強く思っている人がどれだけいるだろうか。
20年前には売春をしてラグジュアリーブランドのバッグを買う女子高生が多数出現したが、そういう人は今はあまりいない。
LVの刻印があるン十万円もするようなバッグを分不相応にほしがる人はほとんどいないのではないか。

「若者のおしゃれ離れ」は本当に起こっているのか
http://diamond.jp/articles/-/99973

ここではそのことに触れられている。

「シャネルやルイ・ヴィトンといった、特定の高級ブランドにこだわりはない。ネットでいろいろなブランドの品物を比較できるので、その中でデザイン的に気に入ったものを注文する」(25歳女性)

「婚活パーティーなど特定のTPOに合わせて使うことがあるが、決して『高級ブランドのアイテム=洗練されたスタイル』とは思っていない」(29歳女性)

といった具合で、高級ブランドへのわけのわからない憧れがなくなったことが指摘されており、それは正しいと感じる。

筆者は46歳の初老のオッサンだが、今後いくら金持ちになってもそういうラグジュアリーブランドのほしいとは思わない。時計も靴も興味がない。
服も時計も靴もそこそこの価格のもので十分である。
デザインも悪くないし、品質も悪くない。

そしていくら「一生物」とはいえ、トレンドは移り変わるので、その高額品が「時代遅れ」になってしまうことは必ずある。そうした場合、ン十万円の大枚をはたいていれば泣くに泣けない。
リフォームすれば良いのだが、それを持ち込むの面倒な話である。

だったらそこそこに安い物をトレンドや気分に応じて使い捨てたほうが効率的である。

おそらく同じように考える人が増えているのではないかと感じる。

毎日の昼食を500円くらいに抑えている人間が無理をしてLVのバッグを買ったって滑稽なだけではないか。
それにそのバッグ以外の服や靴は安物なのだからつり合いが取れていない。
見るからに「私は無理をして切り詰めてまでバッグを買いました」と宣言しているようなものである。

ちなみにインバウンド特需が終わった2016年度の見通しは

16年の同市場規模は同91.5%の2兆1649億円と、一転して大幅な減少が予測される。

とのことである。

まあ、妥当な見通しだろう。

個人的に高額インポートブランドがさほど売れなくなったことは我が国の社会の成熟化ではないかと感じる。
毎日の昼食を290円に切り詰めてLVやらシャネルのバッグを買ってもそれが「すごいこと」とは思わない。
それなら毎日800円の昼食を食べられたほうが良いのではないか。

そしてファッショニスタwwwwやイシキタカイ系が大好きな欧米はそういう社会である。
貧民が無理をしてまでラグジュアリーブランドを買わない。
あれは金持ちが買うためのブランドである。

そういう意味では日本の社会も欧米に近づいているといえ、ファッショニスタwwやイシキタカイ系は喜ぶべきではないか。

今後、我が国の景気がどれほど好転しようと、かつてのように無理をしてまで高額インポートブランドを買い漁るような時代は二度と来ないだろう。




2か月間で400枚弱売れたナイクロのTシャツをどう評価する?

 山の日にこんな報告があった。

脇汗MAX!?9oclockが開始2ヶ月で400枚届かず…
http://katorimasahiro.hatenablog.jp/entry/2016/08/11/152352

6月6日からオンライン通販のみでスタートした国産Tシャツブランド「ナインオクロック」が2か月間で400枚弱売れたという報告である。

定価は税抜きで3500円。

実際のところは360~390枚くらいの販売量だったのではないかと思うが、この結果についてはどう思われるだろうか?

事業主の香取正博さんは、ビッグウェーブに乗ろうとしておられるようなのでこの販売量は予想を下回るとしていささか意気消沈している様子だが、個人的にはよく売れたほうではないかという評価を下している。

業界の人々はどんな評価だろうか?

東京に出張した際にも何人かに評価を尋ねてみたが、ほぼ全員が「無名のブランドが2か月で400枚弱売れるというのはなかなかの快挙ですよ」とおっしゃっていたが、筆者もそう思う。

しかし、この程度で満足していてはビッグウェーブになど乗ることは不可能なので、今後も引き続き頑張ってもらいたいと思う。

初月度はだいたい190枚くらい売れたと報告を受けており、次月度もほぼ同じペースで売れたと推測できる。
次月度も勢いが衰えなかったのは、一部の近隣(岩手県内)の専門店への卸売りが始まったからではないだろうか。
店頭販売価格は同じ3500円(税抜き)なので、香取さんに入る利益は極めて薄いと思われるが、生産ロットを増やせるというメリットはある。デメリットだけではない。
利益が薄いなら多売するという手もあるが、その専門店ではこのTシャツが10日間で50枚売れたという報告もある。

ブランド価値とは何だろう?タグ無しのTシャツが実店舗で10日で50枚以上売れた
http://katorimasahiro.hatenablog.jp/entry/2016/07/26/164109


これだけでも50枚の販売量は確保できているわけであり、総売り上げ枚数を押し上げていることは容易に想像できる。

話は横道にそれるが、無名の3500円もする無地のTシャツを10日間で50枚も売るというのはすごいことではないだろうか。1日平均5枚売っている。
それこそ販売員の力ではないか。
大手のチェーン店や有名店では在庫処分のために押し売りをすると聞くこともあるが、地域専門店の場合、そんな阿漕な商売をしたなら、すぐさま閉店せざるを得ない。

実質的に丁寧に接客をした結果ではないかとと考えられる。

個人的にはアホな販売員よりは自動販売機やペッパーくんの方がよほど販売力があると思っているが、プロとしての販売員となるとやっぱり売る力がすごい。
販売員をチョロっとかじった程度の筆者ならこのTシャツを10日間で50枚も売る自信はない。
しかも東京とか大阪の都心ではなく、岩手県の久慈市という田舎で。

店を訪ねたことも販売員にお会いしたこともないが、販売力がすさまじいと感じる。

こういう販売員が増えれば洋服は今よりは売れるようになるのではないかと思うが、養成するのはなかなか難しい。
だからこそTopseller.Style( http://topseller.style/ ) へ、などと書けば、どこかの感動系セミナーの勧誘とか、どこかの有料ファッションメルマガの勧誘みたいになってしまうのであえて言わない。(笑)

それはさておき

販売量が予想より下回った要因は欠品だという。
初回にけっこうな数量を作りこんだはずだが、売れ行きが予想できないことから、おそらくどの色もメリハリをあまりつけずにほぼフラットな枚数を発注していたのだと勝手に推測する。

その結果、人気の集中した色が欠品したということだろう。

黒のVネックの人気が高く欠品したのだというが、筆者からすると黒のVネックTシャツなんてもっとも売れるから初回にもっと作っておいてもよかったのではないかと思うが、事業主は黒のVネックを着ないため、そこまで発注しなかったようだ。
事業主はお会いしても画像でもだいたい白Tシャツをユニフォームのように着ているから、おそらくそういう発想になったのだろう。

自分の好みと売れ筋は異なるのである。
業界人ならこれは常識だろう。

昔、それこそユニフォームのようにグレーの長袖Tシャツと、腿にゆとりがあって足先がピタッとしていたジョッパーズパンツのようなパンツばかり着用していたアパレル社長がおられたが、彼はレディース向けにトレンドアイテムを的確に発売していた。間違ってもジョッパーズパンツなんていうのは一度も発売していない。

それが業界人としての正しい姿勢だろうと思う。

そんなナインオクロックの補充生産分がようやく出来上がったそうだ。
それでもまだショート気味だという。

なかなか補充生産分が出来上がらなかった理由を事業主はこう説明している。

小ロット生産なので、工場の大ロット生産の隙間で少しずつ作ってもらったから。

とのことだが、洋服の製造というのはこれが現実なのである。

大ロット生産が安定的に流れていて、その隙間に小ロット生産を押し込む。
だから、大ロット生産がなくなれば多くの縫製工場は倒産してしまう。
大ロット生産があるからこそ小ロット生産を受け入れてもらえるのであり、それが不満ならサンプル縫製工場のような小ロット専門の工場を探し当てるしかない。

縫製工場の仕組みを知らないイシキタカイ系の小ロットブランドは「どうしてうちを後回しにするのか?」と不満をぶちまけることがあるが、それは彼らの生産数量が少ないからで、後回しにされたくなければ大ロットの数量を発注すれば良いのである。一枚当たりの製造コストも下がるので、店頭販売価格も引き下げられるだろう。
店頭販売価格を引き下げない場合は利益率が高まるだろう。

良いことづくめなので資金調達して大ロット生産の仕組みづくりをやってみてはどうか。
銀行は金を貸したくてウズウズしているはずだ。

ただし、大ロットで生産した場合、それを売り切るだけの販売力が求められる。
そうでなければ山のような在庫を抱えて破産せざるを得ない。

相手を変えることは不可能なので、自分が変わるほかない。
資金調達して大ロットブランドにするか、極小ロットで生産している工場を探しあてるかのどちらかしかない。




「アネロ」の口金リュックが大ヒットして「アネ被り」現象に

 久しぶりの大ヒット商品が登場してその躍進ぶりの一端が報道された。

「アネロ」というバッグブランドが大ヒット中で、とくにゴールドのファスナーが使われたリュックの人気が高い。

リュック「アネロ」ヒットで売上倍増
http://www.senken.co.jp/news/corporation/carrotcompany-anello-160823/

バッグ製造卸のキャロットカンパニー(大阪)は、ユニセックスバッグ「アネロ」がリードし、16年6月期の売上高が前期比倍増の88億円となった。今期はブランディングを強化するとともに海外事業部を立ち上げ、業績を拡大する。

 アネロは、ヒット商品の口金リュックが14年12月に投入して以来、出荷数で200万本を超える。アパレルや雑貨のチェーン店を中心に売れ続け、SNS(交流サイト)利用者の口コミで東南アジア圏にもファンを広げている。また、アネロの人気がレディスバッグ「レガートラルゴ」や小物雑貨「パケ・カドー」の売れ行きに波及し、商品単価も底上げした。

とある。

筆者がこのバッグの人気に気が付いたのは、今年の春先である。
以前にも書いたようにAmazonで防水リュックを探していたときにやたらとAmazon内で出てきたからである。
で、特徴は口金リュックとあるように、リュックの入れ口のファスナーがゴールドなのである。


で、それを頭にインプットして繁華街を歩けば必ず数人はこのリュックを背負った女性を見かけることに気が付いた。
大阪でいえば、心斎橋筋商店街、梅田、天神橋筋商店街あたりを歩くと口金リュックを背負った女性を必ず数人は見かける。

記事中にもあるように、この「アネロ」というブランドは大阪のキャロットカンパニーという会社が企画製造しており、このバッグの大ヒットのおかげもあって、売上高が倍増で88億円に達したという。倍増で88億円ということは昨年の売上高は44億円だったということになる。
たった1年で44億円の売上高が88億円になったのはすごいヒットぶりといえる。

ジーユーのガウチョパンツが昨年100万本売れたと報道されたが、色・柄が様々ある上に「アイコン」となるような特徴がない。いわゆるそれとわかるブランドタグだとか革パッチだとかそういうものがない。
だからどれがジーユーのガウチョパンツなのかさっぱりわからない。
ジーユーはそういう主張は一切しないので、例えば、襟裏のラベルにさえブランド名は書かれておらずサイズ表記のみに留まる。
しかも商品の色・柄・デザインに無印良品ほどの特徴もなく、いわばパーツに徹している。

アネロは逆にゴールドのファスナーというアイコンが存在するから、このブランドの存在を知っている人にはすぐにわかる。

一時期の「ユニ被り」に匹敵するほどの所有率の高さで、「アネ被り」現象とでも名付ければ良いだろう。

大ヒットの要因について、筆者のネット友達数人から様々な要因が指摘されている。

1、価格が割合に安い
2、転売目的を疑われる外国人が大量に購入している
3、東南アジアでも大人気(記事中でも言及されている)
4、収容量が多くて便利なうえにエイジレスなデザインで持つ人を選ばない

ざっとこんなところである。

Amazonで「アネロ」の商品を検索するとかなり品番が多い。
そのどれを見てもそんなに高くない。
2000~6000円台の価格幅であり、フリーターでも買える価格帯である。
バッグでこの価格なら低価格に属するだろう。

その割にデザインセンスが悪くない。

大ヒットのリュックで見てみると、低価格でデザインセンスも悪くない上に、大容量で機能的である。さらに持つ人を選ばないエイジレスなデザインなので、売れるべくして売れたといえるだろう。

たった2年弱で200万本を出荷しているから相当な勢いで売れている。
平均すると1年で100万本強の出荷量ということになる。

洋服の場合、10万枚の販売量を越えると「○○被り」が出てくるといわれているが、1年で100万本以上も出荷したなら当然「アネ被り」が現れてもおかしくない。

売れた要素を考えると、価格が安くて機能的でデザインも悪くなく、持つ人を選ばないから日本人だけでなくインバウンド需要もかなり取り込めたということだろう。

記事ではキャロットカンパニーは今期、海外販売を強化すると書いてあるが、これまではおそらくあまり海外向けには販売していなかったのだろう。
海外ではほとんど見かけないからこそ、観光に来た外国人が大量に買うという現象が起きた側面もあるのではないか。

現地では手に入らない珍しい物をお土産として買ったというわけだ。
これが高額品なら少ししか買えないが、それほど高くないからまとめ買いができる。
しかもゴールドのファスナーというワンポイントアクセントがあってわかりやすい反面、他の部分のデザインはエイジレスで持つ人を選ばないから、それこそお土産にも適しているし、海外での転売もしやすかったのではないか。

昔の日本人が低価格のオールドネイビーの洋服を安く買いこんできて、そこに利益を乗せて国内で転売したのと同じではないか。

それにしても大ヒット商品になるための条件は「価格」という要素は強いと感じる。
このリュックが2万円とか3万円だったらここまで売れなかっただろう。
もちろんそういう市場に向けて、一定量をキチっと販売して利益を確保するというビジネスもあってしかるべきだが、100万本を越える大ヒットを狙えるのはそれなりの低価格でないと難しい。

3万円台のジーンズが飛ぶように売れた2005年という時代があったが、そういう風潮が支配する時代は日本にはもう二度と来ないだろう。




デザイナーズコラボ商品は希少性を高めることに徹するべき

 売り場にまだまだ残っているものの、夏物バーゲンも一段落して売り場には秋物が次々と立ち上がってきている。

そんな中、イトーヨーカドーも「セットプルミエ」で高田賢三とのコラボ商品が立ち上がっており、ネットでも買えるようになっている。

http://iyec.omni7.jp/brand/K052

価格はジャケットで2万円台半ば、パンツ・ロングスカートが12000円などとなっており、イトーヨーカドーの平場にしては高いなという印象が強い。
百貨店の平場ならこの値段設定でも大丈夫だろうが。

デザインに関しては好き嫌いもあることなので、一概には言えないが、個人的には嫌いではない。
ただ、このデザインがイトーヨーカドーの平場で買う主婦に受け入れられるか、その人たちが着てみて似合うかと尋ねられると、甚だ疑問を感じる。
ちょっと上級者向けではないだろうか。

そのあたりの組み立ては、デザイナーズブランドコラボの先駆けであるユニクロには及ばないと感じる。

ユニクロの場合は、価格も一般ラインよりも数千円高いくらいに設定されている。
ユニクロ×ルメールでいうと、オックスフォードボタンダウンシャツが3990円である。
一般ラインは1990円だから2000円しか差がない。
このくらいの差なら少し奮発すれば買える。
デザインも一般ラインより少しだけ凝っているくらいに抑えられている。

が、高田賢三ラインはどうか。イトーヨーカドーの平場で24000円のジャケットを買う人がどれほどいるだろうか。
その金額を払うなら百貨店やファッションビルのテナントで多くの人は買うのではないか。

まあ、そんなこんなで立ち上がったわけだが、同時に先シーズンの「ゴルチエコラボ」もひっそりと立ち上がっている。(笑)
もちろん値段はだいたい半額に下がっている。

IMG_1627

(半額で再投入されたセットプルミエのゴルチエ)

正直なところ、やっぱり期間内には売りさばけずに在庫を抱えていたのだなあという感想しかない。

例えば4900円の長袖カットソーは2450円に値下げされている。
まあ、期末に値下げされてそのまま格納して、それを再出荷したということだろうと考えられる。

ゴルチエを買い逃した人は今がチャンスである。

おそらく高田賢三ラインも最終的には半額ぐらいに値下がりして、それでも売りさばけずに格納されて、少し期間を開けて半額で再投入されることになると思う。

なぜこういうことになるかというと、製造数量が多すぎるのである。
これはユニクロも同じ失敗を繰り返している。
鈴木・柳井イズムの限界だと個人的には見ている。

そもそもなぜ、デザイナーズコラボをするかというと、ブランドのステイタス性を上げるためだろう。

低価格品を売ってる我々ですが、あの高名な○○デザイナーとコラボをしましたよ、これからはかっこいい物も扱いますよ。我々はカッコイイブランドになりますよ。

と宣言する意味合いがある。
だったら、マーチャンダイジング的に考えれば「見せ球」程度の製造数量で良いということになる。
デザイナーズコラボラインを何百万枚も売る必要はないし、デザイナーズコラボライン単体で収益化を図る必要もない。

小規模な専門店チェーンだと、雰囲気作りのためだけに高感度ブランドから1枚だけ仕入れたりすることもある。それは「見せ球」であり、半ばディスプレイ用ともいえる。

イトーヨーカドーやユニクロだと顧客数がケタ違いに多いから1枚切りなんてことは無理だが、それでも製造数量を数千枚とか1万枚程度に減らすことは可能だろう。
デザイナーズコラボラインだから、投入から1か月間くらいでほぼ売り切れさせてしまえば良いのである。

定価で売り切れさせることで、デザイナーズコラボラインは通常のラインとは異なり、投入されたらすぐに定価で買わなくてはならないと、多くの人々は認識する。
そうすると次のコラボラインからは、より多くの人が定価で買うようになる。

ブランドの価値の一つに希少性があるから、「見せ球」は希少性を高めることに徹するべきである。

しかし、現実には真逆のことをしている。
ゴルチエは半額でも売れ残り、その後しばらくしてからまた半額で再登場している。

ユニクロ×ルメールは追加補充を繰り返した結果、投げ売り価格まで値下がりしている。
大好評だったスリッポンシューズを追加補充して結局1990円に値下がりさせていることもそうだが、それ以外のアイテムも大概が値崩れしている。
オックスフォードボタンダウンシャツは1290円にまで値下がりしているし、イージーパンツは790円にまで値下がりした。
下手をすると通常ラインの値引き品より安くなっている。

消費者は見切っている。「どうせ何万枚も大量生産している」「どうせ追加補充する」と。
だったら値下がりするまで待てば良いのである。
当分の間、欠品する心配はないのだ。

今の考え方のままなら、ヨーカドーもユニクロもヨウジヤマモトと組もうがコム・デ・ギャルソンと組もうがマーク・ジェイコブスと組もうが結果は同じである。
投げ売りまで消費者に待たれてしまう。

洋服には鮮度というものがあるが、ヨーカドーやユニクロはそこまで足が速い商品を扱っているのではない。
じゃあ2,3か月待ったところで同じである。

イトーヨーカドーもユニクロも本気でステイタス性を上げたいのなら、コラボラインは平気で欠品させて希少性を高めるべきである。それができないならブランドのステイタス性は永遠に向上しない。




トレンドアイテムを全て企画製造する必要あるの?

 先日、東京に行った際に、フリーランスのMDとして活躍されている佐藤正臣さんとお会いした。
アパログでマサ佐藤のペンネームでMDブログを書いておられる。

http://www.apalog.com/fashion_soroban/

最初に登場されたときに「マサ佐藤」を「マサ斉藤」に見間違えて「プロレスラーのマサ斉藤がブログを書くのか、アパログは斬新やなあ」と感心していたら、別人だと気付いた。

プロフィールにも書いておられるようにずっとノーリーズの販売員として勤務したあと、MDを担当されたとのことで、いろいろと実際のマーチャンダイジングをご教授いただき、非常に参考になった。

その中で、意見が一致したのが「トレンドアイテムをすべて作る必要があるのか?」ということだった。

世間一般に「トレンド品」とひとまとめにされることが多いが、トレンドのアイテムは毎シーズンいくつかある。
一つきりではない。

こんなことは業界の人なら当たり前であろう。

例えば、今はワイドパンツがトレンドになっているが、それ以外にもトレンドとして人気のあるアイテムがある。
もう数シーズン目になるがMA-1タイプのブルゾンもトレンドだし、今の時期なら「ヘソ出しルック」ができるような短い丈のトップスもまだトレンド品だ。

それぞれ、ブランドにはブランドコンセプトというものが存在する。
もちろん、やっつけで看板だけのコンセプトを掲げているブランドもたくさん存在する。

ブランドコンセプトやターゲット設定に沿えば、本来なら取捨選択するアイテムがあって当然である。
ひどくわかりやすくいえば、ナチュラルテイストのブランドなのでMA-1タイプのブルゾンは作りません、という選択はあっても当然だということである。

しかし、現在の各ブランドの店頭は「トレンド品」といわれる商品をほぼすべて並べている場合が多い。

消費不振といわれる状況下にあるから余計に売上高を確保するために、なるべく多くのトレンド品を並べたい気持ちは理解するが、それが店頭の同質化をより加速させており、逆効果になっている。

どのブランドでもすべてのトレンド品がそろうなら、一番よく目立つ店、一番安い店、一番利便性が高い店が消費者に選ばれやすくなる。
どのブランドを見てもほぼ同じに見えるから、消費者はそういう選び方をしやすくなる。

先ごろの経産省の提言でもあったように、「安易なトレンド品を並べて同質化している」という指摘は正しい。

個人的にはその解決策が「個性的な商品を作るクリエイターの育成」だけでは片手落ちではないかと思っているのだが、それは今回は関係ないから言及しない。

ブランドコンセプトとターゲットに沿って、例えば、「MA-1タイプのブルゾンは作らないが、コーディガン(コートとカーディガンの中間的なつくりをした上着)は作るとか」「ワイドパンツは作らないが、ひざ下丈のスカートは作る」とか、そういう取捨選択がブランドごとにできれば、店頭の同質化・均一化は防げる。
あくまでも理論上は。

とはいっても洋服は売れてナンボだから、トレンドを全く無視するというのもおかしな話になる。
じゃあ、MA-1タイプのブルゾンを作らなかったブランドも、その中に着られるようなセーターやらトレーナーは企画製造すれば良いのではないか。
そしてそれを販売員がキチンと接客できれば、売上高を維持できるのではないか。

「ブランドコンセプトに従ってMA-1タイプのブルゾンは製造していませんが、インナーとして合わせれば映えるセーターやトレーナーはあります」というような売り方は可能なのではないかと思っている。

マサ斉藤マサ佐藤さんとはそんな内容のことを話した。

少し思い返してみると、バブル期とかバブル崩壊直後くらいのブランド店は、ずいぶんと個性的だったように感じる。記憶補正で美化されてしまっている可能性は否定できないが、93年か94年ごろは、トレンド品を買うのにもいろいろと店を回らなければならなかった。

なぜなら、どの店でもそれを扱っているとは限らなかったからだ。

当時はまだDCブームの残り香もあったし、商業施設内にもそういう店が数多くあった。

当時の筆者の目からすると「トレンド無視かよ」と思えるような商品を置いたブランドもたくさんあった。
それでも各々のブランドにはファンがいて、トレンド無視とも思える商品を買っていた。
それも決して安くはない価格で。

ファストファッション、グローバルSPAブランドというものを目にした今の消費者が当時の消費者と同じような消費行動をすることは考えにくいが、店頭の同質化・ブランドの均一化を打破するためには、ブランドコンセプトとターゲット設定に即してのトレンド情報の取捨選択が重要なのではないかと改めて思う。

クリエイターの個性的な商品なんかを強化するよりも、ブランドとしての情報の取捨選択をもう一度再構築する方が効果的ではないかと思う。

なぜなら個性的なデザインの洋服は着る人を選ぶから、そういう物が市場に大量に出回れば、結局売れ残りが増えるだけであり、その売れ残りが大幅値引きされて投げ売られるだけなので、結果的には洋服の価格低下は止まらないということになりかねないからだ。

それよりも一般ブランドがブランドコンセプトとターゲットに沿ってトレンド情報を取捨選択して、独自の企画に落とし込んだ方が、着る人を選びにくいデザインでしかも同質化しないので、結果的には各ブランドが住み分けできるのではないか。

まあ、そんなことを考えた。




意外な所有者がブランドの版権を所有していることもある

 今日は小ネタを。
お前のはいつも小ネタじゃないかと言われそうな気もするが。(笑)

ブランドの商標権というのは意外な企業が持っていたりすることが多い。
どれも昔のことで、現在は解消されているが、以前に取材して驚いたエピソードを紹介したい。

夏冬のファミリーセールにほぼ欠かさず通っているヤマトインターナショナルだが、「エーグル」をライセンス生産していた。
その「エーグル」のライセンス契約を早期終了するというニュースが先ごろ流れた。

ヤマト インターナショナルが「エーグル」契約を早期終了 売上高の25%失う
https://www.wwdjapan.com/business/2016/05/26/00020626.html

 ヤマト インターナショナルは5月26日、フランス発のアウトドアブランド「エーグル(AIGLE)」のライセンス契約を2017年2月28日で終了することを発表した。契約満了予定だった18年12月31日を繰り上げて事業展開を早期終了する。契約終了の理由について同社は「今後のビジネス戦略の見直しを図る中期構造改革の一環」としている。17年3月からはラコステ ジャパンがライセンシーを引き継ぐ。仏エーグル社と仏ラコステ社はスイスに拠点を置くマウス・フレール・グループの傘下という関係からスムーズな移管ができると判断した。

 「エーグル」は1993年からヤマト インターナショナルが仏エーグル社とのライセンス契約に基づき、国内販売を開始した。直営店26店、アウトレット店14店、コーナー店29店舗を展開し(今年2月時点)、売上高は約50億円(弊紙推定)と同社の25%を占めている基幹ブランドだ。

とのことである。
ちなみにこの50億円前後という売上高の推測はほぼ正しいと感じる。
各ブランドの売上高は非公開だったが、クロコダイルとエーグルの2つが主力ブランドだったから、ざっとこんなものではないかと考えられる。

さて、このニュースは5月末のものなのだが、そのときに感じたのが「ヤマトはラコステと縁が深いなあ」ということである。

その昔、ヤマトインターナショナルの決算報告書には、「ライセンス収入」という項目があった。
決算会見で某業界紙記者が「この内容は何ですか?」と質問したところ、反ってきた答えが「ラコステからのライセンス収入」だった。
実際はもっとボカしての返答である。
「某ワニのマークのポロシャツのブランドさんから」という感じだった。

説明によると、日本国内でワニのマークを左胸につけるという商標はヤマトインターナショナルの「クロコダイル」がかなり古い時代に取得していたそうだ。
ワニの向きが右か左かは関係ないのである。

そこで、ラコステはその当時、ヤマトにライセンス使用料を支払っていたというわけであり、現在はそういうことは解消されている。

だからエーグルがラコステに移籍することを考えると、ラコステとヤマトの因縁と言おうか、縁の深さには驚かされたのである。

もう一つ。

その昔、PIKOというサーフブランドが一世風靡セピアした。いや、一世を風靡した。

当時はクリムゾンという会社が量販店平場で大々的に販売していた。
イズミヤでもイトーヨーカドーでもジャスコでも大量に売られていた。
グラフィックのセンスはあまり良いとは思えないのに飛ぶように売れていたから不思議なことである。

そのおかげでクリムゾンは最盛期には売上高190億円弱にまで拡大した。

このブランドもその昔は意外な企業が版権を取得していた。
もう2000年ごろの話になるが、肌着のOEM生産などを手掛ける澤村という会社がPIKOの版権を持っていた。
やはり決算報告書にはブランドライセンス収入という項目があったのである。

こんな風に市場流れている商品の版権を意外な企業が持っている場合がある。
ブランドビジネスを開始する際にはそのあたりの調査が必要になる。

例えば、現在なくなってしまった某なんちゃってサーフブランドがあった。
企画製造販売を行っていた会社は公式には「海外のサーファーと契約したブランド」と説明していたが、実はその版権を国内で所有していたのは、ちょっとややこしい性向の個人だった。
その個人に一定の金額を支払って、会社はブランドを企画製造販売していたのである。

こんなケースも業界ではそれほど珍しくない。

調べてみると意外に面白い事実が浮かび上がることも多い。




すべての商品やサービスは絶対にコモディティ化する

 すべてとは言わないが、ほとんどの商品やサービスはコモディティ化する。
イシキタカイ系の人たちがいくら叫ぼうがキャンペーンをしようが無駄である。

例えば先日、こんな記事が掲載された。

スタバ劣化で行く意味消失…ただ高いだけ、顧客満足度もドトール以下に転落
http://dailynewsonline.jp/article/1180032/

本文を引用するほどでもなく、見出しで十分内容はご理解いただけるだろう。

 しかし、ここにきてスタバ人気に陰りが見え始めた。例えば、2015年度「日本版顧客満足度指数(JCSI)」では、カフェ分野で顧客満足度1位となったのはドトールで、前年度トップだったスタバは僅差ながら3位に陥落している。

 さらに、調査ニュースサイト「しらべぇ」が今年3月に全国の20~60代の男女1331人を対象に行った「大手コーヒーチェーン3社の中で好きなのはどれか」という調査でも、同様の結果が出ている。全体こそスタバが57.2%、2位のドトールが30.7%とスタバの圧勝だが、対象を東京都民に限るとドトールが44.7%でトップに輝き、スタバは40.7%の2位。東京では、人気面でドトールに逆転されてしまっているのだ。

という内容である。
で、指摘されている凋落の原因だが、

1、他店も禁煙・分煙を徹底化
2、スマホ・パソコン用の電源が他店も充実
3、店舗数が増えすぎて希少性の低下=飽和状態
4、飲料が他店に比べて割高

ざっとこんなところだろうか。

個人的な理由を付け加えると、造語で構成されたメニューがわかりづらいことも入るのではないか。
スタバのメニューを見て、「普通のアイスコーヒー」がどれなのかパッとわかりづらい。
スタバ専門用語を覚えるのははっきり言ってめんどくさいし、そこに価値を感じない。

もともと筆者はスタバが嫌いである。
なんとなく、お高く止まっているイメージがあるし、イシキタカイ系が御用達だという嫌悪感もある。
あと、見せびらかすようにノートパソコンで何やら作業をしているふりをしている自称ノマドもうっとおしい。

おまけにそういう長時間客が多いから四六時中混んでいるイメージがある。
客の回転率も相当悪いんじゃないかと他人事ながら心配になる。

打ち合わせや取材などで、相手に指定されない限りは自発的にスタバを選ぶことはない。

そんな筆者の好き嫌いは置いておいて、指摘されている要因のほとんどがスタバの提供していたサービスがコモディティ化して、他店でも割安で同等のサービスが受けられるようになったというだけのことである。

ちなみに筆者はよほどの不味さでない限りは、コーヒーの味の違いはほとんどわからない。
ほぼ、どの店で飲んでも変わらないと感じる。

よほどのスタバファンでない限りは、他店でも良いよということになる。
またスタバはいつも混んでいるイメージがあるから、空いている他店にしようという人もいるだろう。

あと公平に見て、店舗数が増えすぎて飽和状態にあるということもいえるだろう。
スタバを通り越えたらまたスタバなんていう立地もある。
まるでコンビニか歯医者状態だ。
ジワジワと毎年売上高や客数を微増させていくことは不可能ではないだろうが、成長期のように爆発的に増やすことはかなり難しい。

ユニクロの国内店舗数が今後爆発的に増えないのと同じである。

逆に今後もスタバに成長期同様の躍進を求めるほうが無茶である。

記事でも指摘されているようにスタバは今後普通のコーヒーチェーン店になるだろう。
それは今、ブームと言われているサードコーヒーも同じだ。
どこかで飽和点が来て普通のコーヒーチェーン店になる。それは避けられない。

そしてスタバが陥った状態と、いま、多くの洋服ブランドが陥っているのは同じ状態である。

どこかで飽和点に達するし、同じような商品やサービスがコモディティ化して低価格で提供されるようになる。

じゃあそれに対して商標登録とか特許申請すればどうかという意見があるが、モデルチェンジまでの期間が長い家具や家電、自動車などと異なり洋服はモデルチェンジが早い。
とくに一部の人間が絶対的手法としてこだわる「52週MD」なんて毎週新型を店頭投入するわけだから、毎週新商品が追加される。
厳密にいうと多くのブランドがやっている「52週MD」はMDではなく、単なる新型投入に過ぎないから正しくは「52週商品投入」とでも呼ぶべきである。
そうなると、いちいち毎週投入する新型を商標登録やら特許申請なんてしていられない。
認可されるまでに相当時間がかかるし、次年度同じ商品を製造する可能性は極めて低い。

毎年同じ商品を生産し続けている洋服ブランドがどれほどありますか?

だから商標登録や特許申請は多くのブランドで無駄でしかなく、コモディティ化を止める有効的な手段にはならない。

そうなると、どれだけ熱烈なファンを作るかということに尽きるのではないか。
スタバも同じだ。どれだけ熱烈なスタバファンを今後も維持できるかである。

商品やサービスは絶対にコモディティ化するからそれに頼っていると、いずれはコモディティブランドに負けてしまう。
もちろん、商品やサービスを向上させることは必要だが、それだけに頼っていては苦境に陥る。
それの代表例が百貨店向けの洋服アパレルだろうし、今回記事で掲載されたスタバである。





担当者が「決められない」のは権限が与えられていないから

 FBのお友達から流れてきたこのニュースをご紹介したい。

EC売上が5倍に!「ちょっとしたキッカケを積み重ねる」メガネスーパー・EC戦略の全貌
https://seleck.cc/article/484

メガネスーパーは株式市場でもときどき話題になる。
ときどき株価高騰してストップ高になることがあるからだ。
それでいて株価は安い。
ちょっと小金を握って、高騰時にデイトレードすれば良い小遣い稼ぎになるからだ。

それはさておき。

この記事によれば、メガネスーパーがECで成功した理由は2つある。

1、すべての権限を与えられたから

2、ECでは、実店舗との差別化を考えがち。けれどそれ以前に、ECはそもそも劣っている部分が多い。まずはそこを引き上げていくべき

この2点である。

ほかにもいろいろとメルマガのことなども語られているが、個人的に重要だと思うのはこの2点である。

ECはどんなにがんばっても実店舗よりも商品が見にくかったり、値段やスペックがわかりにくかったりする。
その部分を見やすく、わかりやすくすれば効果が出るというわけだ。

それよりも重要なのは「すべての権限を与えられたから」という点だと思う。
ECに限らず権限が与えられずに責任だけ問われるということが日本の企業には多い。
特にバブルがはじけて不況が押し寄せてからどの業界も縮こまっており、いかに責任を回避するかに終始している。
特に繊維・アパレル・百貨店業界は不況業種ということもありその姿勢がもっとも明確である。

このところ、5回連続で東京に出張しているが、今回の東京出張でも「決められない」エピソードばかりが聞こえてくる。

全国展開する有名な某大手セレクトショップが、8月12日現在において、初秋投入する長袖Tシャツの企画すらまとめられないそうだ。
ワッフル素材でサンプルを作ったところ、そのサンプルを見て、修正点についての話し合いが始まったが、いまだにまとまらない。
挙句の果てには「使用素材を変えようか」というプランまで飛び出しているそうだ。

長袖Tシャツというアイテムの性格上、投入時期は早ければ8月下旬、遅くとも9月中旬になると考えられるのだが、素材まで変えてしまえば9月中旬の店頭投入ですら間に合わなくなる。

「売れ行きが厳しいから失敗したくない」という思いが強すぎるのだろう。

仮に素材を変えることに決定した場合、無理やりにでも9月中旬に間に合わせるだろうから、そのシワ寄せを食らうのは縫製工場であり、生地メーカーである。
こうやって衣料品の製造現場が疲弊していくのである。

また、ある子供服ブランドが展示会を開催したところ、某大手百貨店のバイヤーが来た。
バイヤーは絶賛しながらも仕入れず仕舞いだった。
こういう百貨店バイヤーは業界に掃いて捨てるほどいる。
彼らの口癖は決まって「良いんですけどね・・・・」だ。
この「・・・・」が重要で微妙な含みを持たせる。
「察してチャン」かよ、うざいわ。

「良い」けれども仕入れない理由は様々あるだろうが、最大の理由は、もし売れなかったら責任を取らねばならないからだ。
このブランドがメジャーなら責任回避が可能だから仕入れるだろうが、マイナーなブランドを仕入れた場合、責任は完全にバイヤーに負わされるからである。

これらの事例は、「決断力のなさ」「意思決定の遅さ」を表しているといえるが、彼らがそうなる最大の理由は、「権限が与えられていないから」である。

繊維・アパレル・百貨店の多くは、現場担当者は権限があまり与えられていないのに、責任だけを負わされる。

権限がないのに責任だけを取らされるような罰ゲームのような仕事なんてだれもやりたくない。

メガネスーパーのECが成長しているのは、現場担当者に全権限が与えられているからである。
だから思い切った施策ができる。
もし多くの日本企業と同様にメガネスーパーが担当者に権限を与えずに責任だけを負わせたらどうなるだろうか。
まあ、担当者は責任回避に終始するだろう。
そして責任回避する担当者を筆者は責める気にはならない。

責められるべきは経営者である。

権限を与えない現場担当者に責任を負わせるのは、経営者が自分の責任を回避しているに過ぎないからである。
自分が責任を取るのが嫌だから、現場担当者に責任だけを押し付けているに過ぎない。

日本にはこんなダメ経営者が数多くいる。
とくに繊維・アパレル・百貨店業界はこの手の経営者の博物館かと思うくらいに多種多様そろっている。

そんなわけで、現場担当者に責任だけでなく、全権限を与えたメガネスーパーは伸びるべくしてECが伸びたといえる。
担当者に権限を与えない企業は何をどんなにがんばっても成功することは難しい。


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