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南充浩 オフィシャルブログ

アニメ・漫画がメインカルチャーでファッションはサブカル

2016年8月31日 考察 0

 早い物で今日で8月が終わる。
今年も残り4か月となり、早くも3分の2が終わった。
本当に歳月人を待たずである。
こんな感じであっという間に人は死に至るのだと思う。

長生きをしたいと思うほどリア充ではないから、適当なところでさっさと死ねれば楽になる。
痛そうだし苦しそうだから自殺しようとは思わないけど。

繊研新聞プラスに以前、「ファッションはサブカルか?」というコラムが掲載され、それの続きが先日掲載された。

http://www.senken.co.jp/column/eye/subcul0830/

で、まじめに答えると、すでにファッションはサブカルになっていると思っている。
サブカルとは何かというとサブカルチャーのことであり、サブだからメインのカルチャーではない。
ちょっとマニアックなジャンルの文化なんかを指して「サブカル」と呼ぶのが通常の使い方である。

20年位前まではアニメや漫画がサブカルと呼ばれていた。
いわゆる正規の文化ではなく、まともな大人が話題にするのもはばかられるという社会の風潮だった。
みんなそこそこ愛用しているのに、わけのわからないアングラ感があった。
それ以前の風当たりはもっと強かった。

さほど仲良くもない人に「好きな漫画は何ですか?」なんて尋ねることは「は?馬鹿じゃね?」というぐらいの対応をされるのが普通だった。

ところが今はどうか?
ファッション業界に属している人でもアニメや漫画についてはそこそこ詳しい人が多い。
筆者より上の世代でも多いし、筆者より下の世代ならそんな人が山ほどいる。

ワンピースやナルト、ドラゴンボール、ガンダム、ルパン3世、北斗の拳、ジブリあたりの話題が通じない人のほうが珍しいだろう。たいていの人はどれかにはひっかかる。
ファッション業界以外の人ならなおさらである。
結構共通の話題として座が盛り上がる。

逆にファッションの話題はどうか?

業界の人ならまだしも業界外の人と共有化できて盛り上がることなんてほとんどない。
せいぜい「バブル期は肩パット入ったスーツ着てましたよね」とか「ヘインズの3枚セットのTシャツってすぐに首回りが伸びましたよね」程度である。

「マルタン・マルジェラいいですよね」なんて話題は業界の人か同好の士くらいしか理解されない。
業界で話題となっているブランドなんて同好の士以外ではほとんど知名度がない。
一般大衆はファッションにそれほど興味を持っていないから話題にも上らないし、知識も蓄えない。

ファッションに詳しいということは恥ずかしいことではないが、称賛に価するものでもない。
言ってみれば「特殊な趣味」という程度だろうか。

茶器などの工芸品は高尚な趣味だとされているが、多くの人は別に興味を持っていない。
「まあ、高尚だし集めたければ集めれば?ぼくは興味ないけど」、だいたいそういう感じではないかと思う。
筆者が実際そうである。その価値はわかるが別に興味もないし深く心も揺さぶられない。
スーパー万代で特売のバナナを買い損ねるほうがよほど動揺する。

個人的には、多くの人はファッションに対しても同じように見ていると感じる。

こうなると20年前までのアニメ・漫画とファッションの立場は完全に入れ替わったといえる。
アニメ・漫画の話題のほうが多くの人とコミュニケーションが取れるし、場も盛り上がる。
ファッションは限られた業界人や趣味人としか話すことができない。

どちらがメインでどちらがサブかは一目瞭然である。

今はアニメ・漫画がメインカルチャーでファッションは完全なるサブカルチャーである。

相手を選ばずに話題にできるブランドはそれこそユニクロくらいではないか。
ヒートテックが暖かいとかそれほど暖かくないとか、今年のTシャツが細目シルエットになって窮屈だ(知らんがな、ダイエットしろよオッサン)とか、そんな感じでは多くの人と共通の話題にできる。

しかし、それ以外のブランドやトレンドの話は業界人か趣味人との間だけにとどめておいたほうが賢明だ。
経験上、こちらの言いたいことの3割も伝わらないから。
今季のトレンドなんて誰も気にしていないし、来シーズンのトレンド予測なんてもっと誰も興味を持っていない。

筆者は大学を卒業するまでオカンがイズミヤかジャスコで買ってきた1900円のトレーナーで過ごしていたから、そのころのファッションに関する社会の風潮はあまり知らないが、それでも多くの人は新しくオープンしたファッションビルや商業施設の話題をしていたように記憶している。
今、そんな話題があるだろうか?

商業施設自体は話題になるだろうが、その中でも飲食店だったり食料品だったりアミューズメント施設だったりそういうことが話題になることがほとんどではないか?

おっさんたる筆者が世間話をしたときに出てくる話題はだいたいそういう内容で、「あの商業施設には〇〇ブランドが入りましたよね、前から注目してたんですよ」なんていう話題は業界人からしか出てこない。
業界外の人の間は飲食店や食料品、アミューズメント施設についての話題がもっぱらである。

ファッションの話題は同好の士、趣味人、業界人としか共有できない。

つまりはファッションはサブカル中のサブカル、サブカルの王道を歩いているといっても過言ではないだろう。

じゃあ、ファッションが、今後、昔のようにメインカルチャーとして復活するか可能性があるかと尋ねられたら、筆者の答えはNOである。
その可能性はほとんどないだろう。
極限まで細分化されているファッションはすでに一般人にとって「相当にわかりにくいもの」になり果てており、今後、そういう細分化がさらに進むことはあってもその逆の状況になることは考えられないからだ。

メインカルチャーへの復活なんて無駄な努力はとっととやめて、開き直ってファッションはサブカルの立場を極めたらどうか。
業界人はサブカル従事者だと自負すればどうか。

まあ、そんなわけでサブカルとして驀進すればいいと思う。

「ない仕事」の作り方
みうら じゅん
文藝春秋
2015-11-24


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