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ファッションショーの開催目的は売るため

 先日、ファッションショーを見にでかけた。
実はもともとあまりファッションショーには興味がないのだが、かつては仕事上でパラパラと見ていた。

その昔は大阪でもデザイナーズブランドやそれに類するブランドを集めたコレクションショーが行われていた。
「大阪コレクション」というやつだ。
筆者が知るのはその中期以降から終了までだが、そのころになると、東京でデビューする前段階の新進ブランドのデビューという位置づけが濃かったように感じる。

結局は10年以上前に終了してしまった。
現在、日本で半年先のコレクションショーが定期的に開催されているのは東京だけである。

しかし、東京コレクションもその在り方が問われたりして、安泰というわけではない。

今回は、ぼんやりとファッションショーを見ていて、ふと、以前に大先輩がご指摘されたことを思い出していた。

どの層に向けてのイベントなのか?どのようなビジネス効果を求めてのイベントなのか?

ということを。

ファッションショーを開催する意義はさまざまあるが、最大の目的は「服を売るため」である。

これは服飾史などの本を開けば掲載されていることの復習なのだが、コレクションショーを開催するのは、バイヤーやメディア、上得意顧客に向けてのプロモーションのためだとある。
ブランドによる卸売りが主流だった当時は、それを仕入れてくれる小売店のバイヤー、報道してくれるメディア、毎年何百万円分も商品を購入してくれる上得意顧客に向けてのプロモーションであり、お披露目である。

平たく言えば「半年先のシーズンにはこんな服を提案しますよ。だから仕入れてね。報道してね。何百万円も受注してね」というのが最大の目的である。

存続できなかった大阪はもとより、東京コレクションもその在り方が問われるようになったのは、「売る」ことに結びつかなくなったからではないか。

その理由も様々あるだろう。

・衣料品不振、デザイナーズブランド不振で仕入れ枠が減った
・仕入れ型小売店の減少
・大手小売店のSPA化

などが考えられる。

そうするとコレクションショーは必然的に「単に見せるもの」になってしまう。
その割には開催に莫大な費用がかかる。
モデル・演出家へのギャラ、舞台装置、サンプル製作費、音響、照明費などなどが必要となる。
売れない場合はそれらはほぼ持ち出しとなる。

ならそれを緩和するために観客を有料制にするという手段がある。
有料制にした場合、通常のコレクションショーでは多くの集客は難しい。
なぜなら、極端な言い方をすれば、コレクションショーは多くの人にとって「面白くない」からだ。

音楽が流れてモデルが粛々と歩く。

これを「面白い」と感じる人は業界人の中でも限られているだろう。
筆者は1ブランドのショーが20分以上続くと、眠りに陥る。
ものすごい催眠効果がある。

じゃあそこにエンターテイメント性を持たせようということで、モデルに著名タレントを起用したり、ライブやトークショーを開催するようになったのが、神戸コレクションであり東京ガールズコレクションだといえる。
おまけに登場する洋服は、今、店頭で並んでいる物ばかりだから「売れることにつながり易い」(理論的には)となる。

実際に売れたかどうかは別だ。
東京ガールズコレクションにライトオンが出品して爆発的に売れたなんてことは聴いたことがないし、その当時のライトオンの決算は減収減益である。

まあ、ただ有料チケットは売れやすい。
正統なコレクションショーよりはずっとたくさん、しかも高額で売れやすい。
だから1万何千人も毎回集客できるのである。

最後期の大阪コレクションの観客は、団体関係者、一部のメディア、専門学校生がほとんどだった。
バイヤーは上に書いたような理由で減少していたから「売れる」ショーではなくなっていた。

現在でも特定の企業や組合団体がファッションショーを開催することがあるが、これは会員や組合員へのサービスであり、定期的に年に2回開催されるようなものではない。
イベントの性格が異なる。

国内のコレクションショーをもっと盛り上げたいという人がいるなら、「売れる」仕掛けを作らねばならないだろう。単に「見せる」だけのショーなら初回から何回かは盛り上がるだろうが、収益が上がらないので、結局運営者も出展者も金銭的に疲弊してしまう。疲弊した結果存続できなくなる。

東京の場合はメルセデスベンツというスポンサーが付いているので、好きにすれば良いと思うが(東京コレクション出展ブランドも周りが想像するほどには売れていない)、先日見たような地方で開催されるコレクションショーは「売れる」ということはさらに重要である。

現在なら、デザイナーズブランドと言えども直営店か直営ネット通販を所有していることが多い。
両方を所有しているブランドもある。

そしてスマホ全盛のご時勢である。
例えば、その直営ネット通販に結び付けるような仕掛けは考えられないものだろうか。

その部分を考えないと、コレクションショーというイベント自体はさらに衰退するだろう。

直販が大部分を占めるバーバリーはコレクションショーの出品物を半年先から、店頭に今並んでいる物に変える。理由はそちらの方が売れるからだ。

実に利益に敏感な欧米ブランドらしい決断である。
国内ブランドはそのあたりをどう考えているのだろうか?




ユニクロ×ルメールのスリッポンを試着してみた

 今日はお気楽に。
昨日、「ユニクロ アンド ルメール」のスリッポンシューズが発売された。
前評判が高い商品なので早速店頭に現物を見に行った。

向かったのはあべのキューズモール店。
さっそく、試着してみた。
筆者の足は幅広なので、ナイキ、アディダス、プーマなどのスニーカーは幅が狭く作られているので、いつも27・5センチを履いている。品番によっては28センチというのもある。

反対に、幅広の形の靴なら26センチでも履ける。
とくにスリッポンはヒモで大きさを調節できないので、できるだけピッタリのサイズを選ぶ必要がある。

で、控えめに26・5センチを履いてみようとしたのだが、履き口が小さくて入らない。
27センチを試してみたが入らない。

そこで28センチ(展開サイズで最大)を履いてみたら入った。
試しに27・5センチも履いてみたが無理だった。

かなり幅が狭く作られている。
足の形は個人差があるが、いつも履いている靴よりも1センチ前後大き目を選ぶのが良いのではないか。

試着した感想だが、シルエットはかなり細い。
スーツ向けの革靴と似たような感じであり、細身のパンツに合わせるのがもっとも良いだろう。
反対にワイドパンツにはボリュームが無さ過ぎて合わない。

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ソールはスニーカーにしては薄目だがクッション性は悪くない。
インソールが入っているためでもあるのだろう。

生地は綿100%オックスフォード素材なので、耐久性はあまり良くないと思う。
ガンガンとハードに履くのは寿命を縮めるのではないか。
かと言って高級レザーシューズほど丁寧に扱う必要もないが、スポーツメーカーのハイテクスニーカーのように履くと短命に終わりそうな気がする。

価格は2990円(税抜)なのでお手頃である。
カラーバリエーションは白と黒の2色。

ユニクロのオンラインストアを今朝覗くと、早速、黒の大きいサイズが完売している。
すごい人気である。
黒の26・5~28センチが完売である。
白の方は各サイズが残っている。

筆者も買うとすると黒になると思うが28センチが実店舗の店頭にいつまで残っているか。

ところで、あべのキューズモールのユニクロは昨日はレジがフル稼働し、それでも長蛇の列ができていた。ざっとみたところ40~50人は並んでいただろうか。
平日の午後だというのにすごい集客力である。

夜になって、某百貨店・専門店向けアパレルの役員の方から「今春も厳しい。店頭にもあまりお客が入っていない」というお知らせをいただいた。
耳にする範囲では、今春の商況はジャンルやテイスト、価格帯によってマダラ模様のようだが、「昨年秋冬よりはマシ」というブランドもある。

しかし、引き続き厳しいブランドも珍しくない。

ユニクロは営業減益(赤字転落ではなく黒字幅が減った)によって、「不振」「一人負け」などと報じられることが多いが、平日の午後に10台以上あるレジがフル稼働してそれでも50人前後が常に並び続ける状態にあるというのだから大した人気と言わねばならない。

個人的にもユニクロがかつてのような勢いで今後も売上高を伸ばし続けるとはまったく思わない。
売上高8000億円を越えているのだから最早飽和状態で国内売上高は良くて微増だろうし、微減くらいは当然だと思っている。

しかし、V字回復と持ち上げられているライトオンはピーク時売上高からはいまだに150億円マイナスである。
しまむらも回復しつつあるが、これから大幅成長が見込めるかというと厳しい。

かつて量販店、しまむら、ユニクロなどへ製品供給していた友人がしまむらについての危惧を漏らしていた。

昨秋、しまむらは保温ズボンを3900円で発売したところ大ヒットとなり、V字回復のきっかけを作った。

しまむらがかつて若い女性に受けたのは、「多品種小ロット」による商品の希少性である。
大量生産で「ユニバレ」「ユニ被り」が頻発するユニクロとは反対に、小ロットなので「しま被り」「しまバレ」はほとんどない。

今回、保温ズボンという大ヒットアイテムを作ったが、これはユニクロ方式で大量に生産している。
おそらく今秋も保温ズボンは重点的に販売するだろうし、実際の店頭でも売れるだろう。

けれども、かつてのしまむらが持っていた「良さ」というのはなくなり、ユニクロや他の量販店同様に「大ロット」方式になる。他の商品にも同じ方式を押しはめれば「しまバレ」「しま被り」が頻発するようになる。
その方向転換は果たして正しいのか?というのがその友人の危惧である。

それこそ「大ロット」の低価格ゾーンに埋没してしまわないか?

閑話休題

メディアでは「不振」と書きたてられているユニクロだが、平日の午後にレジに長蛇の列を作らせるほどの底力はまだ衰えていない。それを読み誤ると破綻が早まるのは他のアパレルの方ではないか。

ユニクロ vs しまむら(日経ビジネス人文庫)
月泉 博
日本経済新聞出版社
2009-11-03


 

ユニクロ進化論
松下久美
ビジネス社
2010-02-05


小規模専門店からの発注枚数が極小化している

 卸売りをメインとする小規模ブランドの展示会に行くとこんなことが話題に上る。
ブランドのテイストや価格帯は関係なく共通している。

それは小規模専門店からの発注枚数が極小化しているというところである。

小規模専門店、ブティックなどはこれまでなら、気に入った品番は1色で2サイズか3サイズ、もしくは2色で2サイズを発注していた。

例えていうと、Aという品番のコートがあって、これが3色展開だとする。
紺、グレー、赤だとしようか。

これまでの発注では、紺のコートを2サイズ1枚ずつとか2枚ずつ、もしくはグレーと赤を各サイズ1枚ずつとか各サイズ2枚ずつというやり方が主流だった。

ところが今は、「紺のコートのMサイズのみを1枚だけ」と発注する専門店・ブティックばかりだそうだ。

それだけ専門店・ブティックに売る力が無くなっているといえるが、そういう発注のやり方が主流になると、ブランド側は売上高を確保しにくくなるし、生産ロットとしてまとまらないからドロップ(生産しない)品番が増えることになる。
当然だが、展示会用のサンプル製作費もその品番については回収できないということになる。

こうなると、卸売りブランド側も自衛策を採らざるを得ない。
直営店展開とネット通販の開始である。

直営店を本格的に開設するには何百万円、何千万円の費用が必要となる。
小規模ブランドの中にはアトリエ、事務所を兼ねてこじんまりとした直営店を構えているところもある。

とくに独立系デザイナーズブランドは自社ネット通販を立ち上げていないブランドが多い。
ネット通販なら本格的な直営店よりも少ない費用で開設することができる。
無名ブランドがすぐに売上高を稼げるようになるとは思わないが、時間をかければある程度の売上金額に達することは可能だ。

ところが、いざ直営ネット通販を開設しようとすると、先のような専門店・ブティックからクレームが入る。
しかし、ブランド側から言わせれば「何を言っているのか」という話だ。
毎シーズンMサイズ1枚しかオーダーしない専門店やらブティックが「バッティングだ」とか「うちの商売の邪魔になる」と言ったところで説得力はゼロだ。
競合がいてもMサイズ1枚くらいなら売り切れるはずだ。できないというならよほど販売スキルが低いのだろう。

これがもし、5型も6型も発注してくれるような専門店やブティックからの意見ならブランド側も真摯に聞かざるを得ないが、Mサイズ1枚しか発注しないような専門店やブティックの意見など取り合う必要もない。
粛々と直営ネット通販を開設すれば良いのである。

逆に小規模専門店でも苦楽園のパーマネントエイジのように自社企画でオリジナル製品を製造する店もある。

卸売り型だから直営ネット通販はタブーとか、1店舗しかない小規模専門店だからオリジナル製品は作れないとかそういう時代ではない。

問屋がオリジナルブランドを開始した事例もある。

こうした動きに対して「業界の秩序を乱すな」みたいな意見もあるが、秩序を守って自社が倒産したのでは笑い話にもならない。
まずは生き残ることの方が重要だし、生き残った人間が新たな秩序を構築すれば良いのである。

生産の効率性を下げるような毎シーズンMサイズ1枚しか発注しない販売力のない専門店・ブティックは切り捨てても良いと思うし、それらは早晩淘汰されることになるだろう。

小規模ブランドといえども売れなくては話にならないのだから、売れるための手段は迷わず行使すべきである。直営ネット通販も迷わずに開設すべきである。

増補 二人の天魔王 -信長の正体-
明石 散人
ビジネス社
2015-04-14



メンズファッション雑誌はさらに淘汰される

 光文社のメンズファッション雑誌「ゲイナー」が6月24日発売号をもって休刊になる。
何度も書いているように雑誌の休刊とは廃刊と同じであり、後年復活できる雑誌の方が稀である。

男性誌「ゲイナー」が休刊 販売、広告収入の低迷が響く

https://www.wwdjapan.com/business/2016/04/22/00020378.html

廃刊の理由はこの見出しがすべてを物語っている。
販売、というよりも広告収入の低迷が原因である。
雑誌や新聞は購読料よりも広告料を主収入源として成り立っている。
購読部数が少なくても広告さえ集められれば雑誌や新聞は利益が出て、営利活動を続けることができる。

ゲイナーは90年に創刊されたそうだ。
筆者が20歳の頃だが、このころ筆者はファッション雑誌なんて読む人間ではなかった。
ファッション雑誌を読みだしたのは就職が決まってからであるから、93年とか94年である。

このころにはすでにゲイナーはあったのだが、今から考えてみると創刊3~4年の若い媒体だったということになる。もちろんその当時の筆者はそんなことは知らない。

ゲイナーという雑誌は2014年までは、毎月10日発売で20代後半から30代半ばまでの若い男性サラリーマンを対象としていた。
掲載内容は、若手サラリーマンにふさわしいビジネススタイルがメインで、それに加えて上品なカジュアル、ビジネスでも使えるカジュアルというスタイルだった。
あとはグルメ情報とか合コンでのマナーとかそういう内容が多かった。
純然たるファッション雑誌よりもそういう部分が多かったというのが個人的な印象である。

個人的にはグルメも合コンも興味はない(合コンなんて20年近く出席したことがない)から、ファッション情報としては他誌と比べて少ないと感じたが、差別化は図れていたのではないかとも感じていた。

それが2014年に突如としてリニューアルされた。

発売日が24日に移動し、対象年齢が50代男性になった。
モデルの田中カール氏をキャラクターにクローズアップした作りとなった。

個人的にはこのリニューアルが失敗だったと考えている。

リニューアル初号を見たときの感想は、「このカールってオッサン誰?」である。

その後、調べると田中カール氏は50代後半で、もともと人気モデルだった方だそうだが、93年くらいからしかファッション雑誌を読んでいない者からすると「このオッサン誰?」というくらいの知名度しかない。
テレビタレントとして有名になりつつあったジローラモ氏を起用した創刊当時の「LEON」を参考にしたのだと思うが、微妙に正解から外れていたのではないか。

リニューアル後の内容もLEONを意識したモテオヤジ的な特集が多く、個人的興味の対象外となった。

ここまでのリニューアルを施さざるを得ないほど追いつめられた状況にあったということだろうか。

同じようなリニューアル策を敢行したのがメンズクラブである。
メンズクラブも24日へ発売日を移動させて、内容もチャラくなった。
ファッションの教科書的スタンスだった旧メンズクラブの内容を評価していたので、現在の新メンズクラブは興味の対象外である。

ゲイナーとメンズクラブの発売日移動によって10日発売の男性ファッション雑誌はメンズノンノ、メンズジョーカー、ファインボーイズ、ポパイの4誌くらいしかなくなった。
反対に24日発売の男性ファッション雑誌が増えたことになる。

さて、部数を見てみる。

http://www.j-magazine.or.jp/index.html

ここでは3か月間の平均印刷部数が発表されている。
2015年10月~12月の最新データを見てみよう。

ゲイナーは66,734である。
近年はほぼこの前後を推移している。

メンズクラブは62,667
ライトニングは84,467

UOMOは58,334
LEONは82,100
Safariは195,717
メンズEXは34,067

ここではオーシャンズの発行部数は出てこないので、

http://www.zasshi-ad.com/media/man/lifestyle/oceans.html

によると、2013年1~3月で72803部だそうだが、2年経過した現在は増減はあるだろうが6万部台には転落していないと推察する。

このほか、2015年10~12月では

メンズノンノは110,000
ポパイは96,000
メンズジョーカーは109,830
ファインボーイズは86,934

となっており、印刷部数だけでいうと、メンズクラブとUOMOはゲイナーよりも少ない。
メンズEXは3万部台なのでさらに少ない。

ゲイナーと同様にこの3誌が廃刊になっても少しの不思議もない。
ただ、広告代理店の営業マンに言わせると、スーツスタイルに特化しているメンズEXは広告出稿量は部数の割には多いそうだ。
スーツスタイルに特化した男性雑誌がないためだろう。
コアな読者層が強く支えていると言える。

メンズファッション雑誌はもともと誌数が少ない上に、少しずつ毎年淘汰されている。
10日発売組の4誌は当分残るだろう。
また24日発売組はLEON、Safari、オーシャンズの3誌が残るのではないか。
月末発行のライトニングはコアなファンが支えるのでこれも残るだろう。

16日発行のビギンも広告出稿が好調なので残るだろう。
スーツに特化したメンズEXは部数は今以上に増えることはないがこれもすぐに消えることはなさそうだ。

24日発売のヤング男性ファッション誌「スマート」を加えると、当分残れる男性ファッション雑誌はこんなところではないだろうか。

雑誌の衰退理由は各所で述べられている通りだろう。

・掲載アイテムが高額すぎて一般消費者の金銭感覚と乖離しすぎている
・ウェブで無料、もしくは無料に近い格安料金でファッション情報が手に入るようになった
・提案されるライフスタイルに現実味を感じられない、それにあこがれない
・消費者のファッションへの興味が昔より薄れている
・ファッション情報に限らずメディアへの信頼度の低下

などだろうか。

男性ファッション誌の動向を見ていると、広い読者層を獲得しようとするよりも、ライトニングやメンズEXなどのマニアックな内容でコアなファンを獲得した方が効果的だと感じられる。
しかし、コアなファン層を獲得しようとしたフリー&イージーの廃刊もあるから一概にこれも当てはまらない。

ファッション雑誌の運営は今後さらに厳しさを増すことだけは容易に想像できるのだが。


 



高級素材は富裕層以外には理解されにくい

 高級素材はけっこう手入れがめんどくさい物が多い。

例えばシルク。変色するし虫にも食われるし、通常の家庭洗濯も気を使う。摩擦にも弱い。
気軽に庶民が着られるような素材ではない。
ユニクロが3900円価格を中心に大々的にシルクを打ち出したことがあったがその後継続していない。
メンテナンスに手間がかかる素材は庶民には売れなかったのだろうと推測できる。

例えば細番手ウールを使った高級スーツ地。
これで作ったスーツは20万円とか30万円という高価格で販売されるが、こういうスーツは1日着用したら次の1日は着用しないで休ませないと傷む。
以前、某大手コンバーターの課長さんが「若いころに奮発して20万円のスーツを買ったんだけど、2日間連続で着用したら袖口が擦り切れてきてびっくりした。ああいうのは、お金持ちが何着も所有してて、毎日1着ずつローテーションで着まわすべきだね」と笑いながらおっしゃったことがある。

細番手ウールの高級スーツは連続着用には向かない。
反対にツープライススーツとか、西友の7000円スーツは5日間ぶっ通しで着用してもヘタレない。
耐久性ならこちらの方が上である。

以前だと西友のスーツの見た目は野暮ったかったが、今ではそれほどおかしな見た目ではない。

レザーにしてもやはり手入れが重要になる。
ノンメンテナンスで使用したいならクラリーノの方がずっと適している。
そういえば、先日、ランドセルの件でラジオに出演したのだが、その際、街頭インタビューに答えた人で、ランドセルの原料をレザーだと答えた人がいたが、ランドセルの原料の主流はクラリーノをはじめとする合皮である。
レザー使用のランドセルはほとんどない。

ある大先輩は、レザー業界に向けて「ランドセルに適した機能加工を施したレザーを開発せよ」と発破をかけられたことがあるそうだが、現状ではほとんどのランドセルは合皮である。

なぜなら、その方がメンテナンスが楽だからである。
子供たちは活動的だから傷みにくい素材の方が喜ばれる。また雨に降られて水に濡れたりすることも多いので、メンテナンスが必要なレザーよりメンテナンス不要の合皮の方が子供たちも扱いやすい。

最近の合皮は優秀だから、6年間毎日使用してもほとんど傷まない。
筆者の子供たちも6年間使用したがほとんど無傷である。それほどに耐久性に優れている。

綿や麻は素材の価格がピンキリである。
ただ、業界的には繊細な素材は高額で、頑丈な素材は安価である場合が多い。
繊細ということは洗濯・保管などのメンテナンスに気を使わねばならないということである。

こうして見ると、繊細な高級素材の良さを理解できるのは、富裕層に限定されるのではないかと思える。
保管方法も洗濯も凝れば凝るほど料金が発生する。
また人手が必要な場合もある。

庶民的感覚からすれば「ン万円もしたのにもうヘタレてきた」という不満になるし、「あんなに高かったのにこんなにメンテナンスがめんどくさい」という不満にもなりやすい。
低所得者が「繊細な高額素材の良さ」を真に理解できるのであればユニクロのシルクアイテムは今も継続しているのではないか。

筆者は今も低所得者だが、もしすごい金持ちになったとしても20万円のスーツを買うことはない。
なぜならメンテナンスがめんどくさいからだ。
ちょっと贅沢をしてツープライススーツで28000円のを買うようになるかもしれないが。

こうして素材方向から見ると、いわゆるファッションというのは富裕層のものだといえる。
低所得者は元来、繊細な素材は生活シーンにおいて不要であり、それ故にそれを使ったファッションとも無縁である。

低所得者がファッションを享受できるようになったのは、低価格衣料品のおかげだろう。
日本での低価格衣料品はやはりダイエーなどの大型スーパーの存在が大きかったと思う。
高度経済成長からバブル期にかけて既製服の値段が下がったと言っても、専門店や百貨店ブランドの価格はまだまだ高かった。
それを引き下げたのは大型スーパーが低価格衣料品を発売したからだ。

今、「ファッション」「トレンド」では低価格ブランドも高額ブランドも同一線上にある。
低所得者も富裕層も同じデザインの商品を購入する。
それ故にわかりにくいし、筆者のような低所得者は「あのブランドは高いくせに長持ちしない」という不満や皮肉を発するようになる。
しかし、発生や用途から考えると同じデザインでも低価格ブランドと高額ブランドは異なる。
ターゲット層も異なる。

このあたりを整理して考えてみてはどうだろうか。
もしかしたら低価格ブランドに巻き込まれない売り方が見えてくるかもしれないし、衣料品不振に苦しむ大型スーパーはまた違ったアプローチができるかもしれない。



砂の王宮
楡 周平
集英社
2015-07-03


需要が少なくてターゲット設定が不明確な商品は売れない

 需要が少ないもの、ターゲット設定が不明確なものはやっぱり売れないと改めて思う。

福山雅治さん主演のテレビドラマ「ラヴソング」の視聴率が壊滅的に悪い。
初回10・6%で2回目は9・1%である。

筆者は最近はあまりテレビを見ないが、毎シーズン1本か2本のドラマを見る。
興味を惹くドラマがない場合は1本も見ないシーズンがある。
今シーズンは興味を惹くドラマがないのでもともと1本も見ないつもりだった。

もうすぐ46歳になるオッサンにとって「ラヴソング」というスイーツ過ぎるタイトルのドラマは当初から見るつもりもなかった。

このドラマの失敗の原因を考えてみる。

まず、ラブストーリーというジャンルに需要が少ないということが挙げられる。
この10年間で高視聴率を稼いだドラマにラブストーリー物がいくつあったか。
ほとんど存在していない。

直近のヒット作を考えてみても同様だ。
今年1月~3月シーズンのヒット作は「スペシャリスト」だが、これは刑事物だ。
昨年秋シーズンのヒット作は「下町ロケット」だが、これはビジネス物だ。

視聴率40%に達した大ヒット作「半沢直樹」もビジネス物だし、少し前になるが視聴率30%を越えた「家政婦のミタ」は家族物だった。

シリーズ化されているヒット作「ドクターX」は医者物だし、「海猿」はレスキュー物だ。

だからラブストーリーを企画した時点で視聴率は期待できないということになる。
ラブストーリーを企画しておいて「高視聴率を稼ごう」と考えたのならあまりにも浅はかだといえる。

次にこのドラマはターゲット設定が不明確すぎる。
誰に向けて作られているのかわからない。
福山雅治ファンのためのプロモーションビデオだろうか?

44歳(福山さん本人は47歳)の元ミュージシャンで臨床心理士という福山雅治さん演じる主人公の設定が荒唐無稽すぎて現実味がない。
14歳で自動車を運転していた花形満くらいの荒唐無稽ぶりである。

そのオッサンと20代の吃音女性のラブストーリーなのだが、筆者のようなオッサン世代にとっては興味の対象外である。
自分らオッサンが20代女性と恋愛関係になるなんてことは非現実的すぎる。
タイトルのスイーツさと相まってオッサン世代は絶対に見ない。

次に若い女性層だが、オッサンとのラブストーリーなんて興味がないだろう。
いわゆるコメディタッチで描けば喜劇として見ようという人もいるだろうが、真面目なストーリー物は見たいとは思わないだろう。
また実際に40代後半のオッサンと恋愛したいと思う人もいない。
福山雅治さんの容姿はマシな方だが、筆者も含めた現実の40代後半のオッサンの容姿はかなり汚い。脂ギッシュだし腹は出てるし頭は禿げかけている。そろそろ華麗なる加齢臭も漂わせ始めている。

若い男性はどうか?
ドラマの設定とテーマに興味を持てないだろう。
オバサン世代も同様に興味を持たないだろう。

老人世代も同様だ。

どの層も見ないという選択肢しか考えられない。

フジテレビはかつての大ヒット恋愛ドラマ「東京ラブストーリー」や「ロングバケーション」の成功体験が忘れられないだけではないか。
しかし「東京ラブストーリー」は91年、「ロングバケーション」は96年放映だ。
20~25年も前のヒット作である。

オッサン世代からすると昨日のことのようだろうが、4半世紀も前の成功体験なんて現代に通用しないのは当たり前だ。

ラブストーリーがヒットジャンルではなくなったというのは、各世代にとって恋愛はエンターテイメントではなくなったということだろう。
筆者のようなオッサン世代にとってはリスキーすぎる。
既婚者だとバレたときには大変なことなる。下手をすると職まで失うかもしれない。
独身のオッサンだと年齢的にも遊び半分で手を出すことは難しい。相手は当然、結婚を期待しているだろうから。

若い世代だって、責任という文字がちらつくから遊び半分は難しい。

それに一部の富裕層を除いて、可処分所得は減っているから恋愛に金を使うことは厳しい。
趣味を削るか恋愛を削るかである。
多くの男性は恋愛を削るという選択をするのではないか。

今回の企画は4半世紀も前の成功体験が忘れられないテレビ局が、「人気の高い福山雅治さんを主演させれば視聴率が稼げるでしょ」と安易に考えただけとしか思えない。

この失敗の図式はテレビ番組だけではなく、アパレル業界でも頻繁に見受けられる。

・かつての成功体験が忘れられない
・人気ブランドを並べておけば簡単に売れるだろうという甘い期待
・需要の少ない分野だということを分析できていないマーケティングの失敗
・ターゲット設定が明確でないので全層の消費者が購買しない

この4つが兼ね備わった失敗事例はアパレル業界でも掃いて捨てるほどある。

需要の少ない分野に取り組んで啓蒙活動を行うという事業もあるが、手っ取り早く成功したいならそういう分野ではなく、需要の多い分野に取り組むべきであり、それはアパレルもテレビドラマも同じである。

「ラヴソング」の失敗には学ぶべき点が多い。

探偵ガリレオ (文春文庫)
東野 圭吾
文藝春秋
2002-02-10


ガリレオの苦悩 (文春文庫)
東野 圭吾
文藝春秋
2011-10-07


容疑者Xの献身 (文春文庫)
東野 圭吾
文藝春秋
2008-08-05


アパレル業界に満ち溢れる「逆ランチェスター」

 前回、小規模専門店による「逆ランチェスター」について書いたが、ファッション業界は「逆ランチェスター」に満ち溢れている。

ランチェスターの法則とは、

大手は物量による追随主義
小規模企業は一点突破主義

である。

逆ランチェスターとはこれと逆を行い、必ず負けるための手法である。

小規模なのに追随主義、これが小規模専門店の逆ランチェスターである。

小規模専門店のオーナーなりバイヤーなりが、自店の客層と照らし合わせたり、自店のMD上必要だと判断した上で、「伊勢丹新宿にも展開しているブランドを仕入れよう」と考えるならこれは逆ランチェスターではない。
小規模専門店が何の考えもなしに「伊勢丹新宿が展開しているからうちにも仕入れよう。もしかしたら売れるかもしれない」というのが、大手への追随となる逆ランチェスターだといえる。

しかし、こういう思考は小規模専門店ばかりではない。

例えば「ユニクロでバカ売れしたあの商品に使われているのと同じ素材をください」と飛び込んでくる大手アパレルの経営陣なんかもれっきとした「逆ランチェスター」な人である。

この大手アパレルは百貨店、ファッションビルでのブランド展開を主軸としている。
もちろん大手なので郊外型ショッピングセンターにもブランド展開しているが、主軸は百貨店・ファッションビルである。
当然、ユニクロとは価格帯、顧客層が異なる。

単純にいえば、ユニクロより商品価格は高い。
それを買う顧客層はユニクロとは異なる層が多い。

で、なぜ「ユニクロで何百万枚も売れたのだから、うちが同じ素材を使えば少なくとも5万枚くらいは売れるかもしれない」とそんな考え方ができるのか。
価格帯と顧客層が異なれば同じ素材を使っても同じように売れるとは限らない。
また素材は同じかもしれないが、商品デザインが異なれば同じように売れるはずがない。

どうしてこんな簡単なことがわからないのか。
だからアパレルは衰退産業で、産業間競争に敗れて優秀な人材を他産業に奪われているといわれるのである。
こんな人が経営陣に食い込めるくらいのレベルである。
だからこの会社は大幅減益をたたき出せるのである。

まだほかにもある。

衣料品売上高ではユニクロに及ばないのに、ユニクロの後追いをする大手総合スーパーも同様である。
ウルトラライトダウンが売れたら軽量ダウン、ヒートテックが売れたら保温肌着、カシミヤを発売したら1年後にカシミヤ、990円ジーンズを発売したら980円ジーンズ。

だから大手総合スーパーの衣料品部門は不振なのである。

弱者が強者の後追いをして勝てるはずがない。

こんな風に衣料品業界には安易な「逆ランチェスター」が満ち溢れている。
だから衣料品業界は衰退業界と言われるのだろう。

98年のユニクロフリースブームのときには、その後追いで百貨店アパレルまでが2900円のフリースジャケットを、お得意のクイックレスポンスシステム(笑)を生かして急遽製造したこともある。
百貨店顧客が2900円のフリースジャケットを百貨店で買いたいと思うのかどうかすら判断できないということだろう。

大手アパレル各社が不振にあえいでいるが、それは当然ではないか。

とはいえ、今後もアパレル業界の「逆ランチェスター」体質は早々に変わることはないだろうから(なぜなら、そういう幹部があと10年か20年くらいは在職するから)、ますます衰退が進むのではないか。


 



ヨーロッパから民主主義が消える (PHP新書)
川口マーン惠美
PHP研究所
2015-12-16


大手追随では小規模専門店に勝ち目なし

 こんな筆者でも毎シーズン各社の展示会を覗く。
小規模アパレルブランドや独立系デザイナーズブランドの展示会でよく耳にする言葉がある。
この手のブランドを仕入れるのは大概が小規模専門店なのだが、そこのオーナーやらバイヤーは「〇〇が仕入れたならうちも仕入れたい」という。

そしてこの〇〇には伊勢丹新宿店やらユナイテッドアローズやらナノユニバースやら阪急百貨店うめだ本店やらの大手百貨店や大手セレクトショップの名前が入る。

これを横で聞きながらいつも「この店、あほちゃうか」と思う。

坪数が10坪程度の小規模専門店が大手有名店の後追いをしていては永遠に勝てるはずない。
下手をするとさらに「選ばれない店」になる可能性もある。

よくいわれる「ランチェスターの法則」では、

大手は物量を生かした追随戦略が有効とされる。
小規模企業は、個性を発揮した一点突破が有効とされる。

この10坪程度の個人商店は紛れもなく小規模企業である。
零細企業と言っても良い。

その零細企業が大手に追随してどうするのか。
その行動に意味があるのか。

例えば超人気のAブランドがあったとする。
このAブランドを伊勢丹新宿店が仕入れて(買い取りか消化仕入れかはここでは置いておく)コーナー展開をしたとしよう。
展開するコーナーに並べる型数は20~30型。
展開型数の少ないブランドならフルラインナップがそろう。

これを聞きつけた10坪程度の小規模専門店が同じAブランドを仕入れたとする。
しかしこの専門店はAブランドだけを扱うわけではない。
店全体では5~10くらいのブランド数を扱い、Aブランドはそのうちの1つということになる。
当然、この店で展開できる型数はせいぜい3型程度だろう。
多くて5型か。10型を越えることは不可能だろう。

そうなると消費者はどちらで選ぶか?

当然たくさんの型数が見られて、ネームバリューのある伊勢丹新宿店で買う。

わけのわからん、わかりにくい場所に位置する小規模専門店にわざわざ行く人は少ない。
その上に展開型数でも圧倒的に少ないのだから、訪れる人はさらに少なくなる。
知名度・展開型数・店のロケーションなどの条件面だけ見れば、伊勢丹新宿店よりもこの小規模専門店を選ぶ人は皆無だろう。

阪急うめだ本店でもユナイテッドアローズでも同じことだ。
条件面だけで見れば小規模専門店が選ばれる要素は皆無である。

こういう「逆ランチェスターの法則」を発動させる小規模専門店は展示会場で見ているかぎりけっこう多い。

ただでさえアパレル商品は不振であり、何の創意工夫もない小規模専門店はもっと厳しい状況にある。
それ故に大手の威光に縋りつきたくなる気持ちはわからないではないが、それはさらに自店の売れ行きを鈍らせることになる。

大手の追随しかできない小規模店なんて消費者からすれば存在価値はほとんどない。
だったら大手で買った方が展開型数も多いし、アフターケアも安心できる。
何よりも安心感がある。(実際に安心・安全かどうかは別として)

しかし、展示会場を見る限りこんな小規模専門店はまだまだ多い。
逆にそういう店の方が増えているのではないかとも感じることもある。

逆ランチェスターの法則を発動している限り、小規模専門店の倒産・廃業はまだまだ続くだろうし、大手の寡占化はさらに進むだろう。
自業自得ともいえる。




企業活動にはウェブサイトが必須

 先日、ある在庫処分屋(バッタ屋)の年商がついに10億円に達したとの知らせがあった。
通常のアパレルでも年商10億円に達するのは難しいご時勢なのに、すごいことだと思う。

6年くらい前から社長とは顔見知りだったが、今回久しぶりにお会いした。

この会社のことはまた後日、詳しく紹介したいが、成長の要因をいろいろと伺った。

しかし、正直なところ「仕入れた商品を仕分けるセンス」とか「売れ筋を見極めるセンス」なんていうのは、人それぞれだし、いくら努力してもこの社長の「センス」を真似ることは他人には難しい。

また一般的に、成長アパレルの成功の要因が記事になっていたりするが、その中で「売れ筋を見極める目」とか「トレンドを読む勘」とかが重要だと書かれることが多いが、そんなものは他人が容易に真似できるものではない。個人的にそういう部分は読み飛ばす。

で、今回の社長の話の中でセンスとかは関係なく誰でも真似できる部分があるのでそれをご紹介する。

この会社は、ウェブサイト(ホームページ)を作り、ブログを定期的に更新している。
また定期的にウェブでの販促を回数を決めて実施する。

これである。

サイトのデザインだとかバナー広告のデザインだとかは関係ない。
まずはやるかやらないかであり、現在のビジネス環境下でウェブサイトなりブログなりは最低どちらかでもやっていないとビジネスにならない。

とくに在庫処分屋できちんとした自社サイトを持っている会社は少ない。
少ないからやれば圧倒的である。
在庫処分屋で検索をすると、上位をこの会社が独占する。

そうすれば必然的にこの会社に対する問い合わせは増える。

同じことは縫製工場にも生地工場にも染色加工場にもいえる。
どんな零細であっても最低でも会社概要を記した自社サイトは構えるべきである。
逆に零細で仕事がないからこそ自社サイトは必要である。

今、何かを調べようと思った際に、まず人はウェブで検索する。
ウェブ反対派のオッサンだって出張や旅行に出かける際にはホテルを検索する。
タウンページか何かで上から順番に電話をかけて空室状況を調べるというオッサンはほとんどいない。
電車の乗り換えも検索しているはずだし、地図も検索しているはずだ。
ウェブ検索を使わない人間はほとんどいない。

「ウェブなんて即効性がないから無駄」というアホみたいな意見を耳にすることがあるが、やみくもに飛び込み営業をしたり、やみくもに電話をかけまくるよりはずっと即効性があるし効果的である。
現に成功企業の社長が有効性を認めているのである。

一方、先日、某零細企業を手伝っている知人から電話があった。
この零細企業はOEM生産を請け負いつつ、新開発の糸の販売も行っている。
先日、大型展示会に出展してかなりの名刺を集めたようだ。

しかし、この会社にはウェブサイトがない。
それをカバーするために会社概要をキンコーズあたりでカラーコピーしたらしいが、1枚50円だったそうで、たとえば5ページだと250円、10ページだと500円になる。
これを100社分用意すれば5ページ物で25000円、10ページ物だと50000円となる。

零細企業の取引状況は良くも悪くも年々変化するから、取引先の例示などは毎年変えなくてはならない。
そのたびにこれだけの出費が必要となる。
ウェブサイトならその部分だけの更新・修正はほぼタダ同然でできる。
どちらが効率的なのか。

また、現在はウェブ社会なので、ウェブサイトも持たない会社はまともな会社とは受け取られない。
「時代遅れ」か「怪しい」かどちらかの印象を与える。

そしてウェブサイトがない時点で、新規問い合わせはほとんどなくなる。

最近だと、展示会やイベントに来場してくれた相手に対して、お礼のメールを送る。
メールがいいのか悪いのかは別として、お礼の電話をかけるよりは随分と効率的で相手も不快感が少ない。
メールができないならお礼状を送るべきで、電話をいきなり掛けるのは愚の骨頂である。

ちなみにこの某零細企業はお礼の電話をかけまくっているようだが、逆効果しか生まないだろう。

まず、いきなり電話がかかると相手も業務中なので作業の手が止まる。
また、外回りをしていたり会議中だったりしてつながらないことも多い。
そのたびにまた何時間かしてから掛けなおすことになり、無駄だし、回数が頻繁になると受ける側もめんどくさく感じる。

一方、担当者の携帯電話にかける場合も同じである。
商談中だったり電車やバスでの移動中だったりすると電話には出られない。
何度も掛けなおせば受ける側はイラっとする。

留守電に吹き込んでも「お礼」だけならわざわざ掛けなおすことはしないし、「お礼」くらいならメール送れよと思ってしまう。

留守電に「またカケマス」とだけ残しているのは最悪である。
何の要件かわからないから薄気味悪い。
それならメールでひとこと「ご来場ありがとうございました」と送られてくる方がよほど気持ちが良い。

電話に頼っているこの企業はほとんど効果を上げられないだろう。

繰り返しになるが、仕事がなくて苦しんでいる零細企業は、最低でも会社概要を記したウェブサイトくらいは構えるべきである。今のままの業績に甘んじていて良いのなら必要ないだろうけど。



ダメージジーンズにも価格破壊の波

 ジーンズに詳しい方にとっては当たり前のことなので読み飛ばしてもらいたい。

今春は低価格SPAまでが破れたジーンズを発売している。
あれはわざわざ新品の物を加工で破いているわけで、穴が開いたままの状態の物を「クラッシュ加工」「ダメージ加工」、その穴を布を当てたり、ミシンで破れ目を再度縫ったりして塞いだ物を「リペア加工」と呼ぶ。

似ているけれども厳密に言えば両者は別物である。

このクラッシュ(ダメージ)加工、リペア加工はこれまで中価格帯~高額ブランドのみの展開だったが、今春からついに低価格SPAが発売を開始した。

この加工の好き嫌いは置いておく。

個人的にダメージ加工は嫌いである。
穴が開いているから夏は涼しいが冬は寒い。
たまに真冬でも膝が丸見えになるくらい破れているジーンズを穿いている人を見かけるが寒くないのだろうか?

それと、この加工は穿くときに足先に破れ目が引っかかり易い。
足先が引っかかると破れ目が拡大する。
長年所有すればするほど足先の引っかかる回数が増えて穴が拡大し続け、最後はボロ布のようになってしまう。

それよりは冬でも寒くなく、足先も引っかからないリペア加工の方が好きである。

ユニクロは今春、ダメージ加工のジーンズを3990円で発売した。
H&Mも3900~4900円でダメージ加工ジーンズを発売している。
ZARAはリペア加工ジーンズを7990円で発売しており、一部商品はすでに半額に下がっている。

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(ユニクロのダメージジーンズ)

これまで低価格ブランドにダメージ加工、リペア加工のジーンズがなかったのは加工代が高いからである。
国内の洗い加工場で加工を施した場合、各工場で価格は様々だが最低でも2000円や3000円はするだろう。
そうすると必然的に低価格では展開できなくなる。

当然、これらの低価格SPAは海外の工場で加工を施していると考えられるが、海外の工場でも通常の洗い加工よりは加工賃が高くなるから、3900円前後で発売できるというのはなかなか画期的なことだといえる。

なぜ加工賃が高くなるかというと、各ジーンズを1本ずつ加工してリアルに破らなくてはならない。
リペア加工だと破ってからさらに再度縫わねばならない。
ワンウォッシュだと大量の枚数を洗濯機に突っ込んで洗うことが可能だが、ダメージ、リペア加工はどんなに効率的に組み立てても1本ずつ加工する工程が必ず入る。
その手間賃によって加工賃は高くなる。

ワンウォッシュのジーンズとダメージ加工のジーンズが同じ3990円で発売されるというのはこれまではあり得なかった。
かなり戦略的な重点商品として低価格SPAは位置づけているのではないか。

ただ、好き嫌いのはっきりと別れる商品なので、マス層に広まるかどうかはちょっと不透明ではないか。

今春のこの3ブランドの取り組みを見て、ジーンズの価格破壊も極まったと感じる。
今までは加工賃の問題からダメージ、リペア加工を低価格ゾーンで展開することは難しかった。
それゆえに、ウンチクのある高額ブランドから安くても7000円~8000円商品まででこの加工を囲い込むことができていた。

ところがこれが3900円前後で発売できるようになった。

見た目もそこまでおかしくはない。
ジーンズに詳しい人が見れば、あちこち甘い部分が見えるかもしれないが、一般消費者レベルではこれで十分にそれらしく見えている。

こうなると、もういわゆる商品デザインだけで、低価格商品との差別化は不可能である。
非常に細かいウンチクの世界に逃げ込むくらいしか手はない。
しかしそのウンチクの世界はニッチな市場である。何ブランドもが生息できるほどの規模ではない。

こういう低価格ブランドの価格破壊に対して、絶対悪とみなす人も出てくるだろうが、筆者は絶対悪とは思わない。
所詮、服なんて工業製品だから、これまで高額品だったものに対して低価格代替品が登場するのは当たり前である。テレビだってパソコンだってスマホだって電子レンジだって同じことである。

逆にいうとこれまでよくダメージ・リペア加工は持ちこたえたと思う。

しかし、その特別感もこれまでである。
もうジーンズに特別な手法はほぼなくなった。

そしてこの低価格代替品が登場するのは、洋服において何もジーンズだけではない。
もうすでに洋服は低価格代替品が出回っている業界であり、ジーンズにとっての最後の砦ともいえるダメージ・リペア加工にもついに低価格代替品が登場したということになる。

デザインや商品の見え方だけで低価格ブランドとの差別化を図るのは今後ますます困難になるだろう。
かと言ってウンチクの市場はそれほどの規模がない。
ある程度の規模を求めるブランドは、デザインや商品の見え方だけに頼らないブランド作りに取り組まねばならない。

言うは易しだが行うは難しである。
筆者だって「じゃあどうすれば良いのか?」と問われても即座に返答できない。
そういう難しい局面に業界は突入しているとしか言えない。
いやはや。




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