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南充浩 オフィシャルブログ

ライトオンの回復策を考えてみた

2019年5月30日 企業研究 0

ライトオンの業績下方修正が発表されたが、かなり厳しい数字である。
ライトオンが最終赤字53億円に下方修正 19年8月期、値引きで採算悪化
https://www.wwdjapan.com/864426
 

2019年8月期連結業績の純損益が53億円の赤字(前期は4億5700万円の黒字)になりそうだと発表した。2月に16億円の赤字へと下方修正していたが、赤字幅がさらに拡大する。
修正後の予想は、売上高が745億円(従来予想は770億円)、営業損益が26億円の赤字(同1億円の黒字)。粗利益率の悪化に伴い、特別損失を計上する。従来は10円を予想していた期末配当を無配にし、年間配当は前期比10円減の10円の見通しとなる。

 
要するに、
売上高は770億円を745億円に、
営業損益は1億円の黒字から26億円の赤字に、
純損益は4億5700万円から53億円の赤字に、
下方修正したということで、2月に純損益を16億円の赤字に下方修正したばかりにもかかわらず、2度目の下方修正となったというわけである。
 
なんとも厳しい数字である。
原因についてはWWDは

山場であるゴールデンウイーク商戦が振るわず、3〜5月期の既存店売上高は前年同期比2.8%減。前年からの持ち越し商品を含めて、夏のバーゲン計画の見直しを余儀なくされ、粗利益率が悪化する。

と手短にまとめているが、既存店苦戦に加えて、前年からの持ち越し商品の値引きで粗利率が悪化したということになる。また、値引きしたことで利益が削られている営業赤字に転落していると考えられる。
 
さて、常々、このブログで指摘してきたが、ライトオンに限らず従来型のジーンズカジュアルチェーン店は、赤字と黒字を繰り返すことが多い。
仕入れ比率が高いこともあり、もともとがSPA企業に比べると粗利率は低くならざるを得ない。そのため、期中の値引き率は中途半端に終わってしまい、SPAブランドの投げ売りに比べると価格面ではどうしても見劣りする。
例えば、ユニクロやジーユーなんかは売れないと見ると、徹底的に値下げする。390円、590円は珍しくない。ビジネス構造がまったく違うがストライプインターナショナルの「全品7割引きでレジでさらに3割引き」という投げ売りもある。
それに比べるとライトオンも含め、仕入れ型ジーンズチェーン店は期中ではせいぜい半額くらいまでである。なぜなら、それ以上下げると赤字になるからである。
しかし、SPAブランドが存在しない時代ならそれでも死筋が捌けただろうが、今の時代ではどうしても価格面で見劣りしてしまい、割高感がある。
結果的に売れ残り持ち越すが、その持越し品を次年度に投げ売りする。
例えば、今年春には、恐らく去年の春物であるレインスプーナーのプルオーバーパーカ―が990円に値下げされていた。薄ピンク色なので迷いながらも買ってしまった。定価は5990円で、持越し品(多分)とはいえ実に5000円引きである。
こういう値下げをしていればそれは確実に赤字になる。
 
で、これは推測だが、ライトオンは次年度は値引きを抑制するのではないかと思う。その結果、また一時的には黒字転換するかもしれないが、在庫はたまり続ける。2年後くらいに抱えきれなくなって再び投げ売りを開始して、赤字転落もしくは大幅減益になる。
 
これが今までのサイクルであり、店頭を見ている限りはこのサイクルから抜け出せている気配は微塵もない。
 
個人的な考えだと、一度、大赤字を覚悟して不良在庫を一掃投げ売りセールをしてはどうか。ただしこれだけだと倉庫は軽くなるが赤字からは脱却できないので、回復策も同時に講じる必要がある。
これはかつて、星﨑尚彦社長がクレッジを立て直したときにやった施策である。
そのうえで
1、商品の型数、ブランド数を絞る
2、プライベートブランドの製品に統一感を持たせる
ということをやってはどうかと思う。
 
まず、ライトオンの店を見ると、ブランド数と商品の型数が多すぎる。
古い業界人は、「選択肢は多ければ多いほどお客には選ぶ楽しみが増えて良い」「選択肢を増やせば機会損失が防げる」と考えがちだが、多すぎるとお客は選ぶのがしんどくなる。
いわゆるジャムの法則である。
また、近年のネット通販の「定額お任せサービス」はその「多すぎて選ぶのがしんどい」への対応策であるといえる。
例えば、ジーンズだとエドウイン、リーバイスくらいまではよいとしてジースターもあればエヴィスもある。さらにPBでもジーンズを展開している。ジーンズではない綿のカジュアルパンツになると一体どれほどの種類があるのかわからない。
トップスだってリーもチャンピオンもフィラもある。セーター、シャツ、Tシャツとなんでもあり、さらにそれぞれの商品の色柄、型数が数えきれないほど多い。
これだと売れ残りが出てもおかしくない。ヒットして完売する商品がある反面、大量に残ってしまう商品も出る。
だからもっと取扱い型数とブランド数を減らす必要性がある。
 
また一時期は世界中のジーンズを集めようとしていて、恐らくその試みは失敗に終わっているのだが、それとても必要だろうかと思う。むやみに取扱い品番数を増やすのはロスを生み出すだけでしかない。

今からでも遅くはない。NBジーンズのサプライ慣行をVMIに転換させて在庫効率を抜本から改善すれば、品揃えが豊かになり欠品も減って顧客満足が高まり、販売効率が飛躍的に高まって全てがうまく回りだす。
※VMI(Vendor Managed Inventory):フェイシング設定に基づいて納入業者に在庫管理と補給を委託する方法

という提言もあるが、これも以前のブログで書いたように今の国内NBにはこれをやる力は残っていない。せいぜいエドウインくらいだ。それでもできるかどうか。
そんなことではなく、取り扱い品番数を減らせばよい。
 
ユニクロはそこまでむやみに品番数を増やしていない。色数は多い場合もあるが、綿セーターならせいぜい2~3型である。綿セーターだけで何ブランドもそろえるようなことはない。
 
さらにいえば、PBにも統一感がない。すごくクオリティの高い商品もあるかたわらで、場末の安物屋みたいなデザインの商品もある。これではせっかくクオリティの良い商品があっても埋没してしまうし、売り場も悪く見えてしまう。その辺り、ユニクロや無印良品には商品のクオリティに統一感がある。
これは恐らくOEM、ODM会社の使い方が悪いのではないかと思う。
 
 
またSPA化すればどうかという提言もあったような気がするが、ここまでSPAブランド大手が乱立している中で、今更ライトオンがSPA化したところで数年間は苦戦することが目に見えているし、単にスタイルを変えただけでは意味がない。
ライトオンは、PB比率と仕入れ比率をもっと真剣に考えて固定すべきではないかと思う。2~3年おきに仕入れ品強化とPB強化を繰り返していてはまったく何の身にもならない。それは単なる付け焼刃で朝令暮改なだけでしかない。
 
最後にちょっと救いのある話を書くと、トップセラースタイル主宰の四元亮平さんは、現在、リージャパンの店舗やBMW(自動車ね)のコンサルしている。その四元さんに、今度はどんな店をコンサルしてみたいかと尋ねたところ、即座に「ライトオン」という答えが返ってきた。やり方次第ではライトオンの店は回復できると彼は考えている。
そういう意味ではライトオンにはまだ強みは残っている。
 

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