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南充浩 オフィシャルブログ

経営内情のわからない企業が多いファッション業界

2019年5月31日 決算 0

立て続けに有名なブランドが経営破綻したので驚いた。
1社に対しては、あの有名ブランドが倒産したという純粋な驚き、もう1社はあまりの杜撰な経営に対する驚きである。
まずはアクセサリーのレモンツリーの倒産である。こちらは純粋に驚いた。
株式会社レモンツリー
宝石貴金属製品小売
「Lemontree」「SWC」などのアクセサリー店を全国展開
破産手続き開始決定受ける
負債13億1000万円
http://www.tdb.co.jp/tosan/syosai/4580.html

(株)レモンツリー(資本金1000万円、藤井寺市岡2-12-5、登記面=羽曳野市羽曳が丘5-19-24、代表平田惠三氏、従業員30名)は、5月27日に大阪地裁へ自己破産を申請し、同月28日同地裁より破産手続き開始決定を受けた。

とのことで、レモンツリーの本社が大阪府藤井寺市にあるのを始めて知った。
15年くらい前は破竹の勢いで、店舗数を増やしており、商業施設の内覧会で通り一遍の話を店スタッフから聞いたこともあった。
そういえば、最近、このブランドを見かけることが減ったと思ったら、店舗数がかなり減少しており今回の倒産に至っている。本当に栄枯盛衰だといえる。
 
流通ニュースの記事にはレモンツリーの縮小スパイラルが詳しく掲載されており興味深い。

レモンツリー/宝石貴金属製品小売、破産で負債13億1000万円


 

商業施設や百貨店を中心に69店を展開するまでに成長した2008年5月期には年売上高約18億9600万円を計上していた。
しかし、性急な店舗拡大に人材育成が追いつかず、複数の店舗で売上げが伸び悩み、不採算店が増加。拡大路線からの変更を余儀なくされ、店舗を次々に閉鎖していた。
これにより売上高は漸減するとともに、店舗閉鎖費用は重く収益面は悪化した。
2016年7月には金融機関へリスケを要請し、役員報酬や人件費などを削減して資金繰りの改善を図っていたものの、売上げ回復には至らず、約20店まで規模を縮小した。
2018年8月期(決算期変更、8カ月決算)の年売上高は約3億7600万円にまで落ち込み、収益面も5期連続営業赤字を計上するなど事業再建が見込めないことから、今回の措置となった。

 
とのことで、ピーク時には69店舗約19億円という規模だったが、急激な拡大に人材育成が追い付かなかったとある。恐らく、書かれていないが、業務システムの整備も追いついていなかったのではないかとも思う。
複数店舗が苦戦 ⇨ 不採算店の閉鎖 ⇨ 売上高減少と店舗閉鎖費用で収益悪化 ⇨ 売上高激減と5期連続赤字で倒産
という悪循環スパイラルに陥っていることがわかる。
今回はアクセサリー店だが、この悪循環スパイラルは衣料品店も同様に起きる。急拡大した店舗はこうなる可能性を秘めているということである。
 
もう一つはJ.FERRYブランドを展開していたリファクトリィの経営破綻である。
 
リファクトリィ/人気アパレル「J.FERRY」展開、民事再生で負債56億円

リファクトリィ/人気アパレル「J.FERRY」展開、民事再生で負債56億円


負債総額は56億円ということで、負債総額60億円強で倒産したオルケスに次ぐ、久々の巨額負債である。
ただし、民事再生法申請なので現時点で倒産ではなく、スポンサーがつけば企業は存続できる。
こちらで驚くべきことは経営の杜撰さである。
http://www.tdb.co.jp/tosan/syosai/4582.html

全国に32店舗を展開。オンラインショップでも販売を手がけ、2018年6月期には年売上高約44億円を計上していたとされていた。
しかし、今年5月に入って10年以上にわたる粉飾決算が判明。実際には2016年以降の売り上げ不振が続き、2018年6月期の年売上高は約25億6000万円にまで減少していた。こうしたなか、多額の簿外債務も重荷となり、自主再建を断念し、今回の措置となった。

とのことで、10年以上に渡る粉飾決算と簿外債務が重荷となっての経営破綻だが、その杜撰さには呆れ果てる。
 
1期や2期の粉飾決算なら「出来心で」ということもあるだろうが、10年以上に渡るとなると明らかに確信犯である。そしてこの簿外債務というのは詳細がわからないが、ろくな経営手法でないことだけは確かだろう。
経理に明るい某衣料品業界人は

「自社の関連会社を使った循環取引ではないか」

と推測する。
そして

「関連会社を使った会計操作だから、簿外債務が膨らむ。そして、不自然な売掛金が増え続け、資金繰り悪化していったのではないか」

とも推測している。
 
また会社概要がほとんど出てこないのも不自然さ極まりないのだが、口コミ転職サイトなどでは、ワンマンなオーナー社長と書かれており、ワンマンだからこそ急速に発展できたともいえるが、経営手法は姑息だったといえる。また口コミ転職サイトでは、社長の嫁が専務とも書かれており、典型的な家族経営アパレルだったと推測される。
しかし、年商2億や3億程度の企業規模なら夫婦経営でも構わないが、粉飾を除いて25億円の売上高があり、全国に32店舗も店を構える企業がワンマン旦那社長と専務嫁という夫婦経営では立ち行かなくなるのも当然といえる。
 
外野から見る限りにおいて、長期間の粉飾決算と怪しい多額の簿外債務ということを考慮すると、経営陣がそのまま残れる民事再生法ではなく、経営陣を一掃する会社更生法を申請すべきだったのではないかと思う。経営破綻の原因を作った経営者をそのまま残してどうするのか。極めて悪質である。
 
それにしても、ファッション業界は非上場で経営内容を公開していない企業が多い。一見すると店舗数を急拡大している企業は優良企業に見えてしまう。しかし、レモンツリーは悪循環スパイラルに陥っていたし、リファクトリィの経営は杜撰で悪質だった。
メディアやコンサルタントは、表面上の店舗拡大だけを見て「破竹の勢い」などと持て囃すが、内情が苦しい、または怪しい企業はこの2社に限ったことではない。
 
 
そんなレモンツリーのアクセサリーをどうぞ~

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