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南充浩 オフィシャルブログ

ZOZOのパターンオーダーは既製品なのか? → はい既製品です

2018年11月13日 ネット通販 0

ZOZOが発表したPB(自社企画商品)はオーダーではなくあらかじめ作り置く「既製品」ではないかと指摘してきた。
現在10億円分の大量の納期遅れが発生しているが、当初の予定では、ジーンズやTシャツなどのカジュアルは発注後2~3日後くらいに「オーダー」なのに迅速に到着すると謳われてきた。
発表では「フルオーダー」と謳いあげていたが、業界からの指摘が相次ぎ、あっさりとウェブサイトでは「パターンオーダー」に書き換えられていたというお粗末さだったが、パターンオーダーだと仮定してもいくらカジュアルアイテムとはいえ、そんなに早く到着できるのだろうかという疑問が渦巻いていた。
しかも工場は中国や東南アジアである。船便で送れば送料は安いが時間はかかる。2~3日では絶対に届かない。航空便で送れば短時間で届くが送料はバカ高い。とてもじゃないがジーンズ3800円、Tシャツ1200円の販売価格では賄えない。
そういう「状況証拠」から考えてZOZOのPBはあらかじめ大量に作った物をどこかに備蓄してそこから発送するのではないかと業界のまともな識者からは指摘されていた。
また、製造関係者からは「ジーンズのSKUは800ある」という指摘もあった。
SKUとは、Stock Keeping Unit(ストック・キーピング・ユニット)の略で、受発注・在庫管理を行うときの、最小の管理単位を指す。
例えば、Tシャツでカラーが4色あり、サイズがS・M・L・LLの4種類ある場合、「16SKU」と数える。
4色カラーの各4サイズといえばそこそこのボリュームだがそれでも16SKUにしかならない。
通常、リーバイスやエドウインが製造しているジーンズは27インチから1インチ刻みで34インチまで既製品として店頭に並べられる。27~34インチだと8サイズあるということになる。ジーンズのブルーの濃淡が仮にワンウォッシュ(濃紺)、少し落としたブルー、もっと落としたブルーの3色があったとすると、SKUは24ということになる。
ジーンズの1インチ刻みのサイズ展開は、既製衣料品の中ではもっともサイズピッチが細かい。その細かいサイズピッチでも3色展開で24SKUにしかならない。
ということは800SKUがいかに膨大なサイズピッチで構成されているかということがわかる。ZOZOのジーンズはブルーの濃淡のバリエーションが少ないから、SKUが莫大に増えているのはそれだけ様々なサイズの商品をあらかじめ製造しているからということになる。
フルオーダーどころか、パターンオーダーですらなく、サイズピッチの細かい既製品だということである。
これを決算書(ZOZOは上場しているから決算書は公開されている)から導き出したのが、老眼が一段と進んだマサ佐藤氏である。
ZOZOのPBは既製品?決算書を調べてみた(前編)
ZOZOのPBは既製品?決算書を調べてみた(後編)
前後編の大作だが、後編の方が肝である。
マサ佐藤氏の指摘はZOZOのPBがスタートしてから先ごろの中間決算発表までの間に

この1年半ほどで(ZOZOの)商品原価金額が20億円増え、約3倍になっている。

というものだった。
ZOZOUSEDの拡大による部分もあるとはいえ、それだけでは20億円も増えるのは異常である。それ故、

これは棚卸資産の増加でなく、商品の増加分です。
事実、決算書の営業キャッシュフローの棚卸資産の増減を調べると、2018年期末から2019年期第2Qまででは、約14億の棚卸資産が増加しています。商品との差異は約4億円です。

と指摘している。
また気になるのは、買掛金の異常な増加である。

また、2018年期末まで数千万円程度でしか推移してなかった買掛金が、今期に入ってから突如約16億円に増加しています。
買掛金とは一般的には仕入金額の未払い分になります。
この半期で16億増加ということは?商売の特性を考えても、ZOZOUSEDの買掛金の急な増加はありえませんから、この金額はPB関連の資材を含めた仕入未払金というのは明白です。
(また、仕入先に対しての入金条件が異常に厳しいのでは?とも推測できる。)
 

PB関連仕入れの支払いは未払いがあるか、入金条件が厳しいか、支払いまでの期間が極端に長いか、のいずれかであり、そのいずれにしてもあまり褒められた取引姿勢ではない。
決算書によると2018年期末で2500万円だった買掛金は、わずか半年後の2019年3月期中間では、16億3200万円と激増している。通常ではあり得ない増え方であり、ちなみに2017年期末の買掛金も2500万円だったことから考えるとその激増ぶりの異常さが際立つ。
 

 
 
 

その結論は?
”この商品の在庫金額増加は、ZOZOUSED等の在庫金額増加を加味しても、PB(ジーンズ・Tシャツ等)のオーダーではない既製品の在庫と捉える方が自然ではないか。”

計測用のZOZOスーツも在庫に含まれているのではないかという指摘があるかもしれないが、
https://biz.moneyforward.com/blog/33714
この記事の中に

そうした多額の初期投資は「広告宣伝費」として計上すると前澤社長は発表しています。

という一節があるため、計測スーツは在庫としては計上されていないことがわかる。
そして驚くべきことに、ZOZO自体が「作り置き」だと認めているのである。

 
 
通常、パターンオーダーの定義とは、決まった形の服(ゲージ服)を元にそれを着る人の体型によってサイズ調整を行うことと業界では認識されている。
事前に膨大なサイズピッチの商品を作り置くことを「パターンオーダー」とは呼ばない。それは「単にサイズピッチの細かい既製品」でしかない。
もともと、ZOZOの前澤友作社長は、洋服の定義についての記憶があいまいである。だから「パターンオーダーをフルオーダー」と口走ってみたり、「作り置き」を「パターンオーダー」と説明したりしてきた。
しかし、自社の勝手な解釈でこれまでの製品やサービスの定義を揺るがせることは害悪でしかない。それならば自社用の造語を作るべきだ。例えば「ゾゾオーダー」のような感じで。それならば「ゾゾオーダー=作り置きの既製品」という概念が生まれ、他のまともなフルオーダーやパターンオーダーとは峻別される。逆に「作り置き」をパターンオーダーと牽強付会することは詐欺にも等しいのではないか。
いずれにせよ、ZOZO自身が作り置きだと認めているので、ZOZOのPBは作り置きした「単なる既製品」でしかないということがはっきりした。
 

【告知】
11月24日に大阪でウェブコンテンツに関する有料トークショーを深地雅也氏と開催します。
https://eventon.jp/15080/
NOTEの有料記事もよろしくです
【有料記事】地方百貨店を再生したいなら「ファッション」を捨てよ
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/n56ba091fab93
2016年に行ってお蔵入りした三越伊勢丹HDの大西洋・前社長のインタビューも一部に流用しています

 
決算書の読み方も勉強しようかな

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