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南充浩 オフィシャルブログ

リーマン・ショック後も売上計画を変更しなかったのは何故?

2012年5月22日 未分類 0

 先週、JR大阪三越伊勢丹の取材をした。
オープン1年目の売上高は334億円にとどまり、当初目標だった550億円に届かなかったことは各紙で報じられており、周知の事実である。
オープンしてからの伸び悩みを見て、350億円に目標設定を下方修正したがそれにも届かなかった。これも各紙で報じられている通りである。

今回はこのことをズバリ直接お尋ねした。

ちなみに業界紙のご担当は、JR西日本伊勢丹の総務部である。
すると、「実は550億円という売上予算は2008年のリーマン・ショックの前に立てられたもので、そのままの予算で開業したのです」と仰ったので驚いた。

まず、驚いたのはリーマン・ショック以前に立てられた売上計画そのままで開業に臨んだこと。
無謀すぎるの一言である。
リーマン・ショック後も計画を下方修正することなしに日本一の高層ビル建設を粛々と続けている「あべのハルカス」と何やら似た印象である。

次に驚いたのは、この背景を報道していた紙面が、記憶する限り無かったという点。
なぜ各紙はこの背景を報道しなかったのだろうか?

しかし、JR大阪三越伊勢丹側の考え方も良く分からない部分がある。
なぜリーマン・ショック前に作った売上計画そのままで開業することに至ったのだろうか?
「とりあえず大丈夫」だと思ったのだろうか?
リアルタイムに体験したので鮮明に覚えているが、リーマン・ショックが起きた直後はどれくらいの経済的ダメージになるかを多くの人は測りかねていた。凡庸な筆者もその一人である。
けれども、時間が経過するに従って不況感は強まるばかりで、消費も一段と低迷した。
通常の企業なら2009年の段階で売上計画を350億円とは言わないまでも、ある程度は下方修正したはずである。
それが550億円という売上計画を変更しなかったのだから、リーマン・ショックを甘く見ていたか、消費者を甘く見ていたか、自らのブランド力を過信したかのいずれかであろう。もしかするとその3つすべてが混然一体となって絶妙のハーモニーを奏でたのかもしれない。

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筆者は百貨店にも、伊勢丹にも特別な思い入れはまったくない。
ダメなら市場から退場すべきだし、縮小するならそれも自然の摂理だと考えている。
百貨店が復活するならすれば良いし、復活できないならそれも構わない。

伊勢丹が撤退することだって珍しいことではない。現に鳴り物入りでオープンした九州・小倉だって、長年親しまれたはずの吉祥寺だって閉店している。

JR大阪三越伊勢丹の初年度の不振について、同じJR西日本伊勢丹が運営するJR京都伊勢丹と比較して、今後に期待する声もある。
JR京都伊勢丹の開業は1997年。
初年度売上高は300数十億円にとどまった。
現在は売上高約650億円にまで成長している。

同じことが大阪でも起きるのではないかという期待である。

これについては未来を見通す力がないので、成長するかも知れないししないかもしれないとしか言いようがない。
ただ、JR京都伊勢丹は開業してすでに15年が経過している。
97年当時と経済環境が異なるとはいえ、やはり同じくらいの年月は必要ではないだろうか。
2~3年後、業績が急上昇するということは考えにくい。
JR大阪三越伊勢丹の業績が上向くのは、京都以上に長期戦を覚悟しなくてはならないのではないか。

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