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南充浩 オフィシャルブログ

基盤が危うい日本の衣料品製造業

2012年4月17日 未分類 0

 昨日の国内縫製工場の現状についていろいろな意見をいただいた。

アパレルによる買いたたきや工賃の引き下げという負の歴史が長らく続いたため、
一部の例外を除いて、国内の縫製工場は後継者不足や、モチベーション低下が深刻化しているのが現状である。
この背景認識は共通の物だろう。

後継者不足で若手労働者が集まらない状況から、安価な中国人研修生を導入したことも国内縫製工場のクオリティを下げる原因の一つとなっている。
中国人研修生は3年の勤務で帰国する。
毎年新しい人が来るが、3年勤めあげた人は帰国してしまう。
手近に例えると中学校や高校の生徒みたいな感じで人員が入れ替わる。

3年勤めて、技術が向上した矢先に抜けられてしまうことも工場側の大きな悩みの種だといえる。
初めて来日した人は当然、技術は低く、また一から教えなくてはならない。
工場全体の技術力アップにもつながらない。

昨日、分量が多くなり書ききれなかったのは筆者の圧倒的な力量不足である。

こういう厳しい状況でも縫製工場を継いだ、あるいは継ごうとしておられる2代目・3代目の方がおられる。

次代担う方々は、これまでの因習にとらわれずに新しいやり方を模索するべきであると考えている。
言うは易し行うは難しなのだが、どこかで切り替えないと、これまで通りのやり方では国内の衣料品製造業はほとんどなくなってしまうのではないだろうか。

近頃盛んに言われている「メイドインジャパンを海外へ」というフレーズには賛成であるが、そのセールスポイントの一つに「高品質、高感度」が挙げられていることに対しては、はたしてこれを唱えている人は実状を知っているのだろうかと疑問を感じてしまう。

もちろん、実状を知っていながら、販促的観点から「煽り文句」として掲げている場合も考えられる。
でもそうではなく、単なる思い込みなら実際に海外に出品すれば大恥をかく。
恥をかく程度で済めば良いが、「メイドインジャパン製品」全体の評価ダウンにもつながる。
そこを危惧している次第である。

日本製の生地を世界にアピールする試みが長らく続けられているが、
これとて縫製業と同じくらい基盤が危うい。

たしかに生地を織る・編む工場は今でも各産地にそれなりに残っているが染色や整理加工は減り続けている。
染色や整理加工が無くなれば生地は作れない。

世界的に評価が高い日本製生地としてデニムがある。
たしかに欧米の超一流ブランドまでが日本のデニム生地を使用している。
岡山県井原市や広島県福山市のデニム生地工場に行けば、いろいろな工場から「先週、なんとかっちゅうブランドのヨーロッパ人がデニム生地を買い付けに来たで」という声が聞こえてくる。

しかし、このデニム生地製造にしたところで、ロープ染色できる一定規模の工場が国内にどれだけ残っているかである。
知る限りでは、ロープ染色専門の坂本デニム。一貫生地製造を手掛けるカイハラとクロキ。
これくらいではないか。
あと、四国の日清デニムも思い浮かぶが、近年規模が縮小しておりロープ染色部門が残っているのかどうか。

デニムですらこの程度である。

筆者はもとより、国産製品の躍進を夢見ている。
しかし、実状とかけ離れたイメージだけでアピールすることは大きな失敗を招くと考えている。
大本営発表ばかりを鵜呑みにするのは危険である。

そのため、現状を知ってもらったうえで海外へのアピールなり、国産品の普及活動なりに取り組んでもらいたいと願ってやまない。

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