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南充浩 オフィシャルブログ

日本の縫製工場は無くなる

2011年12月13日 未分類 1

 最近、メイドインジャパンへの注目が高まっているような印象を受ける。

衣料品関係で製造業というと、紡績と合繊メーカーを除くと、生地製造・染色・洗い加工・整理加工・縫製になる。そのどれもが存続が危ぶまれているが、中でも縫製がもっとも存続を危ぶまれている。
生地製造は比較的残れているように感じる。

先日、岡山の児島で取材をした。

児島というと「ジーンズの聖地」と言われているが、実際に残っているのは洗い加工業者がほとんどである。
織布工場はない。縫製工場もないに等しい。まれに内職として小規模な縫製を手掛けている人がいるくらいである。

その児島でも「日本国内の縫製工場は、あと10年もしたら、ほとんど無くなるんじゃないかの?」と言われている。

一つには縫製工場に若い工員が就職しないことがある。
「縫製工場工員の平均年齢は50歳以上」とか「最年少の工員が60歳」とかいわれるような現状だ。
生地製造業者には、最近、テキスタイルの面白みを感じた若い人が就職するケースが増えているが、ファッション専門学校を卒業して縫製工場に就職する人はまだまだ稀だ。
また若い人を雇うような体力のある縫製工場もかなり数少ない。

東大阪にイワサキという有名な大手縫製工場がある。
ここは、有名メゾンブランドを多数手がけることで知名度が高く、毎年就職希望の若者が何人も訪れるが、例外中の例外といえる。

日本の縫製工場は例外中の例外を数社残して、あとは無くなる可能性が高い。

日本の縫製現場が如何に弱っているかは、昨年の今頃の状況を思い出してもらえれば分かるはずだ。

中国では各企業が毎年「旧正月」に合わせて最大2週間休む。
旧暦の正月なので、毎年移動するのだが、だいたい毎年2月14日周辺である。
来年は例外的に早く、1月中旬が旧正月である。

毎年、旧正月前までに商品生産をフィニッシュしてもらおうとして、12月頭までに中国工場にはオーダーが押し込まれる。昨年年末は、そのオーダーが溢れてしまったため、国内の縫製工場にも多数の注文があった。
しかし、縫製工場の数はこの数年でさらに減少していたので、各工場のキャパシティーを大きく超え、納期遅れが続出した。

従業員数人の某福山の縫製工場では、昨年末までに入ったオーダーが消化できず、5月ごろまで納期がずれ込んでしまった。
もし、縫製工場の数が今のレベルにまで減っていなければ、もう少し納期遅れは緩和できたはずである。

ここまで工場の数が減っているのに、今更「メイドインジャパン回帰」とか「メイドインジャパン見直し」という風潮には呆れさせられる。
一旦、廃業ないし倒産した工場は復活できないのである。
今日本に縫製が戻ってきたところで、昨年末の繰り返しになるだけである。
よほどの資本がどこかの篤志家から注入されて、経営者がやる気を出せば別だろうが、そんなケースはほとんどない。

すでに住宅街やショッピングセンターに変わってしまった工場跡地が日本全国には数多くある。

メイドインジャパン見直しは結構だが、製造工場、とくに縫製工場が激減している現状はどうしようもない。
まさか、募金で創業資金を集めるわけにもいくまい。

メイドインジャパン保護と言っても、正直なことろ、今存在する製造工場を現存させることで精一杯である。

某社長が「今頃、日本製を大事にしようと言うくらいなら、もとから大事にしとけよ」と仰ったことがあるが、まさに核心を突いている。

ここ数年の「メイドインジャパン見直し」の風潮は、廃園直前の遊園地や廃館直前の百貨店に、にわか客が押し寄せて超満員になる現象と似ているのではないか。

時ならぬ「メイドインジャパン見直し」はデザイナーやアパレル、流通業者の無い物ねだりにしか見えない。

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 comment
  • 田中宏明 より: 2018/10/23(火) 8:54 AM

    来年の2~3月(ゴールデンウイーク)まで大変そうですね、来年は今年以上に縫製工場の閉鎖が加速しそうです、弊社も今年子供服メーカーBNTから生産基地へとシフトしました。
    一度お話が出来たらと思います。

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