昔、ボブソン、ラングラー、リーバイスのジーンズを販売していたのでジーンズは好きだが、独立したころから、いわゆる「デニム業界」の姿勢には疑問を感じるようになった。

デニム生地は、よく知られているように、

中心部分を白いまま「芯白」の状態で残してその周りをインディゴ染めした経糸と、白いままの緯糸で織った綾織り生地で、経糸3本に緯糸1本の割合

となっている。
この芯白がデニムが色落ちする理由の一つである。

デニム生地は色落ちするというのが絶対的な定義だが、そこに過度にこだわる必要があるのか疑問を感じる。
例えば、ソファーやラグマットにデニム生地を使いたいという要望が増えている。
ところが通常のデニム生地を使うと、白いズボンやシャツ、淡色のズボンやシャツを着て座ったときに移染する可能性がある。
それが理由でデニム生地の使用を躊躇するブランドは少なくない。
ブランド側の懸念は当たり前だ。
当方が家具ブランドでも使わない。

洗い加工場の三陽ハイクリーナーの独自雑貨ブランド「アライヤン」は、それを懸念してか、洗い加工を施して色を薄くしたデニム生地を使う。洗い加工で色を薄くすれば移染する可能性が低まる。

これはこれで一つの解決策といえるが、濃紺のデニムにもまた魅力がある。
あの見た目のデニムを使いたいという要望もある。

そういう需要を取りこぼさないためには、「色落ちしないデニム」「色落ちしにくいデニム」を作れば良いのではないかと思う。
実際にそういうデニム生地もある。
もちろん、正統的な製法ではないし、厳密な定義からするとデニム生地ではない。

このブログでも以前に提案したことがあったが、デニム業界とそれに近い筋からは「そんなものはデニムではない」という反発があった。
しかし、需要があるなら対応すればよいだけのことではないか。
さらにいえば、通常のデニムを作る傍らそういう色落ちしないデニムを作れば良いだけのことで、通常のデニムを廃止しろと言っているわけでもない。何を反発しているのかさっぱり理解ができない。

なぜそういう「使い分け」の提案すら反発するのか理解不能だ。

先日、こんなニュースがあった。

経年変化を楽しめるデニム地の床が誕生
https://www.wwdjapan.com/572475

 建材用床材の製造・販売を手がける田島ルーフィングが、デニム生地メーカー大手のカイハラとコラボレーションし、デニム生地を用いた床用タイル“デニムフロア”を発売した。価格は1平方メートルあたり1万5000円。
“デニムフロア”は、表面にデニム生地を用いた床用タイルで、田島独自の加工技術と特殊コーティングにより、ジーンズのような経年変化を楽しむことができる。色落ちや経年変化がポジティブにとらえられるデニムの特性を生かすことで、床の傷や劣化というネガティブなイメージを払拭する狙いがある。

とのことで、床材の開発自体は良いと思うのだが、問題は以下だ。

 

ただし、インディゴ染料で染められたデニム生地を使用しているため、衣類に色移りする可能性があるといい、住宅内部での使用には注意が必要だ。

 

ここで色落ちさせる意味があるとはまったく思えない。
それこそ、色落ちしにくいデニム・色落ちしないデニムを使うべきではないのか。

こんな不便で高い物を自宅の床に敷きたいという人はほとんどいないだろう。
マニアのための床材だといえる。

オフィスや店舗に敷いたところで、やっぱり白い靴や白い什器に移染する可能性があるから、それほど使い勝手は良くない。

たしかにコンセプトや見た目は面白いが実用的ではない。
「見せる」だけの商材となる可能性が非常に高い。

ここでもまた「USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?」を思い出した。

400万人の集客で良ければ、USJは映画に特化したテーマパークで良かったが、1000万人の集客を目指すと映画に特化しているとマニアック過ぎて達成できない。

という一節だ。
この商材でどれほどの売上高を目指しているのかはわからない。
もし、年間数千万円程度で良いならこのままで達成できる可能性が高い。
この商材は「映画に特化したUSJ」だといえる。

しかし、何億円規模の販売を目指しているなら、色落ちしにくい・色落ちしないデニムに変更すべきだ。
これは「1000万人を集客」できるような商材ではない。

以前にも書いたが、オイルをしみこませてぬるぬるしてオイルのニオイがするバブアーのコートや、頻繁な修理が必要で洗濯するにも一苦労というマッキントッシュのゴム引きコートは、どんなにその魅力を力説したところでそんな不便な商材はマスには売れない。
しかも安ければまだ売れるかもしれないが、高いとなるとよほどのマニアしか買わない。

これを指して「消費者の感性が退化している」とか「消費者が堕落した」とか非難するのはお門違いも甚だしい。

消費者ニーズを理解しない方が退化して堕落している。

この色落ちするデニムの床材は、20坪で99万円になる。
これを高いと思うか安いと思うかは人それぞれだが、当方なら99万円も払ってこんな不便な床材は敷きたくない。

変える部分と変えない部分の見極めということになるが、当初のUSJでは「映画に特化した」部分は「変えない部分」と考えられていたが、大衆化するためにはそれは「変える部分」だった。

デニム生地の「色落ちすること」はデニム業界人やそれに近しい人は「変えてないいけない部分」と見ているが、果たしてそうだろうか?そこは販路とターゲットによっては「変えるべき部分」だと断言できる。
衣料品業界にはこの手の見誤りはデニムに限らず、まだまだたくさんある。そこを整理するだけで少しは売上高が増えるのではないかと思う。

それができない限りはまだまだ売上高は低下し続ける。

NOTEを更新~♪
プライベートブランド「ZOZO」の生産システムは、現時点では「完全オーダーメイド」ではない
https://note.mu/minami_mitsuhiro/n/nc6e9da2bffeb

あと、インスタグラムもやってま~す♪
https://www.instagram.com/minamimitsuhiro

昨年9月下旬にブログの仕様を変えて、更新通知が届かなくなった方がおられると思いますので、お手数ですが、新たにRSS登録をお願いします

アライヤンってこんな商品群。一例が↓