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南充浩 オフィシャルブログ

自家工場を所有していることを消費者にアピールしよう

2014年10月20日 未分類 0

 昨今、日本製が注目を集めており、アパレルブランドが国内自家工場を持っていることが今までとは反対に付加価値になりつつあるように感じる。

国内自家工場で工員を確保することの難しさについては今回は置いておく。
純粋に販促的価値について考えてみたい。

アパレルブランドは国内に数あれど、自社縫製工場を所有しているブランドは少ない。
いずれも協力工場、下請け工場へ縫製を発注している。
最近では、OEM、ODM、商社の製品化部門の発達によって、デザイン、パターンづくりまで外注に丸投げできるようになった。
極端に言えば、資金さえ持っていれば誰でもブランドが作れる時代になった。

そうした中で、何十年前から自家縫製工場を維持し続けているアパレルブランドというのは打ち出しようによってはものすごい付加価値になる。

まず、社会貢献という点でアピールが可能である。
何十年間も一定の人数を雇用し続けているのだから、これは社会貢献である。
しかもそれが廃れ行く繊維製造業なのだから、なおさらであろう。

次に物作りの背景が見えやすいということだ。
OEM、ODM、商社の製品部門に丸投げしているブランドが物作りについて語るケースが増えた(こういうブランドは機を見るに敏であり、すぐさま対応してしまう)が、ちょっと物作りを知っている人間が見れば、嘘八百ならぬ嘘五百ぐらいを書き連ねているとわかってしまう程度の文言でアピールしており、そのメッキは剥がれやすい。
しかし、自家工場を所有していれば、そこから語られる言葉は本物である。

これだけ〇〇産、〇〇製が注目されている環境下でいうと、自家縫製工場(一部、洗い加工場も)を所有しているジーンズメーカーはそれが大変な付加価値であることに気が付くべきだろう。
筆者から見ると、上層部はまだその価値に気付いていないように見える。

例えば、国内最大手のエドウインであるが、東北の青森・秋田に自家縫製工場を13所有している。ほかに洗い加工場が2、検品工場が1である。
これだけの大工場群を何十年も維持し続けているジーンズメーカーはエドウインだけである。
これは消費者に向けてもっとアピールすべきである。
しかも工場建設は昭和50年代から始めているから、現在で30数年維持し続けていることになる。
工員は今のところ全員地元の日本人だそうだ。

これは大変な実績である。

しかし、どうも上層部にはこれが消費者に対するアピールポイントになりうるという考えが薄いように感じられる。
もったいないことだ。

有名タレントや有名モデルと契約するよりもこちらの方がよほどニュースバリューがある。

同じくカイタックインターナショナルも国内に大型工場を保有している。
こちらの場所は岡山県総社市近辺である。

カイタックインターナショナルというと量販店向けジーンズと欧米からのインポートジーンズというイメージがあるが、れっきとした国内工場も所有している。

この工場がフル稼働すると月産3万本の生産能力があるといわれており、エドウインに次いで国内2位の生産規模がある。

残念ながらこの事実はあまり知られていない。
お恥ずかしいことだが、筆者が知ったのもつい最近のことである。

これも大いに価値ある情報だと言えるのだが、どうもこれをアピールする気配は残念ながら見受けられない。
もったいないことである。

現在、それなりの規模の自社縫製工場を所有しているジーンズメーカーはこの2社以外だと、ジョンブル、ドミンゴ、ブルーウェイ、タカヤ商事、ベティスミスくらいになってしまっている。往時からすると激減している。

なぜ、彼らが自社の物作りを打ち出さないかというと、やはりどこかに「工場をアピールすることが格好悪い」と考えている節があるからだ。

以前、某ブランドの若手がポツリとこんなことをつぶやいた。

「今まで、工場とか物作りとかを過度にアピールすることは格好悪い、ダサいと考えてきましたが、今はそうではないんですね」と。

これはおそらく全社に共通した感覚ではないだろうか。
その元となるのは90年代半ばのビンテージジーンズブームである。
虚実取り混ぜて物作りを大いにアピールした彼らだが、1社として自家工場は所有していない。
かろうじて例外と言えるのは、洗い加工場の晃立の子会社になっているステュディオ・ダ・ルチザンくらいだろうか。
何せ、親会社が洗い加工場なのだから縫製はともかく、洗い加工に関してはグループ内で賄えるからだ。

ジーンズメーカー各社はそういうブームに乗ったビンテージブランドとは一線を画したいとの思いがどこかにあったようだ。

しかし、ブームが過ぎ去ってもう15年近くが経過している。
そろそろ社会に蔓延するムードは変わりつつある。
変わりつつあるというよりもはっきりと変わっているのではないかと個人的には感じられる。

そろそろエドウイン、カイタックインターナショナルを含む全社に自社の大いなる価値に気付いてもらいたいと願っているのだが。

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