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南充浩 オフィシャルブログ

売るのが難しいとされていた「ブランドロゴ入り作業服」を好調に売っているという話

2023年8月3日 企業研究 0

今春、久しぶりに児島、福山のデニム関係の製造加工場を回らせてもらったが、その際、加工場関係者から話題に上った作業服メーカーがあった。

三備地区(備前・備中・備後)に少しでも馴染みのある方々ならご存知のことだが、この地区はデニム生地、ジーンズ類以外にも学生服、作業服のメーカーが昔から集中している地域として業界内では有名である。

学生服、作業服メーカーが集中していた地区でデニム生地、ジーンズ製造が後から始まったというのが正しい。

なぜなら、学生服や作業服は戦前から国内で企画製造されていたが、ジーンズとデニム生地が国産されたのは戦後からだからである。それもジーンズの製造が先で、デニム生地が国産され始めたのは1970年代になってからなので、年代別の時系列でいうと最後発の業態ということになる。

学生服・作業服の縫製工場がそのノウハウを生かしてジーンズ製造に戦後乗り出した。

それはさておき。

一般的にワーキングユニフォーム(作業服)というとワークマンの独壇場だと思われている。理由は、売り上げ規模の大きさもさることながら、メディアに採りあげられる回数が桁違いに多いからで、広報宣伝の巧さによるところも大きい。

しかし、他の国内作業服メーカーでも前年実績を更新し続けている好調な企業はいくつかあり、繊維ニュースなどの業界メディアでは逐一報道されている。各社もそれなりに工夫を凝らしているのである。

そんな中、三備地区で注目されていたのがTSデザインという作業服メーカーである。旧社名を藤和という。

 

 

ワークマンの商品は広く消費者に買われていて、当方の叔父たちですら靴下やら吸水速乾Tシャツやらを購入して着用している。もちろん当方も防水スニーカーなど何点も持っている。

業界の昔からの知り合いの先輩でひどく釣り好きな方がおられる。釣り場では毎回様々な釣り人を目にされるそうだが、だいたいがワークマンの吸水速乾Tシャツや防水ジャケットを着ているとのことだ。しかし、ワークマンのオリジナル商品である「フィールドコア」のブランドロゴが入った服は「やっぱりちょっとバレると嫌だ」というのである。当方にはその気持ちはイマイチよくわからない。(笑)

まあ、ユニクロのロゴ入りTシャツを着るのは抵抗があるという心境と似ているのだろう。

当方の70歳代の叔父たちまで着用しているワークマン商品だが、ブランドロゴが入っていると抵抗があるという人が今でもいるというのが事実だが、このTSデザインが三備地区から注目されているのは「ブランドロゴ入りの作業服を打ち出していて、それが作業員に好評に受け入れられている」からである。

 

TS DESIGN【公式】 (tsdesign2008.com)

 

ワークマンに限らず過去にも自社のロゴやら自社ブランドロゴを入れた作業服を企画販売していた企業はあるだろうが、いずれも好評は得られなかった。現在、広く一般消費者に受け入れられているワークマンですら拒否反応を示す人もいるほどである。まあ、当方はフィールドコアのタグ入りTシャツやらパーカーやらは全く気にせずに着ているが。(笑)

そういう環境にあって、「TSデザイン」というロゴ入りの作業服が作業員たちに好評に受け入れられているというのは三備地区の人たちからしても驚くべきことだといえる。当方とて「フィールドコア」のロゴは全く気にしないが、進んでロゴを付けたいとも思わないから、やはり「TSデザイン」というロゴ入り服を望んで着てもらえるというのは驚くべきことだと感じる。

サイトを見ていただければわかるようにそれなりにカッコイイつくりとなっている。不調な国内メーカーだと往々にして公式サイトを作ったら作りっぱなしだが、定期的に更新もされていて非常に整備されている。

不調だから更新しないのか、更新しないから不調なのかというのは卵と鶏の関係だが、TSデザインは販売・広報宣伝の戦略と認識して更新しているということだけはたしかである。

 

ワークマンの商品に対してさほど不満は感じない。しかし、作業員にも何から何までワークマンというのはちょっと避けたいと思う人も少なからずいるだろう。そういう人たちはTSデザインに限らず他ブランドの作業服を求める。アシックスやプーマの安全靴なんていうのはそういう需要だろう。

カジュアル・スポーツブランドが作業服市場へ進出し始めているということをかなり以前に書いたことがあるが、TSデザインはそういう需要を作業服業界から掴み始めているという状況にある。

 

そして、これは恐らくは一般カジュアルにも当てはまることで、ユニクロ・ジーユー・しまむらあたりである程度の服はそろえられるが、何から何までそれということに抵抗を感じる消費者は多い。だからこそ、いまだにいろいろなブランドが存続しえている。当方とてたまには違うブランドも着てみる。

 

一方売り上げ規模でいうとワークマンはいまや1000億円を越えた巨大ブランドだ。一方のTSデザインは公式サイトによると売上高34億円である。恐らくはTSデザインがワークマンに匹敵する1000億円ブランドに成長することはないだろうと思うが、34億円を今後40億円、50億円台に伸ばすことは可能だろう。

要はブランドの売上規模設定をどうするかという問題である。マスを取りたいのか、マスではない層を取りたいのかをきちんと区別してそこに向けた商品を提案し、販促活動を行う。それこそが衣料品ビジネスの基本だろう。

カジュアルでも同様でマスはユニクロ・ジーユー・しまむらには勝てない。じゃあ、自社のブランドはそこに満足できない層にどのような商品を提案してどのような販促活動を行うのか、である。

そこが重要だと当方は考えている。今更、ユニクロに取って代われと言っても意味が無いし実現不可能だ。ならば、そこに満足できない層に向けて売ることしか生き残る方法はない。

 

「ブランドロゴ入りの作業服」が好評なTSデザインという企業の施策や取り組みについては、国内の衣料品企業は大いに学ぶところがあるのではないかと思っている。

 

そんなTSデザインの作業服をAmazonでどうぞ~

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