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南充浩 オフィシャルブログ

「高品質・低価格以外の何か」をどのように開発し売るのか?という課題

2023年7月11日 売り場探訪 3

具体的な数字はあまり無いものの、いわゆるスーパーマーケットと呼ばれる量販店の衣料品部門の苦境をまとめてあるコラムがこれだろう。

《視点》19年度実績 | 繊研新聞 (senken.co.jp)

「もう19年度実績に戻ることはない」と、ある中堅量販店の衣料品担当者。昨年度からコロナ禍の影響が少なくなり、外出需要や様々なイベントの再開などで衣料品部門は回復してきた。しかし、コロナ前の19年度実績には届かないという。

量販店の衣料品部門はバブル崩壊後からSPA(製造小売業)や専門店、ECの台頭もあり右肩下がり。売り場面積の削減や外部テナントの導入などで販売規模を縮小してきた。以前は全社売上高の20%ほどを占め、粗利益率も高く、業績に貢献していたが、今や1ケタ%台。

 

とある。表題だけを読むと19年実績に回復できないことへの嘆きと一瞬はお持ちがちだが、実際はスーパーの衣料品部門の苦境を手短にまとめている。

コロナ禍前の19年度実績への回復云々という文言だけを見ると、19年度実績がさぞかし良かったのかと思う人も多いだろうが、19年度実績も良かったわけではない。90年代後半以降ずっと量販店の衣料品部門は右肩下がりを続けて来ており、19年度実績は20年以降よりもマシだったということに過ぎない。

通常のデイリーカジュアル・ちょっとしたお出かけカジュアルあたりが当たれば美味しい部分だと考えられるが、この需要はユニクロ、しまむら、ジーユーに根こそぎ奪われている。しまむらの現社長も直近のインタビューでは「競合は量販店」と答えておられる。

そして、現在、大衆のマス層はデイリーカジュアル・ちょっとしたお出かけカジュアルを量販店で買おうという人はかなり少ない。真っ先にユニクロ、しまむら、ジーユーに行ってしまう。

 

当方はたまにイトーヨーカードーや西友で衣料品を買うことがあるが、だいたいが靴下・肌着・スポーツブランドの3種類である。デイリーカジュアル・お出かけカジュアルを買うことは無い。

1品ずつを吟味すれば、中にはそこそこ使えそうなアイテムもあるが、もう量販店の衣料品平場売り場の光景からしてそういう商品が置いてあるようには見えない。

ユニクロ、ジーユ―に比べれば衣料品平場売り場ははるかに洗練されていない。しまむらの売り場も全く洗練されていないが、しまむらは過去最高の6000億円台の売上高をたたき出しているわけだから、量販店が「大衆から選ばれにくくなってしまった」ということを認めざるを得ないだろう。

大手の量販店なら販売規模も大きいのでPBなど独自商品も開発しやすいが、それでもイトーヨーカ堂の直営アパレル売り場の廃止に見られるように衣料品を諦める企業も出ている。

とあるが、イトーヨーカドーが肌着・靴下・パジャマなどの実用衣料以外のアパレルから撤退するというのは、当方は極めて合理的な判断だと見ている。イトーヨーカドーがケンゾー、ゴルチエとコラボをしたセットプルミエだが、実際にヨーカドーの売り場を見たが、それほど商品量は動いた形跡がなく、シーズン末期には投げ売りされていたので売れ行きは鈍かったのだろうと推察できる。おまけにたったの2シーズンで廃止になったのだから、よほどの売れ行きの悪さだったのだろう。

文中にもあるように、本来なら、量販店というのは仕入れ数量・生産数量が多いのでPBなどの独自商品を開発しやすいはずだが、これまで実用衣料を除いて全く成功していない。

理由はさまざまあるだろう。大学新卒で入社したのが量販店子会社の衣料品販売チェーンだったが、その当時の専務は親会社の量販店からホテルや食品売り場を経由して出向した人だった。この専務をけなしたいわけではなく、量販店の人事というのはこのように様々ある部門の1つに過ぎず、管理職や担当役員も定期的に他部門へ異動するわけである。その結果、量販店のゼネラリストは出来上がるがスペシャリストはいなくなることがままある。

そして、ゼネラリストの担当役員やゼネラリスト管理職は百貨店やメゾンブランドを手本にすることになるのだが、量販店とは商品価格帯も異なれば客層、店舗立地、ブランドイメージもすべてが異なるわけである。必然的に投入された百貨店もどき・メゾンブランドもどきの衣料品商材は想定するほどには売れにくくなる。

かつてのイトーヨーカドーの2つの失敗である故・藤巻幸夫氏を起用したPB開発の失敗、ケンゾーコラボ・ゴルチエコラボの失敗が如実にそれを物語っている。

故・藤巻氏が投入したような百貨店価格の百貨店テイストの衣料品なんてイトーヨーカドーで売れるはずも無いし、ケンゾーやゴルチエコラボの80年代テイスト満載の商品がイトーヨーカドーの平場で売れるはずも無かった。

結局、量販店は衣料品においては、自社の客層・価格帯・店舗立地・イメージすべてを見誤っており、それをゼネラリストの首脳陣・担当管理職が何の疑いも抱いていないことが問題だといえる。

 

中堅量販店でも独自商品の開発や専門店型の売り場作りに挑戦している。しかし、「ユニクロやジーユーに品質・価格で勝てない中で、それ以外の何かで、どう買ってもらうか」

 

という結論はまさにその通りで、これは量販店のみならず、他の低価格衣料品チェーン店や低価格SPAブランド、ジーンズチェーン店すべてに当てはまる最大の課題だといえる。

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 comment
  • 南ミツヒロ的合理主義者 より: 2023/07/11(火) 4:36 PM

    んで、3年後のGMSの2階3階は全国すべて

    1.場所貸し
    2.セレクトとのコラボ商品
    3.オリジナル肌着集積場

    の3つで構成された売場になります

    ダイエーヨーカドーをはじめとして自社専用アパレル
    子会社がありますが、果たしてどうなることやら・・・

    50年ちかく前ですが、ダイエーはカッターシャツで
    大ヒット商品を作ったし、準大手スーパーで三陽コートと
    コラボしてトレンチブームを作ったところもありました

    ひたすらリーズナブルかつニーズがあるものを
    作ってりゃよかったんですけどねぇ・・・

    それこそが大衆がスーパーに求めるものなのにね

    あとはワコールトリンプの売場がどうなるか・ですな

  • キム ゴンウ より: 2023/07/12(水) 12:55 PM

    これまで調子に乗って百貨店で靴下を購入していました
    ウサギがドクロになって骨が×になった奴とかです
    ああいう商品って 気に入って履き続けるとすぐに痛むんですよね
    先日 ティッシュの安売り目当てにスーパーライフの2Fに行ったところ
    全く見向きもしなかった靴下が目に入ってきました
    無地でなんの工夫も無い商品でしたが
    黒2足 紺1足 グレー1足 合計4足で500ちょっとでした
    「こういうのでいいのよ!十分なんよ!」我知らずつぶやいておりました
    ほんとこういうので十分なんですよね
    早速購入しました
    オヤジの足下なんて誰~も見てません
    不潔で無ければいいのです
    そんな客相手なら 量販店の2階もやっていけるでしょうが
    ところで美濃屋は今後どうするのでしょうかね

  • 南ミツヒロ的合理主義者 より: 2023/07/13(木) 9:04 AM

    キム氏>そんな客相手なら 量販店の2階もやっていける

    その通りで、ライフは「そんな客路線」にしっかり舵を切ってます

    ところが南サンご指摘のヨーカドーにAEONは
    アパレルコンプレックスがあって
    化石となったネームとコラボ連発ですからねwww

    なので岐阜系の販路はそこそこ手堅くあるのも事実
    ただしディズニーやらのプリント・刺繍を入れた商品を
    ねんしゅー400万以下の層に売る路線ですけれども

    年金手取月15万~&家持ちの層は
    よほどのしっかり者でないとライフで普段着は買わないようです

    追伸>私もその1足100円くつした買いましたw

    そーいえばワタシ、20年前は
    「ソックスはホーズでウールのリブ編みでないとねぇ~」
    とか抜かしていたのはヒ・ミ・ツですwww

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