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南充浩 オフィシャルブログ

同じことの繰り返し

2014年10月1日 未分類 0

 ライトオンの2014年8月期決算が発表になった。
結果は減収・大幅減益である。

売上高758億4800万円(前期比90.8%)、
営業利益17億4300万円(同49.3%)、
経常利益16億5200万円(同48.3%)、
当期純利益4億2100万円(同25.0%)

である。
売上高もついに800億円を割り込んだ上に、WWDによると7期連続の減収とされている。

さて、ジーンズ専門店チェーンという業態自体が今の時代に適合しているのかとか、アメカジ基調というテイストが時代に適合しているのか、という根本的な議論は置いておいて、ライトオンの近年の足取りについて考えてみたい。
今回、もっとも詳細に報道しているのがWWDだから、その記事を基とする。

http://www.wwdjapan.com/business/2014/09/30/00013917.html

当期は「ライトオン イーエックス(RIGHT-ON.EX)」などのプライベートブランドを拡充し、従来のターゲット層より若年層向けのMDでアプローチしたが、「思うような結果が出せなかった。若年層向け商品に偏り過ぎて、お客さまのニーズと乖離してしまった」と横内達治・社長。

20代の顧客にはある程度評価されたものの、強みである”アメカジらしさ”が希薄になったVMDにより、コアターゲットである30~40代の客足が遠のいた形だ。また消費増税に対しても「消費マーケットが芳しくない中で、少なからず影響があったと肌感で感じている」と分析した。
既存店売上高の前年比は4月は97.4%と持ちこたえたものの、5~8月にかけては80%台に低迷した。

今期は、コアターゲットである30~40代に向けて再びアプローチする。

とのことである。

まず、20代の若い客層にアプローチした結果、コアである30代・40代客が離れたとのことであるが、これは今回初めてのことではなく、すでに数年前に一度同じことを経験している。

当時は20代の人気俳優をメインキャラクターに据えた。
その結果、30代・40代の客が離れた。
これは筆者が想像で話しているのではなく、当時のライトオンのスタッフが語っていた内容である。

今期もまた同じことを繰り返したというのが筆者の印象である。
何故、前回の失敗に学んでいないのだろうか。

そして、この問題と密接にリンクしているのが自社ブランド育成の不得手である。

SPA化に何度目かの舵を切りだして、自社ブランド「バックナンバー」は何とか定着した。
しかし、その次が続かない。

本来は、20代向けに「フラッシュリポート」、30代・40代向けに「ライトオン」という屋号を使い分けるというのがコンセプトだが、現在、店頭を見ると2業態の違いがほとんどない。
厳密にいうとある。フラッシュリポートは中型・小型店だが、ライトオンは大型店だ。
またフラッシュリポートにはナショナルブランドはあまり入荷しておらず、ほとんどが自社企画品である。
しかし、同じアメカジをベースとしており、見え方にはあまり違いがない。とくにこの業界に詳しくない人にとっては、フラッシュリポートは小型ライトオンに見える。

新業態開発はそれなりに積極的だが粘りがない。
粘って傷口を広げる場合もあるので、これには賛否両論あるだろう。
しかし、オリジナルブランドを定着させるためには数年間という時間は最低でも必要である。
「ソルト&ペッパー」「デニムガレージ」は開始後早々に撤退している。
とくに今まで扱ったことのないトラッドカジュアルである「ソルト&ペッパー」は軌道に乗るまでは相当な時間が必要だった。
また、デニムガレージというコンセプトは、ジーンズ専門店チェーンならではであり、大事に育成すれば可能性はあったのではないかと感じる。

フラッシュリポートだってもう少し本体との区別を出して育成すべきだろう。

記事中にもあるように新ブランド「ライトオンEX」を立ち上げたり、少し前に「ライトオンファースト」を立ち上げたりしているが、正直、店頭で見る限りにおいて「バックナンバー」や他社ブランド仕入れ品とほとんど区別ができない。類似ブランドを2つ、3つと投入する意味があるのかと疑問を感じる。
もし、するのであればせっかく「バックナンバー」が定着しつつあるのだから、「バックナンバー〇〇」とか「○○バックナンバー」の方が消費者にとって分かり易いのではないかと思う。

新業態としてライフスタイルショップ「バックナンバー」を出店し始めているが、今まで同社では扱ったことのないライフスタイルショップという業態なので育成には中期的な展望が不可欠である。

繰り返しになるが、若年層の取り込みと現在のコア客層の定着を同じ店舗でやろうとしないことが重要になる。
ここを理解しないといつまでも同じ失敗を繰り返すだろう。
これがファストファッションなら条件が違う。
心斎橋のH&Mでも中年男女が購入する姿をしばしば見かける。
それは価格が安いからであり、ドラッグストアを老若男女が利用することと似ている。

ユニクロも同様である。さらに言えば、ユニクロの店舗面積は広い。
あれだけ広いと若者向けコーナーと中高年向けコーナーを分けて商品展示することも可能だ。

ライトオンの場合は、店舗面積はユニクロほど広くない。
価格はファストファッションほど安くない上に、リーバイス、エドウインなどのナショナルブランドやちょっと気取ったGスターなどのブランドを扱っており、ドラッグストア感覚で利用できるような商品構成と価格設定ではない。
そこは、やはり「ブランド品を扱う店舗」である。

ということはユニクロやファストファッションとは異なる販売方法、販促方法を模索する必要がある。

そこを首脳陣がきっちりと整理して考えられるかどうかがカギになるだろう。

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