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南充浩 オフィシャルブログ

古着がユニクロのようにマス市場で広がらない理由

2023年6月15日 トレンド 0

国内の衣料品市場は圧倒的にユニクロ、ジーユー、しまむらが強い。その売り上げ規模の大きさは桁外れである。

2023年8月期第二四半期連結では国内ユニクロは売上高4951億円(前年比11.9%増)、ジーユーは1455億円(同18.5%増)、しまむらの2023年2月期連結の売上高は6161億円(同5・9%増)となっている。しまむらはついに売上高6000億円の壁を突破した。ユニクロとジーユーを擁するファーストリテイリングはまだ半期決算しか出ていないが、大きなアクシデントが今後起きないと仮定すると、単純に2倍した通期売上高予想はユニクロが9000億円、ジーユーが2900億円となり、しまむらとの合計で約1兆9000億円もの売上高となる。

ここに、近年急速に伸びてきたワークマンの売上高を足すと2兆円を越えてしまう。

これら以外にも無印良品や女性向けならストライプインターや売上高475億円のハニーズなども加わるから、ザックリと国内低価格ブランドだけで最低でも2兆5000億円~3兆円くらいの市場規模があるのではないかと思う。マス層の衣料品需要はほとんどがここで吸収されてしまっていると当方は考えている。

マニア的愛好家からすれば物足りないと感じるかもしれないが、当方のような紛い物の人間からすれば、現在の低価格ブランドのラインナップだけでほとんど不満を感じられない。

 

これを前提に国内の衣料品ビジネスは考えるべきではないかと思う。ここに割り込めるのか無理なのか、その判断が求められ、割り込めないなら違うニッチ市場を開発する必要があるし、割り込みたいならどのようにすれば実現できるのか、である。

それを前提としてこの記事について考えてみたい。

 

「古着ブーム」に異変あり メジャー化への関門【小島健輔リポート】

結論から言うと、古着のメジャー化は不可能だと思っている。

メジャー化とは何を指しているのかという話だが、

多くの「古着屋」は古着が判る男性客が大半を占め、女性客は2〜3割に留まる。本当にメジャー化するのなら「ユニクロ」や「ジーユー」に来る老若男女、ひいては「しまむら」を愛顧するミセス層までカバーすべきだと思うが、古着業界の方々は根本から考えが違うようだ。

とあるから、ユニクロ、ジーユー、しまむらの客を奪うもしくは併用してもらうということを指していると当方の国語力では読み取れる。

だが、冒頭でも述べたようにユニクロ、しまむら、ジーユーの牙城を崩すことは至難の業だし、古着という商品の性格上、不可能だと思っている。

 

1、まず価格である。

アメリカ村に軒を連ねる古着屋を見て回ると意外と「高い」と感じる。ユニクロ、しまむら、ジーユーの商品の方が安いくらいである。さらにいえば、これらの値下げ品の方が一般的な古着よりももっと安い。ジーユーの今夏物の値下げ品トップスなんて590円、790円がざらにある。

 

2、店舗数の少なさ

コロナ禍でアパレル店の撤退が相次ぎ、歯抜けになった商業施設に、恐らくは格安家賃で出店する古着屋が増えたが、この記事にも書かれている通りに

 

人出の回復にインバウンドの復活も加わって各地のハイストリートに賑わいが戻り、出店意欲も復活して家賃も急回復し、空き店舗も急速に埋まりつつある。一時はハイストリートも閑散として空き店舗が広がり、低家賃の期間限定契約中心に広がった古着店も、今年に入って目に見えて減っている。

 

とあるが、その通りだろう。人出が回復し始めれば正規アパレル店の出店は増えるから、格安家賃で古着屋なんぞにテナントを貸す必要もなくなるから、今以上に古着屋が増えることは考えにくい。

そもそも、大阪でも東京でも古着屋がそこら辺の商業施設に出店していたわけでもないし、ロードサイドに並んでいるわけでもない。大阪だと古着屋というのはアメリカ村という決まったエリアに集積しているくらいで、国道沿いに並んでいるチェーン店と比べれば店舗数も少ないだろうし、消費者の認知度も格段に低いだろう。

 

 

3、色・柄・サイズ・枚数・サイズ・デザインが不ぞろいである。

価格もさることながら、ここが古着がマス層に受け入れられにくい最大の弱点ではないかと思っている。古着に限らず在庫処分店も同様だ。

ユニクロ、しまむら、ジーユーに限らず低価格大規模ブランドは、品番ごとに色・柄・サイズが何十枚という単位で揃っている。もちろん完売することもあるが、1週間で完売することは考えにくく、よほど人気の高いコラボ商品を除けばのんびり1ヶ月くらい考えていても売り切れることはない。

古着屋や在庫処分店は同じ物をユニクロレベルの数量で仕入れられるわけもないので、すべてが不ぞろいだし、今店頭に並んでいる物が無くなったらそれで売り切れ御免である。要するに「商品を見た今の瞬間に」買わないと翌日には無くなってしまっているという状況だが、毎日服ばかり買っていられるわけもないから、ユニクロなどに比べると甚だ使いづらい。

また、不ぞろい故に商品を探しにくいという点もある。これはメリットとデメリットどちらの側面もあるのだが、メリットとしては「宝探し感覚」になれるというものがあるが、デメリットとしては「探すのに時間がかかる」というものもある。

当方は在庫処分店の店頭で販売を6年間していたが、不ぞろいの商品の中から気に入った物を探すという作業はかなり時間がかかる。それが楽しいという客もいたが、それが苦痛だという客もいた。ハッキリと言うと、かなり時間的余裕のある人・状況でないとそれは楽しめないだろう。頻繁に通って探し続けるというのはよほどの暇人以外は無理である。

となると、大規模チェーン店で探す方がはるかに効率的なので暇人ではないマジョリティー層はそちらで買う頻度が高くなり、古着屋を使う頻度というのはそこに及ばないのは当然だと言える。

 

とはいえ、この記事は数量的・統計的にまとめられているので資料としては一読の価値があると当方は思っている。例えば

 

14年を底に増加に転じて21年、22年と急増し、22年は19.9%増の1万463トンと1万トンの大台に乗った中古衣類の輸入量が23年第1四半期(1〜3月)は前年同期比83.8%と大幅なマイナスに転じた。直前の前年第4四半期(10〜12月)は23.8%の伸びだったから失速感は否めない。

中古衣類輸入量は14年の2993トンから8年で3.5倍に増え、kg単価も847円から1099円に上昇して加熱気味だったから、22年のドル為替レートが132.12円と前年の109.85円から一気に上昇して23年第1四半期のkg単価も1186円と高騰し、割高感から調達が抑制に転じたという見方もできる。

 

という具合である。

 

古着というジャンルがそれなりに注目を集める理由は、以前にも書いた通り「大手チェーン店商品だけでは飽きるからアクセント的・スパイス的に利用したい人が増えているから」というものではないかと当方は見ている。

今後も古着と言う商品は、アクセント的、スパイス的、おつまみ的なアイテムとして好きな人には利用されるという感じではないかと思う。米やパンのような主食はあくまでもユニクロ、しまむら、ジーユーなどの大手低価格ブランドで、おかずやおつまみが古着やブランド物という購買姿勢は当分変わらないのではないかと見ている。そう見て商売をした方が確率が高いのではないかと当方は考えている。

ざっとそんなところだ。

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