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南充浩 オフィシャルブログ

「割安で心安い」初心者向け商品が拡販には必要不可欠だという話

2023年6月8日 企業研究 0

当方が住んでいるのは、大阪市内に電車で20分くらいの郊外の田舎町だが、近々、幹線道路沿いの空きテナントに「ちょこざっぷ」がオープンするようで看板が掲げられ、内装工事が進んでいる。

大阪市内だと珍しくもないだろうが、この田舎町には例えばコンビニもそんなに件数がない。大阪市内のコンビニの乱立ぶりからは想像ができないほどである。

そんな場所に「ちょこざっぷ」が今月中頃にオープンするのだから、驚いてしまった。

 

ご存知の方も多いだろうが、ちょこざっぷとは、ライザップが運営する新業態のジムで、安さと手軽さを売りにしている。これが近年急速に店舗数を増やしており、ついにこんな田舎町にまで出店するというわけである。

逆にコンビニなどすらなかなか新規出店されないこんな僻地にまでオープンしてしまうちょこざっぷの資金力と勢いに驚かされる。

ハッキリ言って、ライザップのビジネスモデルで勢いを感じさせるものは久しぶりである。どれほどの利益率なのかはわからないが、本業とリンクしているから消費者にも伝わりやすい。久しぶりのヒットではないかと思う。少なくとも不振アパレルを買収しまくってかき集めた過去の事案よりははるかに評価に値する。

物事にはメリットとデメリットが必ず存在するので、ちょこざっぷにも両面が存在する。この記事には両方上手くまとめられているので興味のある方は読んでもらいたい。

チョコザップのデメリット9選!メリットや向いている・おすすめの人も解説します (xn--edksn8fbb6je1299kerqa.com)

個人的にはデメリットもあるがメリットも大きいと感じる。

特に「価格設定の安さ」と「ガチ勢がいない気楽さ」は初心者にとって大いにメリットではないかと思う。

当方は我流でランニングしたり最近は短時間腹筋ローラーをしたりと、1人で老後を生き抜くためだけに足腰を弱らせない工夫をしているが、本格的なジムは費用面に躊躇するだけでなく、ガチ勢に対して気後れしてしまう。

その程度のなんちゃってトレーニングをしたい初心者・初級者にとってはちょこざっぷは良いきっかけになると当方は思う。初心者・初級者にいきなり「高い本物」に親しめと言ったところで、それはあまりにも費用的・心理的にハードルが高くて、裾野は広がりにくい。

ジム利用者数そのものを増やしたいという意図があるとするなら、ちょこざっぷはかなり正しい施策なのだと思う。そしてこの僻地にまで出店するほどの大規模出店攻勢で一気に広めようとしており、これが利益面でどうなるのかはわからないが、消費者への認知度アップと興味を惹くことにはある程度成功するのではないかと思って眺めている。

 

件のガンダムのプラモデルでも初心者向けのエントリーグレード(EG)というシリーズが発売された。パーツ数は少ないが、色分けもほぼ完全で、なおかつ770~1100円と価格も安い。近頃はハイグレード(HG)も複雑化したため価格が高くなりがちで、平均的には1500~2000円くらいが中心価格帯となっているが、初心者や子供にとっては価格的なハードルが高いので、その1ランクしたの初心者向けシリーズを発売し始めたというわけである。

これもプラモを作る人の裾野を広げたい(もちろん自社の業績につなげるため)という意図がある。

 

何が言いたいのかというと「廉価な初心者向けモデル」というのは何の分野でも客数の裾野を広げるためには必要不可欠ではないかと思う。

以前にも書いたが、どんなに太い客を掴んでいても、その太い客はいずれは寿命で死ぬ。となると、常に「次世代の太い客になり得る予備軍」を新規で獲得し続けなくてはならない。これは何の分野でも同じである。

それに対して、ライザップやガンプラはある程度は対応し始めているということがいえる。即効性があるのかどうかわからないが賢明な施策ではあると思う。

 

翻って、繊維・衣料品はどうだろうか。

特に業界人は「安くて心安い」商品を否定する傾向が強い人が多いと感じる。特に製造加工に携わる人や不振高級ブランドを扱っている人には多いと感じられる。

彼らはいつも「ほんまもんに触ってもらいたい」というが、洋服やファッションの初心者にいきなり「高いほんまもん」を勧めるのは却って逆効果だろう。それこそ、会費が高くてガチ勢の多いトレーニングジムに初心者を入会させるようなものであり、初心者に2万何千円するパーフェクトグレードのガンプラを買わせるようなものである。

そしてディスるわけではないが、とりわけ和装業界はさらにその傾向の方が多いと当方には感じられる。

特に着物なんて着慣れていない物には安くて心安い入門編の商材が必要不可欠なのではないかと思う。それが無ければ新規の着用者・購入者は増えない。当方は死後に棺桶の中で白い着物を着せられるまではわざわざ着物を買って着ることはないだろう。

 

洋服の場合は、小規模で濃いファンだけに売り続けられれば良いというスタンスなら高い本格商品を販売し続ければ良いと思うが、拡販したい、売り上げ規模を拡大したい、と考えるなら購入者の裾野を広げる必要はあるし、それを獲得するためには入門編が不可欠だと考えている。

 

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