衣料品OEM生産において大手商社の存在意義が薄れているような気がする
2023年5月12日 製造加工業 1
国内のアパレル企業・SPAブランド・大手セレクトショップのオリジナル商品の製造を支えていて、場合によっては企画自体も支えているのがOEM屋(ODM含む)という業態である。これがあるから、ド素人のインフルエンサー、ド素人のタレントが簡単にオリジナル衣料品ブランド、オリジナル衣料品を企画製造できてしまう。
ただ、一口にOEM屋(ODM含む)と言っても、その出身は多種多様である。多種多様なOEM屋(以下同文)の出身はまた個別に見てみたいと思う。
そういうOEMにおいて最大規模の存在といえば、大手商社だろう。
商社にも二種類あって、総合商社と専門商社がある。
このブログを読んでくださっている方々は業界人が多いのでわざわざ説明する必要もないだろうが、念のためにしておく。
総合商社というのは、繊維・衣料品に限らずエネルギーや機械、食料などいろいろな商材を扱う商社である。
専門商社というのは、何か特定の商材、例えば繊維・衣料品のみ、食料のみと言った具合に扱う商社である。
総合商社の繊維部門、専門商社ともに繊維業界においては最大規模の衣料品OEM屋として現在君臨している。
では実際に各商社が縫製工場を持っていて製品作りを手掛けているのかというとそうではない。ほぼ協力工場や下請け工場に依頼して製造するわけである。
昔ながらの賃加工工場もあれば、最近だと工場も自衛のために自主営業を強化していて、OEM屋としての顔も持ち合わせている場合もある。
当方も縫製業者を数多く知っているわけではないがいくつかは面識がある。当方のその狭い面識の範囲内で最近共通して聞く言葉がある。
「大手商社が衣料品OEM生産に介在する必要性が全く感じられなくなった」
と。
10年前からもそんな意見はあった。たしかに商社の社員に製造のスキルがあるわけではないから、現場からするとそう見えるのも仕方が無い一面はある。
とはいえ、当方が若い頃の商社マンというのは、ある程度は現場にも足を運んでいたしいろいろな手配も行っていた。ネームとか副資材の手配もやってくれる商社マンもいたという。また、出来上がった商品を自ら取りに来て配送していたという商社マンもいた。
しかし、彼らによると最近はそうではないらしい。特にコロナ禍が始まってからは電話とかメール、ビデオ通信で終わってしまうことが増えていると言われている。
もちろん、コロナ禍ということで感染予防・自衛という部分はあるだろうし、社からそのようにせよという指導も受けているのだろう。
だが、体感的には2010年ごろからそういう商社マンは増え始めてきて、コロナ禍をきっかけとしてほとんどの商社マンがそうなってしまったという感じを受けている。
2023年現在、傍から見ていると、衣料品OEM生産における商社の役割というのは
1、ブランド側に向いた窓口
2、ファイナンス管理
この2つくらいしか無くなっているように見える。
まあ、もっとも「昔の商社マンは、たしかに現場によく来てくれましたがほとんどが接待されることが目的でしたよ(笑)」という辛辣なコメントを述べた工場を所有するOEM屋もいるのだが。(笑)
それはさておき。
まず、「ブランド側に向いた窓口」だが、例えば地方の縫製工場が大手セレクトショップや大手総合アパレルに営業をかけたところで、門前払いにされたり、とりあえず現場担当者と名刺交換できるくらいが関の山である。しかし、大手商社が飛び込み営業をしても(滅多にしないが)少なくとも現場責任者くらいは簡単に相手をしてくれる。
岐阜の〇〇縫製とか、北九州の〇〇被服みたいな業者では相手にしてもらえないが、大手商社なら相手にしてもらえる。
次にファイナンスだが、繊維業界は「与信」にうるさい。その割には倒産した会社に引っかかってしまう企業も多いのだが、与信のうるささについては山本晴邦さんのブログを参照してもらいたい。
また、アパレルやブランド側の支払いサイクルがバラバラなので、商社を通しているとそれをある程度整理してくれたり立て替えてくれたりする場合がある。
某ブランドの支払いは130日後とかなり遅いので、間に入っている大手専門商社が「月末締めの翌月末払い」で立て替えてくれているとの声もある。
工場、工場持ちOEMとしては4カ月先の支払いはとても待ちきれないから、商社の立て替えは資金繰り的にはありがたいということになる。
ただし、商社は手数料として3%とか5%を抜いて、ブランド側からの注文を工場に振ったあとはほぼ何もしない。
この手数料を安心料・保険代として見られるか否かは工場、OEM屋で意見の分かれるところだろう。
余談だが、生地の仕入れ・納入も商社を介在させる場合が多い。例えばジーンズ業界とデニム生地工場というのは、他のジャンルに比べてブランド側と生地工場側が密接で直接やり取りするケースが多い。しかし、いざ生地を納入する段になると商社経由で支払いも商社経由になることが多い。もちろん、商社は手数料を取る。
これもファイナンス管理の性格があるのだが、イマイチ納得できないという生地メーカーも少なからず存在する。
あくまでも個人的な感想・印象に過ぎないが、かつては大手アパレル企業の物作りに対する素人化が問題になったが、最近、2010年代以降は大手商社の物作りの素人化が始まってそれが顕在化してきたように感じられてならない。このまま素人化が進むと大手商社の繊維業界における存在意義が、ブランド管理を除いて問われることになりかねないのではないか。そう思って眺めている。
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取引あたりの金額が小さい業界の場合、
商売が厳しくなればなるほど
金融機能としての商社には何の用もなくなります
30年前までなら、黒字倒産を防ぐ意味でも
商社に手数料を払ってでも
支払サイドを揃える必要がありました
ただし、これは利ザヤが稼げた時代もしくは
1取引あたりの金額が大きい場合だけです
これからはマンションメーカー系とでもいうか
ファブレスはもちろんワンルームマンション1室が
資産の全てという業態しか生き残れないのでは?
これなら、支払サイドがいくら遅くても
社員兼社長兼CEOwが給料がまんすれば
いいだけで済みますからねwww
工場もち工員もちの会社は間違ってもOEMなぞ
やるもんじゃありません
「今回のお取引では実質赤だけど通年でわ~」
みたいな口上に負けて
工場部門は赤で無理に受注を受けまくっているうちに
全てがショートしたのだと思われます
もうね、本当に地味なやり方しか
生き残れないんですよ。衣食住に関わる産業は