GMSが30代~40代客を取り込むための即効性のある施策は存在しない
2023年5月2日 売り場探訪 3
くどいようだが53歳になってしまった。52歳も53歳も実際は何も変わらないし、他人からの印象も違いはないだろう。多分54歳になっても同じだ。
50代になったということを改めて考えてみると年を取ったと思う。
「30代~40代向け〇〇」というターゲット設定を見ると、ついつい「中年向けなんやなあ」と思ってしまうが、実は自分はもうその「中年」にすら入っていないと改めて気が付く。いやはや、歳月人を待たずである。
というのが、この記事を見たときの心境である。
GMS衣料品、30~40代を取り込めるか 存続をかけた改革が進む | 繊研新聞 (senken.co.jp)
GMS(総合小売業)で衣料品の改革が進んでいる。代表的な企業、イトーヨーカ堂が実用衣料を除くアパレルから撤退を決定したように、存続自体が問われるようになり、再生の道を探りながらも際立った成果を出せなかった状況から抜け出す必要がある。売り場を枠組みから変えるなど、長い課題だった30~40代の取り込みに挑む。
とある。
マーケティング的には正しい戦略なのだろうが、自分事として置き換えてみたときに「衣料品で30代~40代を取り込む」ということの難しさに直面してしまう。
53歳の自分ですら、総合スーパー(GMS)で実用衣料以外の衣料品を買おうという発想がない。以前にも書いたが、GMSの実用衣料は比較的評価していて時々買う。特に靴下類は買う。あと肌着も買うことがある。もちろん値下がり品を。
靴下でいうと、福助、グンゼ、レンフロジャパン、ミズノ、アシックスといった錚々たる専門メーカーの商品をGMSは仕入れている。一部のGMSはこうした専門メーカーに自社ブランドをOEM生産させている。値段の割には非常に品質が良い物が多い。さすがに旧レナウンインクスが製造卸した10足1000円靴下はすぐにゴムが伸びてしまって使い物にならなかったが、それ以外の通常の2足組・3足組の靴下は「お!値段以上」という感じである。
そんな当方でさえ、実用衣料以外の衣料品、とりわけカジュアルウェアをGMSで買おうという気は全く無い。ときどき「買ってみようかな」と思うことはあっても、GMSでカジュアルウェアを選ぶというのは、第三候補・第四候補くらいである。
そういう視点で改めて考えてみると、「30代~40代」というのは若者から見れば中年という括りだろうが、実際は当方より10~20歳も年少である。
そんな年少者が今更GMSで実用衣料以外の衣料品を買おうと思うだろうか?恐らくほとんど思わないだろう。
当方の年代ですら若い頃には「ジャスコ、イズミヤでカジュアル服を買っている奴はダサい」という認識が共有されていた。30年前の話である。
その後、今に至るまでGMSで衣料品を買うという認識が無い。
当然、今の30代~40代も過去20~30年間はユニクロブーム、プレミアムジーンズブーム、ファストファッションブームなどで育ってきており、いくら安い服を買うと言っても、その選択肢のなかにGMSは含まれていない可能性が極めて高い。
ユニクロ、ジーユーはもとより、しまむらよりもハニーズよりもGMSの衣料品は認識されておらず、イメージも低いだろう。
逆に当方より上の年代の60代~70代でさえ、服を買う際に真っ先にGMSを思い浮かべるという人は少ないだろうと考えられる。
彼らはユニクロ、最近ではワークマンを選んでいる。
それは平日昼間にユニクロを覗いて見れば分かる。平日昼間は老人客でにぎわっている。また当方の70代の叔父たちは最近ワークマンで買い始めている。
彼ら老人層にさえ、GMSは「服の買い場」として認知されなくなってきている。
GMSの衣料品が凋落した原因は様々あるだろうが、ユニクロやしまむら、その他低価格衣料品ブランドに客を奪われたことが最大の理由だと当方は考えている。
そして、90年代以降のこの30年間でGMSで服を買うという認識が全国民的にほとんど無くなってしまった。
むろん、GMS側も対策を行っていたことは知っているし、GMSの衣料品にも良い物があるのも知っている。ただ、全くと言っていいほど効果が無かった。
このような状態で30代~40代をGMSの衣料品売り場に取り込むと言っても至難の業だろう。まず、認知度を高める必要がある。記事には
最大手のイオンリテールでは、イオン船橋店(千葉県船橋市)の衣料品売り場が4月28日改装オープンした。男女で分けて服種別に集積してきた売り場を、シーンや年齢別でくくり直し、それぞれを専門店型として、「単品からスタイル軸に見せ方を変える」(小田嶋淳子執行役員衣料本部長)新たな形とした。
という施策が紹介されていて、この施策を完全否定するつもりは無いが、そもそも売り場のグルーピングを変えたところで、30代・40代がGMSの衣料品売り場に足を運ぶのかという問題がある。足を運んでもらえなければ展示を変えたところで意味が無い。まさしく、知られていないのは存在しないのも同然なのである。
一時期、イオンリテールがモノ系雑誌にPB衣料品のタイアップ記事掲載し続けていたことがあった。今も続いているとは思えないが、そういう気長な取り組みが必要不可欠だろう。(いまだに効果は出ていないが)
いわゆるメディア対策ということになるだろうが、それをやり切るには莫大な費用と長い年月がかかる。
いわゆる「サラリーマン社長」が多く、何年間か務めて退任してゆくGMS各社が腰を据えて、いつ効果が出るともわからない上に多額の費用が必要なメディア対策による認知度アップに取り組むことができるかどうかが最大の鍵ではないか。
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comment
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大阪のオバチャン より: 2023/05/02(火) 7:41 PM
止める勇気を持ちましょう~
赤字で終わるのが目に見えています。 -
お気楽ニャンコ より: 2023/05/03(水) 1:48 PM
もうこうなったら
徹底的に機能『のみ』を追求した衣料に
チェンジしてみては…?と思うのです
介護衣料品の分野なら
試着が出来るという
実店舗のメリットも活かせますし
安いから売れるや
好みの問題も、多少マシになるような気が…
30~40代ターゲットに限らず、イトーヨカドーならアリオ、イオンならイオンモールのテナントと比較され続けるGMS衣料に、今後脚光が当たる未来がまっっったく見えないんですよね。
機能性衣料が出てきてもすぐ模倣されてしまいますし、逆によほどニッチな需要を拾う商品にするとか…?
たまーに通りかかった時に見ますけど、「これ買うか」までにはならないんですよね。
それは価格が理由だったり、デザインが理由だったりするんですが。
もしかしたら、イトーヨカドーやイオン単体のお店で、さほど衣服に興味がない勢が買ってる程度なのかな?と思ってます。
うーん、自分が考える側じゃなくてよかった 笑