美味しいとこ取りは不可能では?
2014年8月26日 未分類 0
繊研プラスに掲載されている対談が面白かった。
せーのの石川涼社長と、チームラボの猪子寿之社長の対談である。
IFFで行われた対談を文字にまとめたもののようだ。
http://www.senken.co.jp/news/teamlab-ceno/
まず、最初から石川社長が明確に「服が並んだだけの店では売れなくなる」と明言されている。
直営店でも何でも、ただの物販は終わりだと思ってて、洋服が並んでいるだけのカッコいいお店は、もうアマゾンにはかなわない。で、お客が来店したくなるような何かしらの仕掛けが必要だと思ったんです。
とある。
これは、言い回しこそ違うが、販促コンサルタントの藤村正宏さんや短パン社長の主張と同じだと読める。
本論はここではなくて、以下になる。
「ファッションは終わる」である。
もう、過度なおしゃれは必要ないのではないかという話です。結局、世の中を見渡して、そんなに変わった服を着ている人なんていますか。
ここには深く賛同する。
男女ともマスはベーシックでありシンプル化している。
多少の装飾といってもベーシック品に少しフリルやギャザーなどのディテールが加えられていたり、形はベーシックで色柄だけがPOPだったりするものが多い。
フォルムそのものがヘンテコリンな服を着ている人なんてそんなに見かけない。
アヴァンギャルドを売りにするデザイナーズブランドが大きく成長できないのもこのためである。
その市場は極めてニッチだからだ。
あえて、そのニッチを狙うのはブランドとしての戦略なので大いに貫徹すべきだと思うが、市場の大きさを読み誤ったブランドも数多く見受けられる。これは痛々しい。
さらに石川社長のこの言も一理ある。
物作り系の方々には不快だろうが、これを前提とした物作りをしないと、単なる自己満足の押しつけになってしまう。
石川 車もそうですが、燃費の良さなどのスペックを誇ることにはもう特段の関心を惹かれません。それよりも、例えば、別の形にトランスフォームする車ができないかと考える方が大事だと思う。そっちのほうが、テンションがあがる。
ーなるほど。
石川 ファッション業界は、そういう大切さをわかってないと感じます。肩の力を抜いて楽しめばいいのに、やれ素材がどうだとかとか、そういう瑣末なことばかりに囚われている。ある程度の基準をクリアしていれば、そんなことに固執しなくよい。若い世代は求めていませんから。僕は、もうすぐ40歳になるんですが、多分、そういうディテールにこだわるのは40歳以上の世代だけだと思う。安く買えるものが多くあるのに、それを否定するファッション業界の考え方にこそ疑問を感じます。安くていいもののために、業界がだめになったと批判する業界人のほうに問題があるのでは。
である。熟読してもらいたい。
これは昨日ご紹介した「途中でやめる」の山下陽光さんの考えにも一種通じると感じる。
やはり一般大衆にとってはある程度の「安さ」は重要なのである。
100円にまで下げる必要はないが、1000円~数千円程度で買える商品は世の中に受け入れられやすい。ユニクロのようにそれがある程度の品質の高さを維持していればなおさらである。
そこを否定しても時代も消費者心理もバブル期には戻らない。
基本的にマスに売ろうとするならある程度の安さは必要だし、高額品を売ろうとするなら販売枚数は多くないことを前提とすべきである。
1着15万円が話題の気仙沼ニットだって、一番最初に製造できたのは4枚で、そこに対して100件の注文があったとされている。操業当初で知名度がなかったとはいえ注文は100件しかなかったわけである。
高額品の需要とはその程度だと考えた方が良い。
真の上流階級や一部のマニア愛好家のみをターゲットとした高額ブランドを目指すならその方向性は正しい。
しかし、高額品を提案しながらマスにも売りたいという美味しいとこ取りはほぼ不可能に近いと考えた方が良い。
それが、筆者の目に映るアパレル・ファッションビジネスの現状である。