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南充浩 オフィシャルブログ

ファッションに特化することはワークマンの強みを自ら捨て去るのではないかという話

2023年2月27日 企業研究 5

ワークマンが「ワークマンカラーズ」という屋号で、これまでの作業服店や作業服との中間形態(プラス、女子など)とは一線を画したファッション特化型店舗を拡充するというトピックスがあった。

これについて、当方は結構、危うい取り組みだと感じている。

ワークマンのファッション分野への進出に対して勝手に危機感を抱いてみた

また当方以外でも心ある識者は危険ではないかという意見をSNSで投げてかけているのをいくつか見た。

 

当方は、この形態を今までのフランチャイズ95%のままでやるのかどうかが分岐点だと見ている。フランチャイズ95%体制のままなら恐らく厳しいことになるだろうというのが前回のプログの大まかな内容である。

今回はその補足とそれ以外について考えてみたい。

 

まず、ファッション型店&ファッション型ブランドとなった場合、マーチャンダイジング(MD)が最重要になる。「商品計画」と訳されるが、商品の計画だけではなく、タイミングや販促、収益面の組み立てなども付随する。

一般的にアパレルブランドには卸型と店舗型の2つがある。

小売店出身でSPAを続けているユニクロやジーユーは店舗型、最近はブランド統一店や直営店なども一部にはあるがエドウインやリーバイス、リーなどのジーンズブランドは卸売り型、と大きく分けることができる。

ワークマンの場合、消費者から見ると店舗型ブランドに見えているが、実は本社は卸売り型で成り立っている。

これは95%がフランチャイズという特殊な形態にあるといえる。

前回にも書いたように、商品を各フランチャイズ店は本部から仕入れるという形をとる。本部はフランチャイズ各店に卸すことになるため、本部のMD、そして商品生産体制は卸売り型となる。一方、各フランチャイズ店は当たり前だが小売店型MDとなる。

ワークマンの出自である作業服業界は概して卸売りメーカーと小売店とが別資本で成り立っている。そして生産体制は期初に大量に生産することで1枚当たりの生産コストを引き下げ、販売価格を安く抑えるという手法を取っている。ユニクロの生産と同じ考え方だが、ユニクロはこれを直営店で販売して売り切ることを目指す。一方、ワークマンはこれをフランチャイズ店に卸すことで売り切る。

現在、ワークマン女子、ワークマンプラスなどでは商品の品切れが常態化している。これはワークマン人気の盛り上がりもさることながら、逐一仕入金額が発生するためフランチャイズ店が補充追加に消極的だったり初期仕入れ枚数を抑え気味にしているという可能性が高いと考えられる。

ファッション店にするということは、何が売れるか分からない、大ヒットと目されるトレンド品でもブランドによっては売れない、という不安定要素が売れ行きを大きく左右するため、現状の体制のままでは相当に厳しいことが生じるだろう。

また本部の卸売り型MDとフランチャイズの小規模小売店型MDの乖離はこれまで以上に起きる可能性が極めて高い。

 

そして、何より当方はファッション特化型店はワークマンの強みを自ら捨てることにつながるのではないかとも思っている。もちろん、これは個人的な意見と見通しなので当たるかもしれないし。外れるかもしれない。できれば外れてもらいたいと思う。

 

ワークマンが短期間のうちにここまで新規顧客を獲得し、年商1000億円規模にまで躍り出た理由は

1、圧倒的低価格

2、低価格の割に機能性が高い

という2つの要因を持った商品が支持されたからだと考えられており、その通りである。

しかし、最近、当方はもう1つ大きな要因があるのでは考え始めるようになった。それは

 

ワークマンが高感度ファッションではなかったから

 

ではないだろうか。

ある程度上の価格帯で売りたいデザイナーズブランド(昔でいうDCブランド)やセレクトショップ、従来型の百貨店向けブランドやファッションビル向けブランドというのは「ファッションが好きな人(好きに強弱はある)」や「ファッションに興味がある人」をターゲットにしている。高感度ではあるが、各ブランドの売上高はワークマンほどには大きくない。

ファッションに限らず、どの分野でもある程度の愛好家やファンに向けた感度の高い商品は単価は高いが販売数量はそんなに大きくない。

 

一方、マスに向けて売るにはある程度の安さも必要だが、いや、だからこそ販売数量の大きさも求めないといけないので「さほど興味がない」ライトな層の取り込みも必要不可欠になる。

そして「一般的に言われるファッション」に強い心理的抵抗を示す人は相当数いる。

よく

「服を買いに行くときに着る服がない」

といわゆるファッションに抵抗を感じる人達がコメントしているが、その気持ちはわかるようなわからないような感じだが、非常にファッションに対してある心理的ハードルが高いことはうかがえる。

で、こういう人達は、よほどのきっかけが無いとそこそこお高いセレクトショップやファッションビルに飛び込もうとはしない。

そういう人たちにとっては、作業服店や作業服との中間形態であるワークマン、ワークマンプラス、ワークマン女子というのは物凄くとっつきやすいブランド店だったのではないだろうか。

また、ファッション的にも、上から下までシャレオツな旬のブランドで揃えたいという人も昔よりは人口が減っているように感じるし、古着や本物のミリタリーウェア、スポーツウェア、アウトドアウェアを取り入れて「外す」のがカッコいいという風潮もあり、ワークマンの中からもそういう感じで使えそうなアイテムを1つか2つ、ファッションコーディネイトに取り入れられてきたとも考えられる。

 

ところがファッションに特化するということは、ユニクロ、ジーユー、ハニーズあたりとまともにぶつかることとなるだけではなく、他のショッピングセンターブランドや、ファッションビル内の低価格ブランドともまともにぶつかることになってしまい、レッドオーシャンの中に自ら飛び込むようなものだといえる。

また、機能性はある程度はそのままと言っても、ファッションへ特化することで、その評価軸はファッションだけとなってしまうため、ワークマン顧客がこれまで通りの評価を下してくれるとは限らないし、新規層はワークマンとしては見てくれず、他のブランドと「ファッション性」を比較されて選ばれないという可能性も高いのではないかと考えられる。

自社の強み、選ばれている理由が何だったのかというのをきちんと捉えることはことのほか難しい。

 

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 comment
  • 大阪のオバチャン より: 2023/02/27(月) 8:04 PM

    以前にワークマンの記事で、「作業員の方が買いにくくなった」というのを読んだ記憶があります。
    ワークマンはどこに行ってしまうのでしょうね。

    今日はヤフーニュースで、「ミキハウスが絶好調」というのを読みました。
    富裕層に、超高級な子供服が売れているそうですね。
    でもミキハウスの商品は、正直ダサ目との噂。
    そのオシャレすぎない、高品質な子供服が高値で売れるのですから。
    何が売れるのか、本当に難しいですね。

  • 元衣料業界 現医療業界 より: 2023/02/27(月) 11:57 PM

    いつも楽しく拝見してます。
    地方のアパレル小売でバイヤーをしていた時、ちょっとダサい位の商品が売れ筋になって数字を形成しやすいため、一定の売り場面積を必ず確保してました。
    当方、ギャルソン等洋服道楽向けブランドが好みのため上記のような商品は着ませんが、商売となるとやはり両国や馬喰町にある量販メーカーの商品は見逃せないです。
    アパレル関係者はシャレた物に目が行きがちですが、一般的な感性の方達の目線を忘れると痛い目にあうのを忘れないで欲しいですね。
    痛い目にあったことがある経験者の戯言でした。

  • 南ミツヒロ的合理主義者 より: 2023/02/28(火) 9:03 AM

    大阪オバ様>ダサめだが高品質高価格で売れるミキハウス

    ご指摘の通り。ただし全体のボリュームは決して大きくありません
    幼児は6個のサイフを持つと言われていたのは20年以上前か・・・

    過去、大きな売上を安定してとっていた高価格帯ネームの
    御三家は、バーバリー・レリアン・レナウンですが
    いずれもかなりダサめでした

    高品質かつ高価格となるとデザインはむしろダサめで
    ないといけないのかも

    この層は概して保守的だし、保守的である事がカッコイイ
    という思い込みがあるフシがあります

  • 南ミツヒロ的合理主義者 より: 2023/02/28(火) 9:22 AM

    >ワークマンが好感度ファッションではなかったから

    補足すれば、好感度な店舗でないのと同時に
    好印象な店舗構えであったからでは?

    「誰でも入りやすい作業着モドキな日常着の販売店」

    となると、なんといってもドンキです

    しかし、〇QNの集積場だし、危険です

    その点、ワークマンはスーパー2F3Fのテナントに
    ピッタリな雰囲気です。ジャージにサンダル履きでも
    気楽に入れる。しかし、ガラ悪い・治安悪い・きたない
    という感じがまったくしない

    作業着を売っているのに、現業系の人たちを排除する
    雰囲気の店構えにしたのが、成功の最大のヒケツだった

    あれこれチョウチンを付ける人間が多いですが
    すべてが終わってみれば、これだけだったのかもね・・・

    プラスFC制。要はセブンと同じで本部が吸い上げる上納金
    が増えればそれでいい世界ですから

    個店あたりの売上高ベースだと
    チョウチン人間が騒ぐほど儲かっているとは思えません

  • BOCONON より: 2023/02/28(火) 1:26 PM

    やっぱり僕が以前コメントに書いたように “虻蜂取らず“ な感じな方向に行っているようでw

    ワークマンプラスに行ったことがある人なら,まぁたいてい「作業着みたいな安っぽくておかしな色と素材/デザインの服だらけ。いくら普段着でもこれはないわ・・・」と思うだろうという気がします。僕の感じでは,~プラスや~女子より,ただのワークマンの方が飾り気が少ない分まだましですね。

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