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南充浩 オフィシャルブログ

ワークマンのファッション分野への進出に対して勝手に危機感を抱いてみた

2023年2月24日 企業研究 1

今回はこれについて考えてみたい。

あくまでも報道記事を読んでの感想・懸念・推測になるのでそのところはご了承いただきたい。

ワークマンがデイリーウェアに本格参入、9月に新業態「ワークマン カラーズ」1号店をオープン (fashionsnap.com)

ワークマンが、2月23日に「2023年春夏新製品発表会」を開催し、デザイン性重視の一般的なアパレル市場に本格参入すると発表した。9月には、ファッションを軸にした新業態「ワークマン カラーズ(WORKMAN Colors)」1号店をオープンする。

2023年春夏シーズンのメインテーマは「ファッションを全面に、機能はステルスへ」。これまでのワークマンは機能性と低価格の2軸で商品を展開してきたが、今後はファッション性でも選ばれるよう、機能性と低価格は維持しつつデザインも追求するという。

とのことで、ワークマンが今後も大幅に売上高増を目指すなら、「現状の作業着とそれから派生した中間形態」のみでは売上高1000億円を越えたため難しくなることは、容易に想像できる。

そうなると、新規市場としては、純粋カジュアル・純粋ファッションにならざるを得ない。なので今回の新方針は理解できる。

しかし、その一方で大きな懸念もある。

当方が懸念するのかこれまで何度も書いているようにフランチャイズ主義である。以前の作業服分野なら、ブームによる売上高の増減は起きにくいからフランチャイズ店で店舗網を拡大するということは理屈に合っていた。しかし、現状のワークマンプラス、ワークマン女子の店頭とネット通販を見てもわかるように、新規入荷商品でもすぐに品切れ続出で、明らかに需給バランスが崩れている。

1つには絶大なるワークマン人気ということもあるが、その反面、フランチャイズ体制なので店頭への追加補充が機能していないとも考えられる。

どうしてフランチャイズ店だと追加補充がままならない可能性が高いのかというと、フランチャイズ店は商品をワークマン本部から有料で仕入れるという形態になるためである。大資本の企業がフランチャイズ店を経営しているのではなく、ワークマンのフランチャイズ経営者は個人である。そうなると資本力が無いため、売り切れが出ても追加補充をしにくいことが多いと考えられる。

物販店の責任者を経験した方ならお分かりになると思うが、新規入荷した商品が完売すればホッとすることがほとんどだろう。昔の好景気なら追加でイケイケドンドンかもしれないが、今の現状だと売り切れば御の字であり、売れ残りを危惧してわざわざ追加補充をしようとは思わないだろう。

直営店でもそのように考えがちだから、仕入れ料金が逐一発生するフランチャイズ店なら尚更、安全策の売り切れ御免体制を採る。これは当たり前の防衛本能である。

じゃあ、ネット通販を拡充してそちらで大きく売上高を伸ばせばいいじゃないかと考えたくなるがワークマンはネット通販をそこまで強化していない。こちらは本部直轄なので、ネット通販が増えすぎるとフランチャイズ店の商売を邪魔していることになるし、フランチャイズ店からの強い反発が起きることも予想される。そのため強化しづらい。

 

で、今回のファッション分野進出だが、ファッション分野の需要予測は立てづらい。一時、人工知能でアパレルの需要予測ガーが流行ったが、その後、効果を発揮したという報道は見たことがないから、実情は推して知るべしだろう。

定期的にある程度決まったスピードで消耗する日用消耗品や作業服、食料品などは需要予測は立てやすいが、よくわからないムードとやらに左右されるファッション衣料は需要予測が立てにくい。だからいまだに成功していない。

作業着とその中間形態のワークマンプラス、ワークマン女子でも今の品切れ状態なのだから、純粋ファッション物ばかりになれば、フランチャイズ主体のままでは需要に対して供給がさらに追いつかない可能性も高いし、逆に売れ残り品で店頭が溢れかえるという可能性もある。

95%前後という高いフランチャイズ率のままで純粋ファッション分野に進出することはかなりリスクが高いと当方は考える。

次に

ワークマンの土屋哲雄専務取締役は「特に女性は機能性ではなくデザインを購入の判断材料にする人が多いと感じたので、ファッションアイテムとして取り入れられるアイテムを目指した」と方針転換の理由を説明した。

という一節にも「今更そんな認識で大丈夫なのだろうか」と懸念を抱く。

「女性は機能性でなくデザインを購入判断にする人が多い」なんてことを今更認識したのかと驚く。そんな当たり前のことを今更認識した感覚で、ファッション分野に参入するところに危うさを感じる。

もちろん、女性も機能性をある程度は重視して買っているが、デザインや着こなし提案が不味ければ売れない。ユニクロのマルニコラボのダウンが大爆死していることで普通は理解できるだろう。ダウンベストは3990円に、ダウンジャケットは5990円にまで値下がりしている。それほどに売れていない。

そしてそれはメンズも同様である。メンズの方がレディースよりも機能性商品が好まれるが、機能性があればデザインはどうでも良いというわけではない。

デザインが不味ければメンズも同様に売れない。逆に客層によってはトレンド寄りすぎても売れない。

 

もちろん、記事というのはいろいろと一部だけを切り取って掲載するものだから、ここに出ていないいろいろなコメントがあったと考えられるから、断定はできないが、この記事だけを読むと、期待より危惧の方が大きくなる。

 

個人的には、ワークマンはプラスと女子という作業着とその中間形態を拡大して、その中でデザイン物の比率を高めた方が堅実ではないかと考える。純粋ファッション衣料品(機能性があるとはいえ)だけの括りの店舗展開をすると、ユニクロ、ジーユー、しまむら、ハニーズ、アダストリアなどを筆頭とする企業とガチでぶつかることになる。その際、全戦全勝はありえず、消費者としてもこれまでのプラスや女子とは違った目で商品を見ることになるから、選ばれないという可能性も決して低くない。

当方はかなり分の悪い博打に打って出たように見える。

 

もちろん、外野からの予想だから当たるかもしれないし、当たらないかもしれない。

経過を観察したいと思う。

 

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 comment
  • ハマオ より: 2023/02/25(土) 8:42 PM

    記事を見ての第一印象はダサイの一言につきます。
    この商品でワークマンの本部の人は
    どれぐらいの売上を見込んでいるかなと
    三年 100店舗 350億 位ですかね
    100億も厳しいと思いますが
    プラスの店頭見てもとてもファッションを売るお店のVMDではないですね
    服を売るだけなら価格と機能でいけますが
    ファッションを売るにはVMDと店舗環境 スタッフのビジュアルがとても大切だと思いますが
    後在庫の欠品で気になるのは生産計画があってなく全く在庫がないのか在庫はあるけどFCの財務の問題で仕入られないのかで対策は全く代わりますね
    個人的に一番気になるのは川下起点ではなく川上の発想
    上から目線な所がワークマンの欠点かなと思ってます。

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