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南充浩 オフィシャルブログ

アパレル企業はハニーズをもっと研究すべき

2022年8月17日 企業研究 1

先日、久しぶりの方とお会いして議論する機会があったのだが、その際、「アパレルの有望な隠れた市場はいまだにあるのか?(ないのか?)」という話題となった。

その場では、先方が極ニッチな市場の可能性をご提示され、さすがの慧眼だと感服したのだが、極ニッチなので世間一般のマスブランド、百貨店ブランドでは規模感が合わずに参入できないだろうと考えられる。

ショッピングセンター向けの低価格マスブランドからラグジュアリーを除いた百貨店向け国内ブランドまで、現在のところ、一部の好調ブランドを除いて概して目指すべきビジネスモデルが見えていないのではないかと感じられる。

成功モデルをそのまま模倣するとして

 

1、ジーユー、ワークマン、しまむらの激安さ

2、ワークマン、ジーユー、ユニクロの機能性商品

3、少数のイシキタカイ系がSNSで声高に叫ぶニッチブランド

 

あたりくらいしか、モデルが見当たらない。

1、2は解説は不要だろう。3でいうとDtoCとか売らない店とかその手のITを絡めた訳の分からない新業態である。しかし、3は設計思想がめんどくさすぎてどう考えてもマス層には支持されにくく規模は望めない。

業界メディアも含めた全てのメディアでそれ以外の切り口は示せていない、というより興味がないように見える。

通常のアパレルでは、ジーユー、ワークマンに迫る激安は不可能だし、機能性商品も開発が難しい。これらはどちらも規模の論理が如実に反映される。

 

そんな中、特にコロナ禍以降、業績を伸ばし続けている割にメディアからも業界からも注目度が低いのがハニーズである。

メディアが話題にしないから業界では注目が低いと考えられるが、では何故メディアが話題にしないのかというと、恐らくは

 

①低価格だが激安ではない

②ワークマンに代表されるような高機能商品を代表的看板にしていない

③ユニクロのような単品大ヒットアイテムがない

 

という3点が理由なのではないだろうか。

一応、メディア側に属している人間としていうなら報道しづらいと感じられる。逆に「激安」とか「大ヒット単品アイテム」は物凄く報道しやすいからワークマンやユニクロはどうでもいいことまで報道されてしまう。

しかし、逆にいえば激安でもなく高機能でもなく単品大ヒットアイテムもなく業績が拡大できているということは、世の中のアパレル企業がモデルとして参考にしやすいのではないかと考えられる。それらを除いて成長できているということは、通常のアパレルが目指すべきモデルケースはハニーズではないかといえる。

 

そんなハニーズだが、生来のメディア嫌いの体質もあるようでほとんど記事にはならない。当方も一度取材を申し込んだことがあるがあっさりと断られた。まあ、当方などは底辺のライターなので断られても当然なのだが。

それでも具眼の士は常に世の中には存在するもので、チラホラとハニーズの好調さを紐解こうとする記事が出てきた。

 

福島地盤のアパレル企業、ハニーズHDはコロナ禍でもなぜ好調なのか

 

それと、業界内でも数少ない友人の一人であるマサ佐藤氏のブログである。

 

MD視点でみる決算資料~ハニーズ編~

 

ダイヤモンドの記事は手短によくまとめられているが、施策については通り一遍という感を免れない。一方マサ佐藤氏の記事はかなりの長文だが、MD的な数字分析に丁寧さでは群を抜いている。

どちらの記事も一読をお勧めする。

 

ハニーズはユニクロに先駆けて中国に進出していて600店舗くらいまで店舗網を広げたが突如として全店を閉鎖して中国から撤退を開始、2018年に撤退を完了している。

 

ハニーズ、進出から12年で中国から撤退:日経ビジネス電子版 (nikkei.com)

 

この当時は、中国経済は2012年の反日暴動はあったものの概ね好調続きだったので、メディアや一部の業界人は否定的な見方をしていたが、今の中国の状況を考えると先見の明があったといえる。

 

23年5月期の業績予想では、売上高が同5.9%増の505億円、営業利益が同10.2%増の55億円、経常利益が同8.8%増の55億円、当期純利益は同7.5%増の35億円と、増収増益を見込んでいる。 EC事業については同14.6%増の売上高52億円、EC化率は同0.8ポイント増の10.3%をめざす。

 

先に挙げたダイヤモンドの記事では23年5月期の業績予想が掲載されているが、営業利益率が10%を越えているアパレルは国内には数少ないから、どれほどハニーズが優秀なのかがわかるだろう。

メディアや一部有識者はEC(いわゆるネット通販)を過剰に重視するが、ようやく10%に到達する程度で売上高は50億円しかない。ネット通販が確かに成長しているが、異常に伸びて業績をけん引しているわけではないということが理解できるだろう。

メディアや自称識者が提示してきたネット通販過剰強化や過剰なDX推進などを別に実現していなくとも、中国を撤退してもハニーズは好調を維持し続けている。

何が言いたいのかというと、ネット通販過剰強化や異常なDX推進などはシステム開発に加えそれを使える人材も揃えないといけないから、凡百の企業がおいそれと実現できるはずもない。またインターネットの普及によってSNSによる空中戦が過剰にクローズアップされがちだが、ハニーズは別にバエているわけでもなくインフルエンサーマーケティングが格別に上手いわけでもない。

そして、先にも述べたように過剰な激安を追求しているわけでもなく、ユニクロ的単品大ヒットを追求しているわけでもない。

それでいて業績は好調である。

ということは、これらがいずれも苦手な通常のアパレル企業が最も参考にすべきモデルはハニーズではないかということになる。

当方なら間違いなく参考モデルには現在ならハニーズをお勧めする。

 

しかし、ハニーズの記事には商品企画や店頭販売員の工夫などはほとんど言及されていない。洋服が売れると言うのは仕組みも大事だが、商品そのものの出来や店頭販売員の工夫なども必要不可欠だから、そのあたりのことを今後は在野のオッサンとしては自身ができる範囲内で確認していきたいと思っている次第である。

 

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 comment
  • 南ミツヒロ的合理テキトー主義者 より: 2022/08/17(水) 12:21 PM

    「出口調査+南ミツヒロ的楽ちん主義者の視点」
    でハニーズ好調の原因を考察します

    SCや大規模モールのスタバで涼んでいると
    「全身ハニーズ」な人をよく見ます

    靴からスカート、トップスにバッグまで
    全部ハニーズという女の子たちです
    で、全部で1.5万もかかってない

    そして、みんな、そこそこトレンドに
    乗ったカッコウになっている

    「低予算+トレンドちっく+1店でぜんぶ揃う」

    これを満たすのは今のところハニーズだけでは?

    ようするに、競争相手がいないセクタで
    商売してるんですよ

    ・セレクトは1か所で全部揃うけど高額
    ・GUウニクロは使えるものが単品のみ

    10年前、ウニクロにちょいコダワリ服を
    差し込んでた層がいたでしょう?
    「全身ウニクロはダセェ~」な人たちです

    でも彼らだって南ミツヒロ的思考の持ち主で
    いろんなところで物を買うのがメンドクサイ
    (ついでに10年後の今はさらに金が無い)

    それだったら、靴カバンまで全部揃えられる
    「ちょいトレンド意識+低価格」があると
    ちょうど良い

    それがハニーズなのではないでしょうか?

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