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南充浩 オフィシャルブログ

日本のネット通販比率が大幅に上昇しないのは当たり前という話

2022年7月25日 ネット通販 1

最近は洋服のネット通販サイトをウォッチするのがかなりめんどくさいと感じる。

1つには、自身の加齢による欲望の減退があり、衣料品にもそれは及んでいるということである。強い欲求があるのはガンプラくらいだろうか。それとても近年の品薄状態なら「クソ転売ヤーにお布施するくらいなら無理に買う必要はない」と思っている。

もう1つは、洋服関係のネット通販サイトの乱立だろう。はっきり言って全部を見ることはよほどの暇人でないと不可能である。モールがあるじゃないかと言われそうだが、モールとてもそれぞれに出品者がいて、それぞれが何十・何百という商品をアップしている。それを一々見るのもめんどくさいし、加齢によって眼精疲労も起きやすくなっている。

他方、ネット通販で便利だと思う物もある。大型家具や大型家電、大型ガンプラなど持ち運びにかさばる物はネット通販で自宅まで届けてもらった方がラクである。またビールや発泡酒の24缶入りケースのような重い物も自宅まで運んでもらった方がラクだ。

自動車があれば幾分かは解決するかもしれないが、当方はスーパーペーパードライバーであり、52歳から自動車の運転を練習しようとも思わないから、かさばる物・重い物はネット通販様様である。

多くの日本人はそんな感じでネット通販で買う物、実店舗とネット通販で買う物を使い分けているのではないかと思う。

 

国内EC消費、2割増も息切れ コロナ特需一服: 日本経済新聞 (nikkei.com)

 

日本の電子商取引(EC)市場に息切れ感が出てきた。新型コロナウイルス禍を経てネット経由の消費が2割以上増えたものの、足元では伸びが一服。海外と比べると浸透度はなお主要国で最低の水準だ。成長力を持続するには一段の工夫が欠かせない。

 

とあるが、まあ、順当な状況ではないかと思う。

まず、2020年春の新型コロナ禍によって、1か月~2週間の大規模な店舗休業が全国的に起きた。食品スーパーなどの必需品は店舗で売られていたが嗜好品類は休業店舗が多く、洋服もその一つだった。不要不急ではないとは言いながらも嗜好品類を買いたくなる人がいるのは当然で、その人たちはネット通販で買うほかなかったから、利用者数は増えた。

だが、新型コロナ禍は予断を許さない状況ではありながらも、もうあれほどの大規模かつ長期間に渡る店舗休業はないから、やむに已まれずネット通販を使った人の何割かは店舗での買い方に戻るだろうし、わざわざ今からネット通販を始めたいという人もあまりいないだろうから、増える理由がない。

ネット通販が2割増以降は2年間横ばいで推移しているのは極めて当然だろう。

日経新聞を始めとする大手メディアは、海外との比較でネット通販比率が低いことが問題だという論調を何年も続けているが、一体何が問題なのかさっぱり理解できない。

各国には各国それぞれ異なった風習や文化や社会的状況がある。そのため、全世界画一的に何かが浸透することなどあり得ない。

我が国でネット通販が浸透しないのは、現時点ではそれに依存する必要性を感じていない人が多いからであり、それ無しで暮らせているなら何の問題も無い。

 

よく、引き合いに出されるアメリカだが、アメリカは大都会が少ない。アメリカの多くは、買い物に行くのに最低でも自動車で20~30分、長い時には1時間以上走らねばならない。こういう状況なら往復時間だけでも馬鹿にならないからネット通販が流行するだろう。

しかし、日本の場合、コンビニや食品スーパーは近隣にあることが多い。

老人が多い過疎地域ならどうかというと、食品や必需品に関しては「移動スーパー」が巡回している場合もあるから、ここでもネット通販が必要不可欠とまではなりにくい。

そうなると、アメリカほどにはネット通販比率が高まらないのは何の不思議もない。

 

記事の会員部分にはこんな一節がある。

 

国内ではネットを最大限に利用する意識が広がりきらず個人消費をけん引する勢いは限定的。経済産業省の調査では消費者向け物販のEC化率は20年時点で8%にとどまる。EC拡大をコロナ対応の一過性の動きに終わらせず、さらに底上げするには何が必要か。一つは行動制限が緩むなかで売り上げが伸び始めたリアル店舗との連携だ。

 

しかし、ECを拡大することの何がそれほどに重要なのだろうか?

ネット通販で売れずとも実店舗で売れているならそれでよいのではないかと思う。もちろん、今回のコロナ禍によって自社にとっても顧客にとってもセーフティーネットとしてネット通販を完備しておく必要があると痛感した企業は多いだろう。今後、よほどに特殊な売り方や接客手法でない限り、ネット通販を開設するのは標準装備ということになるだろう。

だが、ネット通販が伸びること=経済成長ではない。ネット通販が伸びても実店舗売上高が大幅に減少して全体がマイナス成長に終わるのでは全く意味がない。

また、ネット通販比率が高ければ高いほど優良というメディアやコンサルの提唱する基準も意味がわからない。ネットで売ろうが実店舗で売ろうがその会社が儲かっていればそれで良いし、扱っている商品の性質や販売手法によってネット比率を高めた方が良いのかそうでないのかは対応が分かれる。

 

2020年のコロナ禍を経て、それまで新規販路(販路というよりは売り方だと個人的には思っているが)だったネット通販が定着化し、多数乱立するとネット通販でも優勝劣敗の格差が生じる。売れるネット通販は売れるだろうし、売れないネット通販はコロナ禍以前よりも売れなくなる。

これはどんな分野も同様で、一つの販路が定着化するとその中で優勝劣敗の格差が生じる。衣料品店だってその一つの例だと言えるだろう。これだけ衣料品店が乱立して定着化すると、優勝劣敗が生じて売れないブランドと好調ブランドの格差は激化する。

 

もうネット通販は青天井の新市場ではなくなったということをネット通販業者は念頭に置いて、その中で自社が成長できる施策を打たなくてはならない。恐らく今後各社は実店舗同様の厳しい生存競争をネット通販でも強いられることになるだろう。

 

 

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 comment
  • kta より: 2022/07/25(月) 12:59 PM

    記事中にもアメリカの買い物に要する距離や時間が指摘されてますが、それと同じような見方で国土面積があると思います。他国に比べてかなり小さい国でEC化率が同等なわけがない。同じ比率が出てるならそれだけ物流業者の交通事故率や配送遅延問題も出てしまいそう…。
    IT系の人間が食い扶持を開拓する為に印象操作しているんでしょうね

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