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南充浩 オフィシャルブログ

小規模OEM業者の生き残りも厳しい状況となったアパレル業界

2022年1月19日 トレンド 4

当方が業界紙記者となったのは97年で、当時はアパレル企業から独立した人が自前の小規模アパレルを作ることがまだ主流だった。

野心的な若い人、不祥事も含めて何らかの理由でアパレル企業を退職した中高年はだいたい小規模アパレル企業を立ち上げた。

2005年を越えたあたりから、独立組が小規模アパレルを立ち上げることは減り、OEM・ODM会社を立ち上げることの方が増えてきた。

2010年を越えるとその傾向がより強まったと感じる。逆に今、インフルエンサーではない一般的なアパレル社員が独立してオリジナルブランドを主軸として扱う小規模アパレルを立ち上げることは稀だといえる。体感的に8割くらいはOEM・ODM会社ではないかと思う。

読者の方々にはとっくにご存知のことだが、万が一知らない人もいるといけないので改めて書いておくと

 

OEM(Original Equipment Manufacturer)とは、相手先のブランド名で生産を請け負うという仕事である。

ODM(Original Design Manufacturer)とは、相手先のブランド名でデザイン作りから生産まで請け負うという仕事である。

 

OEMというのは、デザイン作りまでは相手側の仕事で、その後の生産を請け負うという仕事だが、これの丸投げ化を一歩進めてデザイン作りから請け負うのがODMである。

20年前はまだOEM屋さんが多かったのだが、いつの間にかODM屋の方が多くなり、著名アパレルの丸投げ度合いは一層ひどいことになっているのが現状である。

しかし、業界的にはODM屋も含めて「OEM屋」と総称している。業界で「OEM屋」と言えば、今はデザイン作りからやってくれて当たり前という状態にある。

 

2005年以降、オリジナルブランドとしての独立組が減り、OEM屋となるケースが増えた理由としては、新進の小規模アパレルブランドが売れにくくなり、大手の寡占化が進んだからということが挙げられる。

新興小規模アパレルが大手企業へ成長したというのは2005年以降は数少ない。マッシュスタイルラボ、ストライプインターナショナル、マークスタイラー、バロックジャパンあたりくらいのみではないかと思う。

オリジナルブランドを立ち上げてもそう簡単には売れない時代となったため、製造の黒子に徹する方が堅実だと考える人が増えた。もし誰かに相談を受けたら、当方もOEM屋の方を勧める。

そして、月日が流れてOEMという業態に頼るのが当たり前となると、人間は慣れる動物だから、さらに便利さを求める。それがODMである。生産しかできない純粋なOEM屋よりも便利なODM屋が重宝されるのは当然の結末といえる。

そして、総合商社・繊維商社(生地問屋)も大小を問わずOEM事業を強化することとなる。

デザイン作りまでを他社に丸投げするようになったアパレル企業の企画担当者が生地や糸だけを見て商品をイメージすることはできなくなってしまった。生地や糸を売りたいなら製品作りまでをセットにする必要がある。

商社の中堅・大手は資金力と海外への豊富なネットワークがあり、大量生産にも対応しやすいから、寡占の大手アパレルは中堅・大手商社が囲い込むことになる。

この辺りから、堅実と思われていたOEMという起業独立も暗雲が立ち込めることになってしまう。

 

キッズウェアのODM・OEM受託の「スタジオ・ラ・モモ」/事業停止 <大阪> 新型コロナ関連倒産 – 倒産情報-政治経済・時事・倒産情報 | JC-NET(ジェイシーネット) (n-seikei.jp)

 

年明け早々に子供服OEM屋のスタジオ・ラ・モモが倒産した。

負債総額は15億円と伝えられている。

売上高は2018年4月期が17億円、2020年4月期が13億円となっており、大手資本ではないOEM屋としては結構大きな規模だったといえる。

ピーク時には従業員は10数人~20人前後いたと言われていた。

それでも倒産してしまった。

このスタジオ・ラ・モモは子供服というジャンルだが、業界的にはレディース関連のOEM屋が最も多く、小規模OEM業者は報道されにくいだけで、倒産が相次いでいる。

2015年以降小規模OEM業者が倒産するケースは増えてきたが、2020年春から始まったコロナ禍でその傾向はさらに強まっている。

当方が独立当初から2015年頃までお世話になった小規模OEM屋の社長が酒におぼれて亡くなったのも昨年のことである。

 

コロナ禍以前から、大手の寡占化はほぼ固定化してしまった感じがあるし、コロナ禍が始まってからはほとんどのアパレル(SPA含む)は大手も含めて業績が悪化している。大手は商社筋が抑えており小規模業者が割り込む隙はない。小規模業者と取り組みやすい小規模アパレルは販売力の低下から生産枚数が極小化しており、工業生産レベルに満たない。1型10枚とかそういうオーダーがざらである。

一見すると堅実だったアパレルOEMという業種は今後ますます厳しさを増し、小規模OEM業者の倒産はさらに増えるだろうと考えられる。

今後残れる小規模OEM業者は、よほど太い客を掴んでいるか、大手業者と密接につながっているところに限られてくるだろう。

当時は活路かと思われたOEM起業独立も、アパレルの他の業種と同じく、茨の道となってしまったことに、時代の趨勢を感じずにはいられない。

 

 

Amazonで売られているOEM品をどうぞ~(どういう意図で売っているのか理解しがたいが。しかもブランド名OEMで登録している)

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 comment
  • kimgonwo より: 2022/01/19(水) 11:35 AM

    そういう風に服って作られているんですね
    ナルミヤインターナショナルがオンワードに買われ
    JAVAグループもどっかに買われるようですね
    どこも苦しいですね もともと儲け過ぎだったのかも
    自分のとこで デザインも何もしないのに
    ウチの商品ですけど なにか?ってすごいなぁ

  • sakeparadise より: 2022/01/19(水) 6:19 PM

    生産管理をしていたODM会社での出来事。
    企画提案(あるブランドのパクリ)して納品した小売店がパクリ元から訴えられ、商品の回収と営業妨害の始末金を要求された。あっさり受け入れて、全部丸投げされた→企画提案したのは御社なので責任を取れと。何か納得いかなかったな。

  • 名無し より: 2022/01/20(木) 10:35 AM

    ODM(OEM)って他で受けたデザインをそのまま(多少アレンジして)提案していくのでどこも同じようなアイテムが世の中に出回るんですよねー。
    ひどいとこでは、ある生地屋がブランドから別注された生地を使って自社ブランドアイテムを作って売り出して問題になっていました。

  • じぞう より: 2022/02/01(火) 2:28 PM

    Instagramでは有名な元ファッションモデルやショップ店員さんが独自のブランドをプロデュースという言い回しで立ち上げるのを何件か知っています。
    リアル店舗なしでネット販売のみのためそこまで大胆な投資でもなさそうですが簡単に参入できるものなんでしょうか?(広告塔でしかないのかもしれませんが)
    専門学校で学んだわけでもなく着るか売るくらいしか関与していない人がOEM先に適切なデザインを示せるのかとか少数発注と言え在庫は誰が預かってどの時点でブランドに売上が立ち、おそらく介在しているであろうOEM先と工場にはどのタイミングで支払っているのか(まさか先払いの買い上げではなさそう)とか気になっています。
    私がファンの子も手を出しているので、実は悪い人がそこそこ羽振りの良いインスタグラマーに目をつけて金を引き出す詐欺みたいな商売じゃないかとか心配もしています。
    以前に国内の著名なブランドが悪い人と繋がっていたみたいなゴシップ記事も見聞きしたことのある業界ですし。。。
    キラキラ系の個人商店みたいなブランドのビジネスモデルについてもし今後に記事として取り上げていただけたらうれしいです。

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