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南充浩 オフィシャルブログ

ユニクロの値上げは容易ではないし、値上げを回避した無印良品が売れる保証も無い

2022年1月14日 企業研究 0

この10年間、海外の人件費の上昇や原材料費の上昇が断続的に続いてきた。

今回は燃料費の高騰もそれに加わり、国内向けの衣料品も値上げを視野に入れざるを得なくなってきたといえる。

すでに、しまむらは値上げの方向を発表している。またユニクロも値上げの方向性を発表した。

しまむら 来秋冬物を値上げ 原材料費などの高騰で | 繊研新聞 (senken.co.jp)

ユニクロに関していえば、今回の発表から1~2カ月前に、某大手メディア関係者から「ユニクロは今後値上げをするようです」という情報を得ていたので、驚きはなかった。

ファストリ、「値上げは避けられない局面」 9〜11月期は国内と中国が苦戦 – WWDJAPAN

 

一方、無印良品だけは値上げせずに現在の価格を維持する方向性を打ち出している。

「無印良品」コスト高騰でも「価格は維持したい」 堂前社長が見解 – WWDJAPAN

 

さて、服に限らず値上がりすると商品は基本的に売れにくくなる。ラグジュアリーブランドや貴金属を除いて。

そのため、国内アパレル業界は基本的に値上げすることをこれまで避け続けており、今回もできれば値上げを回避したいと考えているはずである。

しかし、ユニクロ、しまむらが値上げの方向性を示唆したことから、追随しやすい雰囲気が生まれるので少し安心しているのではないかと思う。

記事中にも

 

「下期(3〜8月)は何品番かは値上げをしなければいけないが、あくまで限定的だ。今秋冬物から価値と価格のバランスの見直しを商品全般で進めており、価格を上げても受け入れていただけるものだけに(値上げは)限る」と強調した。

 同社は14、15年に2年連続で値上げを行った結果、客数減を受けて16年に再値下げした経緯がある。

 

との一節があり、14年・15年の値上げはユニクロとしては失敗に終わり、16年に値下げしただけではなく、記事中にもあるようにさらに「21年4月からの消費税総額表示切り替えに合わせ、実質的に約9%の値下げを行っていた」というのが実状である。

そのため、ユニクロ首脳陣としては、どの商品を値上げするのかには非常に頭を悩ませているのではないかと思う。当方もそれは容易いことではないと思っている。

それの解決策として記事では

 

まずは素材軸。ユニクロで言えば、カシミヤ製品などはまさにその手法でヒットした。もう一つがコラボやクリエイター起用などのデザイン軸だ。「+J」に代表されるような、「これなら通常のユニクロ価格より高くても買いたい」と思わせる商品を企画することが必要になる。

 

と指摘するが、残念ながら、この指摘どおりにやってもユニクロの値上げは容易ではないだろう。

素材軸で考えると、ユニクロが手を出していない高級素材はもう無い。あるとすれば本革くらいである。しかし、本革も以前に何度かやって結果としてあまり売れなかったため、続いてはいない。

シルクも一度取り組んでいるが、カシミヤセーターとは異なり、ブラウスやワンピースという洗濯回数が多いアイテムが中心だったため、シルクの反イージーケア性があだとなって、売れ行きはそれほどでもなかった。その証拠にシルクはそれっきりユニクロでは使用されていない。

本革・シルクともにすでに一度失敗しているし、今の消費者にとってレザーウェア、シルク服は欲しくてたまらないが手の届かない憧れの素材という物では決してない。逆にいうと、高額なことは知っているが無くても別に困らない素材という認識である。だから、それを再投入したところで結果は前回と同じに終わるだろう。

また、ユニクロコラボへの期待感もそろそろ低減しつつある。昨年秋投入されたホワイトマウンテニアリングとのコラボ商品の度重なる値引き、+Jの防寒アウター類の大幅値引き、がその証拠である。

特に今回の+Jは意図的に価格を引き上げた部分もあったのではないかと思うが、逆に店頭在庫があまり減らずに期中に大幅値下げをすることになってしまった。いくら世界的デザイナーとのコラボと言っても、ユニクロ製品に3万円は出せないという一般消費者の価値観の壁が高かったと言うべきだろうし、そこがユニクロのブランド価値である。

安定感のある「ユニクロU(ルメールとのコラボ)」でさえ、最早定価で売り切れる品番は限られており、値下がりしてから売り切れる物、最終処分値でようやく売り切れる物の方が多いくらいである。

よほど、巧妙なやり方を考えないと、値上げした結果売れ残り、期中に値下げを繰り返すことで営業利益をさらに低減させてしまう可能性が高い。

首脳陣はどのように対処するのだろうか。興味深く眺めてみたい。

 

では、値上げを見送った無印良品が正解かというと、これもまた疑問だ。

基本的に今の消費者は「安くても要らない物は要らない」のである。これまで衣料品を中心に値下げを繰り返してきた無印良品だが、衣料品の売れ行きは前年割れが続いている。良品計画としてそれなりの決算になっているのは、食料品と日用品が衣料品の落ち込みをカバーしているからである。

今回の値上げ見送りも恐らくは、衣料品にとっては効果なしだろう。

値下げを繰り返してきた無印良品の衣料品の苦戦を見ると、安くても売れない物は売れないということがわかる。

衣料品業界にも「安かったら絶対に売れる」と考えている人がいるが、無印良品の衣料品はその反証材料である。

無印良品の衣料品の場合は、価格政策云々よりも、商品企画を見直す必要がある。いくら安くても要らない服は売れないということを真剣に考えなくてはならない。

良品計画の新社長としては、売れていない衣料品よりも好調な食品や日用品を伸ばそうということなのかもしれないが、この構造は今の大型総合スーパーと同じであることに気が付いているのかどうか。

逆に低価格を維持したことで衣料品の利益はさらに下がり、悪循環に陥る可能性も低くないのではないか。

 

いずれにせよ、ユニクロにしろ無印良品にしろ、価格は上げるのも一苦労だし、値上げを回避するのも一苦労で、画一的な絶対の必勝法など無いということをメディアやコンサルは強く認識すべきである。

 

 

そんな無印良品の軽量インナーダウンベストをどうぞ~

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