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南充浩 オフィシャルブログ

恐るべき慧眼

2014年1月17日 未分類 0

 ジーンズとワーキングユニフォームどちらが生き残るだろう。
なぜ、ジーンズとワーキングユニフォームというと、どちらも同じ産地で作られているからだ。
そもそもジーンズが岡山の児島、広島の福山界隈で縫製され始めたのは、学生服やワーキングユニフォームの産地だったからだ。
学生服やワーキングユニフォームは厚手生地が使われているから、厚手生地用のミシンがある。なら、これを流用改良すればジーンズも縫えるのではないか、というところからスタートしている。
学生服とジーンズとワーキングユニフォームは兄弟のような存在であるといえる。

ワーキングユニフォームは単価が安い。
作業着に何万円も支出したい消費者はそんなに存在しない。
できるだけ安くすませたいと考えるのが一般的である。
1着あたり2000~3000円の支出が関の山だろう。

一方、ジーンズはファッション用途なので、ユニフォームに比べて高額品が売りやすい部分がある。

「ジーンズとワーキングユニフォームのどちらが生き残るだろう?」

この命題はバブル期に児島・福山界隈で発せられたもので、当時はナショナルブランドジーンズブームでナショナルブランド各社が破竹の勢いだった。かたやワーキングユニフォームは売上高が下がらないものの、大きく伸びることはなかった。
その背景から発せられた言葉である。

しかし、筆者が業界新聞に入社した97年以降、すでに99年の段階で岡山・広島地区を担当する超ベテラン記者は、「意外にユニフォームの方が生き残るかもしれないな」とつぶやいていた。
恐るべき慧眼である。

2000年代半ば以降、ベテラン記者の予言が現実のものとなりつつある。
ナショナルブランド各社は苦戦しており、ボブソンが破綻し、ビッグジョンも大幅に規模を縮小された。ブルーウェイも規模を縮小し、社内体制を変更している。
リーバイ・ストラウス・ジャパン社は売上高100億円を下回るようになり、最大手のエドウインは経営再建問題の決着がいまだに見えない。

一方、中堅から大手のワーキングユニフォームメーカー各社は経営破綻していない。
経営が厳しい企業もあるが、市場から消え去ったメーカーはない。
販売単価は以前よりも厳しくなっているが、しぶとく生き残り続けている。

一時期はトレンドの時流に乗った高額商品によってジーンズメーカーがワーキングユニフォームメーカーを完全に圧倒するかと思われたが、そんな時期は長くは続かなかった。
これはなぜだろう。

ジーンズというアイテムがファッションアイテムのカテゴリーに完全に組み込まれてしまったからではないか。
ファッションアイテムとして広く人口に膾炙しているので、ジーンズには新規参入者が多い。
今や、資金さえあればだれでもオリジナルのジーンズが企画製造できる。
問題はどのOEM/ODM企業に依頼するのかだけである。

ワーキングユニフォームはあくまでも実用品である。
販売単価は低いが、着実に毎年の買い替え需要があるし、新規参入者も少ない。
なぜならファッションアイテムではないから、一般消費者はそんなに興味もないし、市場は狭い。
単価が低くて狭い市場にわざわざ新規参入したい業者などそれほど多くは存在しない。

こう見ると、ファッションアイテム化し市場が広がることだけが良いこととは一概に言えなくなる。
先行メーカーの既得権益は守られにくい。
ワーキングユニフォームは狭い市場だったからこそ、中堅から大手のメーカーが不動でいられた。

ワーキングユニフォームメーカー各社はそんなことを意図していたとはとても思えないが、まさしく怪我の功名だろう。

バブル期当時の業界人はだれもナショナルブランドジーンズが今のような苦境に陥るとはとても想像できなかっただろう。

先日、また、1社ジーンズメーカーの規模縮小の情報が耳に飛び込んできた。
このメーカーはユニフォームも手掛けているが、ジーンズ分野の規模は今度の組織改編で大きく縮小になるようだが、ユニフォーム関連の部隊はほぼ現状維持である。

こんな情報を耳にすると改めて、「ジーンズとワーキングユニフォームのどちらが生き残るか」という答えは、ベテラン記者が14年前に予言した通り「ワーキングユニフォームが生き残りそうだ」と思えてくる。

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