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南充浩 オフィシャルブログ

季節先取りで実用品は購入しない

2013年12月4日 未分類 0

 先日、セブン&アイホールディングスがカタログ通販大手ニッセンメディアホールディングスの買収を発表した。
ニッセンに限らず、昔からあるカタログ通販大手はなかなか厳しい状況にある。雑貨やその他はわからないが、こと衣料品に関していえば、存在感はここ数年で希薄になったように感じる。

衣料品でいうなら、衣料品専門のZOZOTOWNがある。
またユニクロや無印良品のように、自社でオンライン通販を手掛ける大手も増えた。

こうなると、衣料品をわざわざニッセンやセシールやベルメゾン、千趣会あたりで購入しようという消費者は減らざるを得ない。

衣料品には大きく分けてファッション衣料と実用衣料とがあるが、現在のネット通販状況を見ると、その両の分野で消費者にはカタログ通販大手という選択肢はないように感じる。

セブンが買収、赤字のニッセンはお買い得?

苦境のカタログ通販大手は大化けするのか
http://toyokeizai.net/articles/-/25396

これは東洋経済の記事だが、文中にニッセンのこれまでのビジネスモデルを紹介している箇所があるので引用する。

販売手法の構造的な課題もある。カタログの発行時期と実際の需要期の「ズレ」だ。ニッセンでは、メインの総合カタログを年5回(春、夏、盛夏、秋、冬)発行している。夏号の発行は3月下旬と、実際の季節よりも2カ月早く出すのが特徴で、衣料品などをシーズンになる前に先取りして買ってもらうというビジネスモデルだ。

とのことである。

まず考えたいのが「シーズン先取り」という形態だが、本来シーズン先取りで購入するのは「ファッション衣料」である。だから「シャネル」は6月のショーウインドーにウールのセーターを飾るのである。
今秋は11月に入るまで高気温が続き、10月の秋冬物衣料は全般的に苦戦傾向にあった。もちろん防寒アウターやウールのセーター類などの先行販売も芳しくなかった。
しかし、メーカーや店頭で尋ねると、少し高額でもカシミヤセーターなど付加価値商品はある程度動いたという。
これも「ファッション衣料」として動いたのだろう。

一方、実用衣料というのは、肌着や靴下、パジャマのような消耗品に近い物を指す。
しかし、低価格のカジュアル衣料・ビジネス衣料もこの実用衣料の範疇に入る。なぜなら、ファッションという要素はあっても消費者がそれらを購入するきっかけは気温の急激な高低である。
例えばジーンズカジュアルショップに5900円の防寒ジャケットがあったとして、これを真夏の8月ぐらいに買い求める客は少数派だろう。ほとんどの人が10月以降で急激に気温が低下したときに購入する。

そういう意味ではユニクロも無印良品もライトオンもマックハウスも実用衣料としての色合いが強いといえる。
正しく言うと、ファッション的にも使える実用衣料と言ったところか。

さて、話を戻すと、ニッセンの商品は「ファッション衣料」だろうか?価格面から見ても筆者にはファッション的にも使える実用衣料だとしか思えない。
そしてそういう類の商品を2ヶ月前に購入する消費者は年々減っている。

おそらくニッセンも自社商品が「ファッション衣料」としては見られていないことは認識していたのではないかと推測している。
だからこそタレントの香里奈さんを起用してイメージアップに努めたのだろう。
しかし、長年の「ニッセン」のイメージは消費者に染み付いており、そのイメージを覆すには相当に長い時間が必要になる。少なくとも10年くらいはかかるのではないか。

とすると、このビジネスモデルは、モデル自体を見直し変更するか、モデルはそのままであと数年我慢してイメージ戦略を続けるかのどちらかである。

どちらを選択するのかは経営判断であり、現時点ではどちらが正解だとも言えない。

ニッセンに限らずカタログ通販大手の苦境はこれからも続くだろう。

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