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南充浩 オフィシャルブログ

今後はネット通販の前年割れも珍しくなくなるだろう

2021年6月25日 未分類 1

数年前からのZOZOTOWNの急成長、昨年春からのコロナ禍が重なり、アパレル業界と業界メディアには、ECすなわちネット通販が最大の活路という見方が蔓延している。

たしかに昨年春からのコロナ禍で、ネット通販が無かった企業はどれほどの損失となったかである。完全に実店舗の売上高減少を補完することはできなかったが、幾ばくかの補填にはなった。

物事の成長というのは、黎明期には高い伸び率を見せる。これは当たり前で、分母自体が小さいのだから成長率は高い。

年間売上高1000万円しかないブランドが、50万円増しただけで5%増である。100万円増えれば10%増である。

この5%増、10%増は比較的達成が容易だろう。

しかし、1兆円の企業を5%増させようとすると、500億円の増収が必要となる。1兆円というと既存の分母もすでに相当に広がっているわけであり、これ以上のすそ野を広げることはかなり難しい。

ほぼ顧客数が広がり切っているため、顧客数を大幅に増やすことは不可能だから、客単価を上げるか、客一人当たりの購買点数を上げるかしか手がない。

国内売上高8000億円のユニクロの成長率が鈍化したというのは、極めて当たり前のことで、8000億円から毎年20%増とか30%増なんて続けられるわけがないのである。

無限に続く大規模成長はあり得ない。

 

ネット通販とてこれと同じである。

これまでは使用する人が限られていたから、新規客が増えれば増えた分だけ増収しやすいという状況だった。昨年のコロナ禍で、新規客数が一挙に増えた。

何せ実店舗が休業しているのだから、どうしても欲しい人はネット通販で買うほかなかった。

そのため、各社のネット通販の伸び率は一挙に高まった。具体的な数字は各メディアで散々報道されているから、そちらを参照してもらいたい。

で、このままのペースで各社のネット通販がともに成長するかというと、答えはNOだ。

 

それこそ、優勝劣敗がくっきり出始める。

成長し続ける企業もあれば、鈍化する、停滞する企業も出てくる。逆に前年割れに転じる企業も出てくるだろう。

コロナ禍による、大規模新規顧客流入というボーナスステージは終了した。

 

今期のECは前年を割る? | ファッションビジネス ・リテールMDアドバイス ・マサ佐藤 (msmd.jp)

 

守秘義務があるのと、メディアではあまり報道されていないので、具体的な企業名は伏せられているが、

 

 

アパレルECを生業にしている方々、今年度上期はECの業績が全体的に前年度を大きく超えていかない。もしくは前年を割る、という事態を想定しているのではないでしょうか?筆者がここ最近でご相談を受けた案件や、既存クライアントの数字を追っている際に、これらの動きが4月くらいから完全に顕在化してきております。

 

という状況がすでに発生している。

これはZOZOTOWNや楽天、Amazonなどの大手にはあまり当てはまらないだろう。しかし、そこに出店しているブランドの中にはチラホラ出始めているのかもしれないし、自社通販サイトなんかではかなり増えているのではないかと考えられる。

当方が考えるように、新規客の大規模流入は昨年春に一挙に起き、今年春は大規模な新規流入はあり得なかったということのほか、

 

店頭が閉まれば、店頭顧客がECで買う確率は上がりますし、在庫が増えればその分ヒットする確率も上がります。おうち時間が増えたことでソーシャルの閲覧時間も格段に増え、接触頻度が上がっていつもよりEC売上が伸びる。在庫をはかないといけないのでクーポンの割引金額も上げ、セールは前倒し。これが昨年起こったことだと思われますが、それに対し今年度は4月末からはともかく、それまで一応店頭は開いていました。また、5月でも全店が完全に閉まっていた訳ではなく、肌感でも昨年と比較して開店していたショップはまだ多かったように思います。仕入れも絞った、というブランドもあるでしょう。

 

という背景もある。その結果、

 

結果として前年と比較するとリピート率やCVR(買い上げ率)・客単価やセット率が下落したブランドが多く出てきました。セッションは落ち込んでいないのに売上は下がった、というケースもよく見かけますね。しかし、ずっと同じような施策をルーティンで回しているブランドは2019年と比較するとCVRや客単価が戻った、というだけで大きく落ち込んだということではないようにも思います。(施策によって変動します。)ですから「昨年が良過ぎた」と捉える方が正しい認識なのではないかと。

 

ということになる。

 

つまるところ、

 

このような状況でも例外があるとするなら、「ブランドが成長過程にあり、需要自体が伸びている」「またはEC売上の伸び代が大きく、まだ既存顧客を取り込みきれていない」というケースでしょうか。(採算度外視で広告費使いまくっているショップは外します。)

 

である。

要するに成長途上でなければ、簡単には伸びにくくなったということで、現在の国内ユニクロの売上高が簡単に大きく伸びないことと同様である。

 

今後、ネット通販もいかに細かく「正しく」データを分析し、それに見合った施策を採るかが勝負の鍵となる。今までみたいに「ネット通販を開設したから」というだけで売れたり、コロナ禍が起きて新規客が大量流入するというようなラッキーはもうないということである。

「ブームに乗って漫然と売っていただけ」のネット通販は、今後は実店舗と同じように伸び悩み苦しみ、場合によっては廃業や倒産、閉鎖に追い込まれることになるだろう。

 

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 comment
  • とおりすがりの元・服売り より: 2021/07/06(火) 11:57 AM

    少し前の投稿ですけど、思うところがあったので。
    昨日、知り合い※と「最近はxxの洋服屋の売り上げが厳しいらしい」という話をしたときのことです。
    ※たぶんアパレル業界の人じゃないです

    その知り合いが「ネットだと試着できないし、服の購入動機として友達、家族、恋人と外出して購入という流れがないせいかも。いっしょに出掛けて衝動買いも期待できないし」って言ってて、膝を打ちました。
    自分はたいてい1人で服を買いに行ってしまいます。
    服を誰かと買うことなんかまれだったし、ネットもフツーに使う身だったので、その発想はなかったなぁと感心しました。
    ネットショップが実店舗の代替にはなり切れない、ということを改めて感じました。

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