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南充浩 オフィシャルブログ

「2点○○オフ」という抱き合わせ商法を有効に活用する方法

2021年6月16日 お買い得品 0

4月から5月末までの非常事態宣言による商業施設閉鎖によって、今春物の処分と夏物の初動販売が遅れた。

6月1日から営業が再開されたが、営業再開と同時に春夏物の処分が喫緊の課題となってしまった。そのため、商業施設としては「春夏処分セール」とは謳っていないが、各テナントブランドは個々で「春夏処分セール」を営業開始と同時にやり始めている。

以前だとネット通販先行という形で在庫処分セールを行うブランドが多かったがネット通販でも「店頭受け取りは送料無料」を打ち出すブランドが増えてきたため、ネットも実店舗も同時に処分セールを開始せざるを得なくなった部分もあるだろう。

ネットで買ったお客が店舗へ受け取りに行けば、値段の差がバレてしまうからだ。

そんなわけで、処分セールは実質的に6月1日からネット通販、実店舗両方で始まっており、さまざまな値引き施策が行われている。

そんな中でも「2BUY10%OFF」(要するに2枚買ったら10%オフ)という施策もある。「2枚買ったら20%オフ」という施策もある。

10%しか値引きをしないから、粗利益額確保には非常に有効な施策に見えてしまうが、精緻に設計せずに安易に実施すると思わぬ弊害をもたらすこともある。

 

それを数少ない業界の友人であるマサ佐藤氏が指摘しているのでご紹介したい。

2BUY10%OFF施策の弊害 | ファッションビジネス ・リテールMDアドバイス ・マサ佐藤 (msmd.jp)

 

〇ある組織A

・組織の平均値入率は65%
・セールが始まって2週間累計の粗利率は45%。OFF率は約36.4%。

 

と仮定していて、

 

上記ような組織があった場合、2BUY10%を実践することで、2人に1人が商品を2点購入した場合(SET率1.5)、商品の約66.7%が更に10%OFFの対象となってしまいます。このことでどのくらいの粗利率が低下するのか?と言いますと。粗利率は約41%となり、約4%粗利率が低下します。

更に、3人に2人は商品を2点購入した場合(SET率1.67)、商品の約80%が10%OFFの対象となり、粗利率は約40%となり、約5%粗利率が低下し、思っている以上に粗利益を喪失します。(因みに全品10%OFFで、約6%の粗利率が低下。)

 

としている。セット率とは言うまでもなく2点買った人の比率である。いくら「2点で10%オフ」と謳っても1点しか買わない人もいる。セット率によっても数字は変わってくるが、3人に2人が2点買うと粗利益率が6%も低減してしまうことになる。

 

そしてさらに、

 

更に言えば、このような施策を行って在庫消化が促進されるのは?これまで売れていた商品であることの方が多い!というのが事実でしょう。そのことで、本来取れた筈の売上・粗利を喪失していることも多く、本当に在庫消化を促進させたい商品がそのまま残ってしまった_| ̄|○では、

 

値引き処分したい商品というのは、基本的に売れ残りか不人気商品である。ところがどんな店にも好調商品・人気商品はある。「全品2点10%オフ」にしてしまうと、売れ残り品や不人気商品よりも人気商品の方が動く可能性が高い。

またさらに、

 

例えば、シャツ1点10,000円の人気商品を購入しようと思ったとする。すると、ハンカチがセール価格500円で売られていることに気づいたとします。そうすると。

→10,000円(シャツの売価)+500円(ハンカチの売価)=10,500円(合わせた売価)

これで、2点購入で10%OFF適用となるので、

→10,500円(2点購入の売価)×10%=1,050円(商品2点の値引高)

→10,500円-1,050円(10%値引高)=9,450円(2BUY10%で2点買った場合の売価)

となり、欲しいシャツを購入する際に、シャツ+ハンカチで、商品2点購入した方が、シャツ1点を購入するよりも欲しいシャツが550円安く購入できる!ということが起こってしまいます。(私はこのことで過去何度か得をしました。)

 

とのことで、不可抗力とはいえ、むざむざと人気商品を値引きしてしまうことになる。

ではこれを防ぐ方法はないのか?というとそうでもない。「全品」というふうに本部も店頭も楽をしなければ防ぐ方法はある。

例えば、不人気商品・売れ残りをワゴンに集めるか、コーナーに集積する。

そのうえで「このワゴン内2点10%オフ」とか「こちらのコーナーにある商品に限り2点10%オフ」とか、そういう表示にすればいい。

もしくは、値札に分かるように目印(例えば、青い丸いシールを貼るなど)を付けて「目印の付いた値札の商品のみ2点10%オフ」という告知をする方法のある。

要は本部や店頭が「楽」をしたいかどうかである。全品としてしまえば楽にできるが、これらの施策を行うとなると本部も店頭も仕事が発生してしんどくなる。それを許容するかどうかである。

 

では2点抱き合わせの割引が無意味かというとそうではない。

例えば、当方が手伝っている在庫処分店でも盛んに「1点690円、2点1200円」というような処分セールをすることがあるが、大阪のおばちゃんはガメツいようであまり算数の得意でない人が多いから、体感的に90%くらいの人は、是が非でも2点買おうとする。

彼女らの理屈でいうと「2点買った方が180円安くなるから」というものだが、現金の支出は1点を690円で買った方が510円も安く抑えられることに何故か気付かない。

もちろん「欲しい」と思える商品があるのなら2点1200円で買うべきだが、1枚しか欲しくないのに、1200円にするためにもう1枚を買うことは、無駄な出費でしかない。510円は節約してほかのことに使う方がずっと効率的である。

しかし、このような心理の消費者は大阪以外でも少なくないだろうから、2点〇〇という抱き合わせ商法は在庫処分や売上増には有効なのである。

問題は、安易に楽をして「全品」としてしまうか、作業はしんどくなるが「要らない物」を洗い出してそれのみを集めるか、の違いである。

後者のことができるなら2点〇〇という抱き合わせ商法は極めて有効である。

 

 

2BUY10%OFFのロールアップ紙看板をどうぞ~

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