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南充浩 オフィシャルブログ

8年間主張が同じ

2013年11月14日 未分類 0

 年に1度くらいネクタイ業界の記事を目にすることがあるが、ここ数年論調がほとんど変わっていない気がする。
クールビズの推奨は「業界いじめだ」という論調である。クールビズが提唱されたのが2005年のことだからかれこれ8年前である。
8年間同じことを言い続ける業界団体というのもすごいものである。8年間まったく変化がない。なぜ自助努力しないのかと不思議でならない。

国産ネクタイ減少、クールビズで大打撃…業界恨み節「国挙げてのイジメだ」
http://news.livedoor.com/article/detail/8243068/

東京ネクタイ協同組合の調査では、国内の生産量は平成13年には約1740万本あったが、その後減り続けた。19年には1千万本を切り、最新統計となる23年には13年の3分の1となる約570万本にまで減少している。また輸入でみても、13年は約2670万本だったが、23年は約2350万本に減少している。

とある。

まず疑問なのが、国内のネクタイ生産量が減っているのがクールビズのせいだと主張していることである。
たしかにクールビズの要因はあっただろう。
ネクタイの多くは絹織物を原料としている。国内の絹織物業者自体が年々減り続けているわけだから、なにもクールビズだけのせいではないだろう。

同組合はネクタイ製造・卸しの31業者で構成。山田哲男事務局長は「少子高齢化で、働く人の数が減りネクタイをしない世代が増え、需要が下がっていた。そんな中、クールビズが追い打ちをかけた」と指摘する。さらにIT業界をはじめ年中ネクタイをしない人も増えている。ネクタイと言えば、かつてビジネスと切っても切れなかったが、そんな一般的なイメージは過去のものになっている。

とのことだが、この事務局長が図らずも自分で業界の自助努力が足りないことを認めている。
「少子高齢化で、働く人の数が減りネクタイをしない世代が増え、需要が下がっていた。
とあるのだから、需要は減少していることがわかっていながら組合に所属していた各社は手をこまねいていたことになる。何を言っているのかと思う。

筆者は業界紙に入社して1年半ほどメンズ業界を担当したことがある。
スーツ、ワイシャツ、ネクタイ、などだ。
ネクタイメーカー、ネクタイ問屋の展示会も何度か取材したことがある。

数年前からニットタイがメンズのアクセサリーとして流行している。ユニクロでも売ってるくらいだ。

しかし、筆者が業界を担当していた14年ほど前はメーカー、問屋の展示会でニットタイを拝見したことはなかった。
いつも決まりきった絹織物のネクタイのみである。
違っていたのは色柄くらいで、「今秋冬はグリーン系です」とか「来春夏はブルー系です」という程度だ。
あとはワイシャツの襟の形の流行によってネクタイの幅が細くなったり太くなったりしていた。

筆者は「ニットタイとかアスコットタイなんかを出品しないのですか?」と尋ねたことがある。
「百貨店に持っていっても売れないから」という答えが返ってくるのみである。
そのとき「何とまあ、変化と提案のない業界だろう」と思ったことを今も覚えている。

クールビズという服装自体が良いのか悪いのかという議論がある。
筆者はクールビズ賛成派である。
夏場の職場環境において、男女間の体感温度は従来の服装のままだと大きく異なることはクールビズ反対派も認めるところだろう。
カットソー1枚の女性社員と、ワイシャツの襟元をネクタイで締めてご丁寧に上着まで着込んでいる男性社員とでは、同じ空調環境で存在することは難しい。
正装とされるスタイルで過ごせといわれれば、筆者なら空調温度は最低でも24度を下回ってもらいたい。
一方、カットソー1枚の女性社員はその温度では凍えてしまう。

冷房温度を28度前後に保つためには男性社員が薄着になるのがもっとも効果的であることはクールビズ反対派も認めるところだろう。
2011年以降は節電対策もあいまってさらにクールビズが定着している。これを以前に戻すことはよほど強力な法律でも作らない限りは不可能であろう。

同じメンズ業界でもワイシャツは新業態を開発したメーカーが何社かある。
シャツ専門SPAに転身した東京シャツである。ワイシャツメーカーも死屍累々で大手がバタバタと倒れた。
90年代後半のことである。カネタ、松屋シャツ、信和シャツ、アルプスカワムラ、トミヤアパレルなどなどだ。
シャツだって別にユニクロで1900円の物を買っても問題はない。
何もしなければユニクロなり、ツープライスショップなりに完全制覇されていた可能性もある。

知り合いのクリーニング店によると芯地の質が悪いといわれる東京シャツだが、それでもSPAに踏み出したのは大変な勇気と決断だったと言わねばならない。
その後、鎌倉シャツも登場し、シャツ専門店なるものも市場で存在を認められるようになった。

翻ってネクタイはどうか。
そういう新業態開発を行ったか?
東京シャツの店にはネクタイが並んでいる。反対にシャツ店がネクタイ販売まで取り込んでしまっている。

最後にこの記事は

ノーネクタイが定着していることについて、ファッションデザイナーの加藤和孝さんは「カジュアル化の波が一流企業にも浸透し、スーツスタイルからまず初めに外されたのがネクタイなのだろう。業界は大変だが、ノーネクタイも一つのファッション。人と接するビジネスでもそれが許されつつある」と指摘。「かつてスーツに帽子は必須だったが、いまフォーマルなスタイルで帽子をかぶる人は少ない。それと同じように今後、ビジネスでノーネクタイがさらに広まるのではないか」と予測している。

と締めくくっている。

たしかに昔のドラマを見るとビジネスマンは帽子を着用している。
サザエさんのお父さんの波平さんも通勤時には帽子を着用している。
今、帽子を着用しているビジネスマンは見かけない。反対に着用していたら奇異な目で見られることだろう。
じゃあ帽子は廃れて滅びたかというとそうではない。

帽子はファッションアクセサリーとして生き延びている。
反対にあちこちに帽子専門店まで出来ている。CA4LAやオーバーライドなどの有名店も多数存在する。

帽子業界から恨み節は耳にしたことがないのに、何故ネクタイ業界だけが8年間も他力本願な恨み事を述べ続けるのか理解に苦しむ。それは、もしかしたら和装に端を発する絹織物業界特有の甘えではないのか?

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