商品開発による先行優位性があまり無くなってしまったアパレル業界
2021年4月28日 トレンド 3
基本的にめんどくさいことが嫌いである。
ガンダムのプラモデルを組み立てるのもめんどくさくないか?と問われると、正直めんどくさいと感じる瞬間もあるが、あれは組み立てるというめんどくさい工程を楽しむものだから、根気が途切れてきたら中断して気分転換をするようにしている。
個人的には、クリーニングに持って行くのも、また取りに行くのもめんどくさくて嫌だ。
で、この観点で昔から疑問に感じていたことがある。
それこそバブルのころから、スーツのジャケット(それに類したテイラードジャケット)をTシャツの上から着るというスタイルがある。
あれをやると、ジャケットの襟裏には必ず皮脂汚れが付着する。
Gジャンのような綿や合繊のカジュアルブルゾンなら自宅の洗濯機に放り込めばそれで済む。しかし、ウール素材やウール高混率のテイラードジャケットの場合、洗濯機では洗えない。仮に洗ったとこで、今度はプレスが必要になり、テイラードジャケットやスーツのジャケットを綺麗にプレスするのは、素人ではとても無理である。
あのスーツやテイラードジャケットでTシャツ+ジャケットというスタイルをする人はクリーニングに必ず出しているのだろうか?というのが、当方の長年の疑問である。
黒、濃紺、チャコールグレーなどの濃色なら皮脂汚れは目立たない。
しかし、白、ベージュ、ライトグレー、ライトネイビーなどの淡色だと必ず襟裏の皮脂汚れは目立つし、年数が経過すると茶色っぽく変色し、落ちにくくなってしまう。(経験済み)
それこそ、淡色なら、着用後は必ずクリーニングに出すくらいでなければ、維持できないはずである。
そうすると、クリーニング代も累積されてバカにならないから、淡色ジャケットをTシャツの上から羽織る人はよほど裕福な人なのだろうという目で当方は見ている。
だからそれを回避するため、スーツやテイラードジャケットを着用する際、当方は必ず襟付きシャツかハイネック、タートルネックを着用する。
丸首・V首・U首のTシャツ類の上からジャケットを羽織ることはない。
昨年春に大々的な長期コロナ休業が起きた。
在宅勤務やリモートワークが増えたから、出社するときのようなジャケット+シャツ+ネクタイという服装を着て、リビングでリモート会議をするのも何だか変だ。特に家族から見ると、あまりにも服装と周りの環境がマッチしていない。
となると、シャツ+カーディガンやTシャツ+ジャケットみたいなカジュアル感があった方がしっくり来る。
その観点と、当方のようなクリーニングをめんどくさいと感じる人間が少なくなかったことから、首の後ろ部分が高くなったTシャツというものが昨年の春に開発された。
代表的なのは、ナノユニバースの「ジャケT」だろう。
ジャケット専用Tシャツというわけである。
当方は買おうとは思わなかったが、まあ、ニーズを掴んだ面白い企画だったといえる。
昨年5月にはすでにナノユニバースから発売されていた。
しかし、今年春になると、類似品、しかも低価格品が出回るようになった。
最有力はやはりジーユーである。ジーユーの商品名は「カーブVネックT」で、つい先ごろ投入されたばかりだ。
今のところVネックだけに特化した展開だが、特筆すべきはその価格で、1490円である。
またグンゼも3月下旬に同様のコンセプトでボディーワイルドから「ドレスT」という新商品を投入している。
こちらは税込み1430円という価格である。
ナノユニバースのジャケTは自社通販サイトによると半袖が定価4400円で、クラウドファンディングに挑戦した長袖が4950円だった。
商品は値段だけでは判断できないが、どうだろうか、よほどのイノベーター気取りでない限り、グンゼかジーユーを買う人が多いのではないかと思う。
・ナノユニバースの半袖の組成は綿94%・ポリウレタン6%
・グンゼの組成は綿100%
・ジーユーの組成は綿61%・ポリエステル34%・ポリウレタン5%
となっている。
ナノユニバースはスーピマ綿使用を謳っているが、多分、消費者が購入する際の決定打にはあまりならないだろうと思う。ゼロではないだろうが。
アパレルビジネスにおいて新商品開発というのは重要であることは言うまでもない。
だが、メーカーの人や製造加工業の人、ブランドの人は、得てして新商品を開発するとそれで安心してしまうようなところがある。20年前、30年前から新商品を開発すると類似品が他社から出るという構図は変わらないが、それは同じ価格帯で起きることが多かった。
極端な言い方をすると、ワールドがやったら少し遅れてオンワードも出すというような具合だった。
もちろん、低価格商品も類似品を出すのだが、それは色・柄・形などすべてが劣化しており、同じジャンルの商品とは見えなかった。だから、当方のようなケチでもブランド品を(セールで)買わざるを得なかった。
だが、今はそうではない。ジーユーにしろ、グンゼにしろ、素材の組成は異なるにしても、画像を見ている限りにおいては、先行販売していたナノユニバースと遜色なく見える。
恐らく、ブランド名を口にしなければ、傍から見ていて、それがナノユニバースなのかジーユーなのかグンゼなのかという区別はできないだろう。
使用生地も成分組成こそ異なるが、著しくグンゼとジーユーが劣悪というようなこともない。
何が言いたいのかというと、これだけ企画と製造の業界インフラが行き渡ってしまった状況になると、アパレル製品においては「よほどの特殊な何か」を持っていない限り、ほぼ同等に見える商品が低価格ブランドから1年以内に発売されてしまうということである。そのため、ことアパレル製品に関しては、商品開発の先行優位性などほぼ無いに等しいということを各ブランドは痛感する必要がある。
物が大好きな人たちは「物」だけで優位に立てたり、一発逆転が可能なように考えている節が時々見受けられるが、それはなかなか難しいということを認識しておいた方が良いのではないかと思う。
グンゼのボディワイルド「ドレスT」をAmazonで1430円でどうぞ~
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ユーティリティ より: 2021/04/29(木) 6:51 PM
ドレスT ?
新宿伊勢丹地下や髙島屋日本橋でその名も
『ドレスT』と言うのが売っている。
綿100%でJKTに負けない光沢、質感の商品だ。日本生産に拘った商品です。7500円だが納得している。 -
読者 より: 2021/05/06(木) 11:40 AM
Tシャツにジャケット、チャゲアスの飛鳥スタイルですかね···
古着屋に行くと襟元変色したジャケット見かけますよ(笑)
私、低所得なのにナノ・ユニバースのジャケTの長袖をクラファンで買っちゃったダサいオッサンですが、3月末に届く予定が1ヶ月遅れて4月末にやっと届きましたw
モノ自体はかなり分厚い生地で、たぶん今まで買ったTシャツで一番分厚くてしっかりしてると思います。他の会社の低価格同等品見てないので比較はできないですが。ただ、これからの時期にジャケットの下に着るにはちょっと暑くてダメっすねw
あとは、2枚セットで買ってTシャツの上からジャケット着てみたら、明らかに片方の袖の出方が違うので2枚を重ねてみたところ、同サイズなのに袖で1.5cm、着丈で2cmも長さが違ってて(貧乏人にとっては)高額なのにどうかとも思いましたw