知られていないのは存在しないのも同然
2020年11月30日 トレンド 4
相変わらず業界メディアには起用されない(笑)が、今年3月からBLOGOSで毎月1本掲載させてもらっている。
一応、読者層が違うので、かなり初歩的な説明をしながら書くようにしている。
今月に寄稿したのがこれである。
ユニクロの「+J」商品に客が殺到 転売市場で高値でも買い手がつく背景を考える
https://blogos.com/article/500273/
編集部の意図と合致したのかどうかわからない。正直なところ、編集部が想定する結論に対して無理に迎合させる気は毛頭ないが、事象をとらえる意図や問題への視点などの意図は合致させたいと、BLOGOSに限らず、寄稿する際には常に思っている。
それはさておき。
たまたま+J人気でユニクロのメルカリ転売が注目されたが、+Jが復活する前から、メルカリで最も出品されているブランド服はユニクロだと言われていた。それほどにユニクロの転売需要はあった。
記事中でも書いているように、自分がそれを知ったのは4年ほど前で、たまたま、定価2990円の商品があって、それを自分は1990円に値下がりした時に買った。その後、990円に値下がりしたので、もう一枚別色を買おうとユニクロに行ったところ完売してしまっていた。
ネットでその990円に下がった価格で検索していたら、行き当たったのがメルカリの出品だった。
そこではなんと、最終値下げの990円よりも高い2000円くらいで出品されていて驚いてしまった。
今回の+Jなんて定価よりもはるかに高い値付けで出品されている。正直なところ、いくら「値段の割に物が良い」といったところで、+Jのコートに10万円の価値はないわけで、+Jのコートを10万円で買うなら、他のブランドのコートやダウンを10万円で買った方がマシである。
ではどうして、ユニクロの商品(最近ではジーユーやワークマンなどの商品も)がメルカリではさほど値崩れせず、場合によっては定価以上の値段が付くのか。
今年50歳になった自分のようなオジサン世代(ジジイ世代)なら、「転売でわざわざユニクロなんか買いたくない」と思ってしまう。できれば、そこそこ知名度があってステイタス性のあるブランドを買う。
とはいえ、仕事柄名前を知っているだけに過ぎないルイ・ヴィトンやエルメス、グッチ、プラダなんていうラグジュアリーブランドを買うかというと絶対に買わない。
なぜなら、貧乏人だった自分はそれらのラグジュアリーブランドの商品をほとんど使ったことがないから、親しみや憧れが無い。
もしかすると、バブル世代を含めたその上の世代なら違うのかもしれない。
いつかはクラウン
昔そんな自動車のテレビCMが流れており、その世代のサラリーマンのオジサンは退職金でクラウンを買ったらしい(知り合いの実話)。
しかし、バブル崩壊後から働き始めた自分にそういう欲求はない。
せいぜい、手の届く値段のブランドを買ってきた。タケオキクチ、Rニューボールド、ジュンメン、ドモン、アトリエサブ、コムサ・デ・モード、PPFM、メンズビギ、メンズメルローズなどなど。
もう無くなってしまったブランドも多数あるが、これらに伍する価格帯のブランドなら、何かの拍子で儲かったなら久しぶりに買ってみたいとも思う。ユニクロ・ジーユー・無印良品・ライトオンの値下げ品ばかりでは飽きてくる。
だが、全く馴染みのないラグジュアリーブランドは、別段欲しいとは思わない。それなら、10万円のνガンダムの解体匠機を買う(今度発売されるサザビーか)。もしかすると、最寄り駅まで乗っている自転車を10万円の物にする。もしくはパソコンを買う。
若い世代になると、自分が無理をして買ってきたワールドやオンワード、ファイブフォックスなどのブランドにもまったく馴染みがない。
毎年、専門学校生に質問するが、ワールド、オンワード、ファイブフォックス、三陽商会、TSIなどの知名度は極限まで無い。ほぼ皆無である。
最近は「ブランド廃止とか店舗閉鎖のニュースだけで聞いたことがあります」という。(笑)
メルカリでユニクロなどの低価格ブランドがあまり値崩れせずに取引されているのは、若い人がそこにしか馴染みがないからだということが大きな理由の一つにあると考えられる。
結局、ブランドや会社の知名度というのは、やっぱり重要だといえる。
古いファッションファンや業界の年配の人たちからの「若い人に知られなくても強い顧客があるから大丈夫」とか「若い人たちに知られる必要はない」という意見を耳にすることもあるが、やっぱり知名度は重要だし、常に若いファンも一定数は獲得していく必要がある。
良い例が先ごろ破産が決定したレナウンである。
創業100年の名門と呼ばれながら、今の50代半ば未満の世代は、レナウンに愛着も持っていないし、レナウンの商品を買ったこともない。(レナウン関係者は除く)
それこそ「ニュースで聞いたことがある」レベルである。
その結果、民事再生法を申請してもスポンサーは現れなかった。辛うじてネームバリューがあるブランドは小泉グループに引き取られたが5ブランド合計でたったの11億円だったと言われている。
知名度がないこと。
これに関しては、大手総合アパレルももっと危機感を持つべきではないかと思う。知られていないのは存在しないのも同然である。今のように「経営悪化のニュースだけで聞いたことがあります」という状況なら20年後にはレナウンの後を追うことになりかねないだろうと思う。
めちゃくちゃ値上がりしている解体匠機νガンダムをどうぞ~
comment
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BOCONON より: 2020/12/01(火) 10:40 PM
一方そのごくフツーのお若い人たちも,百貨店ブランドはおろかセレクトショップすら買い物に行く対象外みたいな塩梅で,こういうところでもあまり話題にもならないし,なっても半分もの笑いのたね状態。ユニクロGUの話ばっか。
↓
http://mens-fashion.blog.jp/archives/cat_67553.htmlこれではレナウンも山陽商会の知名度も何もあったもんじゃないし,セレクトショップも未来はあんまり明るくなさそうである。
今の子はファッション誌など読まず,参考にするのはインスタグラムや WEAR らしい。おじさんはインスタグラムなんて見ず,ファッション誌もあまり見ないから「たとえばマッキントッシュ ロンドンなどはTVCMでも流すより知名度を上げる方法はあるまい」… と僕はシロウト考えで思ったりするのでした。
まぁマッキントッシュ ロンドンは現在スーツなど大して売っていなくてセットアップを推している有様だから “バーバリーの後継ブランド” もへったくれもないですが。 -
kim hgonwo より: 2020/12/02(水) 12:01 PM
若者には
金をかけない事がファッションの時代に
ブランドでマウントかけるのは
「カッコ悪い」ということでしょうね
緩く生きたい
一方で命をかけて守ってくれる上司
みたいな映画を見て涙する
こんな上司がいたらな
いやいや あんた私生活犠牲にしたくないんでしょ
なんで そんなあんたに 上司は命かけなきゃなんないの
ファッションに関係無い話になってしまいました
失礼しました-
BOCONON より: 2020/12/03(木) 11:14 AM
マウントを取る必要はないにしても,ではお若い人たちが本気で「ダサくっても平気。オレは実用本位」「服なんざ何でもいい」などと言い切れるのか,と言えばそれは甚だあやしい気がしますけどね。
上記まとめサイトなど見ていても皆「自分があまりオシャレじゃないのは認めるとしても,ダサいと言われるのはイヤだ」と思っているのは明らかですからね。
またそうじゃなきゃMBクンの “黒スキニー穿けば誰でもおしゃれ” なんてインチキくさい本がベストセラーになったり,”ユニクロだけでおしゃれ” みたいな本やサイトが大量に出現するわけもない。しまいにゃこんな “すっぱい葡萄の論理” の見本みたいな本ユニクロ礼賛本出す学者「のようなもの」まで出て来る始末で。
↓
https://www.amazon.co.jp/%E3%81%8A%E3%81%97%E3%82%83%E3%82%8C%E5%AB%8C%E3%81%84-%E7%A7%81%E3%81%9F%E3%81%A1%E3%81%8C%E3%83%A6%E3%83%8B%E3%82%AF%E3%83%AD%E3%82%92%E9%81%B8%E3%81%B6%E6%9C%AC%E5%BD%93%E3%81%AE%E7%90%86%E7%94%B1-%E5%B9%BB%E5%86%AC%E8%88%8E%E6%96%B0%E6%9B%B8-%E7%B1%B3%E6%BE%A4%E6%B3%89-ebook/dp/B07V8RPLHQ僕としては「お若い人たちよ,君らは完全になめられてるぜ」と申し上げたい。橘玲や竹中平蔵や上野千鶴子などが「ユニクロ着てスーツはツープラで済ませて,ファストフード食べて,スマホでゲームしてついでに性欲処理してそれなりに倖せに生きて死んでね」 といった風な発言しても別に非難轟轟にもならないのですからね。
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「ファッション系専門学校生というのはじゃあどんなブランド/会社なら知ってるんだろ?」と思って調べてみたらこんなサイトを見つけました。
↓
https://style-it.jp/2019/12/11/3186/
おおよそこんなものなのでしょうが,好きなデザイナーと好きなブランドの乖離が大きすぎ,好きなブランドとよく利用するショップもかなり違うのがなんだか可笑しかった。どうやらハイブランドやモード系が好きではあっても実際にコム デ ギャルソンや Y’s さえ買う人はあまりいないようで,買うものはごくフツーの若い人とさして変わらないようである。