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南充浩 オフィシャルブログ

シェアの奪い合いでしか生き残れない

2013年9月3日 未分類 0

 先日、専門学校についてこんな記事が掲載された。

有名専門スクール、パワハラ&強制退職の実態 「つなぎ着て掃除しろ」 他社へのスパイ行為も
http://biz-journal.jp/2013/08/post_2796.html

ゲーム、アニメ、声優などの専門スクール「バンタンゲームアカデミー」や、パティシエ(製菓)、ブランジェ(製パン)などの専門スクール「レコールバンタン」、ネイル、エステ、ファッション業界志望者向けの専門スクール「ヴィーナスネイルアカデミー」などを経営する株式会社バンタンの社員が、退職強要で会社を辞めさせられた、と東京地裁に訴えている。

というものであり、労使どちらにもそれなりの言いぶんがあるだろうし、それは今後、裁判で明らかになるだろうから改めて言及しない。

専門学校には学校法人と株式会社の運営による2種類がある。
ファッション業界でいうなら、バンタンとエスモードジャポンが株式会社の運営だ。
短大や4年制大学と同じ扱いを受けるのは学校法人の運営によるものであり、例えば、通学定期券購入などで在学生が学生割引を使用できるのは学校法人が運営する学校に入学した場合に限られている。

また、一般的に株式会社は利潤を追求するのが組織の存在意義なので、学校法人よりは利潤追求に積極的である。同じ学校運営を行っていても職員への営業ノルマは学校法人よりも大きなものとなるのは当然である。

逆に学校法人に勤務する教職員は組織の利潤追求には過度にガツガツしたところがないため、そこに一般企業との乖離があると近年指摘され始めている。まことにすべての事象にはメリットとデメリットが表裏一体となっている。

さて、そういう背景を知っていると、株式会社という組織から、元社員にはそれなりのプレッシャーがあったであろうことは何となく想像ができる。

以前、学校法人経営のファッション専門学校に勤務した経験に照らし合わせると、

だが、実際の仕事内容は、社長やマネージャーの指示で、バンタンと競合する他の学校を情報収集することだった。具体的には、志望者を装い、競合校の資料を取り寄せ、競合校を訪問したり体験入学をして、実態や特徴を調査し自社へ報告した。

入社から約50日の間に訪問した学校は、東京観光専門学校、服部栄養専門学校、日本菓子専門学校など実に19校に上った。

という部分は事実だろうと推測している。

なぜなら、以前に勤務した学校でも同じようなことがあったからである。
おそらく、この元社員は若いのだと思う。25歳を越えるとなかなか競合校へ体験入学はできない。
昨今、大学を卒業してから専門学校に行き直す人が増えているとはいえ、大学を卒業する年齢は普通は22~24歳くらいである。だからもぐりこむにしても明らかに25歳を越えた風貌では相手にすぐにバレてしまう。
筆者のように40歳を越えたオッサンではとても不可能だ。

となると、彼はそれなりに年齢も若く、風貌も25歳以下に見えるくらいに若々しかったのだろうと想像できる。

以前に勤務した学校は彼のように若い教職員はいなかったから、どうしたかというと在校生に頼んでいた。
在校生なら最年長でも22歳くらいなので怪しまれない。
筆者が指示したのではなく、指示している場面を何度か目にしたのである。
ドラマ「半沢直樹」のように会話を録音していたわけでもなく、認印が押された書類を押収したわけではないので、筆者が目にしたということに過ぎない。

これが行われた原因はなにかというと、少子化以上に、ファッション専門学校への入学者数が全国的に減少しているからである。学生の取り合いは世間的には知られていないだけで長らく続いてきた。
以前に日経ビジネスオンラインで書いたことがあるが、ある理事長に言わせると「現在、全国のファッション専門学校に通う生徒の総数は1万2000人ほど」だそうだ。

大手私立大学だと1校あたりに2万~3万人の学生が在籍しているのでその少なさは明らかであろう。

さらにこの理事長によると「十数年前には生徒数は2万3000人ほどだった」そうだから、十数年間で生徒数は半減していることになる。

ファッション専門学校それぞれの在校生数はだいたい100人単位であり、生徒が集まらないため100人に満たない生徒数の学校もある。1校だけ千人規模が集まるマンモス校が存在するのだが、それでもかつて6000人いた生徒数は現在4000~3000人くらいにまで減っていると耳にしている。

今時、ファッション専門学校に入りたいと希望する生徒は少ないから、自校が入学者数を増やすためには他校の入学者を奪うほかない。縮小するパイの中でシェアを奪い合うという激烈なサバイバルが行われている。
これがファッション専門学校業界の現状である。

アパレル業界が不況業界であることは広く知られているし、ファッション専門学校を卒業したところでアパレル業界への就職は狭き門である。店頭での販売員にはなれる可能性が高いが、企画デザイン・パターンなどはほとんどのアパレル企業が外注任せとなっており、募集人員は限りなく少ない。

しかも店頭の販売員には専門学校を出ていなくても採用される。筆者も元々、大学を卒業して量販店チェーン店の販売員に就職しているからこの構図は20年前から変わっていない。

となるとわざわざファッション専門学校に入学するメリットがない。
これがファッション専門学校への入学希望者が減少し続けている理由である。

さて、ファッション専門学校はこのまま行くと淘汰されることは間違いない。最終的にどこが残るのかを観察するのも一興ではあるが。

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